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このままでは中国経済は債務に押し潰される
―― 地方政府と国有企業の巨大債務

シブ・チェン イェール大学教授(金融論)

China's Dangerous Debt

Zhiwu Chen イェール大学教授(金融論)。専門は新興市場、中国の経済と資本市場など。著書にAssessing China's Economic Growth of the Past 30 Years (2010)などがある。

2015年5月号掲載論文

これまで中国政府は、主要銀行の不良債権が経済に悪影響を与えないようにベイルアウト(救済融資)や簿外債務化を試み、一方、地方の銀行については、地方政府が調停する「合意」で債務危機を抑え込んできた。だが、もっともリスクが高いのは地方政府そして国有企業が抱え込んでいる膨大な債務だ。不動産市場が停滞するにつれて、地方政府がデフォルトを避けるために土地をツールとして債務不履行を先送りすることもできなくなる。経済成長が鈍化している以上、国有企業がこれまでのように債務まみれでオペレーションを続けるわけにもいかない。しかも、債務の返済に苦しむ借り手は今後ますます増えていく。中国が債務問題を克服できなければ、今後の道のりは2008年当時以上に険しいものになり、中国経済に壊滅的な打撃を与える危機が起きるのは避けられなくなる。

  • 債務と経済クラッシュ
  • 地方政府と土地と債務
  • 銀行危機はいかに回避されてきたか
  • 対応策はあるか
  • 国有企業の債務体質

<債務と経済クラッシュ>

当時はアメリカで4番目に大きな投資銀行だったリーマン・ブラザーズが破綻の瀬戸際にあることを胡錦濤国家主席(当時)が知らされたのは2008年9月。このとき彼は、陝西省のでこぼこ道を走るワゴン車のなかにいた。政策顧問と共産党中央政治局のメンバーを集めた胡錦濤は「リーマン・ブラザーズが破綻した場合の余波に中国はどのように対処すべきか」について意見を求めた。この政策立案セッションに参加したある人物によると、車による移動が終わるまでに、政策顧問と政治局のメンバーたちは、対応策をめぐって明確なコンセンサスをまとめ上げた。「中国は大規模な景気刺激策を実施する必要がある。そして、これを実施していく上で信頼できるのは民間企業ではなく、国有企業だ」。これが結論だった。

2008年11月、他国の政府が依然として「次にどうするか」をめぐって議論を続けるなか、北京は6000億ドル規模の資金を、インフラプロジェクトや産業プロジェクトをファイナンスするために、国有企業その他へと注ぎ込んだ。その後の6年間にわたって、中国の名目GDP(国内総生産)は倍増した。2008年当時4・5兆ドルだった名目GDPは、2014年には9兆ドルに達していた。・・・

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