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テロに関する論文

新帝国主義というアメリカの野望

2002年10月号

G・ジョン・アイケンベリー ジョージタウン大学教授

保有する圧倒的なパワーと、テロという脅威の到来が、帝国主義の誘惑を大きくしている。だが、正統性もなく、戦後国際秩序の規範や制度を無視して、アメリカがパワーを思うままに行使すれば、いずれ敵意に満ちた国際環境が出現し、アメリカの国益を確保するのも難しくなる。アメリカの新帝国主義的大戦略はリーダーシップの実践というよりも、むしろたんなる軍事パワーの行使にすぎない。勢力均衡を重視するリアリズム、そしてリベラルな多国間主義を再評価し、成熟した大国として、他国の立場を大きく脅かさないように配慮しつつ、秩序の安定と国益を模索する戦略へと立ち返るべきだ。

「対テロ戦争」というレトリックの弊害

2002年10月号

グレンビル・バイフォード 国際問題アナリスト

美しさを人がどうとらえるかと同じことで、テロリズムも立場によってとらえ方が違ってくる。目的を達成するのにどのような手段を用いたかで、それがテロであるかどうかを判断するのは間違っている。同時多発テロへのアメリカの怒りにしても、アメリカが攻撃され、アメリカ人が殺されたことに市民は激怒しているのであって、攻撃の手法自体に怒りを募らせているわけではない。したがって、漠然としたものにしかなり得ず、むしろ問題をつくり出す「対テロ戦争」というレトリックを振り回すのをやめるべきだ。国家安全保障にかかわる特定の具体的課題としてテロ問題に取り組むべきであり、テロ対策について語るときも「利益が一番で、次が目的、そして手段」というアメリカ人の常日頃の優先順位を忘れてはならない。

進化する総合安全保障政策と日米同盟の行方

2002年9月号

外交問題評議会シニアフェロー エリック・ヘジンボサム   マサチューセッツ工科大学 政治学教授 リチャード・J・サミュエルス

平和主義、ノーマルな国家になることへの模索、アメリカへの追随、中国に対する反発といった一般通念では、もはや日本の外交路線は説明できない。ワシントンは、日本の総合安全保障概念が進化し、これを支える二重保険戦略が生まれていることを直視し、この戦略と共存していく道を学んでいく必要がある。

生物学的脅威に備えよ

2002年8月号

クリストファー・F・チャイバ クリントン政権国家安全保障会議スタッフ

公衆衛生体制の改善こそ、バイオテロ対策の基本である。病原体によっては潜伏期間が数週間にも及ぶので、バイオテロに真っ先に対応するのは消防、警察、軍隊ではなく、医療関係者となる可能性が高く、感染症を早期に発見し、対応できる公衆衛生監視体制の強化が急務となる。また、バイオテロであれ、自然発生型の感染症であれ、病原体は国境を超えて自由に移動する。当然、世界的な感染症発生の監視・対応メカニズムの改善、世界中で備蓄されている病原体の管理など、国際的監視枠組みの強化も不可欠である。

東南アジア
――対テロ軍事支援の限界と弊害

2002年7月号

ジョン・ガーシュマン 両半球間資源センター上級アナリスト

アメリカが対テロ戦争の一環として東南アジアを「軍事的に支援」するのは間違っている。人権侵害を起こすことで悪名高い東南アジア諸国の軍隊は、多くの場合、政治エリートの一部やテロ組織を含む犯罪組織と手を結んで、むしろテロを助長する社会環境を育んでいるからだ。軍隊を支援しても、民主体制をさらに弱め、イスラム過激派の魅力を高めてしまうだけだ。ワシントンは軍事援助や各国の法執行当局との連帯だけでなく、東南アジアが直面する社会問題への「文民統制型」の対応策を支援する必要がある。

同時多発テロ後のインドの内政と外交

2002年7月号

デニス・クックス ウッドロー・ウィルソンセンター上級政策研究員

同時多発テロ以降、米印は、政治・安全保障・経済に関する共通の利益をますます重視するようになり、いまや両国の関係は大きく前進し、緊密化している。だが、バジパイ政権は、対米外交では成果を上げつつも、カシミール紛争をめぐってパキスタンと深刻な軍事的対立局面にあるし、国内でも、政治危機、宗教対立、低迷する経済などの難題に直面している。対米関係の改善という成果を、パキスタンとの軍事的危機の解決、国内経済問題の解決に、どうすれば結びつけられるのか。

米外交問題評議会リポート
「軍事的対テロ戦争」では問題は解決しない

2002年7月号

◎スピーカー ブレント・スコークロフト ブッシュ・フォード政権大統領補佐官 カーター政権大統領補佐官 ズビグニュー・ブレジンスキー  クリントン政権大統領補佐官  サミュエル・バーガー クリントン政権大統領補佐官  ◎司会 CNN上席副会長 フランク・セスノ

アメリカ市民を対テロ作戦に動員する努力、テロの危険を世界に認識させる努力はうまくいっている。だが、政府はテロ問題にばかり焦点を絞るという間違いを犯している。これでは、非常に複雑で、混乱している世界の現実に目を向けず、そうした現実がつくり出す一つの現象であるテロ問題だけに、取り憑かれたように関心を持ってしまうことになる。(Z・ブレジンスキー)

サウジ王国の苦しみ

2002年6月号

エリック・ルーロー 元駐トルコ・フランス大使

米メディアからは対米テロをめぐって批判され、国内でも、経済不振、そして社会的緊張と反米主義の高まりに悩まされるサウジアラビア政府はいまや身動きがとれなくなり、王族内の改革派も、保守派が牛耳る政治・宗教システムの囚われ人となっている。近代化と経済発展を促進しようとするアブドラ皇太子の決意は本物だが、その改革の規模とペースは、彼の意図ではなく、むしろ、矛盾に満ちたこの国の政治力学とグローバル化が呼び込む外的圧力の綱引きによって左右されることになろう。

アフガニスタンでの戦争を総括する
――なぜビンラディンを取り逃がしたのか

2002年6月号

マイケル・オハンロン ブルッキングス研究所シニア・フェロー

アフガニスタンの国内勢力をうまく反タリバーン勢力としてまとめ上げ、新旧の技術を「統合的軍事作戦」として結実させた「不朽の自由作戦」は、マッカーサーの仁川攻略以来の記念碑的な戦いとして評価されることになるかもしれない。しかし、ビンラディンと彼の側近たちがアフガニスタンからの脱出に成功していたり、アフガニスタンが今後再び不安定化し、テロリストが少数でもこの国に居座り続けたりすれば、現在の勝利も色あせたものになる。なぜ、米軍はアルカイダの退路を断つという最も重要な作戦を、パキスタン軍や現地の軍事勢力に任せるという間違いを犯したのか。

イラクを攻撃すべきこれだけの理由

2002年4月号

ディレクター チャールズ・ボイド  元駐留NATO米軍副司令官 、 共同議長 リチャード・ホルブルック 前米国連大使、 カーラ・ヒルズ  元米通商代表部代表

以下は、米外交問題評議会が米同時多発テロ後に組織した「テロリズムに関するタスクフォース」の研究会報告からの抜粋。タスクフォースには、シャリカシュビリ元統合参謀本部議長、ブラウン前国防長官、ルービン前財務長官、アジャミー・ジョンズ・ホプキンス大学教授、ナイ・ハーバード大学教授、ウェブスター元CIA及びFBI長官、ウィールジー元CIA長官、ジョージ・ソロス氏らが参加している。

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