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テロに関する論文

スーダン
――終わりのない戦争

2003年3月号

ランドルフ・マーチン 国際救済委員会シニア・ディレクター

「地域を不安定化させている。国際テロを支援している」というスーダン政府の悪評については、それを見直してもよいほどの改善がみられ、人権状況もある程度はましな状態になっている。こうした国内政策の転換や石油パイプラインの誕生によって、国際社会からの孤立状況も緩和されつつある。だが、内に目を向ければ、政府が抗争相手である南部の勢力と和解する動機は薄れつつある。石油の収益は政府が内戦を継続する財的基盤を得たことを意味するし、南部勢力間の対立も解消されていないからだ。

悪の枢軸と国際協調の行方

2002年3月号

アル・ゴア 前米国副大統領

ブッシュ政権は時にこれを逆さにして、「そうせざるを得ない時は他国とともに、可能であれば単独で」事を運んでいる。世界には「貧困と無知、疾病と環境破壊、腐敗と圧政」という「もう一つの悪の枢軸」が存在する。われわれが現在直面しているのは、膨大な規模の民衆が感じている幾重もの悲しみからほとばしる怒りの表れなのだ。重要なのは、アメリカがテロリストに対して毅然たる態度をとるだけでなく、経済的機会と民主的自由を支持しなければならない、ということだ。

パレスチナの混迷と内部対立
―和平プロセス再開の条件を探る―

2002年3月号

ハリル・シュカーキ ビルザイト大学政治学助教授

和平プロセスが破綻し、民衆が自治政府の統治能力をほぼ見限ったために、自治政府の正統性は大きく損なわれ、民族主義運動の新世代派が大きく台頭しつつある。アラファト議長は、この新世代派を懐柔しようと、彼らがイスラム主義勢力と共同歩調をとることだけでなく、イスラエル軍との過激な対立路線をとることも容認した。西岸とガザ地区からイスラエル軍を撤退させ、PLO主流派の力を弱め、主流派に取って代わることを夢見るこの新世代派の台頭こそ、第2次インティファーダの本当の理由なのだ。

パキスタンでのイスラム革命を回避せよ

2002年2月号

アナトール・リーベン カーネギー国際平和財団シニア・アソシエート

パキスタンの歴代文民政権同様に、現在の軍事政権も社会・経済状況を改善できないとすれば、イスラム主義が、残された唯一の選択肢として浮上してくるかもしれない。イスラム過激派のテロリストたちは、インドのヒンズー教徒にイスラム教徒を迫害させることが、パキスタンで革命を起こす手っ取り早い方法であることを知っている。その結果インド・パキスタン戦争が起きれば、両国間の核戦争という忌まわしい危険が生じることになる。

軍事作戦後の対立を回避せよ

2002年2月号

マイケル・ハワード オックスフォード大学歴史学教授

「テロリストは英雄ではなく犯罪者である」とみなす前提が中東世界で受け入れられていない状態で、民間人に犠牲が出ることが避けられない対テロ軍事作戦を続けるのは、敵に勝利を与えるに等しい。テロに対する闘いを成功へと導くには、軍事作戦を早く終え、欧米にとって未知なるイスラム世界において「人心を勝ち取る闘い」を展開する必要がある。そして、この闘いの最前線はアフガニスタンではなく、近代化志向の政府が伝統主義者の反動によって脅かされている中東のイスラム諸国である。

イスラム世界へと引き込まれたアメリカ

2002年2月号

マイケル・スコット・ドーラン プリンストン大学教授

イスラム過激派は、世俗主義という形で西洋の大衆文化を広く拡散し、イスラム世界の政治経済に最も深く関与しているアメリカを激しく批判したが、彼らの本当の狙いは中東地域の「背教的」政権だった。アメリカとの戦争は、ビンラディンにとって本質的な目的ではなく、それは彼が標榜するイスラム過激主義が、イスラム世界で大きな流れを形成できるようにするための手段にすぎなかった。つまりアメリカは、イスラムという他人の内輪もめに引きずり込まれたのだ。

それを、殺人へと突き進む四つ足の野獣都市と呼ぶがいい。歴史的にも、ニューヨークは片手に自由という名のぼろ切れを握りしめ、もう一つの手で地球を握りつぶす女神なのだから。――アドニス(アリ・アハメド・サイド)「ニューヨークの葬式」一九七一年

アメリカはなぜ憎まれる

2001年12月号

ケニース・M・ポラック  米外交問題評議会国家安全保障担当シニア・フェロー

米国でもテロの背景にある反米主義のルーツを探る動きが進んでいる。以下は、米外交問題評議会がテロ事件後に組織した「テロリズムに関するタスクフォース」での研究会報告の抜粋。タスクフォースには、シャリカシュビリ元統合参謀本部議長、ブラウン前国防長官、ルービン前財務長官、アジャミー・ジョンズ・ホプキンス大学教授、ナイ・ハーバード大学教授、ウェブスター元CIAおよびFBI長官、ウィールジー元CIA長官、ジョージ・ソロスらが参加している。

対テロ米ロ同盟とロシアの民主主義

2001年11月号

ティモシー・J・コルトン ハーバード大学政治学教授  マイケル・マクファール  スタンフォード大学政治学準教授

ブッシュ政権はテロという新たな世界規模の脅威に対する国際連帯を形成しようとするあまり、民主国家という連帯の相手に求められる資格を無視した動きに出るかもしれない。強権政治への逆コースをたどりつつあるロシア政府も、この対テロリズム連合に協力を表明した以上、アメリカに統治面でとやかく言われることもなくなるだろう。だが、対ロシア民主化支援を強化しないかぎり、アメリカの安全保障に将来大きな悪影響が出る。かつての宿敵の国境内に民主主義を根づかせるための努力をいまこそ再強化すべきである。

次なる攻撃に備えよ

2001年11月号

ウィリアム・J・ペリー  元米国防長官

アメリカに対する憎しみ、組織的な作戦を実行できるだけの資源、自らの命をも顧みないほどの狂信主義をテロリストが兼ね備えていれば、その帰結がいかに甚大なものになるかを、世界は目の当たりにした。そしていまやもっとも差し迫った脅威は、テロ集団が、トラック、貨物船、飛行機、小型船で核兵器や生物兵器攻撃をかけてくることである。脅威が出現する前に、それを抑え込む拡散防止などの「予防」戦略、相手に攻撃を思いとどまらせる「抑止」戦略、そして、予防と抑止が破られた場合に備えた「防衛」戦略という3つをバランスよく実施する必要があり、アメリカは米本土ミサイ防衛ばかりを重視したこれまでの防衛姿勢を大きく見直す必要がある。

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