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国防と安全保障に関する論文

テロ組織はどのように資金を調達しているか
―― なぜ銀行システムの監視は無意味なのか

2017年8月号

ピーター・ノイマン ロンドン大学キングズ・カレッジ教授(安全保障研究)

各国は長年、テロには金がかかるという思い込みゆえに、テロ組織が国際金融システムにアクセスするのを阻止しようと試みてきたが、このアプローチでテロを抑止できた証拠はない。ほとんどのテロは、数百ドル単位のごくわずかなコストでも決行でき、テロ組織の多くは国際金融システムを使うことはない。骨董品や石油、タバコ、模倣品、ダイヤモンド、象牙などの密輸から資金を得ることもあれば、イスラム国(ISIS)のように支配地域の天然資源を食い物にして資金を確保することもある。あるいはヨーロッパのジハーディストのように、社会保障給付や個人的な借入れでテロを決行する人物たちもいる。国際金融システムに焦点を合わせるのは、時間と資金を浪費するだけで、テロの抑止にはつながらない。

エジプトにおけるキリスト教徒の未来
―― ISISによるコプト教徒の民族浄化

2017年8月号

ニナ・シーア ハドソン研究所・宗教的自由研究センター ディレクター

イスラム過激派が、イラクのキリスト教徒やヤジディ教徒コミュニティ同様に、エジプトのコプト教徒コミュニティの組織的破壊を進めるのを放置すれば、中東の宗教地図は大きく塗り替えられる。特に、約900万人に達するエジプトのコプト教徒は、中東地域における最大のキリスト教集団、最大の非ムスリム集団だ。イスラム国は、シナイ半島北部の小規模なキリスト教コミュニティをすでに粉砕している。今後彼らが、他のエジプト地域で自爆テロなどの攻撃を通じて、数百万のコプト教徒たちを恐怖に陥れれば、大規模な難民がイスラエルやヨルダン、そして地中海を経てヨーロッパを目指すようになるかもしれず、この場合、エジプトとその近隣諸国はこの先数十年にわたって不安定化することになる。

ドイツにおける核武装論争
―― なぜ核武装は危険思想なのか

2017年8月号

ウルリッヒ・クーン カーネギー国際平和財団 核政策プログラムフェロー トリスタン・ボルペ カーネギー国際平和財団 核政策プログラムフェロー

ロシアによるウクライナ侵略、アメリカの対ロ政策の迷走、そして、欧州安全保障へのコミットメントに懐疑的なトランプ政権の誕生を前に、ベルリンの困惑とヨーロッパ安全保障への不安は高まった。「アメリカの核の傘による安全保障(の今後)に対する懸念を取り払う、独自の核抑止力の形成を検討すべきだ」と提案する者もいる。たしかに、ヨーロッパが「敵対的なロシア」と「無関心なアメリカ」の板挟みになれば、ベルリンはヨーロッパを政治的に守るだけでなく、軍事的に防衛することを求める大きな圧力にさらされる。だが、この国の核武装には「ドイツ問題」という歴史問題が関わってくるだけでなく、EUを中核に据えてきた戦後ドイツの国家アイデンティティそのものが揺るがされる。しかも、ドイツが核戦力をもてば、EUとロシアの関係が不安定化するだけでなく、他の諸国が核開発を試みる核拡散の連鎖が生じる。・・・

米欧中関係のパワーシフト
―― 欧中新時代の到来か

2017年8月号

ニコラ・カサリーニ 国際関係研究所ディレクター(アジア担当)

イギリスは、これまでヨーロッパを大西洋同盟の枠内に着実につなぎ止めようと試みてきた。そうすることがさほど難しくなかったのは、アメリカもまたヨーロッパとの同盟関係の維持を望んでいたからだ。しかし、そのような米欧関係の構図もイギリスが欧州連合(EU)を去り、トランプの言動がヨーロッパを離叛させるなか、形骸化しつつある。この環境では、ヨーロッパにとって、アメリカの優位を脅かす恐れのあるほぼすべての課題をめぐって中国との関係を強化していくことが合理的になる。しかし、ここで選択を間違うのは危険だろう。欧中同盟が形成されるとしても、それは強固な絆というより、むしろ、ブレグジットの余波と欧中が共有するトランプに対する反感が引き起こす政略結婚のようなものだからだ。しかし、ほんの数ヵ月前までは考えられなかった新しい中国とEUの関係が生まれようとしている。・・・

なぜサウジは判断を間違えたか
―― 対カタール強硬策の代価

2017年8月号

バッシマ・アル・グサイン アル・グサイン・グローバル戦略 最高経営責任者
ジェフリー・ステーシー ジオポリシティUSA マネージング・パートナー

湾岸協力会議(GCC)はカタールに対して、イランとの関係遮断からアルジャジーラの閉鎖までの13の要求を突きつけ、その受入期限を6月2日に設定した。しかし、カタールは何一つ要求に応じなかった。サウジが主導するカタール封鎖路線には明らかに問題がある。カタールとイランの関係を問題視しているにもかかわらず、経済封鎖で追い込まれたカタールは食糧をイランやトルコから急遽輸入せざるを得なくなり、皮肉にも、カタールを両国の懐へと送り込んでしまった。カタールをイランにさらに接近させただけでなく、地域的な安定と通商の基盤であるGCCの連帯も揺るがしてしまった。なぜリヤドがかくも大きな失策を犯したのか。「カタールは身の丈に合わない野望を抱き、サウジの支配的影響力を脅かしている」とリヤドが考えていることが、その背景にある。・・・

バノン派の凋落と伝統的外交の復活
―― 変貌したドナルド・トランプ

2017年8月号

エリオット・エイブラムス 米外交問題評議会シニアフェロー(中東担当)

トランプ政権が革命的政権にならないことはすでに明らかだろう。普通の大統領ではないかもしれないが、これまでのところ、彼の外交政策は驚くほど常識的だ。「ロシアとの関係改善を望み、軍事力の使用はアメリカの国益が具体的に脅かされたときに限定する」と表明しつつも、シリア政府がサリンガスを使用したことが明らかになると、(ロシアが支援する)この国の基地をミサイルで攻撃している。すでにスティーブ・バノン率いる「オルト・ライト」ポピュリスト派は政権内で勢いを失い、トランプは外交エスタブリッシュメントで構成される国家安全保障チームを編成している。当初のイメージとは裏腹に、トランプ時代は伝統的なアメリカ外交からの逸脱ではなく、その維持によって特徴付けられることになるだろう。

中国の覇権確立を阻止するには
―― 南シナ海とアメリカの対中抑止策

2017年8月号

イーライ・ラトナー 米外交問題評議会シニアフェロー(中国研究)

南シナ海における米中衝突を回避しようとするあまり、ワシントンは、中国による国際法を無視した南シナ海における行動を前にしても、緊張緩和措置をとり、結果的に、中国がじわじわと既成事実を作り上げるのを許してしまった。アメリカの軍事力と同盟関係には、米中の軍事衝突を抑止する効果はあっても、中国の勢力圏拡大を抑止する作用は期待できない。このために、中国による覇権確立がアメリカのアジアにおける最大の脅威シナリオとして浮上してきている。「中国が人工島の建設を続け、あるいはすでに建設した人工島に長距離ミサイルや戦闘機など強力な軍事資産を配置し続けるようなら、アメリカは中立を捨てて、領有権を主張する他の諸国が中国に対抗する能力を獲得することを支援する」と表明すべきだ。外交を抑止策で支え、「中国が覇権を握ることは容認できない」と、ワシントンは態度を明らかにすべきだろう。

ミンダナオ島危機とイスラム国
―― 共通の敵で変化した米比関係

2017年8月号

リチャード・ジャバッド・ヘイダリアン デ・ラ・サール大学准教授(政治学)

貧困や失業に苦しみ、イスラム教徒が社会の周辺に追いやられているミンダナオ島では、イスラム主義者や共産主義者などの反政府勢力がフィリピン軍と衝突する流血の惨事が数十年にわたって繰り返されてきた。そこには、イスラム主義のイデオロギーやテロ集団を許容する社会的素地が存在した。しかも、中東で軍事的に追い込まれたイスラム国(ISIS)勢力はアジアへ軸足を移そうと試みている。イスラム教徒が多数派で、イスラム国勢力のシンパが多いマレーシアやインドネシアとミンダナオ島との国境線が監視の難しい海洋上にあることも事態を複雑にしている。一方、テロ勢力という共通の敵が現れたことでアメリカとの関係は雪解けの時を迎えている。マニラが共通の敵に対するワシントンの軍事支援を受け入れるにつれて、両国政府の立場の違いはゆっくりとだが、着実に埋められつつある。・・・

ビジョンが支える米戦略への転換を
―― アメリカファーストと責任ある外交の間

2017年7月号

リチャード・ハース 米外交問題評議会会長

ドナルド・トランプ大統領の「アメリカファースト」スローガンは、これまでもそして現在も、現実の必要性にフィットしていない。このスローガンは米外交を狭義にとらえるだけで、そこには、より大きな目的とビジョンが欠落している。いまやこのスローガンゆえに、世界では、ワシントンにとって同盟国や友好国の利益は二次的要因に過ぎないと考えられている。時と共に、「アメリカファースト」スローガンを前に、他国も自国第1主義をとるようになり、各国はアメリカの利益、ワシントンが好ましいと考える路線に同調しなくなるだろう。必要なのは、アメリカが責任ある利害共有者として振る舞うことだ。国益と理念の双方に適切な関心を向け、より規律のある一貫した戦略をもつ必要がある。

北朝鮮に原子力の平和利用を認めよ
―― 平和と原子力のバーターを

2017年7月号

リチャード・ローズ ピュリツァー賞受賞ジャーナリスト、マイケル・シェレンバーガー エンバイロンメンタルプログレス 会長

平壌が本当に望んでいるのは、攻撃されないという保証、そして、経済開発のための電力生産能力を手に入れることだ。この意味では、核問題の軍事的解決策を望むタカ派だけでなく、原子力エネルギーに反対するハト派も間違っている。衛星写真をみると、電力の3分の1が原子力発電所によって供給されている韓国が明るく輝いているのに対して、北朝鮮はほぼ全域が暗闇に覆われている。核・ミサイル開発への制限を受け入れることを条件に、原子力による電力生産へのアクセスを認めれば、平壌は近隣諸国を脅かすのを止め、ミサイルその他の軍事物資の密輸を止める経済的インセンティブをもつようになるはずだ。われわれは北朝鮮において、アイゼンハワー大統領が1953年に国連で提唱した「平和のための原子力」構想を実現する機会を手にしている。

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