Presidential Communications Operations Office/Wikipedia

ミンダナオ島危機とイスラム国
―― 共通の敵で変化した米比関係

リチャード・ジャバッド・ヘイダリアン デ・ラ・サール大学准教授(政治学)

Crisis in Mindanao: Duterte Battle ISIS

Richard Javad Heydarian デ・ラ・サール大学准教授(政治学)で、フィリピン下院の政策アドバイザー。

2017年8月号掲載論文

貧困や失業に苦しみ、イスラム教徒が社会の周辺に追いやられているミンダナオ島では、イスラム主義者や共産主義者などの反政府勢力がフィリピン軍と衝突する流血の惨事が数十年にわたって繰り返されてきた。そこには、イスラム主義のイデオロギーやテロ集団を許容する社会的素地が存在した。しかも、中東で軍事的に追い込まれたイスラム国(ISIS)勢力はアジアへ軸足を移そうと試みている。イスラム教徒が多数派で、イスラム国勢力のシンパが多いマレーシアやインドネシアとミンダナオ島との国境線が監視の難しい海洋上にあることも事態を複雑にしている。一方、テロ勢力という共通の敵が現れたことでアメリカとの関係は雪解けの時を迎えている。マニラが共通の敵に対するワシントンの軍事支援を受け入れるにつれて、両国政府の立場の違いはゆっくりとだが、着実に埋められつつある。・・・

  • 内戦の危機?
  • なぜミンダナオなのか
  • 米比関係の修復へ

<内戦の危機?>

就任から1年を経たドゥテルテ大統領は、彼の故郷・ミンダナオ島の全面的な危機に直面している。5月下旬以降、政府軍の兵士たちは、イスラム過激派に占拠されたマラウィ市の解放作戦を試みている。

イスラム国(ISIS)系の戦闘員そしてフィリピンのジハード主義集団で(イスラム国に忠誠を誓う)マウテグループが、5月23日以降、国内で最大規模のイスラム教徒コミュニティがあるマラウィ市を占拠してきた。マウテグループの攻撃は、政府軍が(イスラム過激派アブサヤフの指導者である)イスニロン・ハピロンを拘束しようと、その隠れ家を攻撃したことへの報復だったと考えられている(ハピロンは、「自分は東南アジアにおけるイスラム国戦士の首長だ」と最近表明していた)。

過激派によるマラウィ市の包囲作戦は、フィリピンに「イスラム国勢力のプロビンス(ウィラヤート)」を形作ろうとする関連勢力による作戦の一環だった。最近では、イスラム国勢力とのつながりをもつ他の過激派組織、バンサモロ・イスラム自由戦士(BIFF)がミンダナオの他の地域で同時多発的な攻撃を実施し、今後、フィリピンではマラウィを超えてテロが大きな広がりをみせていくと考えられる。

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