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政治・文化・社会に関する論文

ロシアの衰退という虚構
―― そのパワーは衰えていない

2022年1月号

マイケル・コフマン  新アメリカ安全保障センター ディレクター(ロシア研究プログラム) アンドレア・ケンダル・テイラー  新アメリカ安全保障センター ディレクター (トランスアトランティック安全保障プログラム)

人口減少や資源依存型経済など、ロシア衰退の証拠として指摘される要因の多くは、ワシントンの専門家が考えるほどモスクワにとって重要ではない。プーチン大統領が退任すれば、ロシアが自動的に対米対立路線を放棄すると考えるべきではない。プーチンの外交政策は、ロシアの支配層に広く支持されており、クリミア編入をはじめとする未解決の紛争も彼の遺産とみなされている。アメリカとの対立は今後も続くだろう。つまり、ワシントンには中国に焦点を合わせ、ロシアの衰退を待つという選択肢はない。アメリカのリーダーは、ロシアを衰退途上にある国とみなすのではなく、永続的なパワーをもつ大国とみなし、ロシアの本当の能力と脆弱性を過不足なく捉えて議論しなければならない。

ブラジルの民主的衰退の行方
―― ジャイル・ボルソナロを止めるには

2021年12月号

オリバー・ストゥンケル ジェトゥリオ・ヴァルガス財団 准教授(国際関係学)

ブラジル大統領に就任して以降、ボルソナロは議会や最高裁判所の閉鎖を求めるデモ隊に同調し、政府の軍事化を大がかりに進め、選挙システムへの社会的信頼をシステマティックに損なう行動をとってきた。トランプに心酔している彼は、2022年の大統領選挙で敗北してもそれを受け入れるとは考えにくく、2021年1月にワシントンで起きた暴動のような事態がブラジルで再現されるかもしれない。民主主義が徐々に損なわれ、最終的に権威主義的指導者の圧力に屈したベネズエラ型の崩壊がブラジルでも起きるのかもしれない。仮に民主主義を志向する候補者がボルソナロを打倒して後任大統領に就任しても、西半球における2番目に大きな民主国家の衰退を覆すのは、長く困難な闘いになるだろう。

「だましの時代」のプレイヤーたち
―― 政府とソーシャルメディアの責任

2021年12月号

ジャミール・ジャファー  コロンビア大学 ナイト・ファースト・アメンドメント研究所 エグゼクティブディレクター

アメリカ人は「だましの時代」、嘘がいたるところにあふれる時代に生きている。しかし、言論の自由を認める米憲法修正第一条によって、偽情報を流した本人がその責任を問われることはあまりない。虚偽の主張は言論市場で修正されるほうが好ましいと考えられているからだ。一方で修正第一条は、一定の限界を定めつつも、事実に反する誹謗中傷についての名誉毀損訴訟を許しており、実際には、さまざまな局面で、有力者や政府が嘘を罰することを許している。もちろん、ソーシャルメディアで偽情報を流す人々にも問題はある。だが、政府も偽情報を流しているし、ソーシャルメディア企業も是正すべき問題を抱えている。

残存する国内ワクチン格差
―― 周辺化されたコミュニティへの国際的対応を

2021年12月号

ダーレン・ウォーカー  フォード財団会長

グローバルな供給量を増やすだけでは、国家間あるいは国内におけるワクチンへの平等なアクセスを提供することはできない。政府や国際機関は、ドナー、市民社会グループ、地域のリーダーたちと協力して、社会から取り残され、周辺化されたコミュニティにワクチンが行き渡るように試みる必要がある。そうしない限り、弱者の多くがワクチンを受けられないままになり、世界全体が再び危険にさらされる。グローバルパンデミックを防ぐには、途上国、特に長く無視され、抑圧されてきた地域の公衆衛生インフラを強化するしかない。このワクチン格差に正面から取り組まなければならないのは、道徳的に問題があるからだけではない。そうすることが公衆衛生や安全のために必要だからだ。


より公平な新経済システムへ
―― 増税と政府による経済管理

2021年12月号

フェリシア・ウォン  ルーズベルト研究所会長

パンデミックはフリードマノミクスをたたきのめす最後の一撃だったのかもしれない。しかし、サミュエルソンがおそらくは認識し、受け入れていたかもしれない「増税と政府による経済管理」という世界もまだ完全には出現していない。この新しいパラダイムが、1940年代のケインズ主義や1980年代のフリードマン的市場経済原理主義のように定着するかどうかは、依然として多くの要因に左右される。新たに形成されつつあるこの枠組みでは、経済と社会の健全性を促進するために、政府にさまざまな役割を担わせることが前提にされている。グリーンエネルギーに投資し、医療、育児、教育などの公共財にもっと多くのコストをかけ、賃金、富、住宅、教育、健康などの分野における人種間の格差を是正していくことが期待されている。

地政学パワーとしてのビッグテック
―― 米中対立と世界秩序を左右するプレイヤー

2021年12月号

イアン・ブレマー ユーラシアグループ社長

ほぼ400年にわたって国家は国際政治の主要なアクターとして活動してきたが、それも変化し始めている。いまやビッグテックは政府に匹敵する地政学的影響力をもち始めている。ビッグテックの地政学的な姿勢や世界観を規定しているのはグローバリズム(アップル、グーグル、フェイスブック)、ナショナリズム(マイクロソフト、Amazon)、テクノユートピアニズム(テスラ)という三つの大きな思想・立場で、国家の立場ではない。国家的な優先事項を追求するために、大国の政治家が巨大テクノロジー企業をたんなる地政学的なチェスの駒として自由に動かせる時代は終わりつつある。テクノロジー企業は名実ともに独立した地政学アクターになり、米中対立だけでなく、今後の秩序を左右する大きな影響力をもち始めている。

ベネズエラのカオス
―― マフィア国家からアナーキーへ

2021年11月号

モイセス・ナイーム カーネギー国際平和財団 特別フェロー
フランシスコ・トロ グループ・オブ・フィフティ チーフコンテンツオフィサー

絶望が大がかりな人口流出を後押ししている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の推計によると、ベネズエラの国外流出者の数は約540万と、人口の5分の1近くに達する。かつては拡大を続けていた大規模な中間層も事実上消滅し、いまや市民の96%が貧困ライン以下の暮らしをしている。経済は崩壊し、1人当たりGDPは2013年の危機前の4分の1程度に落ち込んだ。ある試算によれば、2012年以降のベネズエラ経済の凋落は、平時の現象として世界的にも先例がない。マドゥロ率いる犯罪集団がどうにかまとまりを維持して内輪もめを回避できるか、それとも、武装犯罪組織の縄張り争いが、国全体をアナーキーな暴力の連鎖に巻き込んでしまうのか。ベネズエラはその瀬戸際にある。・・・

アフガン撤退後の米欧同盟
――アメリカのコミットメントは信頼できるか 

2021年10月号

ロビン・ニブレット  英王立国際問題研究所 ディレクター

バイデン大統領は当初から、大多数の米有権者の利益に合致する「中間層のための外交」を優先すると表明してきた。そして、中国に対する関税を維持する一方で、パリ協定に復帰し、アフガンへの永続的介入を終わらせることは「中間層のための外交」の試金石だった。たしかに、アフガン国軍が蜘蛛の子を散らすように敗走し、政府が倒れ、カブールの国際空港が極度の混乱に陥るという展開は、アフガン情勢を読み誤ったバイデン政権に対するヨーロッパの信頼を揺るがした。とはいえ、アフガンからの混沌とした撤退が、21世紀のアメリカの世界的衰退を予兆しているわけではない。アメリカとヨーロッパは、アフガン戦争の混乱に満ちた終結を、安全保障への相互コミットメントを示す機会にすべきだろう。

環太平洋パートナーシップへの復帰を
―― CPTPPのアメリカにとっての価値

2021年10月号

ウェンディ・カトラー  元米通商代表部(USTR)次席代表代行

ワシントンでは「アメリカ抜きではTPPは静かに死を迎える」と考えられてきた。しかし、そうはならなかった。日本率いる残されたメンバーはCPTPPと名称を変更し、2018年に合意をまとめた。アメリカがCPTPPに参加すべき理由は数多くあるが、もっとも重要な要因はやはり中国だ。北京は(すでに正式加盟を申請し)CPTPPに参加する態勢を整えているかもしれない。中国がCPTPPのルールを守るのは難しいとしても、それで協定に参加できないということにはならない。市場が拡大することの魅力だけでなく、中国の参加を、重要な改革を先送りする機会とみなすメンバーも出てくるだろう。中国との競争を展開しているだけに、この協定はアメリカ経済にとってだけでなく、ワシントンの世界的影響力にとっても大きな価値をもつ。

アフガン難民はどこに行くのか?

2021年10月号

リンジー ・メイズランド  Writer@cfr.org

2021年8月、タリバンがカブールを含むアフガニスタンの多くの地域を掌握して以降、すでに数万人が国を後にしている。国連難民高等弁務官事務所によると、年末までに50万人が家を追われて難民化する恐れがある。その多くは、陸路で隣国のイランとパキスタンに向かっている。これまでのところイランとパキスタンは、これ以上の難民を受け入れることを嫌がり、国境線の一部を閉鎖し、文書をもたないアフガン難民は国外追放処分にすると表明している。今回の危機ですでにアフガンから国外へ逃れた8万人の一部はアフガン戦争中に米軍やその家族に協力した個人が利用できる特別移民ビザ(SIV)を保有するか、その対象とされる資格を満たしている。数千人のアフガン難民がアメリカへの入国を果たしたが、より多くのアフガン人が世界各地の米軍基地に一時的に収容されている状態にある。

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