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政治・文化・社会に関する論文

外国人材をいかに受け入れるか
―― 日本モデルのチャンスと課題

2026年1月号

ファーラー・グラシア 早稲田大学大学院 アジア太平洋研究科教授
宮井健志 国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部第4室長
是川夕 国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部部長

日本の外国人材受け入れ制度は、その人がいかに日本での働き方をきちんと学び、適応するかを重視している。このやり方は、多くの先進国が長年とってきた技能レベルに基づく受け入れ策への挑戦でもあるし、文化的同質性を重視する日本の考えとも一致する。技能面でも文化面でも外国人材を「チーム・ジャパン」の一員にしようとする考えだ。最大の脅威は、政治的なものかもしれない。現実的な外国人材受け入れモデルを、ポピュリスト政治による混乱や外国人労働者の権利保護などをめぐる制度的脆弱性から守れなければ、日本は今後必要になる労働力を確保する絶好のチャンスを逃す恐れがある。

飢餓と先進国の政治
―― 食糧危機が先進国を政治的に脅かす

2026年1月号

アリフ・フセイン 国連世界食糧計画(WFP) チーフエコノミスト

豊かな時代にあっても、紛争、気候変動、経済危機によって、食糧にアクセスできない人々が急増している。ガザやスーダンだけではない。世界で食糧危機に苦しむ人口は数億規模に達する。一方、主要ドナー国は支援を大幅に削減し、国連世界食糧計画などによる配給も減少している。飢餓で避難を余儀なくされた家族を難民として国内に受け入れるよりも、彼らが暮らす場所で支援を提供する方が、はるかに合理的だ。大規模な難民流入が現実になれば、国内が不安定化し、政治的分断と過激主義も助長される。支援から遠ざかるドナー諸国は「特定地域での食糧危機は、別の地域の不安定化を引き起こす」という動かしがたい事実を無視している。

マドゥロ追放策のリスク
―― アメリカとベネズエラの未来

web exclusive

フィル・ガンソン 国際危機グループ(ICG) アンデス地域上級アナリスト

マドゥロ大統領の追放をめぐり、アメリカやベネズエラの反体制強硬派は軍事的圧力を強めている。だが、武力による体制変革はさらなる混乱や暴力を招き入れるリスクが高い。ベネズエラ人の圧倒的多数がマドゥロの退陣を望んでいるとしても、アメリカと反体制派は、国際的な支援を受けた包括的な交渉をマドゥロ政権と進めるべきだろう。ベネズエラ国内には政権崩壊に抵抗する武装集団が多数存在するし、軍の一部がさらに抑圧的な指導者を権力に据える危険もある。実際、暴力的な手段はさらなる混乱や市民への抑圧を招くリスクが高い。

非政府組織の興亡
―― 民主主義の後退とNGOの衰退

2025年9月号

サラ・ブッシュ ペンシルベニア大学 政治学教授
ジェニファー・ハデン ブラウン大学政治学部准教授

全盛期には、NGOは国から権限と影響力を奪いつつあるとさえみなされた。NGOは開発援助や人道支援の担い手となり、国際交渉の場で政府を動かし、環境保護や人権といった政策アジェンダの設定まで主導するようになった。そのNGOがいまや大きく衰退している。透明性に欠け、説明責任を果たしていないとの批判もあった。ロシアなどの権威主義国家はNGOを民主国家の手先とみなし、法的に締め出す路線をとり、最近では、欧米諸国もNGOの活動資金となる開発援助を大幅に削減している。なぜ、流れは変化したのか。衰退の流れを覆す道はあるのか。

新しい問題と古いアプローチ
―― 政府の制度と役割をいかに見直すか

2025年7月号

セシリア・ラウズ ブルッキングス研究所 所長

危険と不透明性が高まっている時期に、市場で解決できない部分に介入し、人々を守り、変化を乗り切るのを助ける。これが、政府の役割だ。アメリカでは、所得格差、気候変動、AIによる社会再編など、先行き不透明感は高まっている。政府は、多くの人が「真の問題」と考えるものだけでなく、不確実な問題にも対処しようとしている。この過程で、指導者たちは、政府の機能を見直す必要に迫られる。これまでの進歩を維持し、先に進むのを妨げない柔軟な政府制度が必要になる。政府が時代遅れの手法をとり続ければ、現在の問題には対処できない。規制と規制緩和のバランスを見直すことも、経済活動や経済価値の実態を十分反映できる指標を考案する必要もある。

経済モデルの破綻から再生へ
―― 人と地球に貢献できるシステムを

2025年5月号

マリアナ・マッツカート ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン 経済学教授

いまや、少数の主要プレーヤーによる重商主義への転換が、世界経済を報復的な貿易政策の応酬という事態に陥れつつある。現在の経済モデルは破綻しつつある。トランプ政権が解決策を示しているわけではない。減税、関税、金融規制緩和の提案が詰め込まれた福袋を与えているに過ぎない。公共の価値の創造よりも企業利益を優遇している破綻した経済モデルを退け、持続可能で公平なシステムに置き換えていかなければならない。政府、企業、労働組合の関係をリセットし、地球全体の改革を実現可能なものにするために内外で連携を形成しなければならない。世界は人と地球に貢献できるシステムを必要としている。そのためにも、経済がどのように機能し、誰に恩恵をもたらすのかを根本的に再編しなければならない。

中国の報復社会
―― 何が問題を引き起こしているのか

2025年2月号

ペイドン・サン コーネル大学 准教授(中国・アジア太平洋研究)

中国では2024年に、無差別に民衆を襲撃する暴力事件が少なくとも20件発生し、その犠牲者は90人を超えた。ある研究によると、2004―17年に世界で報告された大量刺殺事件の45%が中国に集中している。政府関係者は、こうした「社会への報復」攻撃を「孤立した事件だ」と説明している。だが、事件の背景には経済の停滞、格差、社会的流動性の欠落や社会的疎外などが引き起こす中国社会の亀裂があるし、根底には、社会不満を増幅させる政府の抑圧が存在する。共産党が経済的機会を拡大し、構造的な不平等や不公正を減らしていかなければ、やがて「社会への報復」攻撃以上の大きな問題に直面するかもしれない。

高齢化と人口減少の時代
―― 人口減少と人類社会

2024年12月号

ニコラス・エバースタット アメリカン・エンタープライズ研究所 ヘンリー・ウェント政治経済チェア

「人々が何を好ましいと考えるかが、ほぼすべての大陸で急速に一体化しつつある」。迫り来る人口減少時代への流れを作り出している大きなトレンドは、世界的に子どもをもつことを望む欲求が低下していることによって作り出されている。出生率が急激に低下し、ますます多くの社会が、いつまで続くかわからない、広範な人口減少の時代へ向かっている。結婚を奨励し、子育てを祝福する宗教的信仰も、出生率の低下が進む多くの地域で衰退しつつある。その先にあるのは、高齢化し、より小さくなった社会で構成される世界になるだろう。人口減少は、おそらく、社会がまだ考えもせず、いまは理解できないような多くの方法で、人類を大きく変貌させていくだろう。

ヨーロッパの社会分裂
―― 都市と農村の格差と政治

2024年7月号

マリー・ハイランド 欧州生活労働条件改善財団 リサーチ・オフィサー
マッシミリアーノ・マスケリーニ 欧州生活労働条件改善財団 社会政策ユニット長
ミシェル・ラモン ハーバード大学教授

農村住民は、政策立案はトップダウンで「政府は自分たちのニーズを認識していない」と不満を強めている。この10年で農村と都市部の所得・雇用格差が拡大したこと、さらには、食料品や燃料など多くの必需品価格を上昇させている最近の生活コスト危機も農村部の不満を助長している。これがヨーロッパ各国の社会的結束を弱め、極右ポピュリズムが支持される肥沃な土壌を提供している。農村部住民の要求や必要性に配慮し、意思決定プロセスにこうした住民を参加させる必要がある。農村と都市の分裂を有意義な形で埋めれば、欧米の多くの社会が現在抱えている社会的緊張を和らげる助けになる。

イギリスと世界
―― 労働党の世界へのアプローチ

2024年6月号

デービッド・ラミー 英労働党・影の内閣外相

英経済は低成長の泥沼にはまりこんでいる。陸軍の兵力規模は、ナポレオンと戦った時代以来の低水準だし、行政サービスの多くも崩壊寸前だ。保守党政権は、その後の明確な計画もないままに、欧州連合(EU)を強引に離脱し、北アイルランドに平和をもたらした「グッドフライデー合意」を危険にさらし、欧州人権条約を軽視する行動みせた。だが、次の選挙で、われわれ労働党が政権を手に入れば、国家再生の時代を「進歩主義的リアリズム」で切り開いていく。進歩主義を現実主義的に実施すれば、世界を変えられるだろう。進歩主義的リアリズムとは、何が達成できるかに関する誤った思い込みを排除した上で、理想を模索することを意味する。

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