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政治・文化・社会に関する論文

ロシアの意図とアメリカの対応
―― 軍事攻撃で何が起きる

2022年3月号

アレクサンダー・ビンドマン  元国家安全保障会議欧州担当部長 ドミニク・クルーズ・バスティロス  ローフェア研究所のリサーチアソシエイト

プーチンの目的は、ウクライナの軍事力を疲弊させ、キエフを混乱に陥れ、最終的にウクライナを破綻国家にすることだ。プーチンがそう望むのは、ウクライナが手に負えない敵となり、次第にロシアの安全保障上の深刻な脅威となっていく危険をこの段階で摘みとっておきたいと考えているからだ。冷戦後の欧州安全保障構造の解体も模索している。バイデンはすでに「私の推測では、プーチンは侵攻してくる」とコメントしている。ウクライナで大規模な武力衝突が起これば、大惨事になる。世界は、第二次世界大戦以降の欧州で、最大規模の軍事攻撃が起きるかどうかの瀬戸際に立たされている。

プーチン・ドクトリンの目的
―― 勢力圏の確立とポスト冷戦秩序の解体

2022年3月号

アンジェラ・ステント ブルッキングス研究所 非常駐シニアフェロー

「欧米は30年にわたってロシアの正統な利益を無視してきた」。この確信がプーチンの行動を規定している。近隣諸国、旧ワルシャワ条約機構加盟国の主権上の選択を制限するロシアの権利を再び主張し、そうした制約を課すロシアの権利を欧米に認めさせることを彼は決意している。要するに、ロシアのことを、近隣地域に特別な権利をもち、あらゆる重大な国際問題について発言権をもつ、尊敬し、畏怖すべき大国として接するようにさせることが大きな狙いだ。プーチン・ドクトリンは、世界の権威主義政権を擁護し、民主主義国家を弱体化させることも意図している。ソビエト崩壊という結末を覆し、大西洋同盟を分裂させ、冷戦を終結させた地理的解決策を再交渉すること。これがプーチンの包括的な目的だ。

戦後アメリカの文化と思想
―― 地政学と冷戦と思想・芸術の時代

2022年2月号

ビバリー・ゲージ イェール大学教授(歴史学)

1933―1944年にはヨーロッパの画家、彫刻家、写真家を含む芸術家だけでも700人以上がアメリカに逃れてきた。彼らは創作活動を続けようと、新天地で躍動的なコミュニティーを形成し、この文化的融合にはアメリカ人も参加した。戦前、こうした文化交流の中心地はパリだった。戦後はそれがシカゴやロサンゼルス、特にニューヨークへと移動した。それだけではない。1940―50年代のアメリカの文化的ルネッサンスを突き動かしたのは、「アメリカの知識人や芸術家が成し遂げたことに、何らかの価値があったのか、それが世界の超大国として、リベラルな民主主義の擁護者としてのアメリカの新しい地位にふさわしいものだったか」という不安だった。冷戦初期の文化ミッションの一部は、アメリカの芸術家や作家、知識人が、グローバルなリーダーシップという新たな任務を引き受ける準備があることを証明することだった。・・・



デジタル秩序の確立へ
―― サイバー・アナーキーを終わらせるには

2022年2月号

ジョセフ・S・ナイ・ジュニア ハーバード大学ケネディスクール 特別功労教授

ルールを作っても、サイバー空間では、それが順守されているかが検証できないために、「サイバー空間における国家の責任ある行動ルール」の確立など、夢物語でしかないと考える人もいる。だが、ルールがあれば、他国の責任を問う行動に向けた基準が生まれる。現実には、サイバー攻撃を抑止するのは市中犯罪を抑止することに似ている。警察が試みているように、犯罪の根絶は無理でも、それを一定限度以内に抑えることを目的にすべきだ。一方で、病院や医療システムなど、特定のターゲットに対するサイバー兵器の使用はすでにタブー視されつつあるし、ハッカーが電気自動車の死亡事故を増加させるようなら、その行為もタブー視されるようになるだろう。サイバー攻撃のターゲットが増え続けている以上、われわれは抑止力と外交を組み合わせた戦略を模索することで、この危険な新世界のガードレールを強化していく必要がある。

裏切られた民主化
―― 南アに残存する人種差別と格差

2022年2月号

シソンケ・ムシマン 作家

アパルトヘイトからの民主化を果たしたアフリカ民族会議(ANC)は、白人から黒人への権力移行は過去との決別であるとアピールする一方で、この変革は「白人の財産や暮らしには影響を与えない」とかつての支配層を安心させるために、大きな努力をしてきた。多くの意味で、ANCは黒人への約束の多くを破る一方で、白人に対する約束は守ってきた。こうして、1日2ドルの貧困ライン以下の生活を余儀なくされている人の割合は、数十年にわたり高止まりし、格差は拡大している。南アフリカの人種統合は、アパルトヘイト末期よりもわずかに前に進んだが、経済的な格差は当時よりも拡大している。南アフリカの人々は今一度新たな取り決めを交わす必要がある。1990年代にまとめられた政治的了解ではなく、経済的な取り決めを交わし、南アフリカの豊かさが、貧困層にも広く共有されるようにする必要がある。



エルドアン時代の終わり?
―― 権威主義者をいかに退場させるか

2022年2月号

ソネル・カガプタイ  ワシントン近東政策研究所 シニアフェロー

2022年にはトルコのインフレ率は20%を超えると予想されており、もはや経済が好転する見込みはなくなりつつある。しかも、野党のリーダーたちは、エルドアンを倒すために2023年の選挙に向けて連帯することを約束している。これまで政治腐敗に手を染め、権力を乱用してきただけに、ひとたび権力ポストを追われれば、エルドアンは起訴される可能性が高く、それだけに大統領の座を維持するためにあらゆることを試みるだろう。公正な投票を妨害したり、投票結果を無視したりするかもしれない。トルコの民主主義の根幹を揺るがすことなく、スムーズな政権交代をいかに実現するか。これが、いまやこの国の切実な課題だろう。

社会の信頼をいかに再構築するか
―― サイバー攻撃が切り崩す信頼

2022年2月号

ジャクリーン・シュナイダー  スタンフォード大学フーバー研究所 フーバー・フェロー

ソーシャルメディアの偽アカウントを使った偽情報で何千人もの有権者の政治的立場を変化させられるのなら、サイバー攻撃を独裁者が躊躇する理由はない。よりパワフルなレジリエンスを構築できなければ、サイバー攻撃の連鎖とそれが生む不信感が、民主主義社会の基盤を脅かし続けることになる。しかも、デジタルへの依存が高まり、テクノロジー、人間、組織のつながりが希薄になればなるほど、「人と人との信頼を揺るがすサイバー空間の脅威」はより大きく、深刻になる。経済、重要インフラ、軍事力の基盤となるネットワークとデータ構造のレジリエンス強化を優先し、人と人との直接的なつながりと信頼を取り戻す必要がある。より強力なレジリエンスを構築できなければ、サイバー攻撃の連鎖とそれが生む不信感が、民主社会の基盤を脅かし続けることになる。


エネルギーの新地政学
―― エネルギー転換プロセスが引き起こす混乱

2022年1月号

ジェイソン・ボルドフ コロンビア大学クライメートスクール 学院長
メーガン・L・オサリバン ハーバード大学ケネディスクール 教授(国際関係)

クリーンエネルギーへの転換がスムーズなものになると考えるのは幻想に過ぎない。グローバル経済と地政学秩序を支えるエネルギーシステム全体を再構築するプロセスが世界的に大きな混乱を伴うものになるのは避けられないからだ。予想外の展開も起きる。例えば、産油国は、転換プロセスの初期段階ではかなりのブームを経験するはずで、クリーンエネルギーの新しい地政学が石油やガスの古い地政学と絡み合いをみせるようになる。クリーンエネルギーは国力の新たな源泉となるが、それ自体が新たなリスクと不確実性をもたらす。途上国と先進国だけでなく、ロシアと欧米の対立も先鋭化する。クリーンエネルギーへの移行が引き起こす地政学リスクを軽減する措置を講じないかぎり、世界は今後数年のうちに、グローバル政治を再編へ向かわせるような新たな経済・安全保障上の脅威を含む、衝撃的な一連のショック(非継続性)に直面するだろう。

政治的兵器とされた移民たち
―― 拡大する戦闘空間と多様化する兵器

2022年1月号

マーク・ガレオッティ ライター、研究者(ロシア安全保障)

「欧州連合(EU)に簡単に入国できる」という嘘の約束にだまされて、移民たちは、ベラルーシやその周辺国ではなく、主にイラクやクルディスタンからやってきた。観光ビザでベラルーシに集まった彼らは、バスでポーランドとの国境沿いに送り込まれた。要するに、ベラルーシのルカシェンコ大統領はEU側から譲歩を引き出そうと、人道危機、移民危機を人為的に演出した。歴史的には、移民が政治的兵器として用いられるのは今回が初めてではない。だが、ルカシェンコ政権のシニカルな策略から学ぶべき教訓は、紛争が伝統的戦場からあらゆる生活空間に拡大するにつれて、戦略的な偽情報の拡散同様に、移民も新たな兵器とみなされる時代になったということだ。ルカシェンコは多くの点で古いタイプの独裁者だが、彼が行使した「移民戦争」は未来の闘いのあり方の一つを示している。


フォロー・ザ・マネー
―― 気候変動対策と国際貿易・金融ルール

2022年1月号

ジェシカ・F・グリーン  トロント大学准教授 (政治学、グローバル・アフェアーズ)

気候変動対策をめぐる現在の国際アプローチは危機の深刻さに見合うものではない。正面からの対策をとるには、パリ協定のような段階主義ではなく、国際貿易・金融のルールそのものを書き換える必要がある。環境悪化を引き起こすことも多い多国籍企業に不当な投資保護を与えている古いISDS規制を撤廃することも必要だ。各国が脱炭素化の目的から(環境を重視しない国に対する)国境炭素税を導入できるように、貿易規制を緩和する必要もある。世界貿易機関(WTO)やG20などの金融フォーラムに気候変動アジェンダを持ち込めば、政策立案者が利用できる手段は増え、気候変動対策を妨害する石油企業、鉱山会社、重工業産業など、気候変動対策によってダメージを受ける大規模な排出主体の活動を抑制できるようになる。


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