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論文データベース(最新論文順)

体制変革の鍵を握るベネズエラ軍
―― ベネズエラ政府と軍隊

2019年7月号

ローラ・ガンボア・グテーレス ユタ州立大学 アシスタントプロフェッサー

グアイド暫定大統領による4月の蜂起の呼びかけは失敗に終わった。政府がグアイドに逮捕状を出すという噂を前に、彼が軍の一部指導者が合意していたタイミングよりも1日早く行動を起こし、軍内部の同盟勢力を動揺させてしまったとする見方もある。結局、マドゥロを退陣に追い込むには、体制を支持することで軍が恩恵を得るという構図を切り崩し、新体制になっても、軍のメンバーが起訴されたり、処罰の対象にされたりしないことを保証しなければならない。問題は、この重要なポイントをめぐって反政権派と軍の信頼関係が十分でないことだ。処罰の対象にされないという保証なしで、軍が独裁者を見捨てるとは考えにくい。ここで重要になるのが、体制移行後の身分を仲介し、保証する第3国の存在だ。・・・

人口動態と未来の地政学
―― 同盟国の衰退と新パートナーの模索

2019年7月号

ニコラス・エバースタット アメリカンエンタープライズ研究所 政治経済担当議長

大国への台頭を遂げたものの、深刻な人口動態問題を抱え込みつつある中国、人口動態上の優位をもちながらも、さまざまな問題に足をとられるアメリカ。そして、人口動態上の大きな衰退途上にある日本とヨーロッパ。ここからどのような地政学の未来が導き出されるだろうか。ヨーロッパと日本の出生率は人口置換水準を下回り、生産年齢人口はかなり前から減少し始めている。ヨーロッパと東アジアにおけるアメリカの同盟国は今後数十年で自国の防衛コストを負担する意思も能力も失っていくだろう。一方、その多くがアメリカの同盟国やパートナーになるポテンシャルとポジティブな人口トレンドをもつインドネシア、フィリピン、そしてインドが台頭しつつある。国際秩序の未来が、若く、成長する途上世界における民主国家の立場に左右されることを認識し、ワシントンはグローバル戦略を見直す必要がある。・・・

一帯一路が作り出した混乱
―― 誰も分からない「世紀のプロジェクト」の実像

2019年7月号

ユェン・ユェン・アン ミシガン大学准教授(政治学)

一帯一路(BRI)はうまく進展せず、現地での反発に遭遇している。一部の専門家が言うように、この構想は莫大なローンを相手国に抱え込ませ、中国の言いなりにならざるを得ない状況に陥れる「借金漬け外交」のツール、「略奪的融資」なのか。問題は、北京を含めて、BRIが何であるかを分かっているものが誰もいないことだ。中国政府が構想の定義を示したことは一度もなく、認可されたBRIの参加国リストを発表したこともない。このために民間の企業や投資家がこの曖昧な状況につけ込み、自らのプロジェクトを促進するためにBRIを自称し、これによって混乱が作り出され、反中感情が高まっている部分がある。中国内の機を見るに敏な日和見主義者たちが、この構想を自己顕示欲や立身出世のために利用し、それがグローバルな帰結を引き起こしている。・・・

トランプ外交は誰を追い込んだのか
―― イラン、中国、北朝鮮それともアメリカ

2019年7月号

フィリップ・ゴードン 米外交問題評議会 シニアフェロー(米外交政策担当)

威嚇、経済制裁、大言壮語で敵対勢力が譲歩するか、より優れた取引を手に入れられると期待するのがトランプの外交パターンだ。そうした戦術が何を引き起こすかを想定できず、逃げ場のない袋小路に自らを追い込むのもパターン化している。イランだけでなく、ベネズエラのケースでも「後退か軍事力行使」が残された選択肢となりつつあるし、中国と北朝鮮へのアプローチも同様に袋小路に追い込まれつつある。一方で、トランプが「戦争は望んでいない」とペンタゴンの高官に述べたとすれば、おそらく、彼はアメリカが不用意に紛争に巻き込まれていくリスクを予見し、それを回避したいと考えているのかもしれない。問題は、戦争を回避するのを助けてきた側近たちがもはやいないことだ。

CFR Events
米中貿易戦争は続く
―― その政治的、経済的意味合い

2019年7月

エドワード・オールデン 米外交問題評議会シニアフェロー(経済・貿易担当)
エリザベス・エコノミー 米外交問題評議会シニアフェロー(中国担当)
マイルス・カーラー 米外交問題評議会シニアフェロー(グローバル統治担当)

最近の大統領のツイートは、米企業が中国を離れて、別の場所、つまり、他のアジア諸国、あるいは国内に工場を移して、アメリカに部品その他を供給させる計画を米政権がもっていることを思わせる。ファーウェイに対する攻撃も、多くの意味で米中経済の切り離しを意図している。少なくとも現状では、大統領は米中切り離し派の立場に耳を傾けている。(E・オールデン)

すべては目的が何であるか、双方が勝利をどのように定義しているか、時間枠をどうみているかに左右される。アメリカ側にも中国側にも何をもって勝利とみなすかについてのコンセンサスはない。実際、より多くの米製品の輸入、より大きな市場アクセス、IT技術の保護で由とする立場から、米中経済の切り離しを求める立場にいたるまで、アメリカ側にはさまざまな意見がある。(E・エコノミー)

人工知能の恩恵とリスク
―― 誰も勝者になれない世界を回避するには

2019年6月号

ポール・シャーリ 新アメリカ安全保障センター シニアフェロー(技術と国家安全保障プログラム)

19世紀の産業革命は世界に大きな経済成長だけでなく、戦車、機関銃、毒ガス兵器をもたらした。人工知能(AI)はこれらに匹敵する変化を誘発することになる。AIは医療から交通に至るまでのあらゆる分野で大きな恩恵とともに大きなリスクも生み出す。最大のリスクは、AI軍事システムを最初に開発した国が、ライバル国に対して圧倒的な優位を手に入れられるために、いい加減なテストだけで、システムを一刻も早く導入せざるを得ないと考えるかもしれないことだ。こうして非常に深刻な問題が作りだされる。AIシステムの導入を競い合うのではなく、その安全性の検証と研究に多国間で投資すべきだ。そうしない限り、「誰も勝者になれない世界」が創り出されることになる。

AIと未来の戦争
―― アメリカが軍事的に衰退する理由

2019年6月号

クリスチャン・ブローズ  カーネギー国際平和財団  シニアフェロー(国防戦略)

人工知能を組み込んだ自律的軍隊を構築するのが望ましいだけでなく、それが技術的に可能になっている。米軍は、低コストの自律型航空機から無人潜水艦までの、将来の戦力整備を目的とする数多くの開発プログラムをもっている。目的はさまざまなプラットフォームを導入することではなく、よりスピーディに「キルチェーン」を実現することにある。現状で、時代遅れの一つのプログラムに投資されている金額で、数十の自律的システムを導入できるし、これによって、より高度な能力を手に入れられる。目的は、もちろん、戦争を挑発するためではなく、それを抑止することにある。アメリカは、このタイプの軍隊を組み立てる資金、人的資源、テクノロジーを兼ね備えている。問題は、新軍事技術革命を生かしたシステム移行に想像力と決意をもたらせるかどうかだ。

トランプの撤退宣言とシリアの現実
―― 介入目的を下方修正するしかない

2019年6月号

ブレット・マクガーク 前米大統領特使(対イスラム国有志連合担当)

2018年12月、トルコのエルドアン大統領との電話会談後、トランプ米大統領はシリアからの米軍撤退を命じるという驚くべき決定を下し、アメリカのシリア戦略を根底から覆した。現在の課題は、次に何が起きるか、そして今後数カ月間で現地の米軍プレゼンスが削減されていくとしても、シリアにおける利益を守るために何ができるかを特定することだ。バッシャール・アサドが退陣することも、イランがシリアからいなくなることもあり得ないし、トルコは厄介なプレイヤーのままだろう。一方で現在のシリアにおける主要なパワーブローカーがロシアであることをワシントンは認識しなければならない。幸い、米ロの利益には重なり合う部分がある。ともにシリアの領土保全を望み、イスラム国勢力やアルカイダの聖域を誕生させてはならないと考え、イスラエルとの緊密な関係をもっている。・・・

独裁者と欧米コンサルタント企業
―― その功罪をどう判断するか

2019年6月号

カルバート・W・ジョーンズ  メリーランド大学 カレッジパーク校行政学部助教

中国からサウジアラビアまで、権威主義体制の指導者たちは、欧米諸国のトップクラスのコンサルティング企業、大学、シンクタンクの専門家への依存を高めている。2018年、ニューヨーク・タイムズ紙が、マッキンゼーが抑圧的で政治腐敗にまみれた体制との顧問業務を交わしていることを批判的に報道したことで、これが社会問題化した。欧米の専門家が中国やサウジのような国の独裁者にアドバイスを与えるのは問題があると考える人もいるし、そのアドバイスが、権威主義体制による反体制派の抑圧や人権侵害を助長する場合はなおさらだろう。但し、コンサルタントたちは、一部の批判派が考えているほどは権威主義体制を支えてはいない。実際には、国際的な専門家の存在が独裁者の国内における支持を低下させ、体制を弱体化させて、正統性を低下させている可能性もある。・・・

中ロパートナーシップの高まる脅威
―― 手遅れになる前に行動を起こせ

2019年6月号

アンドレア・ケンドール=テイラー  新アメリカ安全保障センター  シニアフェロー
デビッド・シュルマン  国際共和研究所 シニアフェロー

中ロのパートナーシップは不自然だし、その見込みはあまりないと考えるアメリカの専門家は多い。しかし、この立場はすでに現実によって淘汰されている。両国は政府のあらゆるレベルでの交流を深め、投資、交通機関、スペースナビゲーション、軍事転用可能なテクノロジー開発などの領域で緊密に連携している。ワシントンに対抗し、グローバル統治を変化させ、リベラルな秩序を支える価値を問題にしていくことでも両国は立場を共有している。問題は、中ロパートナーシップをどうみるかをめぐって、欧米の専門家のコンセンサスがないために、ワシントンの政策決定者が、中ロ関係の有害な作用を阻止できなくなるまで、中ロ関係の本質について議論し続けるリスクを冒していることだ。

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