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論文データベース(最新論文順)

対イラク「封じ込めプラス」戦略で戦争回避を

2002年9月号

モートン・H・ハルペリン/外交問題評議会シニア・フェロー

軍事行動をとるとすれば、イラクの軍隊を圧倒するのに十分な軍事力を投入しなければならない。米軍部隊や攻撃に参加する同盟国の軍隊だけでなく、イラクの市民、イスラエルを含む近隣諸国の市民にかなりの死傷者が出ることを覚悟しなければならない。(戦闘が終わっても)イラクを占領し、安全保障、経済問題に対処するには、かなりの期間、しかも相当のコストを支払って現地に留まる必要が出てくる。必要なのは戦争ではなく、辛抱強い「封じ込めプラス」戦略を実施して、サダム・フセインの行動を抑止し、近隣諸国、国連とともに、イラク市民に人道支援が間違いなく届くように配慮することだ。加えて、イラクでの人道的悲劇が、制裁措置によってではなく、イラク政府の政策によって引き起こされていることを世界の人々に理解してもらうために大がかりな広報外交を展開する必要もある。以下は、二〇〇一年七月三十一日、米上院外交委員会でのモートン・H・ハルペリンの証言の抜粋。英文はwww.cfr.orgからアクセスできる。

統治危機が招く中国の憂鬱な未来
――世界の対中認識は間違っている

2002年9月号

ミンシン・ペイ
カーネギー国際平和財団シニア・アソシエイト

中国における腐敗の蔓延、地方官僚の士気の低下、エリート層のシニシズム、大衆に広がる幻滅などの社会現象は、統治能力の低下を示す典型的症状だ。いまや中国は、多くの点で、ブレジネフ時代のソビエトの政治的停滞と、スハルト時代のインドネシアでの情実資本主義と全く同じ病巣を抱え込んでいる。統治能力の悪化は、外国企業にとっての対中貿易・投資のコストやリスクを増大させ、現在の経済発展は程なく色あせたものとなり、その後には、長期的な停滞が待ち受けている。世界は、長い間受け入れてきたバラ色の中国の未来像、それも、おそらくは希望的観測が形づくった中国像を再検討する時期に来ている。

生物学的脅威に備えよ

2002年8月号

クリストファー・F・チャイバ クリントン政権国家安全保障会議スタッフ

公衆衛生体制の改善こそ、バイオテロ対策の基本である。病原体によっては潜伏期間が数週間にも及ぶので、バイオテロに真っ先に対応するのは消防、警察、軍隊ではなく、医療関係者となる可能性が高く、感染症を早期に発見し、対応できる公衆衛生監視体制の強化が急務となる。また、バイオテロであれ、自然発生型の感染症であれ、病原体は国境を超えて自由に移動する。当然、世界的な感染症発生の監視・対応メカニズムの改善、世界中で備蓄されている病原体の管理など、国際的監視枠組みの強化も不可欠である。

グローバル化というわれわれが共有する未来

2002年8月号

◎スピーカー アメリカ合衆国第四十二代大統領 ウィリアム・G・クリントン 米外交問題評議会会長  ◎司会 ピーター・ピーターソン

「市場経済のメカニズムが問題を引き起こしている」という反グローバル派の言い分は間違っている。真実は「市場経済のメカニズムだけでは世界の問題を解決できない」ということだ。グローバルな社会・教育・環境・経済政策なくして、グローバル経済は成立しない。われわれが真の相互依存世界を実現したいのなら、より統合されたグローバル・コミュニティーを形成しなければならない。

グローバル化の衝突

2002年8月号

スタンレー・ホフマン ハーバード大学教授

われわれが暮らしているのは、脆弱な統治制度と未発達の市民社会という欠陥を持つグローバル社会と、国家間の格差が大きく、破綻国家を内包する国際社会が重なりあう世界だ。統治制度も成熟した市民社会も持たないグローバル化は、平和ではなく、紛争と反発の種をまき散らし、生活の基盤を奪われた人々は、報復とテロ攻撃のなかに自尊心を見いだしている。テロリズムが、国家間関係とグローバル社会を結びつける血なまぐさい絆の役目を果たしているこの世界を、どうすればより住みやすくできるのだろうか。

アメリカの覇権という現実を直視せよ
――単極構造時代の機会と危機

2002年8月号

ステファン・G・ブルックス ダートマス・カレッジ助教授 ウイリアム・C・ウォールフォース ダートマス・カレッジ准教授

アメリカは、国力を構成するすべての領域で支配的な優位を確立しており、われわれは、アメリカの覇権による単極構造の世界にある。今後数十年にわたって覇権抗争を展開できる国が出現する可能性はほとんどないし、アメリカへの対抗バランスを形成するというレトリックも全く実体に欠ける。単極構造下の覇権国は、世界、そして自国にとっての長期的な視野に立った利益を模索するゆとりを手にしている。このゆとりを利用し、世界の問題が深刻化してから状況に対応するのではなく、そうした問題が出現しないように先手を打つことこそ、世界、アメリカ双方にとっての利益となろう。

グローバル化は世界を不幸にしたか
――スティグリッツ氏、ワシントンに行く

2002年8月号

カリフォルニア大学バークレー校政治経済学教授 バリー・エイケングリーン

スティグリッツの本は、途上国の現実を無視した単純な経済教義は状況を改善するどころか悪化させる危険があり、経済理論と現実に即して慎重に運用することが、健全な政策助言を行う上で非常に重要であることを示している。しかし、途上国に発言権やグローバルな統治への参加権を与えよといった、過度に単純な彼の政治的助言は問題がある。政治改革は、経済改革と同じように微妙で複雑なものである。

変貌する米中通商関係

2002年8月号

ジョセフ・P・クインラン モルガン・スタンレー上級グローバルエコノミスト

米企業は対中輸出を増やすよりも、中国市場に投資して進出し、新たに設立した在中米系関連企業による現地市場での販売を強化するほうが好ましいと考えている。
実際、こうした米系企業による現地での販売、対米逆輸出はともに急増している。いまや米企業の対中投資の目的は、中国市場へのアクセスよりも、国際競争に勝ち抜くための低コストの製造・輸出基地として中国を利用することへとシフトしている。
したがって、ワシントンが対中経済政策を考える変数として重視すべきは、対中貿易赤字ではなく、直接投資による通商関係の質的変化だ。米企業がすでに中国を「戦略的パートナー」とみなしているのに、ワシントンが依然として中国を「戦略的ライバル」ととらえているのは間違った政策を呼び込む処方箋のようなものだ。

東南アジア
――対テロ軍事支援の限界と弊害

2002年7月号

ジョン・ガーシュマン 両半球間資源センター上級アナリスト

アメリカが対テロ戦争の一環として東南アジアを「軍事的に支援」するのは間違っている。人権侵害を起こすことで悪名高い東南アジア諸国の軍隊は、多くの場合、政治エリートの一部やテロ組織を含む犯罪組織と手を結んで、むしろテロを助長する社会環境を育んでいるからだ。軍隊を支援しても、民主体制をさらに弱め、イスラム過激派の魅力を高めてしまうだけだ。ワシントンは軍事援助や各国の法執行当局との連帯だけでなく、東南アジアが直面する社会問題への「文民統制型」の対応策を支援する必要がある。

同時多発テロ後のインドの内政と外交

2002年7月号

デニス・クックス ウッドロー・ウィルソンセンター上級政策研究員

同時多発テロ以降、米印は、政治・安全保障・経済に関する共通の利益をますます重視するようになり、いまや両国の関係は大きく前進し、緊密化している。だが、バジパイ政権は、対米外交では成果を上げつつも、カシミール紛争をめぐってパキスタンと深刻な軍事的対立局面にあるし、国内でも、政治危機、宗教対立、低迷する経済などの難題に直面している。対米関係の改善という成果を、パキスタンとの軍事的危機の解決、国内経済問題の解決に、どうすれば結びつけられるのか。

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