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論文データベース(最新論文順)

高齢社会が変える日本経済と外交

1997年6月号

ミルトン・エズラッティ ロードアベットパートナー(論文発表当時)

日本の人口高齢化は、現役労働力の生産能力の低下と増大する年金生活者の消費需要の不均衡を軸に広範な国内緊張を引き起こし、これが日本の対外政策にも余波を及ぼすだろう。現実には「輸出から輸入へ」と貿易パターンが変化し、高い貯蓄率は低下し、貿易黒字は赤字へと向かい、日本企業の外国への進出と一方での国内市場の自由化をいっそう促すことになる。そして、日本企業の外国への生産拠点の移転によって、国の需要を満たす「大切な富」の多くが、外国へと流出すれば、「より積極的で明確な外交政策の実施」が不可欠となる。日本とアジア諸国とのつながりがより複雑になり特別化していけば、アメリカの安全保障利益とは必ずしも重なり合わない日本独自の利益認識が高まり、いずれ、日本は「外交と、そして必要なら、軍事領域でも、独自路線をとるようになるかもしれない」

開放路線下ですすむ労働者虐待

1997年5月号

アニタ・チャン 「チャイナ・ジャーナル」誌編集長、 ロバート・センサー  前米国務省在外公館付き労働問題担当顧問

中国の労働者の多くは、急速な経済成長の恩恵を受けることもなく、酷使・虐待されたあげくに、搾取されており、その不満は高まる一方だ。共産主義イデオロギーが崩れはじめたいま、国や共産党への忠誠心が労働者の不満を緩和させることもありえない。にもかかわらず、中国の指導層は「労働者たちのことを経済発展のための踏み台」と見なしつづけ、「国の発展のための青写真を考える際に労働者の立場など全く考慮されない」のが現実だ。労働者であるとともに、一方では市場における最大の集団でもある彼らに「自分たちの利益をアピールする自由さえ認められない」とすれば、この矛盾によって政府や企業と労働者の摩擦は間違いなく激化し、現状がつづくかぎり、大いなる社会不安が起きるだろう。ここでのシナリオは三つ、「弾圧」「段階的変化」あるいは「革命」である。

日本再生の鍵を握る「コーポレート・ジャパン」

1997年4月号

マイケル・ハーシュ 『ニューズウィーク』誌国際版 ビジネスエディター(論文発表当時)
E・キース・ヘンリー MITシニア・リサーチ・アソシエート (論文発表当時)

外国への投資が増大する一方で、国内投資が低迷するという日本における現象の一部は、グローバルマーケットの強い求心力、そして、円高と成熟した日本経済への企業の対応として純粋に経済理論で説明できる。だが、この現象は一方で、企業側の日本政府に対する鋭い批判でもある。日本企業が外国への投資を増やし、進出しているのは、もはや神通力を失った硬直的な日本の経済システムから脱出するためにほかならない。グローバル市場の力学を見極め、自ら「日本株式会社」の遺産を放棄したこれら日本の「マルチナショナル企業」は、世界市場で見事な成功を収めている。この事実は、「日本がついに国際的な没価値状況を脱し、世界の一部となりつつあること」、そして、日本のマルチナショナル企業がその先鞭をつけていることを意味する。「日本株式会社」ではなく、グローバル市場の力学に応じて企業形態やトランスナショナルな提携関係を再編し、構築する能力をもつ、こうした企業が、日本経済の今後の牽引役を果たしていくことになるだろう。

欧州通貨統合という悪しき幻想

1997年1月号

ルディ・ドーンブッシュ
マサチューセッツ工科大学経済学教授

ヨーロッパ通貨統合が伴う最大のコストとは、為替変動がなくなると同時に、その調整機能も消滅してしまうことだ。為替レートの変動を通じた競争力や価格面での調節機能を放棄すれば、結局は、その帳尻合わせを労働市場に押しつけることになる。そうでなくても福祉国家のいきづまりときわめて深刻な失業問題を抱えるヨーロッパの労働市場にツケが回れば、結局は高金利と高い失業率を招き、問題は経済にとどまらず政治領域に拡大していく。「アメリカは通貨統合を懸念している。その理由は、通貨統合がリセッションを伴う危険を秘め政治的問題を招くために、過去の例と同じく世界の他の地域に高いコストを強いると考えられるからだ」。欧州通貨統合は悪質で危険な幻想である。

バーチャル国家の台頭

1996年10月号

リチャード・ローズクランス カリフォルニア大学政治学教授

いまでは「土地、資源、原材料という生産要素よりも、良質な労働力、資本、情報」をもっぱら重視する、「頭だけをもち体をもたない」ダウンサイズされたバーチャル企業とバーチャル国家が誕生しつつある。 領土獲得を目的とする侵略戦争はその意味も必然性も失いつつある。バーチャル企業は他の企業の生産施設を必要とし、バーチャル国家は他国の生産能力を必要とする。その結果、国家間の経済関係は、「特定地域にある頭と、別の地域にある体を結びつける神経のようなもの」になっている。こうした流れは国内政治と国際関係にどのような影響を与えるのだろうか?

世界的失業増大に政策協調を

1996年7月号

イーサン・カプスタイン 外交問題評議会研究部部長

金融市場の安定を目的とする緊縮財政政策は「あまりに多くの人々をあまりに長期間にわたって困難な状況に追い込んでしまい」、失業や所得格差の増大という現象を背景に、労働者階級の「失われた世代」を誕生させ、犯罪率の上昇、麻薬の乱用、移民に対する暴力、極左極右の政治集団への支持の高まりという問題を招いている。こうした状況下、政府が雇用と社会福祉を労働者に提供するという第二次世界大戦後の「社会契約」が崩れさるとすれば、形成途上にあるグローバル経済への政治的支持も簡単に失われるだろう。したがって、今後の経済政策を、開放経済における「敗者」に焦点を絞ったものにしたうえで、成長と平等を重視する姿勢へと政策基盤を慎重に切り替える必要がある。そして成長重視の経済政策が通貨市場や債権投資家によるしっぺ返しをくわないようにするには、国際的な政策協調が不可欠となる。この世界史の重要な局面で、世界の指導者たちが協調的リーダーシップを発揮せずに無関心を決め込めば、保護主義や排外主義という選択肢を現状の「解決策」とみる騒々しいデマゴークたちが幅をきかすようになるだろう。

The Clash of Ideas
「冷戦の終焉」と旧秩序の再発見

1996年7月号

ジョン・アイケンベリー
ペンシルバニア大学・准教授

冷戦の終結は、封じ込め秩序の終わりではあっても、戦後秩序全般の終焉ではなかった。封じ込めの秩序の影に隠れあまり重視されるいこともなかった、大西洋憲章にその起源をもつ開放的な戦後経済体制はいまも健在で、これを中核とする戦後の「民主的でリベラルな秩序」は、共産主義の崩壊によって、むしろ強化されつつある。事実、民主的でリベラルな秩序と、冷戦期の西側秩序が異なっているとすれば、現在の秩序がよりグローバルなものになっていることだ。必要なのは、冷戦後の新秩序を夢見てその構築を試みることではなく、一九四〇年代以来の民主的でリベラルな秩序を維持・強化すべく、その歴史的ルーツとこれまでの成果をたどり、これを、現状に符合するように再調整することではないか。

ソマリアの悲劇と「人道的介入」

1996年6月号

ウォルター・クラーク 前在ソマリア米国大使館・人道介入担当補佐官 ジェフリー・ハーブスト プリンストン大学准教授

ソマリアへの介入が失敗に終わったのは、ブッシュ政権が設定した人道支援という限定的目的が、のちに国連によって国家拡大の領域にまで広げられたためだと一般的に考えられている。しかし、これは真実ではない。たとえ人道的介入であっても、「破綻した国家」へ介入する場合には、介入したその瞬間から、われわれはその国家の再建(国家建設)にかかわざるをえないくなる。ソマリアの場合も例外ではなかった。実際、「軍事ならびに民生的目標のあいだには切っても切れぬ相互補完性が存在する」。国際社会は、市民社会が暴力に広く苛まれている国家に対して、その国内政治に影響を与えることも、国家建設的に関与することもなく、人道的に介入できるという幻想をまず捨て去るべきだろう。

危うしアジアのエネルギー資源

1996年5月号

ケント・E・カルダー プリンストン大学政治学教授

アジアのエネルギー問題は、この地域での領有権論争、核拡散問題、軍拡路線に深く関連しており、これを純粋な経済問題とみなすのは間違いだ。なかでも中国のエネルギー需要の増大は、環境悪化だけでなく、海底資源をめぐる近隣諸国との対立、外洋型海軍力の増強路線、イランやイラクという中東とのコネクションの深まりなど、環境・政治・外交面での憂鬱な結末を招きかねない。エネルギー問題を、アジア・太平洋地域の不信と不確実性を先鋭化させる引き金とするのではなく、この問題への積極的な関与策、支援を通じて、日本、米国、そして大いなる暴発の危険性を秘めた大陸アジアとの協調の礎とすることが急務である。

感染症という名の新たな脅威

1996年3月号 

ローリー・ギャレット 『ニューズデイ』紙医学・科学担当記者

さまざまな抗生物質・薬品に対する耐性を備えた遺伝子をもつプラスミドの登場とともに、感染症という侮れない脅威が再び猛威をふるいだしている。人間が細菌・ウイルスに対抗していくために必要とする抗感染症薬という兵器庫は、新たな環境につねに変化・適応する細菌という脅威の前には、非現実的なまでに貧弱だ。さらに悪いことに、都市化、地球規模での人口移動の波は、人間の行動パターンだけでなく、細菌と人間のエコロジカルな関係も劇的に変化をさせている。性交渉によって感染が拡大し、しかも都市部のブラック・マーケットで抗菌薬・抗生物質が入手できるために、貴重な薬品が乱用・誤用され、その結果、新たな耐性菌や寄生虫が誕生している。耐性菌やウイルスの脅威に加え、生物兵器戦争を目的とした毒性の強い細菌をつくりための遺伝子研究さえ行われているのが現実だ。われわれは、感染症を「安全保障上の明確な脅威」ととらえ、これに対抗すべく、医学、法律、社会、経済的観点からの包括的な方策を模索していかなければならない。

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