1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

論文データベース(最新論文順)

ハーグのミロシェビッチ
――国際的正義の裁きで何が実現できるか

2003年9月号

ゲリー・J・バス プリンストン大学政治学助教授

第二次世界大戦後のニュルンベルク裁判の成功でさえ、多くの時間を必要とし、その判断が定着するには一世代という時間を要した。恐怖から口を閉ざし、裁判を受け入れずに過去を悔いていない者もいたが、子供たちの世代は、ニュルンベルクを正面から受け止めた。
今日のセルビアでも同様のことが起きるかもしれない。すでにミロシェビッチ後のユーゴには、民族主義的な国家像だけでなく、若者たち、女性を担い手とした競合する未来ビジョンが数多く存在している。

米外交問題評議会ブリーフィング
戦後イラクをめぐる国連とアメリカ

2003年9月号

リー・フェインシュタイン 米外交問題評議会シニア・フェロー

「安保理で新決議が採択されても、各国によるイラクへの部隊派遣や資金提供はそう進展しないだろう」。リー・フェインシュタイン(米外交問題評議会シニア・フェロー)は、「イラクでの任務の国際化をつうじて重荷を削減するために、どの程度の権限を手放すべきかをめぐって、ブッシュ政権内に対立がみられる」ことを指摘し、現時点では「ブッシュ政権がイラクの再建・安定化任務の国際化を本当に望んでいるとは思えない。任務の国際化が進むはずはない」と語った。「国連を戦後イラクに関与させることの利益はリスクを補って余りある」とみる同氏は、最大の問題は、「米欧の連帯なくして、国連がうまく機能することなどあり得ないことを、ブッシュ大統領もシラク大統領も認識していないことにある」とコメントした。
以下は、二〇〇三年九月二十三日に米新聞各社の論説委員を集めて行われたブリーフィングからの抜粋。

米外交問題評議会インタビュー
イラン危機へのアメリカの対応を憂慮する

2003年9月号

デビッド・オルブライト 元国連査察官

イラン危機をめぐる最大の問題は、「アメリカがイランと対決路線をとる以外の選択肢を用意していないように思えることだ」とデビッド・オルブライト元国連査察官は指摘する。現在「科学と国際安全保障研究所」の会長を務める同氏は、「最悪の場合、イランは二〇〇五年までに核兵器を手にする可能性があるというのに、ワシントンは、懲罰をほのめかす恫喝策、そして懲罰策をとることを主張するばかりで、前向きな変化をもたらす誘因を与えるための優れた政策を持っていない」と批判し、「イランへの政策も、イラクや北朝鮮への政策にみられたブッシュ政権の内部対立が影を落とすことになるかもしれない」と語った。
邦訳文は二〇〇三年九月十二日に行われたインタビューからの抜粋。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)

レビューエッセイ
民族紛争という神話

2003年9月号

チャールズ・キング ジョージタウン大学助教授

紛争をめぐる神話は比較的短期間で形成されることが多く、実際には、紛争が起きた後に文化的神話が人為的に持ち出されることがほとんどだ。
紛争を起こすことに対する自制は、一般にかなり大きく作用している。隣人に対して気が狂ったように立腹しても、武器を取るという事態にまではいたらないことのほうが多い。現実の紛争にいたるのは、通常、絶対に失えないもの(例えば、自分たちの故郷)を防衛しようとする場合で、何か欠けているもの(例えば、先祖が昔もっていた領土)を取り戻そうとして、そのような行為に及ぶことは少ない。

以下は、これまでに発表された北朝鮮関連のフォーリン・アフェアーズ論文、米外交問題評議会リポート、ガーズマン・インタビューシリーズなどを資料にフォーリン・アフェアーズ・ジャパンで作成したQ&A集。資料として用いた論文、リポート、インタビューの一部は、www.cfr.org、www.foreignaffairs.orgあるいはwww.foreignaffairsj.co.jpからアクセスできる。参考文献については文末を参照。

在外米戦力・基地見直しの利点と弊害
――同盟国との入念な協議を心がけよ

2003年9月号

カート・M・キャンベル 戦略国際問題研究所(CSIS)上席副会長
セレステ・ジョンソン・ワード CSIS国際安全保障プログラム・フェロー

現在ワシントンで検討されている戦力再編プロセスは、この半世紀におけるもっとも大がかりなアメリカの対外軍事姿勢、在外米軍基地分布の変化として具体化するだろう。
しかし、その意図を対外的に根気強く説明しない限り、諸外国におけるアメリカに対する不信と心配を高めてしまう。柔軟な軍事的対応能力の整備をめざす今回の戦力再編も、実際には、ワシントンの先制攻撃ドクトリンと軍事介入路線を基盤とする戦略を支えるためのもの、とみなされかねない。

世界を分裂させたブッシュのアメリカ

2003年9月号

マドレーン・K・オルブライト 元国務長官

ブッシュ大統領が示した「われわれとともにあるか、テロリストの側にあるか」という二者択一の選択肢は、世界を引き裂いて新たな合従連衡の流れをつくり出し、その結果、イスラム勢力が戦略的優位を確保し、本当の悪であるテロを見えなくし、それを「アメリカの悪魔」に置き換えることを許してしまった。
しかも、質的に異なるテロとならず者国家の脅威をひとまとめにして、イラクとの戦争を正統化しようとした。こうして世界との協調がアメリカの安全をこれまで以上に左右するようになったまさにそのときに、ワシントンは世界を怖がらせ、分裂させてしまったのだ。

地域的自由貿易構想という危険な妄想
―― アジアとアメリカを隔てる分断線の形成を回避せよ

2003年9月号

バーナード・ゴードン ニューハンプシャー大学名誉教授

この論文は、まだドーハラウンドラウンド決着への期待が存在した2003年に発表されている。当時は、アメリカが南北アメリカ大陸での自由貿易圏を模索し、アジアでは、アメリカ抜きのアジア自由貿易圏構想が議論されていた(FAJ編集部)
アメリカとアジアがそれぞれに推進する一連の自由貿易構想は、結局は地域的貿易ブロックを乱立させ、太平洋を隔てる分断線を生み出すことになる。一九三〇年代の世界の貿易ブロック化が、大きな悲劇を呼び込んだことを忘れてはならない。

「一連の地域的自由貿易合意によってグローバルな自由貿易体制の基盤が積み上げられていく」とする認識の根拠は疑わしい。逆に、特定地域での貿易ブロックの形成が、他の地域での貿易ブロックの形成を誘発することはすでに明らかだ。貿易ブロックが形成されれば、必然的に政治的なライバル関係が貿易ブロック内、ブロック間で生じ、それをどのような名称で呼ぶにせよ、保護主義が貿易ブロックを支配するようになる。

米外交問題評議会(CFR)は、イラク、北朝鮮、中東問題等を理解するための基礎知識、最新情報をQ&Aスタイルでウェブ(www.cfr.org)上でアップデートしている。Q&Aの一部の邦訳はフォーリン・アフェアーズ、ジャパンウェブサイト(www.foreignaffairsj.co.jp)からアクセスできる。以下は、CFRのウエブ・リソースからの抜粋。

レイチェル・ブロンソン米外交問題評議会シニア・フェローは、八月十九日に起きたイラク国連現地本部爆破事件について、「極度の混乱が状況を支配するようになれば、アメリカ人を殺したいと願う人物たちが世界中からイラクへ押し寄せてくることになる」と指摘した。
「外国から流れ込んでくるイスラムの戦士が、戦後イラクで大きな問題を作り出している。だからこそ、イラクの法と秩序を一刻も早く確立しなければならない」と警告するブロンソンは、イラクだけでなく、「アラブ世界にとって重要な意味を持つアフガニスタン情勢がさらに悪化する危険もある。破壊活動の実行犯たちが狙っているのは、まさにこのポイントだろう」と状況を分析した。
以下は、二〇〇三年八月十九日に、米新聞各社の論説委員を集めて行われたブリーフィングからの抜粋。 全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

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