経済成長を遂げるインドには二つの顔がある。経済は活況を呈し、活気に満ちた中産階級の規模も拡大している。しかし一方で、物乞い姿、栄養失調でやせ衰えた子供たちの顔を街角では依然として目にする。いまも人口の4分の1近くが1日1ドル以下の生活を余儀なくされている。市民の大半は「改革はおもに富裕層に恩恵をもたらしている」と感じており、しかも、投票を通じて政治的に大きな力を持っているのは、改革に反発しているこうした低所得者層だ。長期的には市場経済はすべての者に恩恵をもたらすとされているが、そうした長期的な展望を、選挙を控えた民主国家の政治家が政策の機軸とすることはあり得ない。改革の行く手を遮るこの民主的な制約を克服する道はあるのか。
