経済成長と技術革新だけで、人は幸せになれるのか。リバタリアン(自由意思論)の立場をとる人々はこれにイエスと答える。市場経済のなかで、国が豊かになって技術革新が進めば、市民は健康になってよりすぐれた教育を受け、よい食事をして長生きし、環境に関心を払うようになる、と。だが、これはいかにも、規制をつくる政府を市場の敵とみなすアメリカ人特有の見方ではないか。実際、規制による適切な動機づけがあれば、経済成長と技術革新は環境にプラスに作用するが、市場のロジックだけではそうしたインセンティブは生じない。アメリカにおける環境への配慮も、力強い経済に必須の産物ではなく、激しい政治論争で環境保護派がかろうじて勝利を収め、規制が導入された結果である。富をつくりだすメカニズムとしての市場経済の作用に疑いはないが、規制緩和を進めて自由化路線をとれば、状況を先へ進められるのかどうか、その因果関係は明快ではない。
