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米議会は米印核合意を阻止する

エドワード・J・マーキー

Edward J. Markey on Nuclear Deal with India

2007年9月号掲載論文

インドがアメリカに対して、友人であることの証に核不拡散政策を曲げるように求め、それをアメリカが受け入れればどうなるだろうか。パキスタンは中国に対して同じことをしてほしいと求めるかもしれない。仮に核供給国グループ(NSG)や国際原子力機関(IAEA)が、インドとアメリカの核合意を成立させるためにルールからの逸脱を例外措置として認め、その後、パキスタンの要請を受けた中国が同様の例外措置をパキスタンに適用するように求めればどうなるだろうか。アメリカが公然とダブルスタンダードを使い分けておいて、核不拡散の高い基準を維持できるはずがない。そんなやり方は通用しない。自分でたばこを吸い、酒を飲むのに、若者にそうしてはいけないと言って説得力があるだろうか。ブッシュ政権は現実に目を向けていない。米印核合意は、核拡散のドミノ倒し現象を引き起こしかねない。しかし、米議会は、まだ合意を阻む権限を持っている。(エドワード・マーキー)

  • 米印核合意を阻む方法はまだ残されている <部分公開>
  • 米政府の大きな間違い
  • 核合意は核拡散のドミノ倒し現象を起こす
  • 米印核合意はハイド法に抵触する

<米印核合意を阻む方法はまだ残されている>

エドワード・J・マーキー 1946年にマハトマ・ガンジーは「男性、女性、そして子供を殺戮するために原子爆弾を用いるのは、もっとも悪魔的な科学の利用法だ」と述べている。ガンジーの見方はもちろん正しかったし、われわれは、核が再び使用される日がやってこないように全力を尽くさなければならない。
多くの人は、私のことを、議会で米印核合意に反対している急先鋒とみなしているかもしれないが、そうではない。むしろ、私は、核不拡散レジームを守ることにもっとも熱心な人物であることを自任している。インドやインドとの核合意を批判しているというよりも、むしろ、私は、核不拡散レジームを守ろうと試みている。
インドへ核燃料を供給すること、国際原子力機関(IAEA)の保障措置の下あれば、使用済み核燃料の再処理を認めることを柱とする「123合意」の内容は、議会の要請を反映していないだけでなく、核拡散防止条約(NPT)を大きく損なうことになると私は考えている。この合意によって、インドには使用済み核燃料の再処理が認められるだけでなく、うまく再処理ができるようにアメリカが支援することになっている。この合意が問題なのは、アメリカとインドが必ずしも合意していない部分については、文書の表現が曖昧にしてあることだ。
仮にインドが核実験を行えば、アメリカは核燃料の提供を打ち切るべきだとわれわれは考えているが、インドはそうすべきではないという立場をとっている。われわれは保障措置(査察)を永続的に行うべきだと考えているが、インド側は、査察を受け入れるかどうかはインドの自発的意思に委ねられるべきだとしている。
アメリカがインドとの核合意を履行するかどうかをめぐって議会が絶対的な権限を持っていることを、専門家の一部は見落としているようだ。この点をはっきりさせておきたい。アメリカ憲法は、内外の貿易に関する合意を規制する権限を持っている。核エネルギー(原子力)法のもと、議会は大統領に核をめぐる協力合意を交渉する権限を委ね、これを基にブッシュ大統領はインドとの123合意をまとめたが、議会がこれを拒否することも、修正条項を盛り込むこともできるし、実際、議会はそう試みてきた。
2006年12月に米議会がインドとの核技術協力に道を開くハイド法を成立させた以上、インドとの核合意はすでに成立していると考えている人も多い。しかし、現実には、123合意にかなりの問題があると議会は考えている。これは、合意を条約として成立させたいと考えている政府にとって、まだ大きなハードルが残されていることを意味する。
米議会の役割を別にしても、インドはその存在を公表している民生用核施設についてIAEAとの査察合意をとりまとめなければならないし、核供給国グループ(NSG)に加盟する45カ国が、既存のルールを見直すことに全会一致で合意しなければならない。IAEAとの合意が成立し、NSGがルールの見直しに応じたとしても、今度は米議会の承認が必要になる。現在、アメリカ政府とインド政府は、NSG、そして米議会による無条件の承認を取り付けようと試みているが、米議会には、承認する以外にも、選択肢がある。今日はそうした選択肢について話をしたい。

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