アメリカ帝国という幻想
2004年6月号
帝国論争がまた盛んになってきた。アメリカがかつてない形で世界を支配している以上、当然のことかもしれない。地政学的にもイデオロギー的にも、冷戦後に唯一の超大国となったアメリカの向こうを張っていけるだけの相手はいない。ヨーロッパは内向きとなり、日本も停滞したままだ。半世紀前にアメリカの占領を経験した日独はそれぞれ世界で二番目、三番目の経済大国に成長したが、それでも、安全保障面ではまだアメリカに依存している。
世界で何が起きているのか。それを告げるのは米軍基地と空母の動きである。ロシアもいまやアメリカのほぼ公的な安全保障パートナーだし、中国もこれまでのところは、アメリカの支配的優位を現実として受け入れて自らの行動を決めている。世界の最強国が他の大国の制約を受けずに行動するようになったのは、近代に入ってから初めてのことだ。つまり、われわれはまさにアメリカ率いる単極構造(一極支配型の)世界にある。