1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

論文データベース(最新論文順)

CFRミーティング
新たな世界経済のシステミックリスクとしての各国の財政赤字

2010年3月号

セバスチャン・マラビー 外交問題評議会シニア・フェロー(国際経済担当)

危機を前に「世界各国の政府が金融機関の救済に乗り出したが、いまや、政府に打つ手はなくなり、その結果、政府そのものが弱い立場に追い込まれ、これが新たなシステムの不安定化要因と化している恐れがある」。ギリシャのケースからも明らかなように、市場が財政赤字に対して警告を発するようになったからだ。各国政府がグローバル経済を支えていくやり方はティッピング・ポイント(限界)に近づきつつある。また、ドルの先行きも不安定だ。ユーロ安ドル高に振れているとはいえ、投資家は、アメリカの財再赤字の増大、高い失業率、禁輸緩和政策ゆえに、ドルの安定も疑問視している。「誰もがドルに代わる代替策を探しつつも、ドルに依存せざるを得ない現状に対して割り切れない思いを抱いている。だが、何か具体的にみえてきたら、誰もがそれに飛びつくだろう。問題は、そのタイミングがいつになるかだ」・・・・(聞き手は、ロヤ・ウォルバーソン、CFR.orgのStaff Writer)

2010年1月13日にハイチのポルトーフランスを直撃した大地震による犠牲者は10~20万人に達し、その災害の復旧には少なくとも100億ドルの資金と、数十年単位の時間が必要になると言われている。クリントン政権で米平和部隊のディレクターを務めたラテンアメリカとカリブ海地域の専門家、マーク・L・シュナイダーは、今回の地震災害を「西半球地域における史上最大の国家災害」と描写し、グローバル規模の支援活動が必要になると強調する。「最初に必要なのは、建物と家で、もう一度すべてをやり直さなれればならない」。ハイチの復興にはおそらく数十年はかかり、その支援にはばく大なコストがかかるが、復興の目的は過去のハイチを再現することではない。それは、新しい教育システム、公共サービス機能を持つ「新しいハイチ」を建設することでなければならない。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティングエディター)

このままでは核拡散の大潮流が起きる
―― 危機感をもって核不拡散レジームの再確立を

2010年2月号

グレアム・アリソン ハーバード大学政治学教授

北朝鮮が核を開発し、イランが核開発の道を歩んでいるにも関わらず、多くの人は世界の核秩序は安定していると考えている。たしかに、核保有国の数は9カ国に留まっているし、今後、北朝鮮とイランが核保有国と見なされるような事態にならなければ、近い将来に核拡散の潮流が生じて、数多くの国が核武装すると危機感を抱く必要はないと考えることもできるだろう。だが現実には、核不拡散レジームの形骸化が進み、一気に核が拡散してしまう、取り返しのつかない臨界点へと近づきつつある。盗み出された核によってテロが起きる危険もある。核秩序を守るための措置はすでに表明されているが、国際社会がそうした措置を現実に実行していかなければ、世界は一気に核拡散の大潮流に席巻される危険がある。今後の一年は非常に重要であり、各国が行動を起こすべきタイミングはいまだ。核不拡散レジームが崩壊したら、もはや手の打ちようはないのだから。

CFRインタビュー
トタル社CEO、ドマルジェリーが語る
エネルギーと環境のバランス

2010年2月

クリストフ・ドマルジェリー 仏トタル社CEO(最高経営責任者)

「今後がどうなるかについての予測もなしに長期投資を行うのは難しい」。したがって、「環境とエネルギーのバランス」に関する議論の結論がどのようなものになるか。「それが分かるのは早ければ早いほどよい」と考え、われわれエネルギー産業は焦りを感じている。だが一方で、「議論の結論次第では、われわれが想像さえしていないような極端な路線の修正を強いられるかもしれない以上、(長期投資の判断は)結論を待ったほうがよい」という考えももっている。「議論の結論が出るのは早いほうがいいが、・・・・環境とエネルギーの二者択一は良くない、バランスを取るべきだと考えている」。

台湾がアメリカを離れて中国の軌道に入るべきこれだけの理由
―― 台湾のフィンランド化を受け入れよ

2010年2月号

ブルース・ジリー ポートランド州立大学行政大学院准教授(政治学)

かつてフィンランドがソビエトの懐に入り、西側と東側の和解の橋渡しをしたように、台湾がフィンランド化して中国の軌道に入れば、その存在が、中国における前向きの変化をこれまで以上に刺激し、中国が平和的に台頭する可能性を高めることができる。すでに、台湾は事実上のフィンランド化路線をとっているし、中国も台湾のことを、これまでのようにナショナリズムではなく、戦略地政学の観点から冷静にとらえるようになった、これまでワシントンと北京の対立の矢面に立たされてきた台湾と中国の関係の実態は大きく変化している。今度はワシントンが、この歴史的シフトを直視し、それに適応していく番だろう。

CFRミーティング
国のパワーの源泉は、力強い生産基盤、
健全な金融、そしてガバナンスにある

2010年2月号

●スピーカー
ポール・ケネディ/イエール大学歴史学教授
●プレサイダー
リチャード・ハース/米外交問題評議会会長

国のパワーを支える上で重要なのは、製造技術と生産基盤、健全な金融とその健全さを保証する制度(ガバナンス)という三つの要因、そして、そして戦略的に計算され、優先順位を踏まえた外国へのエンゲージメントだ。この三つ要因と戦略が国のパワーをうまく支えてくれる。・・・私は、国内基盤こそがパワーの中核だと考えている。生産力や強さの源泉は国内になければならないと考えている。・・・そして戦略とは、目の前にある問題への対策ではなく、より総体的で長期的なもので、それを考案するには、自分の強さと弱さに関する厳格な自己分析が必要になる。

CFR Briefing
中央・南アジアにおける中国の地政学的思惑

2010年2月号

エバン・フェイゲンバーム 米外交問題評議会東・中央・南アジア担当シニアフェロー

中央アジア諸国は地政学的な理由から、中国との関係を好ましく思っている。中央アジア諸国にしてみれば、この2~3世紀にわたってこの地域を支配してきた外部パワー、つまり、ロシアに対する対抗バランスとして中国を利用できるからだ。一方、中国は、新疆ウイグルの分離独立を押さえ込むために、中央アジア諸国と協調するとともに、この地域の経済交流・改革ネットワークの中枢に新疆ウイグル自治区を位置付けたいという思惑がある。南アジアはどうだろう。パキスタンの不安定化という懸念を北京がワシントンと共有しているとは思えない。中国は、パキスタンの国内動向については、それほど気にしていない。かたや、インドはその防衛計画の中枢をパキスタンから中国へと移しつつある。戦略抑止力の信頼性が議論され、核実験をもう一度行うべきか、包括的核実験禁止条約(CTBT)はこの観点からどのような意味合いをもつかが議論されている。中国のインド戦略も、インドだけでなく、新たな米印関係というファクターが持ちまれたことで、流動化している。・・・・

サイバー攻撃に対する防衛策を
―― サイバーインフラの多様性を高めてリスク管理を

2010年2月号

ウェズリー・K・クラーク 元NATO軍最高司令官 (1997年~2000年)
ピーター・L・レビン DAFCA社最高技術責任者

サイバー攻撃は相手を攻撃するための魅力的な選択肢だ。陸上交通や航空の管制、電力の生産・供給、水道・下水道処理の制御、電子コミュニケーション・システム、さらには、高度に自動化されたアメリカの金融システムなど、国家にとって重要なインフラを、敵対勢力が遠隔地からサイバー攻撃のターゲットにする危険もある。ソフトウェアに対する攻撃は一般に認識され、対策も進められているが、ハード部門の防衛対策は遅れている。(誤作動を起こすように)欠陥を埋め込まれた集積回路は、ソフトウェアとは違って、パッチをあてて修復するのは不可能であり、これは、ふだんは市民になりすまして生活し、いざとなればテロリストの本性を現す究極の「スリーパー・セル」のようなものだ。サイバー攻撃の脅威を完全に封じ込めるのはもはや不可能だが、リスクを管理していくにはシステムの多様性を高めるとともに、開放的なオープンリソースの問題解決方法に学んでいく必要がある。

ジャーナリズムの衰退を考える

2010年1月号

ピーター・オスノス 米パブリック・アフェアーズ・ブックス設立者

全盛期の米主要紙の海外支局長には、高級外交官並みの手当てと住宅があてがわれてきた。だが現在は多くの支局が閉鎖されるか、記者がいたとしても1人で、現地のコーディネーター1人、ラップトップコンピューター、携帯電話、事務所兼アパートだけで活動しなくてはならない。だが、うまくやっているメディアもある。通信社(AP通信、ロイター、金融・経済分野のブルームバーグ)は、世界各地に大規模なプレゼンスを維持しているし、いまや通信社の伝統的な守備範囲を超える記事を書ける記者や編集者を擁している。高級誌エコノミストの場合、ストリンガーとわずかな専属記者、そして専門性の高い編集者を組み合わせて、比較的高い価格を正当化するだけの見事な調査記事を毎週送り出している。だが・・・・

Page Top