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論文データベース(最新論文順)

Foreign Affairs Update
アノニマスの活動はテロか抗議行動か
――サイバー空間と抗議行動

2012年5月号

ヨハイ・ベンクラー ハーバード大学法律大学院教授 同大学インターネットと社会センター共同所長

アノニマスによる主な行動はDDoS攻撃、コンピュータから盗み出した公的文書の暴露、ウェブサイトの改変、そしてオフラインでの活動だ。しかし、一部の政府高官が考えるようにアノニマスの行動をテロ行為とみなしたり、メディアが示唆するように、彼らを社会悪とみなしたりするのは間違っている。もっと現実に目を向けるべきだ。彼らの目的はインターネットの自由を守り、権力者の権力乱用を告発することにある。その本質は抗議行動なのだ。アノニマスの攻撃対象の政治的な特性をみれば、彼らを純粋にサイバー空間における脅威とみなすのは明らかに間違っていることがわかる。現状追認の自己満足を揺るがして人々を覚醒させる程度の「市民的不服従」や抗議のための空間はインターネット上でも認められるべきだ。アノニマスは破壊・争乱行為と啓蒙行為の境目に身を置くことで、「大胆不敵なおとり」の役回りを演じている。この事実を認識できない政府や企業は、現代社会でもっとも活力にあふれ、血気盛んな集団を敵に回してしまうことになるだろう。

Foreign Affairs Update
アラウィ派はシリア沿海部を目指す
――内戦の長期化とアラウィ国家の誕生?

2012年5月号

ケイティ・ポール
前ニューズウィーク誌リポーター(在ベイルート)

政府軍と反政府勢力がダマスカスでの最終決戦を選ぶか、それとも政府軍がアラウィ派の伝統的な拠点である沿海近くの山間部へと撤退していくかに関わらず、内戦が長期化し、社会の亀裂がますます深くなっていくのはもはや避けられない情勢にある。二つの勢力の軍事力が拮抗してくれば、内戦は通常戦争レベルの戦闘へと激化していく。すでにアラウィ派の民間人は自分たちの伝統的生活地域であるタルタスやラタキアなどシリアの沿海地域へと移動し始め、一方でこの地域のスンニ派やキリスト教徒は、トルコへと脱出しつつある。こうして、アラウィ派の「国家内国家」が事実上形作られつつある。問題は、その後、何が起きるかだ。・・・

CFRブリーフィング
オランドとサルコジ
――選挙戦術のレトリックとリアリティ

2012年5月号

チャールズ・クプチャン 米外交問題評議会ヨーロッパ担当シニアフェロー

増税や歳出削減をきっかけにフランスで何度も騒乱や暴動が起きていることを考えれば、右派・左派に関係なく、フランスの政治家がこの二つの措置の導入に二の足を踏むのは無理もない。しかし、より大胆な経済構造改革を実施しない限り、フランスは、ユーロ圏におけるより深刻な金融危機の引き金を新たに引いてしまう可能性がある。

風力・ソーラーエネルギーのポテンシャルを引き出すには
――悪い補助金からスマートな促進策への転換を

2012年5月号

ジェフリー・ボール
スタンフォード大学レジデントスカラー

風力やソーラーエネルギーが、近い将来に化石燃料にとって代わることはあり得ない。当面、再生可能エネルギーは、化石燃料による電力生産に取って代わるのではなく、それを補完する程度に終わる。だからといって、その開発をいま断念するのは間違っている。風力タービンとソーラーパネルの効率は高まり、価格も低下している。重要なのは、これまでのように補助金で再生可能エネルギーのポテンシャルを摘み取ってしまわないように、よりスマートな促進策をとり、市場の競争を最大化することだ。目的は風力タービンやソーラーパネルを多く設置することではない。電力を安価に便利に安全に、しかも持続的に供給することだ。この目的を実現する包括的なエネルギー政策の一部に風力・ソーラーエネルギー促進策を戦略的に位置づける必要がある。

大統領選後のフランス
――「力強いフランス」か「内向きの保護主義か」

2012年5月号

ソフィー・ムニエ ウッドロー・ウィルソンセンター リサーチスカラー

反グローバル化は形を変えつつも、フランスでは今も昔も大きなアジェンダだ。反グローバル化がすでに政治的主流派のアジェンダに組みこまれているために、大きく取り上げられないだけの話だ。多くのフランス人はグローバル経済からの恩恵を受けていないと考え、保護主義的措置の導入を求めている。そもそも、労働組合の組織率が低く、政治家の多くが民間での経験がないフランスでは、企業が悪いイメージでとらえられている。有権者はEUも否定的にとらえられ始めている。問題は、現実にはフランスが大きな恩恵をグローバル化から引き出していることだ。指導者たちは、フランスの経済成長にはグローバル化が不可欠であることを理解しているが、悲観主義に陥っている大衆をなだめつつ、貿易と投資の自由な流れを水面下で着実に促進していかなければならない状況に追い込まれている。グローバル化の犠牲になっているというイメージと、フランスの国際的な影響力の維持という二つをいかに和解させるかが、今後問われることになる。

CFRインタビュー
中国からみた米大統領選挙

2012年5月号

賈慶国 北京大学国際関係学院副院長

「中国人の多くは、アジアシフトに象徴される米軍の戦略再編をシンボリックなもの、見せかけの行動としかみていない。たしかに250人規模の海兵隊をオーストラリアに送り込んだかもしれないが、現実には国防予算を削減している。・・・・大統領選挙中に中国がとかくやり玉に挙げられることを、中国人は理解している。そして実際には、アメリカが直面している問題のルーツのほとんどは米国内にある。アメリカ経済は多くの問題を抱え込んでおり、これを説明するためのスケープゴートを必要としており、たまたま中国が生け贄にされているだけだ。・・・・新大統領が中国への政策を大きく見直すことはない。すでに両国の関係が非常に密接で、その利益も融合しているからだ。新大統領が中国への政策を見直せば、アメリカの経済と国益に大きなダメージがでる」

軍との対決路線に転じたムスリム同胞団

2012年5月号

エリック・トラガー  ワシントン近東政策研究所フェロー

どんな理由であっても有罪宣告を受けた者が選挙に出馬することは認められておらず、法に照らせば、選挙管理委員会によるシャーテルの出馬失格は合理的な判断だった。・・・同胞団はこの展開を当初から予測していた。・・・

漂流するアメリカ政治
―― 共和党穏健派の衰退と党派対立

2012年5月号

ライハン・サレーム 米シンクタンクe21政策アドバイザー

「ドグマ的、イデオロギー的な政党は、国の政治的・社会的な基本構造を破壊する恐れがある・・・イデオロギーに凝り固まった政策を掲げる政党は政府を行き詰らせて危機に陥れる」。右寄りへシフトした共和党を嘆いて、ミット・ロムニーの父で共和党穏健派だったジョージ・ロムニーはかつてこう警告した。そのドクマ的な保守主義を、自分の息子が受け入れ、アメリカ政治が極端な党派対立に陥っている現状を父ロムニーはどう思うだろうか。かつては豊かな発想力をもつ共和党穏健派が、共和党と民主党の妥協点を見出す役割を果たしてきた。だが、穏健派の消失とともに、その機能を現在の共和党は失っている。穏健派を失った共和党は「筋肉質の体はあっても頭を持たない」存在と化した。共和党保守政権は、有権者の費用負担を「小さな政府」レベルに抑える一方で、「大きな政府」を運営し、結局、財政破綻を招き入れてしまった。

中国発サイバー攻撃とサイバーセフトに どう対処するか

2012年4月号

アダム・シーガル    米外交問題評議会シニアフェロー

サイバー攻撃やそれに準じた行動によって、企業と政府は貴重な知的財産や重要な軍事機密を盗み出されている。米政府は最近まで、サイバー攻撃の黒幕を名指しすることをためらってきたが、ほとんどの専門家は、これらの攻撃の多くは中国からのものだと考えている。情報機関はアメリカを対象とする攻撃の一部については、それが誰の仕業によるものかすでに突き止めており、アメリカは特定のコンピューター、個人、金融データを攻撃のターゲットにできる状態にある。すでにサイバー空間における攻撃作戦の実施を民間企業に依頼しているかもしれない。中国政府に外交ルートで対処を求めても、米中ではインターネットへの概念がまったく違うだけに、効果があるとは考えにくい。現状では、中国人ハッカーたちの攻撃のコストを上昇させるとともに、自国のネットワークセキュリティーを向上させるしか手はない。

なぜ世界銀行は依然として必要か
―― 変化する世界と変貌する多国間組織

2012年4月号

ロバート・B・ゼーリック 世界銀行グループ総裁

世界銀行を含む、国際機関はそのプロセスと議論にばかりエネルギーを奪われ、重要な活動効率をないがしろにしてしまうことが多い。とかくイニシアティブが抑え込まれがちな世界銀行のような多国間組織にとって、結果を重視する現実主義を持つこと、特に、結果を出すことのコミットメントを示すことが重要だ。結果を出すことで、組織としての士気が高まり、財的支援を確保できるようになり、説明責任と正統性も強化される。この5年間にわたって私が試みた世界銀行近代化の試みは、より大きな多国間主義を近代化する試みの一部だった。世界銀行の活動目的を「援助を超えた領域」へと引き上げ、「途上国の依存状況を克服すること」へと設定し直す必要がある。世界各国は現在の経済危機を克服して、「援助を越えた世界」を実現するための基盤を築く必要があり、この点からみても、世界は依然として世界銀行を必要としている。

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