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論文データベース(最新論文順)

トルコのソフトパワーと中東
―― ギュル大統領との対話

2013年1月号

アブドラ・ギュル トルコ大統領

世界的パワーになることが重要なわけではない。重要なのは、可能な限り高いところへと基準を引き上げ、国が市民たちに繁栄と幸せを提供できるようにすることだ。ここで言う基準とは、民主主義と人権だ。これがトルコにとっての究極の目的だ。これらの基準を高度化させていけば、経済はもっと力強くなり、ソフトパワーをもつ国になれる。・・・他の諸国がトルコを模範とし、われわれのやり方に啓発されるとすれば、それは彼らの判断だ。国に浮き沈みはつきものであり、われわれは彼らと連帯する。重要なのは、問題と格闘している人々への連帯を示すことだ。すべての国は平等であり、すべての国家は尊厳をもっている。筋書きを書いた誰かが、その役回りを他の国に押しつけることはできない。(A・ギュル)

衰退する独仏協調
――政治統合から危機対応へ変化した 欧州のメカニズム

2012年12月号

ヤコブ・ファンク・キルケガード ピーターソン国際経済研究所シニアフェロー

これまでヨーロッパ統合のプロセスと制度は、「統合ヨーロッパという政治ビジョン」を前提に組み立てられ、その中枢が独仏の妥協によって形作られる統合プロセスだった。しかし、現在のヨーロッパのプロセスは政治ビジョンを前提とする統合ではない。それは、(危機に対応するための)政治、経済、金融上の必要性に突き動かされた対応プロセスにすぎない。「ユーロゾーンを存続させるには、ユーロゾーンの基本制度を改革する必要がある」という危機対応認識に根ざしている。だが、この対応プロセスにおいて、何かを実現するために、独仏が必ず合意する必要があるかどうか、はっきりしない。別の言い方をすれば、このプロセスにおけるフランスの影響力は、これまでに比べて非常に小さい。オランドが、どのようなヨーロッパをフランスが望むかについての一貫性のあるビジョンを描き、それをどのように実現していくか考案するまでは、かつての欧州統合の時代と比べて、独仏協調の重要性は間違いなく低下していくだろう。

習近平政権の内憂外患

2012年12月号

ダミアン・マ ユーラシアグループ・中国アナリスト

経済成長の必要性を政治的コンセンサスで支えた胡錦濤と彼の側近たちは、他の新興国でさえもうらやむ経済成長を実現した。だが、その結果、余りに多くを外需に依存する経済、そして経済成長だけを重視するエリート文化を作り上げ、一方で、市民の生活の質を犠牲にしてしまった。そしていまや経済成長は鈍化し、民衆の抗議行動は増え、中間層は中国政府に対する不信感を募らせている。中国のジニ係数は0・5に近づいており、社会が不安定化するといわれる警戒数値の0・4をすでに上回っている。格差の増大だけではない。政治的自由が制限されていることに対する人々の不満も高まっている。いまや中国共産党は、中間層を犠牲にして、経済的機会へのアクセスを独占する政治エリート集団へと変化している。しかも、この2年間に、中国が地域的な強硬策に転じた結果、近隣国との関係も不安定化している。日中関係を含めて、中国が10年をかけて構築した安定した地域環境はいまや崩壊の瀬戸際にある。習近平を待ち受けているのは不満を募らす国内社会、そして、崩壊の瀬戸際にある地域秩序だ。

モルシ・エジプト大統領のムバラク主義
―地域紛争の調停と国内強権体制の強化の関連

2012年12月

ロバート・ダニン
米外交問題評議会中東担当シニア・フェロー

エジプトのモルシ大統領は、ガザ問題をめぐってバラク・オバマと詳細な対応策を電話で協議し、イスラエル・ガザ紛争の停戦に向けて見事に立ち回った。彼は水面下でハマスの指導者に「危機をエスカレートさせて、イスラエル軍の侵攻というリスクを高めるのではなく、紛争を終わらせるために柔軟な路線をとるように」と圧力をかけた。実際、中東の地域問題をめぐるアメリカとエジプトの協調という面でみれば、ワシントンが中東危機の安定化に向けてムバラクに支援を要請した時代と何ら変わらないかにみえる。だが、エジプトが地域問題の解決をめぐってアメリカと協力することの見返りに、エジプトに援助を与え、国内での抑圧にアメリカが目をつぶるというファウスト的な取引はもう止めるべきだ。ガザの調停が終わると、モルシは大統領権限を拡大し、大統領の決定が司法の審査を受けなくてもすむようにする憲法令を発布し、国内で大規模な抗議行動が起きている。これは、革命と真の民主化からの逆行であり、「ムバラクなきムバラク主義」の再来だ。

クルド人の夢と挫折

2012年12月号

ジュースト・ヒルターマン
国際危機グループ(ICG)
中東・北アフリカ研究副部長

第一次世界大戦後にオスマントルコが分割された結果、帝国内では大きな民族グループだったクルド人の居住地域はトルコ、イラン、フランス委任統治領シリア、そしてイラクの四つの国へと分散・分割された。その後も各国のクルド人、特にイラクのクルド人は自分たちの地域の分離独立という夢を追い続けた。2度に及んだ湾岸での戦争の結果、イラクのクルド人はイラク北部に事実上のクルド地域を確保し、自分たちの地域内に存在する石油と天然ガス資源という強いカードを手に入れた。いまや、彼らはイラクとトルコの間で揺れ動いている。だが、クルド人が思い描く独立国家の夢はまたしても先送りを余儀なくされそうだ。現状で可能なのは、バグダッドの息の詰まるような支配から、トルコに対するより従順な依存へと移行することくらいなのかもしれない。

中国の空母離着艦実験の意味合い

2012年12月

ブライアン・キロー
米外交問題評議会米空軍フェロー

J15は、大きな制約下での空母からの活動をこなす能力をすでに持っているように見受けられる。J15のエンジンは、今回の訓練で空母から力強く離艦できる力を持っていることも実証した。だが、われわれの知る限り、J15はまだ実戦配備できる状況にはない。しかも、高価な戦闘機を積載した空母を展開すれば、敵の格好のターゲットになるために、空母を守る戦闘群も組織しなければならない。(まだ、先は長い)。とはいえ、J15の離着艦訓練の成功は、信頼できるグローバルな海軍の確立という目的に向けて中国が一歩先に歩を進めたことを意味する。

韓国の宇宙開発戦略のジレンマ

2012年12月号

ジェームズ・クレイ・モルツ
ネーバル・ポストグラジュエートスクール教授

日本は人工衛星の初の打ち上げを1970年2月に成功させ、中国は1970年4月に、そしてインドは1980年7月に成功させている。だが、韓国は、造船やエレクトロニクス、自動車産業部門では国際的な地位をすでに確立しているにも関わらず、こと宇宙開発に関しては大きく出遅れている。宇宙分野での技術開発の出遅れを挽回すべく、民主化と国際化が加速した1989年、ソウルは韓国航空宇宙研究院(KARI)を設立した。しかし、当初は米韓ミサイル指針の規定によって、その後も輸出規制に縛られ、韓国はアメリカからの技術供与を得られず、外国の技術を利用して通信や遠隔観測の人工衛星のネットワークを構築せざるを得なくなった。ロシアとの開発契約をまとめたが、結局、これまでのところ、うまくいっていない。韓国が同盟国の水準まで追いつき、競争の激しい宇宙関連市場で商業性のあるサービスを部分的にでも提供できるようになるには、予算の増大を含めて、まだ多くのハードルをクリアーする必要がある。

北朝鮮の衛星打ち上げ
――平壌の権力抗争と危機へのプレリュード

2012年12月

スコット・スナイダー
米外交問題評議会
朝鮮半島担当シニア・フェロー

12月1日、北朝鮮は同月10日から22日の間に衛星打ち上げを計画していると発表した。これは歓迎できないニュースかもしれないが、ある意味では予想通りの行動でもある。失敗したとはいえ、4月12日に衛星打ち上げを試みた北朝鮮を批判する国連議長声明が出されたにも関わらず、平壌はこれを公然と無視し「今後も長距離ロケットの打ち上げ実験を続ける」と表明していたからだ。日本では12月16日に総選挙が予定されているし、韓国では12月19日に大統領選挙が実施される。このタイミングでの北朝鮮による衛星打ち上げ計画は、かなりの政治的衝撃を伴うと考えられる。北東アジアが政治のシーズンのさなかにあるタイミングでの北朝鮮の衛星打ち上げが何を引き起こすかをここで考えてみたい。

CFR Update
2013年の世界
― 七つの危機

2012年12月号

ジェームス・リンゼー
米外交問題評議会研究部長

2013年の世界政治を規定する重要な懸案は何か。われわれは、グローバル経済の停滞、アメリカの財政危機、中東での権力抗争、アフガニスタンからの北大西洋条約機構(NATO)軍の撤退、東アジアにおける領有権論争、そしてインターネットの自由をめぐる対立をその主要な懸案として特定した。CFRの予防行動センターは、すでに、2013年における紛争の潜在的帰結をまとめたリポートを公開している。要点を整理すると次のようなものになる。

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