
「大学の研究者の多くは今や現実社会に目を向けなくなり、象牙の塔に引き籠もっている。・・・研究スタイルにばかりこだわり、・・・研究全般に「現実からの逃走」の兆候がみられる」。そして大学ランキングが、こうした大学の知的孤立主義を助長している。たしかに、ランキングの利便性は疑いようがない。大学の経営陣にとっては、限られた資金をどこに投資するかを判断する指針にできるし、学生や親は、特定の大学に大きな関心を寄せるようになり、政府や篤志家は、どこの大学にグラントや寄付を提供するかの指標にできる。問題は、主要な大学ランキングは研究者一人当たりの論文の数や論文の引用数といった細かな指標でアカデミックな優劣を判断し、政策志向、社会志向の研究が評価の対象にされていないことだ。学術的関心に目を向けているだけでは、社会的関心や懸念にも応えていくという大学における研究の内示的な社会契約を踏みにじることになる。