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論文データベース(最新論文順)

暴かれたアメリカの偽善
―― 情報漏洩とアメリカのダブルスタンダード

2013年12月号

ヘンリー・ファレル ジョージ・ワシントン大学准教授(政治学、国際関係論)
マーサ・フィネモアー ジョージ・ワシントン大学教授(政治学、国際関係論)

E・スノーデンがリークした情報によって情報源や情報収集の手法が明るみに出たとはいえ、予想外のものは何も出てきていない。専門家の多くは、かねて「アメリカは中国にサイバー攻撃をし、ヨーロッパの政府機関を盗聴し、世界のインターネット・コミュニケーションを監視している」と考えてきた。リークが引き起こしたより深刻な問題は、アメリカのダブルスタンダードが明らかになり、理念と原則の国としてのアメリカのイメージを失墜させたことだ。アメリカは、自分たちが唱道する価値を一貫して擁護し、順守してきたわけではなかった。この矛盾を前に、他の諸国は「アメリカが主導する秩序は正統性を欠いている」と判断するかもしれない。ワシントンは(米情報機関の行動に対する)厳格な監視体制を導入し、政策に関する論争をもっと民主的に進めるべきだろう。安易な偽善(とダブルスタンダード)の時代はすでに終わっている。

内戦が続くなかで、ジュネーブに紛争勢力を集めて、シリア内戦を交渉によって解決しようとするアメリカの政策は合理性を欠いている。むしろ、アラウィ派のアサドファミリーにとっても、スンニ穏健派勢力にとっても、(そしてアメリカにとっても)、最大の脅威であるシリアのジハーディスト勢力(イスラム過激派)を一掃するために、アサド政権とスンニ穏健派勢力の大同団結、共闘路線の組織化を模索すべきではないか。アラウィ派は「ジハーディストが権力を握れば自分たちを皆殺しにすること」を理解しているし、世俗的で穏健派のスンニ派も、「ジハーディストが権力を握れば、厳格なイスラム法(シャリア)を強要されること」を知っている。・・・いずれ、穏健派とアサド政権との間で将来に向けた政治的了解、例えば、「ジハーディストを相手とする戦闘が決着に近づいてきた段階で、連邦国家形成を含む、権力共有のスタイルについて政治的妥結をまとめる」こともできるはずだ。・・・・

CFR Briefing
高齢化する中国社会の社会経済・外交的意味合い

2013年12月号

ヤンゾン・ファン/ 米外交問題評議会シニアフェロー(公衆衛生担当)

中国社会は急速に高齢化している。2050年までには、65歳以上の人口が総人口のほぼ4分の1の3億3000万人に達すると考えられている。中国の高齢化は、三つのはっきりとしたトレンズによって促されている。第1は、この数十年における力強い経済成長とともに、平均余命が1981年の68歳から現在の74歳へと延びたこと。第2は、(1950―60年代に生まれた)ベビーブーマー世代が高齢者の仲間入りをしつつあること。そして第3は、1979―1980年代初頭に導入された厳格な人口管理政策によって出生率が大きく低下し、高齢人口の比率を相対的に引き上げていることだ。当然、生産的な労働力の規模が縮小し、その結果、賃金レベルが上昇し、労働集約型産業における中国の競争力は低下する。しかも、年金、医療、社会保障制度はうまく整備されていない。・・・その経済的、外交的意味合いは何か。・・

Foreign Affairs Update
日本にネオリベラリズムは似合わない

2013年12月号

トバイアス・ハリス
テネオ・インテリジェンス
アナリスト(日本の政治・経済)

小泉元首相同様に、安倍首相もネオリベラルの改革者になれる可能性はほとんどない。安倍政権の第3の矢も、経済産業省が描く国が主導する優先課題を反映しているに過ぎない。しかも、改革案が表明されても、その構想を結束して骨抜きにし、停滞させ、ブロックしようとする官僚と政治家たちがいるし、年功序列、終身雇用といった現在の経済システムを支えるさまざまな要因は、それぞれに相互を補完し、堅固さを保っている。安倍首相がネオリベラリズムに向けた日本流のショック療法を実施すると考えるのは合理性を欠いている。確かに、アベノミクスはすでに日本のマクロ経済パフォーマンスを改善しているかにみえるし、制度的改革も段階的に刺激できるかもしれない。だが、安倍首相がネオリベラルの経済体制へと日本を作り替えて、それを後任者に委ねることはあり得ないだろう。・・・

Foreign Affairs Update
シリコンバレーとプライバシーとNSA
―― 情報革命とプライバシー保護

2013年12月号

アブラハム・ニューマン
ジョージタウン大学准教授

グーグルにとって都合が良いことは、NSA(米国家安全保障局)にとっても都合が良く、NSAが、シリコンバレーが求める穏やかなプライバシー規制を利用して、好きなようにデータを収集・蓄積していたことはいまや明らかだ。ユーザーもいまやこの点を認識しており、今後、新たなテクノロジーによって収集できる個人情報の量と種類が増大していくにつれて、巨大IT企業をこれまでのようには信用しなくなるだろう。テクノロジー企業が、ユーザーの信頼を回復し、経済的成功を維持していくには、これまでのようにプライバシー保護をめぐって企業側の自主規制を重視する路線を見直す必要がある。自主規制は必要だが、それだけでは十分ではない。個人情報は、適切な管理を必要とする貴重なデータであり、IT企業は、不必要なデータ収集を制限すると同時に、そのビジネスモデルにプライバシーの保護と利害共有者としてのユーザー保護を統合していく必要がある。

効率に欠ける企業、流動性に乏しい硬直的労働市場、低い失業率、相対的に公平な所得分配、女性に不利な雇用市場など、日本経済の特質の多くは文化によって説明されることが多い。だが、こうした特質は、他の先進諸国が1970年代末から1980年代初頭にかけて導入したネオリベラルの経済改革を日本が実施せずに、近代経済を運営してきた結果に他ならない。そして現在、ネオリベラリズム路線に即して、日本経済を未来へと向かわせようとしているのがTPP(規制緩和)と労働市場改革を中核とするアベノミクスの第3の矢だ。だが、第3の矢が折れれば、生産性の低い会社本位主義を中核とする日本の社会モデルが温存され、結局、日本は経済的にさらに取り残されていく。日本は、1980年代にとらなかった選択を下す、2度目のそして最後のチャンスを手にしている。

合成生物学のポテンシャルとリスク
―― 人類社会への大いなる貢献か、それとも悪夢か

2013年11月号

ローリー・ギャレット 米外交問題シニアフェロー (グローバルヘルス担当)

これまで、生物学者たちは外の世界における生命体を観察し、生息環境を変化させることでその詳細と行動を見極め、何が起きるかを見守ってきた。だが、新しい生物学の世界にあっては、科学者たちは生命体そのものを創造し、それを内側から学ぼうとしている。合成生物学によってインフルエンザ・ワクチンを一夜にして製造できるようになり、HIVウイルスに対するワクチンも、二酸化炭素を食べ、化石燃料に代わる安全なエネルギーを放出する微生物も作り出せるかもしれない。だが、これらが人類社会を滅ぼす兵器になる恐れもある。合成生物学の進化は、(人類に貢献するポテンシャルも人類社会を破壊へと導くリスクも秘めた)「デュアルユース」のジレンマをもたらした。これこそ、一世紀前に化学研究が、それから一世代後に物理学研究が直面し、現在、生物学研究を大きな力で席巻しつつあるジレンマに他ならない。

Foreign Affairs Update
インターネットでデータ化される世界
―― 「モバイルインターネット」と「モノのインターネット」の出会い

2013年11月号

ジェームズ・マニュイカ
マッキンゼー・グローバルインスティチュート ディレクター
マイケル・チュイ
マッキンゼー・グローバルインスティチュートプリンシパル

レンズなしメガネのように見えるヘットギアから、ネット閲覧のできるスマートウォッチ、データ測定機能を備えた運動靴やスポーツウェアといった装着型デジタル機器の流行は、奥深い経済的・社会的な変化が進行していることを物語っている。モバイル対応型の「モノのインターネット」化は、人が身に付けるものにとどまらない。位置、活動、状態に関するデータを収集・電送する小型検出器は、すでに橋、トラック、心臓ペースメーカー、糖尿病患者用のインスリンポンプなど、ありとあらゆるものに組み込まれている。これが、主要産業の再編を促しているだけでなく、人間とコンピュータの境界をあいまいにしつつある。こうした変化が、暮らし・仕事のやり方に広く奥深い変革をもたらすのは疑いようがなく、その経済価値は、総額数兆ドルにも達すると考えられる。

グーグルのXマン
―― セバスチャン・スランの思想

2013年11月号

セバスチャン・スラン

セバスチャン・スランはロボット工学と人工知能に関する世界有数の研究者だ。1967年にドイツのゾーリンゲンで生まれたスランは、ヒルデスハイム大学、ボン大学の大学院で学び、1995年からはカーネギーメロン大学(コンピュータ・サイエンス)で研究生活を送り、2003年にスタンフォード大学へと移った。スラン率いるスタンフォードのチームは、2005年に米国防総省の研究機関・DARPA(国防高等研究計画局)が主催した自動運転技術のコンペで優勝を果たしている。2007年にグーグルにスタッフとして入社した彼は、その後、未来志向の研究所であるグーグルXラボを任される。2012年には、オンライン教育プログラムを手がけるスタートアップ企業ユダシティも共同設立している。聞き手はギデオン・ローズ(フォーリン・アフェアーズ誌編集長)

CFR Meeting
世界経済アップデート
―― アベノミクスと中国経済の行方

2013年11月号

◎スピーカー
ルイス・アレキサンダー
野村ホールディングスアメリカ、チーフエコノミスト
ビンセント・ラインハルト
モルガンスタンレー、チーフエコノミスト
ネマト・シャフィク
国際通貨基金(IMF)副専務理事

◎プレサイダー
セバスチャン・マラビー
米外交問題評議会地政経済学センター所長

アベノミクスは、日本の金融政策を根本的に転換させ、資産市場を刺激することに成功し、その効果はインフレ期待や実質インフレ率に次第に現れ始めている。投資も上向いてきている。これまでのところうまく施策が機能し、経済状況が進展している以上、アベノミクスが上手くいっていないと決めつけることはできない。・・・(問題は構造改革の)非常に多くがアジアとアメリカを結びつける環太平洋パートナーシップ(TPP)の交渉に左右されることだ。非常に多くの日本の国内アジェンダが(今後の交渉に左右される)TPPの交渉と結びつけられている。・・・」(L・アレクサンダー)

「(債務問題を別のアングルから捉えれば)日本政府は貯蓄率の高い高齢者世代に対して、間接的に国債の利払い義務を負っていると同時に、同じ高齢者世代に年金の支払い義務を負っていることになる。当然、何らかの再調整が不可欠となる。・・・最終的に、日本の構造問題は持続不可能な政府債務と不公平な世代間移転の問題に行き当たる。・・・・」(V・ラインハルト)

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