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政治的正統性の危機

イアン・ブレマー ユーラシアグループ代表

Lost Legitimacy

Ian Bremmer アメリカの政治学者で、世界の地政学リスク、政治リスクの分析を行うユーラシア・グループの代表。フーバー研究所を経て現職。フォーリン・アフェアーズでは、「インターネットは自由も統制も促進する――政治的諸刃の剣としてのインターネット」(フォーリン・アフェアーズ・リポート2010年12月号掲載)「G7からG20そしてGゼロへ――主導国なき世界経済は相互依存からゼロサムへ」(ノリエル・ルービニとの共同執筆。2011年3月号掲載)、「国家資本主義の台頭と市場経済の終わり?」(2009年6月号掲載)などを発表している。

2014年1月号掲載論文

政治エリートたちは大きな課題に直面している。市民たちが新しいツールを用いて新たな要求をし、抗議行動を組織化し、集団としてのパワーを培いつつあるからだ。各国政府が次の景気のサイクル、次の選挙、次の政治的移行期までの短期的な問題にばかり目を向けているために、グローバル規模での政府の正統性の危機という事態にわれわれは直面している。アメリカ政治は党派対立に縛られて身動きできず、ヨーロッパでは反EU感情が高まっている。新興国政府も経済成長率が鈍化する一方で、市民の要求が高まり、政府は追い込まれている。政府の指導者たちが適切と考える以上の情報公開を求める市民の圧力が、政府の正統性をさらに脅かしている。しかも、情報を共有するのがきわめて簡単になり、一方で情報漏洩を阻止するのが難しくなっている。・・・

  • 高まる不満と対応能力を欠く政府
  • 新興国政府の悩み
  • 情報公開と情報漏洩の間

<高まる不満と対応能力を欠く政府>

現在、世界が直面する重要な問題の一つは、政治エリートたちの足場がもろくなっていること(つまり政治的正統性の基盤が揺るがされていること)に他ならない。指導者たちは、公私を問わず、うまくリーダーシップを発揮しにくい状況に追い込まれている。世界経済フォーラムの地政学的リスクに関するグローバルアジェンダ評議会が、この問題を2014年の課題の一つとしてリストアップしているのも無理はない。

世界金融危機が収束しつつあるいまや、状況は平常へと回帰しつつあるかに思えるかもしれない。たしかに、アメリカ経済は穏当な成長路線へと立ち返りつつあり、経済的足場を見いだしつつある。ユーロ圏も存亡の危機から脱したようだ。ブラジル、中国、インド、トルコなどの新興国経済は、これまでよりも緩やかなペースながらも、依然として台頭途上にある。・・・

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