ヒラリー・クリントンのフェミニスト外交
―― ドクトリンと現実の間
2016年5月号
(大統領夫人、そして国務長官としての)ヒラリー・クリントンは、女性の運命が社会のそれと切っても切れない関係にあること、女性の虐待がしばしば独裁体制や戦争の前兆となること、そしてアメリカの国家安全保障が各国の女性の健全な生活が保障されることで強化されると主張し、これを外交アジェンダの一部に位置づけることに成功した。だが、一部の社会では性差別と家父長制が深く根を張っており、外国の指導者たちが迅速に変革に応じるのは難しいことも彼女は理解している。女性の権利問題を、小さなイニシアチブから、米政府全体が真剣に受け止める政策課題へと「格上げ」した最大の功労者であるクリントンは今、大統領の座を狙い、その大義をさらに推進できる大きなパワーを手にしようとしている。しかし、この試みが実を結ぶには時間がかかるし、女性問題だけが彼女が重視するアジェンダではないことは理解する必要があるだろう。