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経済・金融に関する論文

アメリカの新貿易コンセンサス
―― ロバート・ライトハイザーの世界

2024年3月号

ゴードン・H・ハンソン ハーバード大学ケネディスクール 教授(都市政策)

前米通商代表のライトハイザーは、製造業にほぼ神秘的なまでの経済価値をみいだし、貿易赤字だけが貿易協定を評価する唯一の指標だと考えている。問題は、明らかに正しくないものを含めて、彼の見解が米国内で支持を広げていることだ。トランプの「アメリカ第1主義」の威勢のよさを思わせる彼の立場は右派にアピールし、バイデンの産業政策と環境保護路線を受け入れることで左派への訴求力ももっている。だが、ライトハイザーの処方箋が貿易政策の標準とされても、国内の工場を復活させることはできない。むしろ、その過程で国際関係に大きなダメージを与えてしまう。彼にとっては受け入れがたいとしても、アメリカの繁栄の未来は溶鉱炉や組立ラインではなく、サービス業にある。

共和党の国際主義と外交戦略
―― 軍事・貿易・経済戦略をどう立て直すか

2024年3月号

コリ・シェイク アメリカン・エンタープライズ研究所 ディレクター

共和党支持者がもっとも懸念する「経済的な不安」を引き起こしているのは、バイデン政権の政策だ。その保護主義的な理論とアプローチはインフレを煽り、市場を歪め、貿易を抑え込み、アメリカの同盟国をいらだたせている。共和党支持者は、中国に世界のルールを決めさせれば、米企業は不利な状況に追い込まれ、同盟国が脆弱な状況に置かれることを理解している。軍事予算の増大も、移民政策の見直しも必要だし、中国への依存を減らし、それでも繁栄を維持できる経済戦略が求められている。必要なのは、世界で何が起きているのか、そして共和党がどのように国を守り、繁栄を維持していくつもりなのかについての理論を有権者に明確に示すことだ。

次期米大統領と欧州
―― なぜ欧州の自立が必要なのか

2024年3月号

アランチャ・ゴンサレス・ラヤ
カミーユ・グランド
カタジナ・ピサルスカ
ナタリー・トッチ
グントラム・ヴォルフ

ヨーロッパの指導者たちは、バイデンなら、大西洋の絆を守り、混乱する大陸と近隣諸国にヨーロッパがより大きな責任を果たすための時間と支援を与えてくれると考えている。だが今後、そうした配慮は彼からも得られないかもしれない。もちろん、トランプ大統領が誕生すれば、2期目には、ヨーロッパが直面する不安定な状況はさらに悪化するかもしれない。だが、安全保障と経済を守るために行動を起こし、具体的な措置を講じることは、ヨーロッパの手に委ねられている。誰がワシントンで政権を担おうと、一貫したパートナーとしてアメリカを頼ることはもはやできないかもしれない。ヨーロッパの指導者たちは自分たちが成長しなければならないこと、つまり、アメリカへの依存度を低下させるべきことを理解している。

米中地政学とグローバル経済
―― 同盟国との経済連携の強化を

2024年2月号

ピーター・E・ハレル 元米国家安全保障会議 シニアディレクター

ワシントンは、進化する地政学的必要性に対応できるやり方で、中国との経済関係を積極的に管理していくべきだ。主要サプライチェーンでの対中依存を減らし、欧米が機微技術をめぐる優位を維持できるようにし、他の先進7カ国(G7)メンバーとの産業政策協定の締結も視野に入れるべきだろう。分野別の小型の貿易合意、同盟国とのサプライチェーン協定を結ぶ一方で、グローバルサウスを引き寄せる必要もある。世界貿易機関が地政学の時代にそぐわないことも認識しなければならない。ワシントンが経済的リーダーシップを維持し、同盟関係を強化し、破滅的な結果を回避できるかを、成功を判断する基準に据えるべきだろう。

ハイリスク環境における安定とは
―― システミック・レジリエンスの確立を

2024年1月号

アンシア・ロバーツ オーストラリア国立大学 教授(グローバル・ガバナンス)

レジリエンスはショックやストレスに耐える能力として理解されている。だがそれは、リスクに効果的に対応するだけでなく、将来的な恩恵を獲得し、変化に対応できるように進化することも意味する。そうした、システミック・レジリエンスを実現するには、政府と企業は「リスクと恩恵の適切なバランス」をとらなければならない。リスクの最小化を目指すと、恩恵が減少するだけでなく、時間の経過とともに新たな脆弱性が生み出される。同様に、短期的な恩恵の最大化を目指せば、既存のリスクを見過ごし、新たなリスクを生み出し、後に大きな犠牲に直面する危険がある。もっとも困難なケースは、経済的相互依存のリスクと恩恵の双方が大きい場合だ。このような場合、システミック・レジリエンスに注目することが極めて有効になる。

ハビエル・ミレイがアルゼンチンを変える?
―― 過激なリーダーシップの可能性とリスク

2024年1月号

ブルーノ・ビネッティ インターアメリカン・ダイアログ 非常勤フェロー

アルゼンチン大統領に就任したハビエル・ミレイは、中央銀行の閉鎖や米ドルを自国通貨として採用するといった極端な公約の多くからは、すでに後退をみせている。それでも、大統領としてのミレイに立ちはだかる課題は非常に大きい。この国が何十年にもわたって陥ってきた衰退と不安定の連鎖を断ち切るには、政権奪取の際にみせた大胆さだけでなく、妥協し、不必要な争いを避け、過去の改革の試みから学ぶ姿勢が必要になるし、経験と知識ある人々を迎え入れなければならない。現実的でありつつも、毅然とし、新しい概念に開放的で、掲げた目的に確信をもっている必要がある。これまでの多くの大統領と同じように、ミレイが失敗すれば、アルゼンチンはこのような改革のチャンスには長期的に巡り会えないかもしれない。

AIと経済革命
―― 人間のツールとして生かす政策を

2023年12月号

ジェームズ・マニュイカ グーグル-アルファベット シニアバイスプレジデント
マイケル・スペンス スタンフォード大学 フーバー研究所 シニアフェロー

AIが突きつける危険、それが引き起こす壊滅的なダメージを防ぐための国際的AI規制の必要性を指摘する議論は多い。しかし同様に重要なのは、AIの生産的な利用を促すポジティブな政策の導入だろう。AIが経済に与える最大の影響は、人間の仕事のやり方を変化させることだ。仕事を構成するタスクの一部、全体の30%程度は、AIによってオートメーション化されるが、職業そのものがなくなることはない。但し、能力の高いマシンと協力して仕事をこなすことになるために、新たなスキルが必要になる。現在AIが世界に与える最大のリスクは、文明を破滅させることでも、雇用に大打撃を与えることでもない。それは、現在の経済格差を今後何世代にもわたって拡大するような形で開発され、使われる恐れがあることだ。これを回避する政策が必要になる。

次の経済ショックにいかに備えるか
―― グローバル経済を待ち受ける衝撃

2023年11月号

クリスタリナ・ゲオルギエバ 国際通貨基金専務理事

急速なグローバル化と統合の時代は終わりを告げ、保護主義が台頭し、分断化潮流が生じている。こうして、グローバル経済の脆弱性と不確実性が高まっている。さらに、軍事紛争が食糧不安を深刻にし、エネルギーやコモディティ市場を混乱させ、サプライチェーンを寸断するかもしれない。深刻な干ばつや洪水がさらに発生すれば、何百万人もの人々が気候難民化する恐れがある。一つだけ確かなことは、グローバル経済がショックに直面することだ。国際通貨基金(IMF)を含む国際機関、債権者、債務者は状況に適応し、変化に備えなければならない。ショックの影響を受けやすい世界にあって、一国だけでなく集団として経済のレジリエンスを協調して高める必要がある。

中露に挟まれたモンゴルの選択
―― アメリカは何をオファーできるか

2023年11月号

トゥブシンザヤ・ガンチュルガ 元モンゴル大統領補佐官(外交政策担当)
セルゲイ・ラドチェンコ ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際問題研究大学 特別教授

中国とロシアにほぼ全面的に経済を依存する内陸国のモンゴルは、それでも、二つの隣国の違いを利用し、あるいは欧米との関係を強化することで、中露から距離を置こうと試みてきた。だが、いまや中露はますます接近し、モンゴルが両国の立場の違いを利用する余地は小さくなっている。アメリカは、モンゴルとの貿易・投資関係を促進し、教育・訓練プログラムを通じてモンゴルへの長期的なコミットメントを示すべきだし、モンゴル側は、外国人投資家を安心させ、透明で予測可能な経済環境を整備する試みを強化する必要がある。必要とされているのは、ロシアの高圧路線や中国の執拗な覇権主義に直面しているモンゴルへの手堅い経済関与だろう。

中国は停滞と混乱の時代へ
―― 社会不満と経済停滞が重なれば

2023年10月号

イアン・ジョンソン 米外交問題評議会 シニアフェロー(中国研究担当)

生活レベルの改善に貢献している体制への反政府運動は力を持ち得ないが、経済衰退期には、多くの人が反体制派や批評家に現実の説明を依存するようになる。これまでも、エコノミストたちは、中国経済の成長は鈍化し、停滞期に入りつつあると主張し、その理由として、人口動態の変化、政府債務、生産性の低下、市場志向改革の欠落などを指摘してきた。いまや「ピーク・チャイナ」という言葉さえ使われている。長期停滞に入った中国でも、人々は、反体制派の主張に現実の説明を依存するようになるかもしれない。いまや、北京は体制の安定を追求するあまり、技術的な進歩や民衆の支持さえも犠牲にし始めている。

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