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経済・金融に関する論文

中国の報復社会
―― 何が問題を引き起こしているのか

2025年2月号

ペイドン・サン コーネル大学 准教授(中国・アジア太平洋研究)

中国では2024年に、無差別に民衆を襲撃する暴力事件が少なくとも20件発生し、その犠牲者は90人を超えた。ある研究によると、2004―17年に世界で報告された大量刺殺事件の45%が中国に集中している。政府関係者は、こうした「社会への報復」攻撃を「孤立した事件だ」と説明している。だが、事件の背景には経済の停滞、格差、社会的流動性の欠落や社会的疎外などが引き起こす中国社会の亀裂があるし、根底には、社会不満を増幅させる政府の抑圧が存在する。共産党が経済的機会を拡大し、構造的な不平等や不公正を減らしていかなければ、やがて「社会への報復」攻撃以上の大きな問題に直面するかもしれない。

対中貿易規制と国際協調
―― グローバル貿易と同盟関係

2025年2月号

ピーター・E・ハレル カーネギー国際平和財団 非常勤フェロー

世界の工業生産に占める中国の割合は2000年の6%から2030年には45%に達すると予測されている。これに対してアメリカのシェアは25%から11%に低下する。これは、中国との地政学的対立のさなかにあるアメリカと同盟国にとって、許容できるコースではないだろう。トランプは(同盟国の製品を含む)すべての輸入品に20%の「普遍的基本関税」をかける路線を見直し、同盟諸国と協調して新たな合意をまとめる方が、アメリカの経済と安全保障にはうまく機能することを認識すべきだろう。冷戦期のように、多国間輸出規制レジームなどを通じて貿易と安全保障の両面で協力する一方で、同盟国との二国間貿易赤字には関税よりも、むしろ、相手国の内需を促す路線をとるべきだろう。

ロシアとの交渉を実現するには
―― 経済制裁の強化を

2025年1月号

セオドア・ブンツェル ラザード地政学アドバイザリー マネージング・ディレクター
エリナ・リバコバ ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー(非常勤)

「流れは自分の側にあり、妥協する環境にはない」とモスクワは考えている。つまり、さらに経済圧力をかけなければ、ロシアが2025年にウクライナ戦争の停戦交渉に応じることはないだろう。現状で停戦を急いでも、それは、モスクワがさらに触手を伸ばすための、小休止になるにすぎない。一方、ロシア経済の生命線であるエネルギーからの収益を低下させ、欧米製のデュアルユース製品の輸入を大幅に抑え込めば、ロシアが戦争を継続するのは難しくなり、交渉に応じるインセンティブを高められる。原油価格とインフレ率が低下しているいま、欧米は2022年当時よりもロシアのエネルギー・フローを混乱させる、より積極的な施策をとれるはずだ。

トランプの政策ビジョンを考える
―― 衝動性と現実主義の間

2024年12月号

コリ・シェイク アメリカン・エンタープライズ研究所 外交・国防政策研究ディレクター

「予測不能で衝動的」と言われるトランプの政策ビジョンは、実際には、はっきりとしている。経済グローバル化と移民を否定的に捉えている。高関税を盛り込んだ二国間協定を結び、アメリカ市場へのアクセスを制限し、貿易収支のバランスをとることを重視している。アメリカにつけ込んでいると彼がみなす同盟国への要求を高め、要求を満たすことが、同盟支援の条件とされる。だが、現実を前に考えを見直す可能性もある。反欧米勢力の一体化に立ち向かうには、健全な同盟関係が必要であることを理解するかもしれない。さらに、ロシアが取引に応じなければ、「ウクライナがこれまで手にした以上の支援を与える」可能性もある。トランプ2期目に危険はあるが、抑止力強化と国防予算の増大という側面では、米安全保障基盤を強化するチャンスでもある。

中国の政治腐敗と格差
―― 壮大なスケールの汚職

2024年11月号

ブランコ・ミラノヴィッチ ニューヨーク市立大学大学院センター シニアスカラー
リー・ヤン ライプニッツ欧州経済研究センター 研究員

大規模な反政治腐敗キャンペーンが中国で進められてきたのは、習近平の政治的思惑からだけではない。都市部における格差が極端なレベルに達していたからだ。所得が高い者は、(賄賂や横領で)平均して4倍から6倍、なかにはそれ以上に所得を増やしている。つまり、中国の実質的所得格差は、記録されている格差レベルよりもはるかに大きい。一方、反政治腐敗キャンペーンは、大金持ちや権力者を追及することをためらわない限り、独裁者がポピュリストとしての信頼を高めることにも貢献する。習近平だけでなく、ロシアのプーチンも、このやり方を取り入れている。

保護主義の台頭とWTOの衰退
―― 貿易秩序の崩壊は何を意味するか

2024年11月号

クリステン・ホープウェル ブリティッシュ・コロンビア大学 教授

アメリカは自由貿易へのコミットメントをすでに放棄している。関税を課し、複数の産業に巨額の補助金を投入することで、世界貿易機関(WTO)のルールと原則を公然と踏みにじっている。中国も、補助金や経済的威圧策を行使して貿易をゆがめ、次第にこれを兵器として用いつある。しかも、インドネシアやインドを含む、他の諸国もアメリカのやり方に追随して、WTOルールを公然と無視するようになった。このままWTOルールを無視する国が増え続ければ、いずれ、多国間貿易システムが完全に崩壊するティッピングポイントを迎え、世界は1930-1940年代へと回帰していくことになるのかもしれない。

再生する資本主義
―― スイス、台湾、ベトナムに学ぶ

2024年11月号

ルチール・シャルマ ロックフェラー・インターナショナル 会長

新興経済諸国は、アメリカが「大きな政府」的解決策を模索するのをみて衝撃を受ける一方で、中国に経済モデルのインスピレーションを求めることもできずにいる。いまや「中国経済の奇跡」も失速しつつある。だが、主要国が資本主義から後退しているかにみえるなか、スイス、台湾、ベトナムなどの、資本主義がうまく機能している国もある。これらの諸国のやり方を模倣し、取り入れる価値はあるだろう。いずれも、経済的自由を重視し、経済の管理や規制をめぐる政府の役割を抑え、債務や財政赤字が深刻なリスクになることを認識して資金を慎重に用いている。

高技能外国人材と経済成長
―― 技術系人材を確保するには

2024年10月号

デベシュ・カプール ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際問題研究大学院 教授(南アジア研究)
ミラン・ヴァイシュナヴ カーネギー国際平和財団 シニアフェロー

この数十年にわたって、ワシントンの政治家たちは不法移民の管理とコントロールに執着してきたが、いまや、合法的な移民、それも高度技能をもつ外国人材に同じ程度の関心を払う必要があるだろう。世界的な人材獲得競争で成功したいのなら、時間的猶予はほとんどない。ワシントンは、サプライチェーンのレジリエンスを高め、新興技術部門で中国を打ち負かすという野心的な計画をもっている。だが、これらの目標を有意義な時間枠で達成するには、現在の米労働力に不足している、高度なスキルをもつ人材プールが必要になる。より柔軟で適応性のある移民政策なしでは、うまく考案された計画も結果にたどり着けない。

途上国を債務危機から救うために
―― アフリカのポテンシャルを開花させるには

2024年10月号

マーク・スズマン ビル&メリンダ・ゲイツ財団 最高経営責任者

2022年3月、米連邦準備制度理事会(FRB)が米国債の金利を引き上げると、低所得国の通貨は下落し、資本市場へのアクセスを失った。サハラ以南のアフリカでは、19カ国がデフォルトに陥るか、そのリスクに直面している。しかも、低所得国が直面している問題は、無分別な借金の結果ではなく、気候変動が引き起こしたショック、パンデミック、そして戦争の結果なのだ。低所得国を債務危機から救い出し、世界的な成長を回復させるために、先進諸国政府は、世界銀行への資金拠出を増やし、債務救済を強化していく必要がある。

中国経済危機の本質
―― 過剰生産能力の悪夢

2024年9月号

ゾンユアン・ゾー・リュー 外交問題評議会 シニアフェロー(中国研究)

中国経済の停滞を説明する最大の要因は、巨大な過剰生産能力が構造的に作り出されていることだ。北京の産業政策は長年にわたって、生産設備への過剰投資を促し、その過程で中国の都市(地方政府)や企業は膨大な債務を抱え込んできた。最近でもロボット、電気自動車用バッテリー、その他で過剰生産能力を抱え込み、ソーラーパネルにいたっては、年間に世界が設置して利用できるソーラーパネルの2倍規模の生産能力をもっている。国内市場や外国市場が持続的に吸収できるレベルをはるかに上回る規模の商品を生産しているために、中国は、外国との摩擦を抱え込んでいるだけでなく、価格低下、債務超過、工場閉鎖、雇用喪失という破滅のループに陥っていく危険がある。

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