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2022年1月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2022年1月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2022年1月号 目次

気候変動と国際政治学

  • エネルギーの新地政学
    ―― エネルギー転換プロセスが引き起こす混乱

    ジェイソン・ボードフ、メーガン・L・オサリバン

    雑誌掲載論文

    クリーンエネルギーへの転換がスムーズなものになると考えるのは幻想に過ぎない。グローバル経済と地政学秩序を支えるエネルギーシステム全体を再構築するプロセスが世界的に大きな混乱を伴うものになるのは避けられないからだ。予想外の展開も起きる。例えば、産油国は、転換プロセスの初期段階ではかなりのブームを経験するはずで、クリーンエネルギーの新しい地政学が石油やガスの古い地政学と絡み合いをみせるようになる。クリーンエネルギーは国力の新たな源泉となるが、それ自体が新たなリスクと不確実性をもたらす。途上国と先進国だけでなく、ロシアと欧米の対立も先鋭化する。クリーンエネルギーへの移行が引き起こす地政学リスクを軽減する措置を講じないかぎり、世界は今後数年のうちに、グローバル政治を再編へ向かわせるような新たな経済・安全保障上の脅威を含む、衝撃的な一連のショック(非継続性)に直面するだろう。

  • フォロー・ザ・マネー
    ―― 気候変動対策と国際貿易・金融ルール

    ジェシカ・F・グリーン

    雑誌掲載論文

    気候変動対策をめぐる現在の国際アプローチは危機の深刻さに見合うものではない。正面からの対策をとるには、パリ協定のような段階主義ではなく、国際貿易・金融のルールそのものを書き換える必要がある。環境悪化を引き起こすことも多い多国籍企業に不当な投資保護を与えている古いISDS規制を撤廃することも必要だ。各国が脱炭素化の目的から(環境を重視しない国に対する)国境炭素税を導入できるように、貿易規制を緩和する必要もある。世界貿易機関(WTO)やG20などの金融フォーラムに気候変動アジェンダを持ち込めば、政策立案者が利用できる手段は増え、気候変動対策を妨害する石油企業、鉱山会社、重工業産業など、気候変動対策によってダメージを受ける大規模な排出主体の活動を抑制できるようになる。


  • 排出量削減にクリスパーを生かせ
    ―― 農業部門の排出量削減をいかに実現するか

    エマ・コバック、ロバート・パールバーグ

    雑誌掲載論文

    世界の温室効果ガス排出量の約3分の1は食糧生産に由来している。有機肥料から発生するメタン同様、亜酸化窒素も地球温暖化を引き起こしている。農業拡大のための森林伐採も森林が蓄えていた二酸化炭素を放出し、これだけでも温室効果ガス総排出量の10%以上に達する。「環境に優しい農業」だけでは十分に問題を解決できない。各国政府は、CRISPR(クリスパー)技術などの最新科学を対策に取り入れていく必要がある。問題は、多くの政府が、遺伝子組み換え技術やクリスパー技術を作物に使用することに強く反対しているために、気候変動に対処するための手段が制約されていることだ。気候変動と闘い、農業のレジリエンスを高めるには、考え方を改めなければならない。企業や規制当局は、クリスパーに対する根拠のない不安が根付かないよう迅速に対処していく必要がある。

  • 再生可能エネルギーの新地政学
    ―― シーレーンから多国籍グリッドへ

    エイミー・マイヤーズ・ジャッフェ

    雑誌掲載論文

    ランサムウェア攻撃でアメリカ最大のパイプラインの一つが2021年5月に閉鎖に追い込まれる事件が起きた。遠く離れた場所の得体のしれぬ勢力が遂行した(重要な国内インフラを対象とする)複雑なデジタル攻撃は今後の脅威を予兆している。(再生可能エネルギーによる)電力が世界のエネルギーシステムでのプレゼンスを拡大していくにつれて、より多くのインフラがサイバー攻撃にさらされるようになるだろう。グリッドが大きくなると、保護を必要とするインフラが巨大になり、ハッカーが侵入する機会が増えるからだ。例えば、(電力インフラをターゲットにする)サイバー空間での活動を規制する国際ルールの確立を主導するのは、冷戦期における核軍備管理合意と同じくらい重要な試みになる。「デジタル化された世界の地政学」に向けて、ワシントンは現状を大きく見直す必要がある。

  • 中国のエネルギー地政学
    ―― クリーンエネルギーへの戦略的投資

    エイミー・マイヤーズ・ジャッフェ

    雑誌掲載論文

    トランプ政権が石油・天然ガスを重視し、パリ協定に背を向けるなか、すでに中国は戦略的にクリーンエネルギー大国の道を歩みつつある。新エネルギー戦略が成功すれば、世界の気候変動との闘い、さらには地域的同盟関係や貿易関係の双方において、中国はアメリカに代わる最重要国に浮上する。クリーンエネルギーテクノロジーの輸出国として中国は、各国に石油・天然ガスの輸入量さらには二酸化炭素排出量を減らす機会を提供できるし、相手国政府との関係も強化できる。冷戦期のアメリカが、ソビエトとの宇宙開発競争に敗れた場合の経済的・軍事的余波を認識して、対抗策をとったように、ワシントンは中国の再生可能エネルギーへの移行にも、同様の対策をとるべきだろう。アメリカは、世界のエネルギー市場における優位を手放すリスクを冒している。

  • ゲノム編集を人類の恩恵にするには
    ―― クリスパーが世界を変える

    ビル・ゲイツ

    Subscribers Only 公開論文

    ゲノム編集によって、科学者たちは、貧困層を中心とする数百万人に障害を与え、命を奪っている疾患と闘うための、より優れた診断、治療法を発見しつつある。さらにこのテクノロジーを利用すれば、貧困を終わらせるための研究を加速し、例えば、途上国の何百万もの農民が栄養価も高く、丈夫な作物や家畜を育てられるようになる。こうした新テクノロジーには懐疑的な見方がされることも多い。しかし、世界がこの数十年間の見事な改善と進化を続けるには、安全と倫理のガイドラインの順守を前提に、科学者たちがCRISPRのような有望なツールを応用していくように促すことが不可欠だ。

  • ゲノム編集の進化とリスク
    ―― ジェニファー・ダウドナとの対話

    ジェニファー・ダウドナ

    Subscribers Only 公開論文

    ジェニファー・ダウドナは12歳のときに、DNAの分子構造を発見した一人として知られるジェームズ・ワトソンの『二重らせん』を読み、科学、特に遺伝子工学のとりこになった。40年後の現在、彼女はカリフォルニア大学バークレー校の分子生物学教授で、ハワード・ヒューズ医学研究所の研究責任者、ローレンス・バークレー国立研究所の研究員も兼務している。非常にパワフルな新たなゲノム編集技術CRISPR(クリスパー)を発見した1人であるダウドナは、2017年に上梓した回顧録A Crack in Creation(サミュエル・スターンバーグとの共著)で、遺伝子研究の分野で進行している革命的な変化について語っている。インタビューではクリスパーのことを「疾患を引き起こす遺伝子上の変異を修正し、生物種に有益な形質(特性)を新たに与えることができれば、どうだろうか。それを可能にするツールを手にした」とコメントしている。ゲノム編集は、遺伝子組み換えに必要とされる膨大な手間、時間、コストを一気に短縮し、その限界を取り払う技術とみなされている。(聞き手は、フォーリン・アフェアーズ誌編集主幹、ギデオン・ローズ)。

迫り来る嵐

  • ロシアとウクライナの紛争リスク
    ―― キエフの親欧米路線とロシアの立場

    マイケル・キメジ、マイケル・コフマン

    雑誌掲載論文

    かつてはロシアとの対話に前向きな姿勢を示していたウクライナのゼレンスキー大統領も、いまや対ロ妥協路線を放棄し、欧米との協調を模索している。ウクライナとの国境線に部隊を動員しているモスクワはもはや外交の機会は失われたとみているのかもしれない。しかも、ワシントンが中国との競争に関心と資源をシフトさせているために、プーチンは「ウクライナはアメリカにとって周辺的な関心事にすぎない」と確信しているかもしれない。これまでウクライナのNATO加盟をレッドラインとみなしてきたロシアは、いまや欧米とウクライナの防衛協力の強化を看過できないとみなし始めている。モスクワが武力によって現在の均衡をリセットする環境が整いつつある。

  • アフガンに迫る人道的悲劇
    ―― 制裁下の国の民衆をいかに救うか

    P・マイケル・マッキンリー

    雑誌掲載論文

    都市部でも地方でもアフガニスタン全土が食糧不足に陥っていく恐れがある。カブールなどの大都市や州都では、何十万もの公的部門の労働者、教師、医療従事者の給料が支払われておらず、その家族は最低限の収入さえ得られなくなっている。農村部では、干ばつ、現金や市場の不足、そして冬の到来が大きな災害を引き起こしかねない状況にある。タリバンに対する制裁を求めている安保理決議第1988号は依然として有効だが、国連は人道的活動には決議は適用されないと明確に示すこともできるだろう。われわれは直ちに危機的状況に対応すべきで、人道的悲劇が起きて行動を起こすのでは手遅れだ。現地での人道的緊急事態は日を追うごとに深刻化し、アフガン民衆を救うタイムリミットが近づきつつある。

  • インフレは今後も続くのか
    ―― マジックマネーの時代の終わり?

    セバスチャン・マラビー

    雑誌掲載論文

    短期的には半導体、住宅スペース、エネルギーなどのファンダメンタルズが世界的に不足しているため、物価上昇圧力はしばらく続くかもしれない。パンデミックの影響であらゆるものがデジタル化されているだけに、半導体チップの不足は特に深刻だ。それでも、いずれ落ち着いてくる。中期的に考えれば、価格を押し上げる供給不足は、永続的なものではなく、一時的なものに終わると考えられる。供給が安定し、需要が落ち着けば、適度な引き締め策で十分に対処できるようになる。2023年初頭までには、インフレ率は目標の2%を少し上回る程度で安定しているだろう。・・・

  • ヨーロッパかロシアか、それが問題だ
    ―― ウクライナのナショナリズム

    オーランド・フィゲス

    Subscribers Only 公開論文

    ウクライナが現在直面している苦悩の中枢には、ロシアとの「戦略的パートナーシップ」に対する抵抗感と、「腐敗した政府からウクライナを政治的・経済的に救えるのはヨーロッパだ」という認識の間の葛藤がある。短期的には、ウクライナはロシアと仲違いするわけにはいかない。ロシアはウクライナのエネルギー供給を支配している上に、債務の大半を所有している。両国は産業面でも深く結びついている。だが長期的には、ウクライナにとって最大の期待はヨーロッパだ。街頭で抗議を行っている人々が求めた改革を実現するにはヨーロッパに目を向けるしかない。ただし、ウクライナのナショナリストたちは、ヨーロッパへの期待も幻想に過ぎないかもしれないことを忘れてはならない。「ヨーロッパかロシアか」という選択をめぐってウクライナ人が深く分裂していること、そしてウクライナを手放したくないロシアの思いが、ウクライナを受け入れたいというEUの思いよりずっと強いことを考えると、ウクライナは東欧諸国の先例にならって国の運命を国民投票で決めるべきなのかもしれない。

  • 人道的悲劇から民衆を保護せよ
    ――介入する権利から保護する責任へ

    ギャレス・エバンズ、モハメド・サハヌーン

    Subscribers Only 公開論文

    大量虐殺、大規模な飢餓、レイプ、民族浄化がどこかで再び起きるのは時間の問題であり、その場合にわれわれは一体どうすればよいのか。世界各地で起きる人道的悲劇に国際コミュニティーが本気で対処するつもりなら、まず相手地域への介入という問題を「介入する権利」としてではなく、人道的悲劇に苦しむ人々を「保護する責任」としてとらえ直す必要がある。 政府が民衆を保護する責任を果たさない、あるいは果たせない場合には、相手国の主権は制限されるとみなす認識が広がりつつある。主権国家が国内での人道的悲劇を解決する意思と能力を持っていない場合は、国際コミュニティーが人道的悲劇への対応責任を負うべき段階にきており、必要とされているのはそのための原則である。

  • 主要経済指標という幻
    ―― ビッグデータ時代の経済指標を

    ザチャリー・カラベル

    Subscribers Only 公開論文

    いまやGDPは国の成功と失敗を判断する指標とみなされ、選挙結果を左右し、政府を倒し、大衆運動を引き起こす力さえ持っている。だが、GDPでは幸福感、満足感、家計労働は計測できない。政府が発表するインフレ数値を信じる市民もほとんどいない、公的なインフレ統計数値など「信用詐欺」のようなものだと言う専門家さえいる。グローバル・サプライチェーンを特徴とする現在の世界では貿易指標もほとんど当てにならない。いかなる主要経済指標も、現実の経済の姿を適切に映し出せていない。だが「より優れた主要経済指標」をわれわれが必要としているわけでもない。必要なのは政府、企業、コミュニティ、個人の特定の必要性を満たす、それに適したテーラーメードの指標だろう。

  • ロシアの衰退という虚構
    ―― そのパワーは衰えていない

    マイケル・コフマン、 アンドレア・ケンダル・テイラー

    雑誌掲載論文

    人口減少や資源依存型経済など、ロシア衰退の証拠として指摘される要因の多くは、ワシントンの専門家が考えるほどモスクワにとって重要ではない。プーチン大統領が退任すれば、ロシアが自動的に対米対立路線を放棄すると考えるべきではない。プーチンの外交政策は、ロシアの支配層に広く支持されており、クリミア編入をはじめとする未解決の紛争も彼の遺産とみなされている。アメリカとの対立は今後も続くだろう。つまり、ワシントンには中国に焦点を合わせ、ロシアの衰退を待つという選択肢はない。アメリカのリーダーは、ロシアを衰退途上にある国とみなすのではなく、永続的なパワーをもつ大国とみなし、ロシアの本当の能力と脆弱性を過不足なく捉えて議論しなければならない。


  • 権威主義の黄昏
    ―― 民主主義は復活する

    マデレーン・オルブライト

    雑誌掲載論文

    近年、中ロを含む権威主義国家の指導者の一部が力をもつようになったのは事実だが、その多くは、自らの約束をすでに実現できなくなっている。透明性の欠如や弱いものいじめ的なやり方ゆえに、中国を友好国とみなす国はもはや存在しない。ロシアの現政権も腐敗し、信頼できず、終演に近づくワンマンショーとみなされている。一方、民主主義の優れた財産とは、あらゆる人々に最善を尽くすことを求め、人権、個人の自由、そして社会的責任を尊重することを基盤にしていることだ。これに対して、独裁者が民衆に求めるのは服従だけだし、それが人々を鼓舞することはない。しかも、独裁者の多くはいまや自らの約束を実現できなくなり、民衆の不満は高まっている、民主主義の大義が死滅しつつあるわけではない。カムバックしつつある。

<Current Issues>

  • 政治的兵器とされた移民たち
    ―― 拡大する戦闘空間と多様化する兵器

    マーク・ガレオッティ

    雑誌掲載論文

    「欧州連合(EU)に簡単に入国できる」という嘘の約束にだまされて、移民たちは、ベラルーシやその周辺国ではなく、主にイラクやクルディスタンからやってきた。観光ビザでベラルーシに集まった彼らは、バスでポーランドとの国境沿いに送り込まれた。要するに、ベラルーシのルカシェンコ大統領はEU側から譲歩を引き出そうと、人道危機、移民危機を人為的に演出した。歴史的には、移民が政治的兵器として用いられるのは今回が初めてではない。だが、ルカシェンコ政権のシニカルな策略から学ぶべき教訓は、紛争が伝統的戦場からあらゆる生活空間に拡大するにつれて、戦略的な偽情報の拡散同様に、移民も新たな兵器とみなされる時代になったということだ。ルカシェンコは多くの点で古いタイプの独裁者だが、彼が行使した「移民戦争」は未来の闘いのあり方の一つを示している。


  • 国際最低税率合意の意味合い
    ―― 合意は改革への序章にすぎない

    ラス・メイソン

    雑誌掲載論文

    多国籍企業の世界最低税率に関する国際合意の狙いは、課税逃れへの防波堤を築き、(底辺への競争とも呼ばれる)法人税率の世界的な引き下げ競争を抑えることにある。コロナ対策への財源確保や格差是正に向けた各国の思惑もある。これまで、税率を設定する権限は、国が手放してはならない主権の中核要素だと長く考えられてきた。しかし、世界の国内総生産(GDP)の90%以上、人口のおよそ75%を占める136の国・地域による1年近くにわたる交渉の末、国際法人税制における前提としての物理的プレゼンスの重要性を抑え、グローバルな法人最低税率を導入することが合意された。国際最低税率合意は画期的なものと評価されているが、その価値はすべて今後の展開にかかっている。真っ先に直面する障害が各国の国内政治だ。・・・

  • 中東への新しいエンゲージメントを
    ―― 軍事援助から社会経済支援へ

    ダリア・ダッサ・ケイ

    雑誌掲載論文

    アメリカが中東との関係を終わりにしたいと考えているとしても、アラブ諸国が同様に考えているわけではない。アメリカの中東からの撤退は現実的でないだけでなく、地域の人々の生活を向上させ、より公正な政治秩序の構築に貢献するためにアメリカはどのように政策を調整できるかという重要な議論を妨げてしまう。戦略的流動性のなかで、アメリカはこれまでとは違ったやり方で、経済開発と公平性のための戦略を考案し、遂行する機会を手にしている。巨大な軍事投資ではなく、現地の人々がより健全な生活を手に入れるのを妨げている社会経済問題や統治問題を解決するための投資を試みるべきだろう。


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