本誌一覧

2020年11月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2020年11月号

Price
  • 12カ月購読

    \24,000

  • 6カ月購読

    \12,200

  • 3カ月購読

    \6,300

購読はこちら

フォーリン・アフェアーズ・リポート2020年11月号 目次

新しい経済体制と社会保障

  • パンデミック後の資本主義
    ―― 官民協調型の経済システムの模索

    マリアナ・マッツカート

    雑誌掲載論文

    多くの人が、民間部門がイノベーションと価値創造の主要な原動力だったと信じてきたために、利益は民間企業が手にする権利があると考えている。だがこれは真実ではない。医薬品、インターネット、ナノテク、原子力、再生可能エネルギーなど、これらのすべては政府の膨大な投資とリスクテイキングのおかげで実現してきた。イノベーションのために公的資金を投入しつつも、それから恩恵を引き出してきたのは、おもに企業とその投資家たちだった。COVID19危機は、この不均衡を正す機会を提供している。ベイルアウトする企業により公益のために行動するように求め、これまで民間(の企業)部門だけが手にしてきた成功を納税者が分かち合えるようにする新しい経済構造が必要だ。富の創造への公的資金の貢献を明確に理解すれば、公的投資の意味合いを変化させることができる。目の前にある課題は、よりすぐれた経済システム、よりインクルーシブで持続可能な経済を官民で形作ることであり、世界の誰もがCOVID19ワクチンを利用できるようにすることでなければならない。

  • ベーシックインカムの台頭
    ―― パンデミックが呼び起こした構想

    エブリン・L・フォーゲット

    雑誌掲載論文

    パンデミックは、多くの人が長く気づいていた真実に政治家を目覚めさせた。「既存の社会的セーフティネットは穴だらけで、 いまや新しい何かを試すべきタイミングにある」。ベーシックインカムに反対するもっとも一般的な議論は、どんなに有益であっても、それにはコストがかかりすぎるというものだろう。だが、このプログラムがより累進的な課税システムとリンクして進められれば、そうした支出の一部は課税を通じて政府に戻される。低所得者を対象とするタイプのベーシックインカムなら、それほど大きな負担にはならない。実際、そのコストは、子どもの給付金など、多くの政府がすでに行っている社会支出と変わらず、年金については、はるかに少なくて済む。ベーシックインカムは人々が望む社会への投資であり、健康、教育、安全を重視する人がそれぞれ自分に投資する。その配当として、人々はより良い生活を手にし、一方で資金も節約され、社会も進化する。・・・。

  • 「マジックマネー」の時代
    ―― 終わりなき歳出で経済崩壊を阻止できるのか

    セバスチャン・マラビー

    Subscribers Only 公開論文

    今日、アメリカを含む先進国は、双子のショックの第二波としてパンデミックを経験している。2008年のグローバル金融危機、グローバルパンデミックのどちらか一つでも、各国政府は思うままに紙幣を刷り増し、借り入れを増やしたかもしれない。だが、これら二つの危機が波状的に重なることで、国の歳出能力そのものが塗り替えられつつある。これを「マジックマネー」の時代と呼ぶこともできる。「しかし、インフレになったらどうするのか。なぜインフレにならなくなったのか、そのサイクルはいつ戻ってくるのか」。この疑問については誰も確信ある答えを出せずにいる。例えば、不条理なまでに落ち込んでいるエネルギーコストの急騰が、インフレの引き金を引くのかもしれない。しかし・・・

  • コロナウイルス・リセッション
    ―― 経済は地図のない海域へ

    モハメド・A・エラリアン

    Subscribers Only 公開論文

    2008年のグローバル金融危機に続くグレートリセッションは低成長、(量的緩和などを通じた)金融の人為的安定、格差の拡大を特徴とする「ニューノーマル」を作りだし、その後の10年で中間層が空洞化し、政治的な怒りと反エリート感情が高まりをみせていった。コロナウイルスショックもグローバル経済を大きく変化させ、ポスト「ニューノーマル」をもたらすと考えられる。脱グローバル化、脱リージョナリズムが加速し、世界の生産と消費のネットワークが再編されていく。費用対効果と効率を心がけてきた官民双方は、リスク回避とレジリエンス(復元力)の管理を重視せざるを得なくなる。ウイルスショックから立ち直った世界が目にするグローバル経済は完全に姿を変えているはずだ。

  • パンデミックによる社会破綻
    ―― 経済政策で社会崩壊を阻止するには

    ブランコ・ミラノビッチ

    Subscribers Only 公開論文

    コロナウイルス危機が終息しても、多くの人が希望も仕事も資産もない状態に放置されれば、彼らは、よりよい生活をしている人に敵意をもつようになるだろう。資金も雇用も、医療へのアクセスもない状態に放置され、絶望し、状況に怒りを感じるようになれば、イタリアの監獄で起きたような暴動、2005年にハリケーン・カテリーナに見舞われた後のニューオリンズで起きた略奪といった光景が、世界各地で再現されるかもしれない。現状における経済政策の主要な(あるいは、実質的に唯一の)目的は、社会的崩壊を阻止することかもしれない。ウイルスが作り出す異常な緊張のなかで、社会の絆を維持していくことを経済政策の目的に据える必要がある。

  • 財政支出でコロナ恐慌を抑え込めるか
    ―― ハイパーケインズ主義の実験と日本の先例

    ザチャリー・カラベル

    Subscribers Only 公開論文

    各国は、あたかも2020年夏まで経済生産がゼロの状態が続くかのような財政支出を約束している。ニューディールを含めて、このレベルの政府支出には歴史的先例がない。つまり、これは「ハイパーケインズ主義」の実験のようなものだ。有事であると平時であると、先例はない。このような試みがアメリカ経済、ヨーロッパ経済、世界経済を救えるかどうかは誰にもわからない。希望をもてるとすれば、パンデミック前の段階で対GDP比債務がすでに230%近くに達していたにもかかわらず、日本の金利とインフレ率が引き続き安定していたことだ。多額の借入と財政出動がジンバブエよりも日本のような状況を作り出すのなら、楽観的になれる根拠はある。しかし、政府支出で永遠に現実世界の経済活動を代替することはできない。

  • 迫り来るパンデミック恐慌
    ―― 1930年代が再現されるのか

    カーマン・ラインハート他

    Subscribers Only 公開論文

    20世紀の大恐慌以降のいかなる時期にもまして、いまやコロナウイルスが「世界のより多くの地域をリセッション(景気後退)に陥れている」。当然、力強い経済回復は期待できず、世界経済が2020年初頭の状況へ回帰するには、かなりの時間がかかるはずだ。それどころか、企業が倒産し、不良債権が肥大化していくために、いずれ世界の多くの地域で金融危機が発生する。途上国のデフォルト(債務不履行)も増えていく。この危機は前回のグローバル金融危機と比べても、世界経済活動の崩壊の規模と範囲が大きいために、さらに深刻な金融危機になる。しかも、かつては大きな流れを作り出したグローバル化潮流が停止すれば、世界経済が大変調を起こすのは避けられない。1930年代と似たムードが漂い始めている。

新大統領が直面する世界

  • ならず者の超大国
    ―― 非自由主義的アメリカの世紀?

    マイケル・ベックリー

    雑誌掲載論文

    戦後秩序のなかで、ワシントンは多くの国に軍事的保護、安全なシーレーン、米ドルと米市場へのアクセスを提供し、引き換えに、これらの同盟諸国はアメリカへの忠誠を尽くし、自国の経済や政治の自由化に応じてきた。だが、アメリカ外交の底流をなしているのは、リベラリズムよりも、アメリカファーストの思想だ。(他の先進諸国の)急速な人口高齢化そしてオートメーション化の台頭によって、アメリカのリードはさらに堅固になり、パートナーへの依存レベルが低下すれば、アメリカは国際協調よりも「外交への取引的アプローチ」を重視する「ならず者の超大国」になるかもしれない。これまでの「アメリカ世紀」が、世界におけるアメリカの役割についてのリベラルなビジョンを基盤に構築されてきたのに対し、私たちの目の前にあるのは、「非自由主義的なアメリカの世紀の夜明け」なのかもしれない。

  • レジリエンス強化の大戦略を
    ―― パンデミック、異常気象時代における復元力パワー

    ガネーシュ・シタラマン  

    雑誌掲載論文

    2020年にはパンデミックが発生し、多くの米市民がステイホームを余儀なくされた。来年には、農業と食糧生産を破壊する千年に一度の大干ばつが起きるかもしれないし、その翌年には、サイバー攻撃によって電力網が破壊され、重要なサプライチェーンが遮断されるかもしれない。現在のパンデミックが(今後の不透明さを示す)何らかの兆候だとしても、各国はこうした混乱に対処するための準備が嘆かわしいほどにできていない。必要なのは、レジリエンス(柔軟性と復元力)を強化する大戦略でなければならない。アメリカを含むほとんどの国々は、単独では完全なレジリエンスをもつことはできない。重要な物資や製造能力のすべてを国内で調達できるわけではないからだ。解決策は、価値を共有する北米、西ヨーロッパ、北東アジアのリベラルな民主国家との絆と同盟を深めることだ。

  • 次期米政権の外交レバレッジ
    ―― 交渉上の優位を生かす現実主義を

    リチャード・フォンテーヌ

    雑誌掲載論文

    ジョー・バイデンは、トランプ時代の混乱に不満をもつ人々に「われわれが戻ってきた(もう大丈夫だ)」とすぐに伝えると述べており、今後、米市民と世界に対して、トランプのアメリカとは違うことを示すように求める大きな圧力にさらされるだろう。しかし、何から何までトランプの逆路線をとるのも賢明ではない。中国との競争、米中産階級により焦点を当てた政策などを含めて、トランプが残した政策の一部を継承していくつもりであることはすでにバイデンも明らかにしている。だが、前政権が極端な強硬路線をとってきただけに、新政権が相手に対する一連の手立て、交渉材料を手にしていることを認識する必要がある。ユニークながらもいずれは消失していく外交交渉上の優位をレバレッジとしてうまく利用していくべきだろう。

日はまた昇る?

  • 日はまた昇る
    ―― 日本のパワーは過小評価されている

    ミレヤ・ソリス

    雑誌掲載論文

    「日本は、経済的繁栄を中国に、安全保障をアメリカに依存しすぎている」と悲観する見方が市民の間で大きくなっている。さらに、2020年9月の安倍首相の突然の辞任によって、国内の安定した指導体制や先を見据えた外交の時代が終わるかもしれないという懸念も浮上しつつある。地政学的ライバルが大きな流れを、そしてパンデミックが混乱を作り出すなか、ワシントンは、再び、日本のポテンシャルをまともに捉えず(この国を無視する)誘惑に駆られるかもしれない。しかし、日本の戦略的選択は、日本の将来だけでなく、米中間の激しい大国間競争の行方にも影響を与える。日本の時代は終わったとみなすこれまでの見方が、時期尚早だったことはすでに明らかだ。

  • 安倍政権の遺産
    ―― なぜ長期政権が実現したのか

    トバイアス・ハリス

    雑誌掲載論文

    安倍晋三は、2012年12月に首相に再選された後の7年8カ月にわたって政治的に生き残っただけでなく、6回にわたって選挙で党を勝利に導き、最後の数カ月まで一貫して高い支持率を維持し、日本の政治システムをこれまで誰もなしえなかった形で統治してきた。彼は有権者の多くが望んでいた安定を提供した。他の民主国家の多くがポピュリズム政治の抵抗に遭い、政治基盤が不安定化し、民主主義そのものが後退していた時期に、安定を提供してみせた。後継者に選ばれた菅義偉は、安倍政治を変化させるのではなく、踏襲していくと約束している。しかし、彼は前任者ほど幸運ではないかもしれない。・・・

  • パンデミック後の日本
    ―― 世界の労働者と留学生は日本を目指す

    ファーラー・グラシア

    Subscribers Only 公開論文

    アメリカへの移民の流れは今後か細くなっていくかもしれないが、一方で、移民を受け入れ、多様性、ダイナミクス、新しい才能という移民がもたらす社会的恩恵を引き出す国も出てくるだろう。そして日本ほどこの流れから大きな恩恵を引き出せる国もない。社会的に安全で安定しているし、失業率も低く、より多くの労働者を必要としている。いまや欧米へのコスト高の留学に前向きでなくなった世界の学生を魅了できる優れた大学もある。パンデミックが経済を破壊し、欧米の大学がかつてのようなアクセスも魅力も失うにつれて、移民や学生の目的地としての日本の魅力と優位はますます際だってくる。この流れが根付けば日本企業だけでなく、日本社会もいずれ世界の一部として統合されていくはずだ。

  • 日本の核ジレンマと国際環境
    ―― 能力も資源もあるが・・・

    マーク・フィッツパトリック

    Subscribers Only 公開論文

    反核感情の強い日本の科学者コミュニティが(政府による)核開発の要請に応じるとすれば、安全保障環境が大きく悪化した場合に限られる。そして、日本の政策決定者たちが核武装を真剣に考えるとすれば、韓国が核武装するか、ピョンヤンが現在の核の兵器庫を温存したままで朝鮮半島に統一国家が誕生した場合だろう。一方で、日本が核開発に乗り出せば、北京は軍備増強路線を強化し、北朝鮮による対日先制攻撃リスクを高めるかもしれない。韓国が核開発に乗り出し、地域的な緊張が大きく高まる恐れもある。核開発への東京の姿勢は、歴史的にも、アメリカによる核抑止の信頼性をどうみるかで左右されてきた。少なくとも、トランプがそのクレディビリティを大いに失墜させているのは間違いない。

  • 日韓対立と中国の立場
    ―― 東アジア秩序の流動化の始まり?

    ボニー・S・グレーサー他

    Subscribers Only 公開論文

    日韓関係の亀裂を利用しようとする中国の最終目的が何かは明確ではない。韓国にアメリカとの同盟関係を破棄するように公然と促してはいないし、第二次世界大戦期の残虐行為にペナルティを課す対日キャンペーンを展開するようにけしかけてもいない。むしろ、日韓関係の緊張をアメリカのリーダーシップの衰退として認識させようとしている。アジアにおける米同盟システムが十分に傷つくほどに緊張が高まることを望みつつも、日韓関係が完全に破たんしてしまうほど悪化することは望んでいない。とはいえ、北京は、近隣諸国が中国のことを「アメリカよりも信頼できるパートナー」と位置づけることを望んでいる。もちろん、その結果、東アジアの優先順位とパワーが大きく変化すれば、アメリカの地域的立場は形骸化し、アジアの戦後秩序は再編へ向かうことになる。

  • 人口動態と未来の地政学
    ―― 同盟国の衰退と新パートナーの模索

    ニコラス・エバースタット

    Subscribers Only 公開論文

    大国への台頭を遂げたものの、深刻な人口動態問題を抱え込みつつある中国、人口動態上の優位をもちながらも、さまざまな問題に足をとられるアメリカ。そして、人口動態上の大きな衰退途上にある日本とヨーロッパ。ここからどのような地政学の未来が導き出されるだろうか。ヨーロッパと日本の出生率は人口置換水準を下回り、生産年齢人口はかなり前から減少し始めている。ヨーロッパと東アジアにおけるアメリカの同盟国は今後数十年で自国の防衛コストを負担する意思も能力も失っていくだろう。一方、その多くがアメリカの同盟国やパートナーになるポテンシャルとポジティブな人口トレンドをもつインドネシア、フィリピン、そしてインドが台頭しつつある。国際秩序の未来が、若く、成長する途上世界における民主国家の立場に左右されることを認識し、ワシントンはグローバル戦略を見直す必要がある。・・・

Current Issues

  • 米台湾戦略の明確化を
    ―― 有事介入策の表明で対中抑止力を

    リチャード・ハース 、デビッド・サックス

    雑誌掲載論文

    台湾有事にアメリカの介入があるかないか。これを曖昧にするこれまでの戦略では抑止力は形作れない。むしろ、「台湾に対する中国のいかなる武力行使に対しても、ワシントンは対抗措置をとる」と明言すべきだ。「一つの中国政策」から逸脱せず、米中関係へのリスクを最小限に抑えつつ、この戦略見直しを遂行できる。むしろ、有事介入策の表明は、抑止力を高め、米中衝突の危険がもっとも高い台湾海峡での戦争リスクを低下させることで、長期的には米中関係を強化することになる。アメリカが台湾の防衛に駆けつける必要がないようにする最善の方法は、中国にそうする準備ができていると伝えることだ。

  • 温暖化で世界は大混乱に
    ―― ティッピング・ポイントが引き起こす連鎖

    マイケル・オッペンハイマー

    雑誌掲載論文

    近い将来、一生に一度のはずの大災害に、われわれは毎年のように見舞われるようになる。特に、沿岸地域では、2050年までに、かつてなら100年に一度のレベルだった洪水が毎年のイベントになるだろう。専門家は長く(気候変動が急減に悪化し始める)ティッピング・ポイント(決壊点)のことを心配してきたが、これが他の災害との連鎖反応を起こす恐れがある。例えば、グリーンランドと南極の氷床の多くが融解すれば、世界の海面が上昇するだけでなく、北極圏とユーラシア大陸の永久凍土層が融けだし、大量のメタンガスと二酸化炭素が放出されて温暖化のペースは一段と加速する。すでに温室効果ガスの排出削減努力だけでなく、「劇的な変化に人間をいかに適応させていくか」を考えなければならない時期に入っている。向こう30年間に排出量がどう変わろうと、地球の気温が大幅に上昇するのはもはや避けられないからだ。

  • 気候変動で故郷を追われる人々
    ―― 温暖化と環境難民の増大

    ソニア・シャー

    雑誌掲載論文

    気候変動が、人が生活できる地域を少しずつ削り取りつつある。すでに、気候変動によって住み慣れた土地から離れざるを得なくなった環境難民が発生しているにもかかわらず、政府も国際機関もこの問題にうまく対処できずにいる。国連の国際移住機関によると、2050年までには2億人が気候変動関連の理由で故郷を後にせざるを得なくなる恐れがある。問題は、気候変動によって追い込まれた人々を助けるメカニズムはもとより、避難民が移住するのを助ける法的枠組みが存在しないことだ。むしろ、各国政府は、「気候変動難民、環境難民」という新集団を無視し、気候変動ショックに彼らをさらしたままにし、その後、人権を無視した態度をとることも多い。・・・

論文データベース

カスタマーサービス

平日10:00〜17:00

  • FAX03-5815-7153
  • general@foreignaffairsj.co.jp

Page Top