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2020年2月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2020年2月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2020年2月号 目次

資本主義の未来

  • 「新社会主義運動」の幻想と脅威
    ―― 富は問題ではない

    ジェリー・Z・ミュラー

    雑誌掲載論文

    資本主義には強さと弱さがある。実際、自由市場を基盤とする資本主義が18世紀に定着して以降、このシステムは長く批判にさらされてきた。一連の改革運動が刺激され、これが19世紀型のレッセフェール(夜警)国家を今日の先進民主国家が導入する混合経済・福祉国家(mixed welfare States)へ変貌させた。かつて「社会民主主義」と呼ばれたシステムを現状で模索する左派勢力も、おおむね似たものを追いかけている。だが、「新社会主義運動」はこれらとは違う。そのルーツは社会民主主義ではない。資本主義を改革するのではなく、むしろそれを終わらせようとする民主社会主義にある。彼らは、金の卵を産むガチョウの健康など気にかけていない。これを当然視した上で、不公正な状況を超富裕層の資産の突出を削り取るという簡単かつ直接的な方法でなくそうとしている。

  • ネオリベラリズムの崩壊と新社会契約
    ―― 社会民主主義では十分ではない

    ミアタ・ファーンブレー

    雑誌掲載論文

    格差はつねに資本主義社会の特徴の一つだったが、人々は自分たちの生活の質が改善し、機会が拡大していると感じ、子供たちは自分たちよりも良い生活を送れると期待できる限り、そうした格差に目くじらを立てることはなかった。だが、この数十年でそうした機会が消失し始めると、システムそのものが不公正で、多くの人にとって利益にならないのではないかという見方が勢いを持ち始めた。新しい経済モデルを導入して人々をエンパワーし、公共財やインフラの所有を広げることで経済における市民の発言権を高めるべきだ。コミュニティレベルに権限を委譲し、生活を改善するための人々の集団行動を受け入れる、アクティブで分権化された国家が必要になる。

  • メリトクラシーと新エリート
    ―― 中間層の崩壊とエリートの呪縛

    ニコラス・レマン

    雑誌掲載論文

    法学者ダニエル・マルコビッチは、ここで取り上げる新著『メリトクラシーの罠』で、メリトクラシー(能力主義)の勝者たちは、エリート校を卒業するや、金融や法律などの領域で莫大な給料を得る「上位労働者」になると指摘している。「自分たちだけが実行できる仕事に大きな報酬が与えられるように経済的価値を定義し直し、あらゆる経済活動を自分たちの管轄にたぐりよせる」。こうして、中間層にとっては「停滞・枯渇し、縮小する世界」が作り出された。機会の平等のためのツールとしてメリトクラシーを正当化し、その結果、格差がこれまでにないレベルに拡大し、特権を覆すどころか、メリトクラシーの勝者には効率的な相続メカニズムの基盤が提供された。・・・但し、このマルコビッチの見方に説得力はない。・・・

  • 資本主義を救う改革を
    ―― 株主資本主義からステイクホールダー資本主義へ

    クラウス・シュワブ

    雑誌掲載論文

    1980年代以降の40年で、あらゆるタイプの経済格差が拡大した。社会システムにも亀裂が生じ、社会を包み込むような経済成長を実現できなくなった。一方で、市場主義は深刻な環境問題も作り出した。利益の最大化を至上命題とする株主資本主義によって問題の多くが引き起こされている。幸い、若者世代は、企業が環境や社会的満足を犠牲にして利益を模索することをもはや認めていない。この意味でも現状の資本主義はすでに限界に達している。内側からシステムを改革しない限り、存続はあり得ない。企業は「ステイクホールダー(公益)資本主義」を受け入れ、社会・環境上の目的を実現するための措置を積極的に果たしていく必要がある。われわれは非常に大きな選択に直面している。

  • 資本主義の衝突
    ―― 「民衆の資本主義」か「金権エリート資本主義」か

    ブランコ・ミラノヴィッチ

    Subscribers Only 公開論文

    グローバル経済の未来を左右するのは、資本主義と他の経済システムの競争ではなく、資本主義内の二つのモデル、つまり、「リベラルで能力主義的資本主義」と「政治的資本主義」間の競争だろう。リベラルな資本主義が「民衆の資本主義」へ進化し、拡大する格差問題にうまく対処しない限り、欧米のシステムは、社会主義ではなく、中国型の政治的資本主義に近づき、金権政治的になっていくだろう。格差を是正し、民衆の資本主義への進化を実現するには、中間層により大きな金融資産の保有を促す税インセンティブを与え、超富裕層の相続税を引き上げ、公教育の質を改善し、選挙キャンペーンを公的資金でカバーできるようにしなければならない。そうしない限り、政治的資本主義同様に、排他的な少数で構成される特権階級の家庭が、将来に向けて永遠にエリートを再生産していくようになる。

  • 人口減少と資本主義の終焉
    ―― われわれの未来をどうとらえるか

    ザチャリー・カラベル

    Subscribers Only 公開論文

    ゼロ成長やマイナス成長の社会ではいかなる資本主義システムも機能しない。その具体例が、高齢化し、人口が減少している日本だ。人口の成長がゼロかマイナスの世界では、おそらく経済成長もゼロかマイナスになる。人口規模の小さな高齢社会では消費レベルも低下するからだ。既存の金融・経済システムが覆されることを別にすれば、これに関して、本質的な問題はない。今後、人口比でみれば、十分な食糧が供給され、潤沢に商品が出回るようになるかもしれない。気候変動への余波も緩和されるだろう。だが、資本主義はうまくいってもぼろぼろになり、悪くすると、完全に破綻するかもしれない。今後、世界の人口が減少してゆけば、経済成長は起きるだろうか。この設問にどう応えるかの準備ができていないだけでなく、どう答えるかさえ考え始めていない。これが世界の現実だ。

ネットワーク相互依存と大国間競争

  • 鎖につながれたグローバル化
    ―― サプライチェーン、ネットワークと経済制裁

    ヘンリー・ファレル   アブラハム・L・ニューマン

    雑誌掲載論文

    デジタルネットワーク、金融フロー、サプライチェーンが世界中に拡大し、アメリカを中心とする各国は、これを、他国を捕獲する蜘蛛の巣とみなすようになった。米国家安全保障局はあらゆる種類のコミュニケーションを傍受し、米財務省は国際金融ネットワークを利用して、無法な国家と金融機関に制裁を課している。一方、ファーウェイが5Gをグローバルレベルで支配すれば、北京もファーウェイをゲートウェイにして世界の通信に侵入し、これまでアメリカが中国に対して試みてきたことを、アメリカに対して実施できるようになる。日本も重要な産業用化学製品の流通を制限することで、韓国のエレクトロニクス産業を狙い撃ちにした。鎖につながれたグローバル化の現実を受け入れ、理解することが、これらのリスクを抑えるために必要不可欠な最初のステップになる。

  • 大国間競争の時代へ
    ―― アジアとヨーロッパにおける連合の形成を

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    雑誌掲載論文

    未来の歴史家は、21世紀初めにワシントンが超大国間の競争に焦点を合わせるようになったことを、もっとも重要な帰結を伴ったストーリーとして解釈することになるはずだ。大国間競争のロジック、それに応じた軍事、経済、外交行動の再編は大きな流れを作り出しており、このトレンドが、今後のアメリカの外交政策を形作っていくことになる。ライバルは台頭する中国そして復讐心に燃えるロシアだ。かつて同様に、アメリカが安全保障を確保し、自由社会としての繁栄を実現していくには、アジアとヨーロッパというもっとも重要な地域で好ましいパワーバランスを確保し、アメリカの社会と経済そして同盟国を、パワフルなライバルとの長期的競争に備えさせる必要がある。

  • 国内経済と世界経済のバランス
    ―― グローバル化と歴史の教訓

    ダニ・ロドリック

    Subscribers Only 公開論文

    国が貿易するのは、他国を利するためではなく、国内に利益をもたらすからだ。そうした利益が国内経済に公正に分配されるのなら、(貿易への市場)開放を求める国際ルールは必要ではなくなる。国は自らの意思で国を開放しようとする。だが、昨今のハイパーグローバル化は、かつての「金本位制」のようなものだった。これによって、現状の問題の多くが作り出されている。より公正で持続性の高いグローバル経済を形作るつもりなら、より柔軟だった「ブレトンウッズ体制」に目を向けるべきだろう。経済・社会面でのギャップを埋めていくには、国内政策の優先度を引き上げ、国際政策のそれを引き下げる必要がある。グローバル統治(と国際ルール)は軽く柔軟なものにし、各国政府に独自の規制を選べるようにしなければならない。次のグローバル化の鍵はここにある。

  • 変化する貿易と経済地図
    ―― デジタルグローバル化にどう備えるか

    スーザン・ルンド ローラ・タイソン

    Subscribers Only 公開論文

    グローバル化は反グローバル化に道を譲ったのではなく、新しい段階に入ったにすぎない。モノのグローバル化から最大の恩恵を引き出した政治・経済エリートと、最大の余波にさらされた労働者コミュニティーが激しい論争を展開している間にも、デジタルテクノロジーが支える新しいグローバル化が急速に進展している。デジタルグローバル化は、イノベーションと生産性を高め、かつてない情報アクセスを提供することで、世界中の消費者とサプライヤーを直接結びつけることができる。だが、これも破壊的プロセスを伴う。特定の経済部門や雇用が消滅する一方で、新たな勝者が生まれるだろう。企業と政府は、新しいグローバル化に派生する迫り来る破壊に備える必要がある。

  • デジタル企業の市場独占と消費者の利益
    ―― 市場の多様性とレジリエンスをともに高めるには

    ビクター・メイヤー=ションバーガー  トーマス・ランゲ

    Subscribers Only 公開論文

    グーグル、フェイスブック、アマゾンなどの「デジタルスーパースター企業」は、企業であるとともに、膨大な顧客データを占有する市場でもある。消費者の好みや取引について、運営会社がすべての情報を管理し、そのデータを使って独自の意思決定アシスタントに機械学習をさせている。買い手は「おすすめ」と選択肢の示され方に大きな影響を受ける。こうした市場は、レジリエントで分散化された伝統的市場よりも、計画経済に近い。しかも、状況を放置すれば、このデジタル市場は、外からの意図的な攻撃や偶発的な障害によってシステムダウンを起こしやすくなる。だが、必要なのは企業分割ではない。むしろ、スーパースター企業が集めたデータを匿名化した上で、他社と共有するように義務づけるべきだろう。データが共有されれば、複数のデジタル企業が同一データから最善の洞察(インサイト)を得ようと競い合うようになり、デジタル市場は分散化され、イノベーションも刺激されるはずだ。

  • 中国対外行動の源泉
    ―― 米中冷戦と米ソ対立の教訓

    オッド・アルネ・ウェスタッド

    Subscribers Only 公開論文

    中国はかつてのソビエト同様に、共産党が支配する独裁国家だが、違いは国際主義(共産主義インターナショナル)ではなく、ナショナリズムを標榜していることだ。ソビエト以上の軍事・経済的なポテンシャルをもち、同様に反米主義のルーツを国内にもっている。しかも、アジアにおけるアメリカの立場と地位を粉砕しようとする中国の路線は、スターリンのヨーロッパに対する試み以上に固い決意によって導かれているし、中ロ同盟出現の危険もある。何らかの(国家的、社会的)統合要因が作用しなければ、目的を見据えて行動するアメリカの能力の低下によって、多くの人が考える以上に早い段階で、恐れ、憎しみ、野望によって人間の本能が最大限に高まるような制御できない世界が出現する危険がある。

  • プーチンとロシア帝国
    ―― なぜ帝国的独裁者を目指すのか

    スーザン・B・グラッサー

    Subscribers Only 公開論文

    青年期のプーチンが信じたのは、学校で強制されるマルクス・レーニンのイデオロギーではなかった。それは、英雄的な超大国のイメージ、廃れてはいても依然として野心を捨てていないホームタウン、サンクトペテルブルクの帝国的な壮大さだった。力こそが彼の信じるドグマであり、幼少期に暗記させられた「労働者の英雄主義」よりも、皇帝たちのモットーだったロシアの「正統性、独裁制、民族性」の方が、プーチンにはなじみがよかった。若手のKGBエージェントだった当時から、そうした帝国思考をもっていたとすれば、その多くが「永続的な不安」によって規定されている長期支配のパラドックスに直面しているいまや、彼の帝国への思いと志向はますます大きくなっているはずだ。

Current Issues

  • 欧州連合の未来
    ―― ヨーロッパの理念に何が起きたのか

    アンドリュー・モラフチーク

    雑誌掲載論文

    欧州連合に対する批判は「ブリュッセルはもっと活動を縮小しろ、いや、もっと拡大しろ」という二つの批判に大別できる。ともに、EUは国民国家に取って代わろうとしているとみなし、前者はそれに反対し、後者はそれに賛成している。反対派には、イギリスのEU離脱(ブレグジット)派や右派ポピュリストを支える欧州懐疑派、そしてフランス、ハンガリー、イタリア、ポーランドのナショナリスト同盟などが含まれる。これら統合反対派は、われわれは「国民国家を守る」と主張する。「もっと拡大しろ」と考える左派は、右派ほど注目されていないが、ヨーロッパ全体、特にブリュッセルでは右派よりも多数派だ。問題は左派の立場があまりに理念的、夢想的でリアリズムに欠けることだ。・・・

  • 気候変動対策か石油資源開発か
    ―― なぜ新資源の開発が停滞しているか

    エイミー・マイヤーズ・ジャッフェ

    雑誌掲載論文

    多くの国がついに化石燃料への依存を減らそうと試み始めたタイミングで、石油や天然ガス資源の発見が相次いでいる。だが、途上国における化石燃料資源の発見が、これまでのように打ち出の小槌になることはもうないのかもしれない。うまくいっても、これが最後のチャンスかもしれない。闇雲に開発に向かうのではなく、「気候変動対策と途上国の経済開発のバランスをどうとるか」という側面に配慮しなければならないからだ。実際、気候変動重視派は、例えば、古くからの豊かな産油国であるノルウェーに対して、石油資源をもつ貧困国に市場を譲るために、国内の石油産業を閉鎖することを求めている。資源国にとって、石油と天然ガス輸出からの歳入に国家予算の多くを依存することのリスクと意味合いは大きく変化している。

  • CFR Updates
    オーストラリアの森林火災
    ―― 次なる猛威に政府はどう備えるか

    アリス・C・ヒル

    雑誌掲載論文

    2019年9月以降続いているオーストラリアの山火事は、依然として、収束する気配がない。すでに1000万ヘクタール以上が消失し、20人以上が犠牲になり、死亡した野生動物は10億匹に達すると言われる。オーストラリアはこれまでも森林火災に悩まされてきた。だが、多くの人が火災の余波を受けやすい地域で生活するようになったことが、そのダメージを大きくしている。気候変動も衝撃を大きくしている。気温が上昇しているだけでなく、オーストラリアはこの3年にわたって干ばつに見舞われている。この環境のなかで、火事が急速な広がりをみせ、極端に高温の森林火災と化し、特有の気象状況を作り出し、さらなる森林火災を引き起こす稲妻を誘発している。・・・

ソレイマニ後の中東

  • ヒズボラが対米報復策を主導する?
    ―― ソレイマニ殺害とレバノン

    ブライアン・カッツ

    雑誌掲載論文

    イラクの米軍基地に対するミサイル攻撃は、ソレイマニ殺害に対してテヘランが最初に示したシンボリックかつ公然たる報復攻撃だったが、今後、数カ月、数年にわたって報復は続くだろうし、そこで大きな役割を果たすのはレバノンのヒズボラになるはずだ。アメリカとの直接対決を回避しつつ、コッズ部隊とそのパートナーであるヒズボラは、中東における、あるいは中東を越えた地域での米軍を対象とする非対称攻撃の連携を試みるかもしれない。その目的は、「アメリカが中東でプレゼンスをもつことのコストは恩恵を上回る」と感じるほどに、その活動を混乱させ、脅かし、制限することに据えられるはずだ。

  • 米・イラク関係の終焉?
    ―― ドローン攻撃のもう一人の犠牲者

    エマ・スカイ

    雑誌掲載論文

    シーア派のマリキ首相のあからさまな宗派政治がスンニ派の不満といらだちを高め、イスラム国がイラクで支持される政治・社会環境を作り出した。そのイスラム国掃討のために、イラクで米軍とともに闘った(シーア派の)カタイブ・ヒズボラが米大使館を襲撃したことで、今回のソレイマニ殺害への流れが作り出された。しかし、イラン革命防衛隊の司令官を殺害した米軍のドローン攻撃には別の犠牲者がいたのかもしれない。「米イラク関係」だ。アメリカとイランの双方と同盟関係にあるイラクは、いまやこの二つの国家による戦いの最前線に組み込まれてしまった。アメリカは、イランが支援するイラクのシーア派武装集団の脅威の高まりを警戒し、すでにバスラの領事館を閉鎖している。ここで、バグダッドの大使館を閉鎖すれば、多大なる血と財産を注ぎ込んできたイラクとの関係を不幸にも終わらせることになる。

  • さらなる中東紛争を回避するには
    ―― 安定化には何が必要か

    ケリー・マグサメン

    雑誌掲載論文

    「不必要な戦争」にこだわると大統領としての歴史的評価にどのような影響がでるか、トランプはジョージ・W・ブッシュに話を聞くべきだろうし、泥沼からいかに足を抜くかについては、オバマに電話をすべきだろう。イランにさらにペナルティを課すことを求める有志連合は存在せず、最大限の圧力も望ましい結果につながっていない。しかも、(思うままに行動してきた)トランプは国際コミュニティの潤沢な善意をうまく利用できるような立場にはない。多くの諸国は、トランプ政権のイラン政策を、イラン核合意からの離脱以降の一連のプロセスに派生する「身からでたさび」とみなしている。

  • 中東における全面戦争のリスク
    ―― 何が起きても不思議はない

    ロバート・マレー

    Subscribers Only 公開論文

    中東のいかなる地域における衝突も中東全体を紛争に巻き込む引き金になる恐れがある。一つの危機をどうにか封じ込めても、それが無駄な努力になる危険が高まっているのはこのためだ。しかも、国家構造が弱く、非国家アクターが大きな力をもち、数多くの大きな変化が同時多発的に進行している。イスラエルと敵対勢力、イランとサウジ、そしてスンニ派の内部分裂が存在し、これらが交差するだけでなく、ローカルな対立と絡み合っている。「サウジに味方をすることは、(イエメンの)フーシに反対するということであり、それはイランを敵に回すことを意味する」。こうしたリンケージが入り乱れている。ワシントンが中東から撤退するという戦略的選択をしようがしまいが、結局、アメリカはほぼ確実に紛争に巻き込まれていく。

  • 新アラブ秩序を規定する恐れと野望
    ―― 安全保障のジレンマに支配された中東

    マーク・リンチ

    Subscribers Only 公開論文

    アラブの春の余波のなか、中東は大きく変化している。カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)という豊かな湾岸諸国が繁栄を維持する一方で、エジプト、イラク、シリアという伝統的な地域大国はいまや国家としてほとんど機能していない。リビアを含む破綻国家、そして国家基盤が揺らいで弱体化した国も増えている。いまやほぼすべてのアラブ国家は「恐れ」と「野望」をもっている。国内での民衆蜂起、イランパワーの拡大、アメリカの中東からのディスエンゲージメント(で引き起こされる事態)に対する「恐れ」をもつ一方で、弱体化した国と国際的な混乱につけ込みたいという各国の「野望」が、破壊的な紛争への関与へと走らせ、地域全体をカオスに巻き込みかねない状況にある。

  • 制御不能な戦争
    ―― イランとの衝突は瞬く間に地域紛争へ拡大する

    イラン・ゴールデンバーグ

    Subscribers Only 公開論文

    関係プレイヤーのなかに戦争を望んでいる者はいないが、それでも戦争になりかねない。アメリカとイランの局地戦は、スンニ派の湾岸諸国やイスラエル、一方でイランの同盟勢力であるイラク、レバノン、アフガニスタン、イエメン、シリアのシーア派を巻き込んだ地域紛争に瞬く間に拡大する。イランはホルムズ海峡を脅かし、世界の原油価格を高騰させる。大がかりな作戦が終わっても、紛争は続き、イランの傀儡勢力は、中東における米軍やそのパートナーを長期的に攻撃し続ける。イランから流出する難民が作り出す危機の地域的な不安定化作用がどのようなものになるかも考えなければならない。トランプ政権とイスラム共和国はもっと慎重になる必要がある。そうしない限り、両国は、瞬く間に制御不能となる危険で大きなコストを強いられる渦に巻き込まれるはずだ。

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