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2015年6月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2015年6月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2015年6月号 目次

ドローン― その無限大のポテンシャル

  • ドローンのポテンシャルを生かすには
    ―― 無限大のポテンシャルVS.規制

    グレッチェン・ウェス

    雑誌掲載論文

    いまやドローンテクノロジーは軍事領域だけでなく、政府や警察などの公的部門でも利用されるようになった。しかし、民間での利用は市民がドローンを公園に持ち込んで趣味で楽しむ程度で、商業利用はほとんど進んでいない。たしかに、ドローンの登場で不動産エージェントは、これまでは考えられなかった角度から物件の写真をとれるようになり、農家は作物の病害虫被害をかつてなく早い段階で発見できるようになった。だが、ドローンの商業利用のポテンシャルは無限大だ。この新しい産業の成長を抑え込むような行き過ぎた規制を導入すべきでない。2025年までに商業ドローンの世界市場規模は17億ドルに達するとみなす予測もある。現実に即した分かりやすいルールを考案すれば、ドローンの商業利用は一気に開花するだろう。

  • ヨーロッパの人道主義はどこへいった
    ―― ボート難民が揺るがす欧州の理念

    ファブリジオ・タッシナーリ

    雑誌掲載論文

    リビアのカダフィ政権崩壊後、2011年半ばまでに3万のリビア人がイタリアのランペドゥーザ島へと押し寄せた。フランス当局は、移民たちが(イタリアを経由して)フランスに入国するのを阻止しようと、イタリアとの国境線を一方的に閉鎖した。2014年には、地中海を経てヨーロッパへ向かう難民の数は20万を超えるようになり、その途上で犠牲になる人々も3500人に達した。だが、リビアで拠点を築きつつあるイスラム国がヨーロッパを南から脅かす危険が生じているために、ヨーロッパは、アフリカからの難民流入を「対処すべき人道危機」としてではなく、むしろ封じ込めるべきリスクとみなしている。このまま、ヨーロッパがボート難民を受け入れる方法を見出せなければ、地中海は再びヨーロッパの安定を脅かすアキレス腱になる。開放的国境線という近代ヨーロッパの中核理念が、困窮する難民たちによって変化していくとすれば、転覆したボートが、ヨーロッパの失敗を象徴することになるだろう。

  • TPP交渉の早期決着は難しい
    ―― 妥結を阻む構造的障害

    リチャード・カッツ

    雑誌掲載論文

    TPP交渉は、「経済的には取るに足らぬものの政治的に重要な案件」をめぐって日米が長期間にわたって論争を続けているために停滞している。牛肉や豚肉に関する日本の(輸入障壁、日本製自動車部品輸入に対するアメリカの関税撤廃までの時間枠が依然として争点とされている。そしてTPP交渉に参加している他の10カ国は、日米が合意に達しないことを理由に、数多くの案件の妥結を先送りしている。しかも、米議会が交渉進展の鍵を握る「大統領貿易促進権限(TPA)」をスムーズに承認するとも思えない。もはやホワイトハウスは、2015年中にTPPを批准に持ち込むという現在の路線を見直すべきだろう。TPPは今後長期的に貿易ルールの規範とされていくのだから、ワシントンは早い段階で合意を決着させることにこだわるよりも、むしろ、合意案をさらに洗練していくことを重視すべきだろう。

中国の夢と現実 ―― 論争 シルクロード構想とAIIB

  • 中国の夢と現実
    ―― 習近平時代の中国の夢と民衆の思い

    ペリー・リンク

    雑誌掲載論文

    中国人であることは何を意味するのか。それは「世界に冠たる文明の一部となり」、儒教的価値に即した適切な行いを実践し、守っていくことを意味する。こうした儒教思想を前提とする伝統的な道徳・政治システムは非常に長期にわたって維持されてきた。西欧列強のテクノロジー、ナショナリズム、共産主義によって大きな衝撃は受けたが、それでも基本的な流れは変化しなかった。民主主義という近代的なラベルを取り入れつつも、中国は伝統的な権威主義モデルを維持しようと試みた。だが、この矛盾がいまや大きなきしみ音をたてている。中国的特性の今日的価値観が何であるかについてのコンセンサスはもはや存在しないし、いまや中国の大衆は民主主義という言葉をそのまま受け入れている。だがそれでも、習近平は伝統的な政治道徳モデルを復活させようとしている。事実、彼の言う「中国の夢」は富や国家的プライドだけでなく、権威への服従を強調している。・・・

  • 中国の新シルクロード構想
    ―― 現実的な構想か見果てぬ夢か

    ジェイコブ・ストークス

    雑誌掲載論文

    シルクロード構想は、アメリカのアジア・リバランシング戦略への対抗策として考案された。陸と海の新シルクロードに沿って巨大な経済圏を形成しようとする、一帯一路とも呼ばれるこの構想は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)による資金的裏付けをもち、中国の政治・経済エリートにも支持されている。相手国のインフラ整備を助けるだけでなく、中国(の国有企業)が抱え込んでいる過剰生産能力のはけ口としての外国市場を切り開き、人民元の国際的役割を強化できる可能性もある。いずれ、中国が主要な役割を担う非欧米型国際ネットワークの構築という北京の野望を実現する助けになるかもしれない。しかし、この構想は、ロシアのユーラシア経済連合、インドの対外構想と直接的に衝突するし、結局は、アフリカや中東での紛争に引きずり込まれ、中国のパワーを時期尚早に広く薄く拡散させることになるだろう。・・・

  • AIIBを恐れるな
    ―― 米日がAIIBに参加すべき理由

    フィリップ・Y・リプシー

    雑誌掲載論文

    欧米は、経済的・地政学的に台頭する中国がアジアインフラ投資銀行(AIIB)を立ち上げた意図を疑い、既存の国際的金融機関の役割を切り崩そうとしているのではないかと懸念している。たしかに、アメリカが世界銀行を通じて、日本がアジア開発銀行(ADB)を通じて優位を手にしてきたのと同様に、AIIBは中国に優位を与えることになるだろう。だが、多国間開発銀行で主導権をもつことは大国の証のようなものだ。重要なポイントは、「多国間開発銀行の設立か、あるいは空母の調達のいずれかで、中国が影響力と国際的な名声を確立しようと試みるとして、どちらの道筋が好ましい」とわれわれが考えるかにある。米日がAIIB構想に参加すればより大きな利益を確保できるし、AIIBの今後のコースに影響を与えることもできるだろう。

  • 中国との貿易競争をいかに管理するか
    ―― AIIB時代の貿易と米輸出入銀行

    フレッド・P・ホッチバーグ

    雑誌掲載論文

    この20年で、世界市場での輸出競争は根本的に変化した。ますます多くの国が、確立された国際的ガイドラインを無視した行動をとるようになり、実質的に無法地帯のなかで輸出競争が展開されている。相手国への輸出契約を独占しようと数十億ドル単位の資金をばらまく中国のやり方を前に、輸出入銀行にこれまで以上に大きな権限を与えて柔軟に活動させている国も多い。しかも、新開発銀行(BRICS銀行)、そして2015年末までに活動を開始する予定のアジアインフラ投資銀行(AIIB)が、途上国の大規模プロジェクトへの融資に今後大きな役割を果たすことになる。このレースを規定するルールは極めて重要だ。ルールをねじ曲げた行動がとられれば、その結果もいびつなものになる。・・・

新しい日本モデルを考える

  • 日本の新しいエネルギーミックス
    ―― 原子力とソーラーを組み合わせよ

    バラン・シバラム

    雑誌掲載論文

    ソーラーパワーの電力網へのアクセス制限や固定価格買取制度の見直しなど、日本ではソーラーパワー拡大を阻む逆風が吹いている。しかし、「原子力かソーラーか」ではなく、この二つを組み合わせれば、2020年までに日本は化石燃料輸入を3分の1減らすことができるし、電力需要の3分の1を満たせるようになる。日本の電力会社は、ソーラー電力を買い取って電力網に組み込むよりも、安定した資本収益を期待できる一元的な原発施設のほうが好ましいと考えているのかもしれない。しかし、原子力とソーラーを組み合わせてともに推進すれば、エネルギー安全保障を強化し、経済を拡大し、地球温暖化対策上のゴールに近づき、他の諸国が踏襲できるモデルを示すことができる。日本は、安全性に配慮しながら原子力による電力生産を強化するとともに、ソーラーエネルギーを育んでいく長期的なエネルギービジョンを示すべきだろう。

  • 高齢化と新しい日本モデル
    ―― 先端テクノロジーとシニア人材の活用を

    ジョナサン・ウォーツゼル他

    雑誌掲載論文

    すでに2013年の段階で、日本の人口に占める65歳以上の高齢者の割合は25%。この比率が2040年までに36%に、2060年には40%に達すると予測されている。だが、現状は未来を捉え直すチャンスでもある。まず、引退年齢を引き上げて貴重な経験とスキルをもつ人材を現役労働力に引き留めることが不可欠だ。一方で、労働力の拡大を通じた経済成長がもはや望めない以上、テクノロジーを駆使して生産性の向上を図り、経済の勢いを作り出す必要がある。データを利用したオートメーション、3Dプリンティング技術などを導入すれば、組立ラインを(合理化し)再設計できるし、工場にロボットを導入することもできる。高齢社会に対応するためにも、人的資本と優れたテクノロジーを動員する必要がある。そう試みれば、日本は、高齢化が進む他の諸国が踏襲できるロードマップを描けるかもしれない。

  • 実用化に近づいたソーラーパワー
    ―― なぜソーラーは安く実用的になったか

    ディッコン・ピンナー他

    Subscribers Only 公開論文

    いまやソーラーパワーは他の電力資源と価格的に競い合えるレベルに近づきつつあり、2050年までにソーラーエネルギーは、世界の電力の27%を生産する最大のエネルギー資源になると予測されている。ソーラーパワーの急激な台頭を説明する要因としては、政府の促進策、低価格化と効率化、そして技術革新などを指摘できる。今後も多くの市場で、ソーラーパワーの電力生産コストは8―12%低下すると考えられているし、蓄電技術の進化もソーラーパワーの台頭を支えることになるだろう。電力価格が低下すれば、電力会社は再編を余儀なくされるが、ソーラーパワーの普及によって、温室効果ガスの排出量削減という環境上の大きなメリットも期待できる。太陽光に恵まれた地域における新しい住宅のほとんどの屋根にソーラーパネルが設置されるとしても、いまや不思議はない。

  • 蓄電技術の進化が電力供給と経済を変える

    ジェームズ・マニュイカ他

    Subscribers Only 公開論文

    風力発電とソーラー発電にとって、電力生産に断続が生じることが大きな弱点だ。だがバッテリーストレージ(蓄電装置)があれば、これら再生可能エネルギーを蓄電し、必要に応じて使うことができるし、蓄電技術はエネルギー産業全体を揺るがすような、急速な技術革新を経験している。バッテリーストレージは、風力やソーラーファームからの電力だけでなく、家庭やオフィスビルに設置されているソーラーパネルからの電力も蓄電できる。さらに、送配電網に蓄電池を設置して、電気を貯蔵するグリッドストレージがあれば供給の信頼性と質を高め、電力価格を引き下げることにもつながる。エネルギー貯蔵技術がもたらす経済価値は2025年にはサウジアラビアのGDPにほぼ匹敵する規模に達すると試算される。18世紀以降この世に存在する電池(蓄電技術)が21世紀の経済の姿を大きく変貌させることになるかもしれない。

  • 高齢社会を前向きにとらえよ
    ―― 危機を機会に変えるには

    ジョセフ・F・カフリン

    Subscribers Only 公開論文

    「高齢化をとらえる上で重要なポイントは、長生きすることよりも、より幸せに生きるという視点を持つことだ。・・・隔離された高齢者の世界を形作るのは魅力的な選択ではない。・・・生涯で60-70年におよぶかもしれない勤労期間において3つか4つの異なる職種に就けるような制度が必要だろう」。(J・カフリン)

    「すでにアメリカでは老後は(公的支援だけではなく)自助で支えるべきで、引退後に備えておくべきだとみなす文化へと向かっている。・・・現在の仕事に、引退年齢を超えてさらに10-15年働けるかどうかは、どのような企業や産業で働いているか、その企業や産業が、(引退年齢に達した)従業員がそれまでの経験から身につけている知的資本を評価するかどうかに左右される」。(K・ミッチェル)

    「90歳の老人の面倒をどのようにみるかという視点も大切だが、経済成長を実現し、財政の持続性の問題を解決することにもっと焦点を合わせる必要がある。・・・20世紀に入ってから現在までに平均寿命は約30年延びている。われわれが90歳まで生きるのなら、引退年齢やそれに伴う政策も変化させなければならない」。(M・ホーディン)

  • プーチンとロシアの変節
    ―― 金権政治からナショナリズム・反欧米路線へ

    ジョシュア・ヤッファ

    雑誌掲載論文

    プーチン時代の最初の10年間なら、モスクワの政策に反対しても変人扱いされる程度だった。だが今や、異を唱えようものなら、国賊扱いされ、ロシアの歴史的な戦いの敵とみなされる。もはやロシアには、欧米主導の秩序に沿った民主主義国家のフリをするつもりはない。むしろ欧米にのけ者とされていることに誇りを感じている。プーチン政権は「ロシア経済が低迷しているのは外敵のせいだ」と市民を煽り立てるとともに、国内での抑圧を強化している。いまやロシアは、反米と反欧米という世界最強のイデオロギーの拠点となっている。北大西洋条約機構(NATO)を試し、ヨーロッパを切り崩そうとしている。この新プーチン時代の最大の難関は、さまざまな資源が不足しているにも関わらず、これまで以上に資金が必要になっていることだ。プーチンはこれまで長く、利権や恩恵をさまざまなグループに均等に分配する調整役を担ってきたが、いまや誰かを切り捨てざるを得なくなっている。・・・

  • ギリシャ危機と中国発世界不況
    ーー世界経済アップデート

    ルイス・アレクサンダー

    雑誌掲載論文

    ヨーロッパは、ギリシャ政府が到底満足しない程度の融資しかオファーしない。ここでギリシャは「ヨーロッパの条件を受け入れてユーロに留まるか、あるいは、別の道を選ぶか」を決めなければならなくなる。だが私は、最終的にギリシャはユーロ圏に留まるとみている。・・・(L・アレクサンダー)

    中国のGDPの50%は新規投資だ。つまり、次年度に前年度と同じ数と規模の高速道路、病院、道、橋、トンネル、工場、学校しか作らなければ、経済の半分は成長しなくなる。依然として成長の余地は残されているが、そう遠くない将来に、中国経済は縮小し始める。・・・いずれバランスシートを合理的なレベルへと縮小させなければならなくなる。このタイミングで中国発世界不況が起きる。(P・フィッシャー)

    グローバルな「ローフレーション」を前に世界では2014年12月以降、30を超える国の中央銀行が量的緩和、金融緩和、あるいは為替介入を試みている。結局、この状況ではアメリカ経済はドル高という重荷を引き受けざるを得ない。アメリカ経済のインフレ率もそう高くないが、ドル高をある程度容認せざるを得ない環境にある。(E・ゼントナー)

  • 中国の少数民族問題と人種偏見
    ―― なぜ少数民族は偏見と差別の対象にされたか

    グレイ・タトル

    雑誌掲載論文

    チベットの民族問題に象徴される、中国の少数民族抑圧路線は、北京が反体制派に対してみせる権威主義路線の一部として説明できると考えられている。だが現実には、中国の民族問題は、漢民族の少数民族に対する偏見と差別意識に根ざしている。チベット民族は長い間二流市民として扱われ、漢民族が享受している機会、権利、法的保護を奪われてきた。憲法と法律が保障する高度な自治も、実際には認められていない。北京は、国内の「民族間格差」を解決するには、チベットなど辺境地区の開発と成長を目指す「西部大開発」計画を進めることが最善の策だとかねて主張してきた。だが、現実にはチベット民族に恩恵はもたらされていない。漢民族の少数民族に対する偏見がなくならない限り、北京も少数民族政策を見直すことはないだろう。

  • 破綻国家へと向かうイエメン
    ―― イエメンにおけるサウジの挫折

    ファリア・アル・ムスリム

    雑誌掲載論文

    空爆では何も解決しない。国際コミュニティと地域諸国がイエメンを救うためのコミットメントを示さない限り、この国はシリア、リビア、イラクのような混乱、あるいはそれ以上のカオスに陥り、これら3カ国の問題が重なり合う無残な空間と化すかもしれない。イエメンに介入せざるを得なくなったこと自体、・・・サウジの失敗を物語っている。アラブ世界でもっとも豊かな国がアラブ世界の最貧国の政治ダイナミクスを変えるために空爆を実施せざるを得なくなった。現在の危機は、この数年にわたって地域諸国がイエメンの混乱に傍観を決め込んだことによって直接的に引き起こされている。仮にフーシ派を抑え込めたとしても、劣悪な生活レベル、少数派の政治的周辺化、弱体な政府といった紛争の根本要因は残存する。すでに1000人のイエメン人が空爆の犠牲になり、数千人が負傷し、数十万人が難民化している。

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