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国防と安全保障に関する論文

ワグネル反乱の真の教訓
―― なぜ治安組織は動かなかった

2023年8月号

アンドレイ・ソルダトフ 調査報道ジャーナリスト
イリーナ・ボロガン 調査報道ジャーナリスト

プーチン政権にとってより大きな脅威は、プリゴジンの反乱そのものではなく、反乱に対する軍と治安当局の反応だったかもしれない。ロシア連邦保安庁(FSB)は、ワグネル内に情報提供者までもっていた。だがFSBは、反乱が始まる前にそれを阻止することもせず、プリゴジンの計画についてモスクワに警告することもなかったようだ。プーチンは、権力の掌握に新たな不確実性を作り出すことなく、情報・治安当局の失敗に対処する方法をみつけなければならない。これまでとは違って、政治的安定を確保するために治安機関に頼ることはもはやできないのかもしれない。・・・

プーチン時代の終わりの始まり?
―― 反乱が暴きだした問題の本質

2023年8月号

リアナ・フィックス 米外交問題評議会 欧州担当フェロー
マイケル・キメージ アメリカカトリック大学歴史学部教授

プーチンの権力基盤は、親大統領派と「もの静かな群衆」たちだ。この堅固な基盤の上に、エリートや治安当局の対立派閥が存在し、プーチンはこれらの集団を互いに競い合わせてきた。一方、プリゴジンは、前線の悲惨な状況と「国防省にロシア軍の栄光についての話を聞かされ、現実を知らないプーチン」の孤立を際立たせた。今回の反乱に続くのは、かつての状況を回復し、屈辱を晴らし、おそらくは報復しようとするプーチンの試みだろう。動揺、逆襲、不確実性が状況を支配することになるし、この状況が短期間で終わるとは考えにくい。ウクライナでの戦争が終結し、ロシアの権威主義が弱まる」という最善のシナリオが実現されることを望む一方で、われわれは最悪のシナリオに備える必要がある。

ワグネルの反乱とロシアの権力抗争

2023年8月号

トーマス・グラハム 米外交問題評議会 特別フェロー(ロシア、ユーラシア担当)

反乱(rebellion)の余波のなかで、体制内で権力の再編が進むかもしれない。(プリゴジンによる)反乱の芽を摘めなかった責任を誰かが取らなければならない。政府内部では、エリート派閥が自分たちを守ってライバルを陥れようと、責任のなすりあいが起きるだろう。今後数週間で、モスクワにおける勝者と敗者が明らかになるだろう。(今回の事件が)ロシア上層部の注意を戦争からそらすことは避けられないだろう。この反乱がどのように決着するにせよ、モスクワは今後同様の脅威が出現しないように、より多くの資源を投入しなければならなくなるはずだ。危機感を高めたモスクワが国内治安強化のために要員と資源を振り分けられるように、キーウはロシア国内の標的への攻撃(陽動作戦)を試みるかもしれない。

中国のグローバル軍事インフラ
―― 軍事的影響力を支える港湾ネットワーク

2023年7月号

アイザック・カードン カーネギー国際平和財団 シニアフェロー(中国研究)
ウェンディ・ロイタート インディアナ大学 アシスタント・プロフェッサー(国際関係論)

北京は、中国企業が管理・所有するグローバルな港湾ネットワークを、中国海軍のために利用している。2017年にジブチに初の外国基地を得たが、中国は次の外国基地を確保できずにいる。それでも、北京がワシントンと「ほぼ同格のライバル」になれたのは、中国企業が保有する、海洋港湾インフラのグローバルネットワークを軍民の目的で利用し、中国海軍のリーチを強化しているからだ。中国海軍がグローバルに投射する軍事パワーは、すでに国際安全保障の見取り図を変化させている。この意味でも、中国の外国における港湾活動の性格と範囲、それがどのように北京の利益に貢献しているかを理解することは極めて重要だろう。

勝利なき戦争と外交
―― いかにウクライナでの戦闘を終わらせるか

2023年7月号

サミュエル・チャラップ ランド研究所 シニア・ポリティカルサイエンティスト

いまこそ、ウクライナ戦争をどのように終わらせるかについてのビジョンを描くべきだろう。15カ月に及ぶ戦闘で明らかになったのは、たとえ外部からの支援があったとしても、双方には相手に決定的な軍事的勝利を収める能力がないということだ。このままでは、はっきりとした結果を得られぬまま、数年にわたって壊滅的な紛争が続く恐れがある。休戦を前提とする戦闘の終結では、ウクライナは、一時的に全ての領土を回復できない状況に直面するが、経済的に回復するチャンスを手にし、死と破壊の日々と決別できる。少なくともこの1世代でもっとも重大な国際的危機となったこの紛争に対する効果的な戦略は、アメリカと同盟国が紛争の終わりを働きかけることだ。

プーチンの心理と世界観
―― ロシアの核使用リスクを考える

2023年7月号

ローズ・マクダーモット ブラウン大学 教授(国際関係論)
リード・ポーリー ブラウン大学 アシスタントプロフェッサー(政治学)
ポール・スロビック オレゴン大学 教授(心理学)

戦場での大敗も経済制裁も、プーチンに迷いを生じさせることはない。ウクライナの降伏を手に入れない限り、彼が和平に応じることはないだろう。「流れは自分の側にあり、現在の消耗戦が長引けば、ウクライナ軍とウクライナ支援国が疲弊してくる」という読みに賭けているのかもしれない。だが、権力を維持することを重視する彼のナルシズムゆえに、時間枠が限られてくるかもしれない。軍の将軍や傭兵の指導者が内紛を続けるなか、彼は戦争を早く終わらせるためにもっと大きなリスクを引き受けるかもしれない。認知バイアスとプーチンに特徴的ないくつかの心理的傾向からみて、追い込まれたと感じれば、彼は非常に危険な事態を作り出すかもしれない。戦争の歴史で裏付けられた心理学の理論とエビデンスは、欧米諸国が核攻撃の高いリスクを想定して備えるべきことを示唆している。

新しいウクライナ戦略を
―― 戦場から交渉テーブルへの道筋

2023年6月号

リチャード・ハース 米外交問題評議会会長
チャールズ・クプチャン 米外交問題評議会シニアフェロー

欧米は、まずウクライナの軍事力を強化し、その後、戦闘が下火になったタイミングで、モスクワとキーウを戦場から交渉テーブルへと向かわせる必要がある。次の戦略は、今年後半に停戦を仲介し、それを、戦争を終結させることを目的とする和平プロセスでフォローアップすることでなければならない。この外交的駆け引きは失敗する危険が高いものの、戦費がかさみ、軍事的に膠着状態に陥るリスクがある以上、戦闘の再発を防ぎ、永続的和平を実現するための、安定した停戦を迫る価値はあるだろう。すでに、ウクライナの目標は欧米の利益と食い違いをみせはじめている。これまでのスタイルを続けるのは賢明でも持続可能でもない。

大国間競争とインドの立場
―― 対話促進者としてのポテンシャル

2023年6月号

ニルパマ・ラオ 元駐米インド大使

他の国家と同様に、自国の利益に即して行動するインドにとって、ロシアとのパートナーシップを断ち切れば、国益を損なうことになる。当然、ロシアを孤立させることを求める欧米の要請には応じない。インドはすべての国々と協調する権利をもっている。北京に対するワシントンの対抗バランス形成の一翼を担うこともない。米中対立では中立の立場を維持している。インドは14億人以上の人口を抱え、急速に経済成長を遂げている国であり、ほとんどすべての国と貿易を行い、良好な関係を維持している。世界の緊張が高まるなかでも、インドは世界に成長を広げ、対話を促進していくポテンシャルをもっている。

中ロ関係の真実
―― 水面下で進む包括的パートナーシップ

2023年6月号

アレクサンダー・ガブエフ カーネギー国際平和財団 ロシアユーラシア・センター所長

ウクライナ戦争と欧米の対ロ制裁は、ロシアの経済的・技術的な対中依存をかつてないレベルへ引き上げている。軍事であれ、金融であれ、両国はかなりの協力関係にある。実際、習近平とプーチンが3月の会談で新たな軍事協定について折り合いをつけたと考える理由は十分にある。中国はロシアに対するさまざまな手立てをもっているが、対米関係の軋轢ゆえに、中国にとってロシアは「必要不可欠なジュニアパートナー」でもある。中国に、これほど多くの恩恵をもたらしてくれる友好国もない。地球上もっともパワフルなアメリカとの長期的な対立に備えつつあるだけに、習近平は、あらゆる支援を必要としている。

ロシアは何を間違えたのか
―― そして、モスクワが失敗から学べば

2023年5月号

ダラ・マシコット ランド研究所 上級政策研究員

ロシアにとって重要な問題のいくつかは、モスクワには制御できないものだ。ロシアに対抗していくウクライナ人の決意はさらに堅固になっており、この決意を揺るがすことはできない。ロシアには欧米の武器や情報のウクライナへの流入を阻止する意思も能力もない。つまり、ウクライナの決意と欧米の支援がある限り、モスクワが、ウクライナを当初考えていたような傀儡国家にすることはできない。なぜロシアは優位を維持できず、なぜ動けなくなり、主要都市から締め出され、守勢に立たされたのか。だが、ロシア軍は、完全に無能だったわけでも、学習能力がなかったわけでもない。戦略調整を続け、南・東部の占領地支配を固めれば、最終的には、窮地を脱して勝利をつかめる可能性もある。

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