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国防と安全保障に関する論文

対中冷戦戦略の誤謬
―― 対中協調の余地は残されている

2018年4月号

マイケル・D・スワイン  カーネギー国際平和財団 シニアフェロー

トランプ政権は「自由で開かれたインド太平洋戦略」を、あらゆる地域プレイヤーが繁栄と安全を手に入れるための包括的ビジョン、そして中国に対抗するアメリカの同盟国とパートナーのためのネットワークとして描いているが、この戦略に中身はない。アメリカとその同盟国がアジア太平洋地域におけるもっともダイナミックな大国である中国を敵として扱って、安全と繁栄が包括的なものになることなどあり得ない。中国は、アメリカとそのパートナーとの長期的な関係について何かを決断しているわけでも、グローバルな覇権国としてのアメリカに取って代わることを決意しているわけでもない。リビジョニストパワー、現状維持パワーという二つの顔をもつ中国の複雑な自己アイデンティティの片方にだけ焦点を合わせて、二つの大国間の存亡をかけた抗争をイメージするのは間違っている。

対中幻想に決別した新アプローチを
―― 中国の変化に期待するのは止めよ

2018年4月号

カート・キャンベル 前米国務次官補(東アジア・太平洋担当)
イーライ・ラトナー 前米副大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)

中国を孤立させ、弱体化させようと試みるべきではないし、よりよい方向へと変化させようとすべきでもない。これをアジア戦略の道標とすべきだ。外交や通商面でのエンゲージメントも、軍事力もアジアリバランシング戦略も効果はなかった。リベラルな国際秩序も、期待されたように中国を惹きつけることも、つなぎ止めることもできなかった。中国はむしろ独自の道を歩むことで、アメリカの多方面での期待が間違っていることを示した。さまざまな働きかけで中国が好ましい方向へ進化していくという期待に基づく政策をとるのはもう止めるべきだ。中国を変化させるアメリカの力をもっと謙虚に見据える必要がある。

未来の戦争にどう備えるか
―― 不確実な未来と歴史の教訓

2018年3月号

スティーブン・ピーター・ローゼン ハーバード大学教授(国家安全保障・軍事問題)

現在のアメリカの安全保障にとって最大の脅威は何か。中国か、ロシアか、イスラム過激派か。核兵器は時代遅れなのか、それとも未来なのか。このような不確実な状況では、将来に向けてどのような兵器を調達すべきかさえはっきりしない。但し、歴史を顧みれば、既知の敵との戦争準備に成功した国はクラウセヴィッツ型か孫子型に分けることができる。露仏戦争の際のロシアなど、クラウセヴィッツ型は、自国の能力と敵の能力についての総合的な情報に基づき戦争の準備をする。一方、冷戦期の米海軍の対ソ潜水艦戦略など、孫子型は、敵についての詳細な研究に重点を置いて戦争に備える。「最近の過去にばかり固執すれば予測を誤るのは避けられない」とみなす考えは正しいかもしれない。しかし、最近の過去を含む歴史の分析は、依然として、未来の多様な不測の事態に対応する計画立案の助けになる。

北朝鮮崩壊後の危機に備えよ
―― 飢饉と難民流出を回避するには

2018年3月号

ジョーンバム・バエ ホバート&ウィリアム・スミスカレッジ 客員アシスタント・プロフェッサー
アンドリュー・ナチオス テキサスA&M大学 教授

北朝鮮の体制崩壊は、北朝鮮民衆が25年にわたって耐えてきた慢性的な食糧不足を一気に悪化させ、感染病や公衆衛生上の問題をさらに深刻にするはずだ。これによって、大規模な北朝鮮難民が中国に押し寄せる危険が生じる。このシナリオを回避するには、米韓は北朝鮮に食糧を供給し、北朝鮮民衆が中国との国境地帯に向かうのではなく、国内に留まるように仕向ける必要がある。そのためには食糧や医療物資を迅速に届け、感染症による犠牲を引きおこす汚染水対策をとる必要がある。治安を安定させ、人道支援団体の安全を確保し、食糧・医療物資を人々に届けるには、北朝鮮内に11万5000人から40万人の部隊を展開させる必要がある。問題は、38度線以北での米・韓国軍の活動が必要になるこのミッションを、中国が受け入れるかどうかだ。

同盟諸国のリスクヘッジ策
―― トランプリスクと同盟諸国の対応

2018年3月号

スチュワート・パトリック 米外交問題評議会シニアフェロー

ナショナリスト的外交政策を展開しようと、トランプ政権が、戦後アメリカが構築してきたシステムに背を向けたために、リベラルな国際秩序はきしみ音をたてている。予想された通り、新政権の路線を前に同盟国やパートナー国はリスクヘッジ策をとっている。現状がアメリカ外交の一時的な逸脱であることを願いつつも、同盟諸国はすでに事態の変化に対応できる計画をまとめつつあるし、アジア諸国のなかには、中国にすり寄ってバランスをとろうとする国もある。経済、軍事領域で各国は自立性を高め、貿易政策や温暖化対策をめぐっても、アメリカ抜きで対策を進めつつある。トランプの大統領就任からたった1年でアメリカのリーダーシップへの国際社会の信頼は劇的に低下している。

ロシア封じ込め政策を提言する
―― もはや攻撃を看過すべきではない

2018年3月号

ロバート・D・ブラックウィル(米外交問題評議会シニアフェロー)
フィリップ・H・ゴードン(米外交問題評議会シニアフェロー)

ロシアが地域的にも世界的にもより大きな役割を果たすには、アメリカのパワーを弱めなければならないとプーチンは判断しているようだ。アメリカ社会を分断させ、すでに存在する亀裂をさらに大きくしようと試み、国家としての一体感と統合そのものを攻撃のターゲットにしている。すでに米政府の最新の国家安全保障戦略も、ロシアは「情報ツールを使って民主主義国家の正統性を傷つけようとしており、アメリカのパワー、影響力、そして国益に挑戦している」と結論づけている。問題は、ロシアの攻撃に対するアメリカのこれまでの対応がひどく不適切なことだ。ワシントンは、モスクワに真のダメージを強いる措置を講じる一方で、未来の攻撃に備えて防衛を強化し、モスクワの路線にもっとも脅かされるヨーロッパ同盟国への軍事的コミットメントを強化しなければならない。

中国が支配するアジアを受け入れるのか
―― 中国の覇権と日本の安全保障政策

2018年3月号

ジェニファー・リンド ダートマス大学准教授(政治学)

現在のトレンドが続けば、そう遠くない将来に、中国はアメリカに代わって、東アジアの経済・軍事・政治を支配する覇権国になるだろう。そして、地域覇権国は近隣諸国の内政にかなり干渉することを歴史は教えている。中国に対抗できるポテンシャルをもつ唯一の国・日本は、特に重要な選択に直面している。日本人は軍備増強には懐疑的で、むしろ、経済の停滞と高齢社会のコストを懸念しており、引き続き、銃よりもパンを優先する決断を下すかもしれない。だが実際にそうした選択をする前に、中国が支配するアジアにおける自分たちの生活がどのようなものになるかについて日本人はよく考えるべきだろう。北京は尖閣諸島の支配権を握り、日米関係を弱体化させ、中国の利益を促進するために、さらに軍事的・経済的強制力をとり、日本の政治に干渉してくるかもしれない。

北朝鮮危機に外交で対処するには
―― 非核化は棚上げし、核武装国家の脅威削減を

2018年2月号

マイケル・フックス 前米国務副次官補(東アジア・太平洋担当)

北朝鮮は、対米抑止に必要な態勢を整えたと確信するまで、交渉には関心を示さないかもしれない。しかし、平壌がミサイルと核実験を停止することに応じ、ワシントンが韓国との合同軍事演習を停止することを受け入れれば、双方が交渉テーブルに着く道も空けてくる。北朝鮮が報復攻撃を試み、大規模な犠牲者が出ると考えられる以上、アメリカの先制攻撃を前提とする受け入れ可能な軍事オプションは存在しないし、(外交交渉を通じて)北朝鮮が核兵器を近い将来に手放すこともあり得ない。それでも、平和を維持するには外交を機能させる必要がある。少なくとも現状では、非核化は(交渉を実現するためにも)棚上げにせざるを得ない。むしろ、交渉を通じて、核武装した北朝鮮が突きつける脅威を低下させることを短期的目的に据えるべきだ。・・・

プーチンが思い描く紛争後のシリア
―― 戦後処理と各国の思惑

2018年2月号

ドミトリ・トレーニン カーネギー・モスクワセンター所長

バッシャール・アサドはダマスカスの権力を握っているかもしれないが、シリアの政治的風景はもはや元に戻せないほどに変化している。シリアはすでにアサド政権、反アサド、親トルコ、親イランの勢力、さらにはクルド人という五つの勢力がそれぞれに管理する地域へ実質的に分裂している。ロシアは、この現実を受け入れようとしないアサドだけでなく、紛争期の同盟国であるイランの動きにも対処していく必要がある。アサド政権だけでなく、イランやトルコのシリアに対する思惑が変化していくのは避けられず、これに関連するイスラエルの懸念にも配慮しなければならない。今後、外交領域で勝利を収めるのは、戦闘で勝利を収める以上に難しい課題になっていくだろう。

北朝鮮限定攻撃論の悪夢
―― 結局は全面戦争になる

2018年2月号

アブラハム・M・デンマーク 前米国防副次官補(東アジア担当)

取り沙汰されている「北朝鮮に対する限定攻撃」の目的は、「アメリカの軍事対応というリスクを伴わずに、核・ミサイル実験を続けることはできない」と平壌にメッセージを送ることにあるようだ。しかし、この戦略の問題は「アメリカの圧倒的な通常戦力と核戦力ゆえに、北朝鮮の最高指導者・金正恩は、攻撃されても報復攻撃を思いとどまる」と想定されていることだろう。攻撃が計画どおりに機能する可能性は低い。北朝鮮の核・ミサイル能力をうまく破壊できる保証はなく、平壌は限定的な攻撃に対しても反撃せざるを得ないと判断するかもしれない。いかなる攻撃も朝鮮半島における全面戦争へのエスカレーションを辿るリスクがあり、数百万の命が危険にさらされる。北朝鮮との戦争は、アメリカが第二次世界大戦以降に経験したいかなる紛争よりも破滅的なものになる危険がある。日韓との同盟関係も大きく揺るがされ、最終的にはアメリカの影響力も大きく形骸化する恐れがある。

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