1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

資本主義と民主主義の後退に関する論文

中国が望む世界
―― そのパワーと野心を検証する

2021年1月号

ラナ・ミッター オックスフォード大学教授(現代中国史・政治)

世界第2位の経済大国である中国が、ライバルが規定した条件で世界秩序に参加するはずはない。特に、2008年のグローバル金融危機以降、中国指導部は、自国の権威主義的統治システムは、自由主義国家に至るプロセスにおける一つの形態ではなく、それ自体が目的地であると明言するようになった。明らかに国際秩序を作り替えることを望んでいる。中国は間違いなく、国際社会の「舞台中央に近づきつつある」と習はすでに宣言している。今後の展開にとっての重要な鍵は、中国が世界における自らの野心を、他国にとってある程度許容できるものにできるかどうかだ。現実には、もっともらしい新世界秩序を作る中国の能力を脅かしているのは、その権威主義体質に他ならない。

コロナ後の経済再建を考える
―― 債務増でも積極財政をとるべき理由

2021年1月号 

ジェイソン・ファーマン  ハーバード大学ケネディスクール 教授(経済政策)

2009年と比べて今回は財政政策上より多くの手を打てる。グローバル金融危機後の2009年1月におけるアメリカの債務残高が国内総生産(GDP)の50%未満だったのに対して、パンデミックを経たバイデンの大統領就任時には債務がGDPの100%におそらく達していることを考慮すれば、この見方は間違っているようにも思えるかもしれない。だが、かつてと現在では金利に違いがある。2009年1月の段階で10年国債の実質金利はおよそ2%だったが、2021年1月のそれはマイナス1%程度になる。現在の公的債務がかつて以上に大きいとしても、キャリーコスト(持ち越し費用)は少なくて済む。バイデンがキャンペーンで約束してきた政策を実施すれば、回復は加速する。景気サイクルだけでなく、ワクチンも追い風を作り出すと期待したい。

米新政権への北京の期待と不安
―― 米中関係のリセットは可能か

2020年12月号

チェン・リー   ブルッキングス研究所中国センター ディレクター

米大統領選挙後の中国のソーシャルメディアは全般的に安堵と楽観主義にあふれていた。バイデン次期政権の誕生を歓迎していた。だが、そうした楽観ムードも短期間で変化するかもしれない。4年前、北京はトランプ大統領誕生を同様に歓迎していたからだ。北京の指導者の多くは、トランプのことを一緒に何かを達成できるビジネスマンとみていたが、これは希望的観測にすぎなかった。中国の外交エスタブリッシュメントは、警戒と慎重さを維持しつつも、バイデン政権の誕生で関係が改善すればよいと考えている。だが、トランプの対中政策を形作った条件の多くがいまも存在するだけに、米中という超大国間関係のリセットはそう簡単ではないだろう。

世界を修復し、建設する
―― ポストトランプ外交の前提

2020年12月号

リチャード・ハース 外交問題評議会会長

深刻な混乱を引き起こしたこの4年間の米外交は、パンデミックとともに、アメリカと世界に大きなダメージを与えてきた。アメリカの名声そして戦後75年にわたって構築されてきた貴重な同盟関係や国際的制度が深く傷つけられた。トランプ路線を覆すのは歓迎されるとしても、それだけでは問題は解決しない。修復と建設が必要だ。修復とは、存在するが壊れているものを再び機能させることで、建設とは、新しく何かを創造することだ。最初の6―9カ月のバイデン外交は修復に徹すべきで、建設の機会や特定領域の必要性に対処していくのはその後でなければならない。真っ先に取り組むべきはパンデミック対策であることは、はっきりしている。その後にも、地球環境問題、中国、北朝鮮と問題は山積している。

トランプ後もポピュリズムは続く
―― 民主主義はなぜ衰退したのか

2020年12月号

ダロン・アセモグル   マサチューセッツ工科大学(MIT)教授

ポピュリスト運動は、不平等とエリートに対する怒りを背景に台頭した。しかし、なぜアメリカの有権者は不平等が拡大し、超富裕層が普通の人々を踏み台にして恩恵を得ていた2016年に、左ではなく右を向いたのだろうか。実際には、右派ポピュリズムは、トランプが共和党を乗っ取る20年以上前から強力な政治トレンドとして再浮上していた。政治を二極化させ、政治秩序を解体したのは、グローバル化、デジタル技術、オートメーション技術の拡大が伴う社会経済問題に民主制度がうまく対応できなかったからだ。再び似たような権威主義のポピュリストが登場して、権力を握ることを阻止したいのなら、この流れを理解し、対策をとらなければならない。トランピズムのルーツは、トランプで始まり、終わるものではない。

バイデン政権で民主主義は再生するか
―― トランプと民主主義の危機

2020年12月号

ラリー・ダイアモンド  スタンフォード大学フーバー研究所 上級研究員

バイデン大統領の誕生で、アメリカの民主主義が負った深い傷が自律的に癒されるわけではないだろう。この4年間で、民主的規範は完全に放棄された。しかも、今回の選挙で予想外の支持を得たために、共和党は当面、トランプ流の非自由主義的ポピュリズムに支配されるかもしれない。現在のアメリカは民主的危機のさなかにある。アメリカの民主主義のバックボーンを守る薄くとも復元力のある盾、つまり、相手への寛容と自制の精神、民主的ゲームルールへの手堅いコミットメントが崩れそうになっている。新大統領が就任する2021年1月になってもアメリカの民主主義は依然として深刻な問題を抱えたままだろう。

ならず者の超大国
―― 非自由主義的アメリカの世紀?

2020年11月号

マイケル・ベックリー タフト大学准教授(政治学)

戦後秩序のなかで、ワシントンは多くの国に軍事的保護、安全なシーレーン、米ドルと米市場へのアクセスを提供し、引き換えに、これらの同盟諸国はアメリカへの忠誠を尽くし、自国の経済や政治の自由化に応じてきた。だが、アメリカ外交の底流をなしているのは、リベラリズムよりも、アメリカファーストの思想だ。(他の先進諸国の)急速な人口高齢化そしてオートメーション化の台頭によって、アメリカのリードはさらに堅固になり、パートナーへの依存レベルが低下すれば、アメリカは国際協調よりも「外交への取引的アプローチ」を重視する「ならず者の超大国」になるかもしれない。これまでの「アメリカ世紀」が、世界におけるアメリカの役割についてのリベラルなビジョンを基盤に構築されてきたのに対し、私たちの目の前にあるのは、「非自由主義的なアメリカの世紀の夜明け」なのかもしれない。

ベーシックインカムの台頭
―― パンデミックが呼び起こした構想

2020年11月号

エブリン・L・フォーゲット マニトバ大学教授(経済学)

パンデミックは、多くの人が長く気づいていた真実に政治家を目覚めさせた。「既存の社会的セーフティネットは穴だらけで、 いまや新しい何かを試すべきタイミングにある」。ベーシックインカムに反対するもっとも一般的な議論は、どんなに有益であっても、それにはコストがかかりすぎるというものだろう。だが、このプログラムがより累進的な課税システムとリンクして進められれば、そうした支出の一部は課税を通じて政府に戻される。低所得者を対象とするタイプのベーシックインカムなら、それほど大きな負担にはならない。実際、そのコストは、子どもの給付金など、多くの政府がすでに行っている社会支出と変わらず、年金については、はるかに少なくて済む。ベーシックインカムは人々が望む社会への投資であり、健康、教育、安全を重視する人がそれぞれ自分に投資する。その配当として、人々はより良い生活を手にし、一方で資金も節約され、社会も進化する。・・・。

レジリエンス強化の大戦略を
―― パンデミック、異常気象時代における復元力パワー

2020年11月号

ガネーシュ・シタラマン  バンダービルト大学法科大学 教授

2020年にはパンデミックが発生し、多くの米市民がステイホームを余儀なくされた。来年には、農業と食糧生産を破壊する千年に一度の大干ばつが起きるかもしれないし、その翌年には、サイバー攻撃によって電力網が破壊され、重要なサプライチェーンが遮断されるかもしれない。現在のパンデミックが(今後の不透明さを示す)何らかの兆候だとしても、各国はこうした混乱に対処するための準備が嘆かわしいほどにできていない。必要なのは、レジリエンス(柔軟性と復元力)を強化する大戦略でなければならない。アメリカを含むほとんどの国々は、単独では完全なレジリエンスをもつことはできない。重要な物資や製造能力のすべてを国内で調達できるわけではないからだ。解決策は、価値を共有する北米、西ヨーロッパ、北東アジアのリベラルな民主国家との絆と同盟を深めることだ。

米覇権の解体
―― アメリカパワーの衰退と中ロの台頭

2020年10月号

アレクサンダー・クーリー  バーナード・カレッジ教授(政治学) ダニエル・H・ネクソン  ジョージタウン大学外交大学院准教授

中国とロシアの台頭に伴い、「独裁的で非自由主義的プロジェクト」が米主導の「リベラルな国際システム」に対する代替策として浮上している。途上国、さらには多くの先進国でさえ、欧米の援助や支援に依存し続けるのではなく、別のパトロンによる支援を頼ることができる。こうして、アメリカのグローバルリーダーシップは単に後退しているだけではなく、解体しつつある。アメリカの衰退は、循環的というよりも、むしろ、永続的なものだ。軍事費をいかにつぎ込んでも、アメリカの覇権解体を促している流れを止めることはできない。考えるべきは、米覇権の解体がどこまで進むかだ。

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