1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

資本主義と民主主義の後退に関する論文

米大統領がもたらした無秩序
―― 制約なき権力行使とアメリカパワーの終焉

2026年3月号

ダニエル・W・ドレズナー タフツ大学 フレッチャースクール学院長
エリザベス・N・サンダース コロンビア大学 政治学教授

いまや米大統領は国の内外で、制約などほとんど気にかけることなく、思うままに行動している。米市民も、トランプが世界に解き放ったのと同じ「ホッブズ的な無秩序」のなかに置かれている。行動へのあらゆる制約を拒み、技術によって旋風のように動けるようになったことで、より大胆になった指導者が作り出すホッブズ的秩序では、「何でもあり」だ。アメリカパワーの基盤は、国内での法の支配と国外における信頼できるコミットメントで形作られているが、トランプは、まさにこれを解体しようとしている。アメリカから距離を置くようになった同盟国は、不安定なアメリカに対する保険策として、すでに中国や他の同盟諸国への接近を試み始めている。

追い込まれた民主主義
―― 非自由主義インターナショナルの台頭

2026年2月号

ニック・チーズマン バーミンガム大学 教授(民主主義)
マティアス・ビアンキ アスントス・デル・スール ディレクター
ジェニファー・シール トルクァト・ディ・テラ大学 准教授(政治学)

非自由主義の権威主義国家が台頭を続ける一方で、民主主義国家は衰退している。2025年には45カ国が民主主義から離れて、独裁体制に移行し始めた。いまや完全な民主国家とみなせるのは、世界にわずか29カ国しか残されていないという見方もある。非自由主義の指導者たちの共通項は、権力を個人に集中させ、抑制と均衡を弱体化させ、政治的操作のために偽情報を利用することだ。さらに、多元主義を空洞化させ、反対勢力を非合法化することで、政治的権利と市民的自由を後退させる。しかも、国境を越えた非自由主義のネットワークを形作っている。すでに、世界のパワーバランスは独裁体制にとって有利な方向へ傾きつつある。民主国家連合に流れを覆す方法はあるのか。

トランプと欧州右派の連携
―― アメリカはヨーロッパを失う?

2026年1月号

アイバン・クラステフ 自由主義戦略センター 会長

トランプ政権がヨーロッパの極右勢力を評価して連携したことは、危険な賭けだ。政治的分極化を煽ることは、トランプに同調するヨーロッパではなく、分断されたヨーロッパを生み出す危険がある。さらに、(右派の)政党や指導者だけを支援することで、ヨーロッパの重要地域で伝統的にワシントンを支持してきた親米派を失いつつあるかもしれない。結局のところ、トランプの欧州右派に対するアプローチがヨーロッパに与える影響は、多くの点で1980年代にミハイル・ゴルバチョフが東欧諸国に与えた影響に似たものになるだろう。ゴルビー・マニアは東欧の共産主義体制を劇的に変容させ、その過程でモスクワは勢力圏を失うことになった。

停滞する秩序下の現実
―― 中国の衰退と覇権競争の終わり

2025年12月号

マイケル・ベックリー タフツ大学 准教授(政治学)

流れは成長から停滞へと変化している。脆弱な国家は債務と若年人口の急増に押し潰されつつある。困難な状況に直面する国は衰退を食い止めようと、軍事化と領土回復主義に血道をあげている。経済不安が過激主義を煽り、民主主義を蝕み、アメリカは単独行動主義をとっている。多国間機関は麻痺し、軍備管理レジームは崩壊しつつあり、経済ナショナリズムが台頭している。民主主義は内部から朽ち果て、秩序の擁護者であるべきアクターは狭い自己利益に埋没している。但し、この停滞する秩序では、台頭する国家、新興大国がいなくなる。これによって、覇権争いという破滅的なサイクルが阻止されるかもしれない。歴史は終わらないが、そのもっとも破滅的な章は幕を閉じるのかもしれない。

世界貿易の真の再編を
―― 公正貿易同盟の形成を

2025年11月号

ウォーリー・アデエモ 元米財務副長官
ジョシュア・P・ゾファー 元米大統領特別補佐官(経済政策担当)

グローバル貿易システムを再編する必要があると考えている点では、トランプ大統領は正しいが、関税を用いた現在のアプローチでは、それで治そうとしている病以上に、深刻な事態を引き起こす恐れがある。必要なのは、ルールに基づく公正な貿易、アメリカの競争力を強化するグローバルな協調に基づく新しい貿易システムだ。中国に象徴される不公正な貿易慣行と歪んだ競争を問題解決のターゲットに据えた、「公正貿易のための自由貿易同盟」を立ち上げるべきだろう。いまなら、次の大きな貿易再編の主導権をワシントンがとって、世界経済を自由貿易の恩恵を開花させるシステムへと導けるかもしれない。

揺るがされたアメリカへの信頼
―― 不安定化する世界

2025年11月号

カレン・ヤーヒ=ミロ コロンビア大学 国際公共政策大学院 学院長

トランプは、立場を後退させる前にまず取引を提案する。戦争を拡大する前に、戦争を終わらせると約束する。同盟国を叱責し、敵対国を受け入れる。唯一のパターンとは、パターンが存在しないことだ。一部の分析家が指摘するように、トランプのアプローチは一時的な国際的勝利を一部でもたらしている。だが長期的には、このアプローチでアメリカが強化されることはない。最終的に、各国は他国と連帯して国を守る道を選ぶはずだからだ。その結果、アメリカの敵対国リストは増え、同盟関係は弱体化する。つまりワシントンはますます孤立し、その威信を回復する明確な道筋を見失う可能性がある。

アメリカ後の自由主義秩序を守る
―― 民主諸国の協調と連帯

2025年10月号

フィリップス・P・オブライエン セント・アンドリューズ大学 教授(戦略研究)

多くの国は、トランプ政権に媚びへつらい、米大統領を過度に称賛する努力を重ねてきたが、トランプを懐柔する戦略は失敗する可能性が高い。そうであれば、民主主義と旧来のルールに基づく秩序にいまもコミットする諸国は、国際関係を再構築し、アメリカの気まぐれから自らを隔離し、この極めて不安定な時代にあっても自分たちの自由を広く守る努力をするのが理にかなっている。実際、トランプの勢力圏構想が実現すれば、アジア、ヨーロッパ、北米におけるワシントンの民主的同盟国がアメリカによって守られることはなくなるだろうし、民主諸国は、世界の他の国々を合わせたよりもはるかに多くの核兵器を保有する米中ロという三つの大国と対峙することになる。

大陸国家と海洋国家
―― アメリカの混乱と世界秩序

2025年10月号

S・C・M・ペイン 米海軍大学校 名誉教授(歴史、大戦略)

中国やロシアのような大陸覇権国は、国際システムを巨大な勢力圏に分割すべきだと考える。一方、海洋で守られ、侵略される危険が小さい海洋国家は、争うのではなく、富を蓄積することに専念する。領土ではなく富にパワーは根ざすとみているからだ。だが、現在のアメリカは、まるで大陸国家のように振る舞っている。あまりにも多くのアメリカ人が、海洋国家秩序の恩恵を当然視し、その欠点ばかりを指摘し、その過程で、地理的・歴史的な優位を無駄に浪費している。貿易障壁を築き、近隣諸国を脅し、国際機関を弱体化させるといった大陸国家のパラダイムに回帰すれば、アメリカは再起不能に陥るかもしれない。

非政府組織の興亡
―― 民主主義の後退とNGOの衰退

2025年9月号

サラ・ブッシュ ペンシルベニア大学 政治学教授
ジェニファー・ハデン ブラウン大学政治学部准教授

全盛期には、NGOは国から権限と影響力を奪いつつあるとさえみなされた。NGOは開発援助や人道支援の担い手となり、国際交渉の場で政府を動かし、環境保護や人権といった政策アジェンダの設定まで主導するようになった。そのNGOがいまや大きく衰退している。透明性に欠け、説明責任を果たしていないとの批判もあった。ロシアなどの権威主義国家はNGOを民主国家の手先とみなし、法的に締め出す路線をとり、最近では、欧米諸国もNGOの活動資金となる開発援助を大幅に削減している。なぜ、流れは変化したのか。衰退の流れを覆す道はあるのか。

もう誰も相手にしない
―― ポスト・アメリカ世界のアメリカ

2025年8月号

コリ・シェイク アメリカン・エンタープライズ研究所 ディレクター(外交・国防政策研究)

国際システムの他のアクターが(特定の言動に)どのように反応し、どのような流れを形作るかを予測することも外交手腕に含まれる。トランプ・チームには、そのような能力が欠落している。ワシントンのパートナーのなかには、友人であるアメリカが正気に戻ることを期待して、様子見をする国もあるかもしれない。しかし、もう元には戻れない。同盟国やパートナーの信頼と信用は修復不能なほどに損なわれている。いまや問うべきは、アメリカパワーの基盤だった米主導の協調的秩序から各国が手を引けばどうなるかにあるのかもしれない。

Page Top