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権威主義体制の台頭に関する論文

大国間のライバル関係を制御する
―― 競争と協調の間

2022年11月号

ダニ・ロドリック ハーバード大学ケネディ・スクール 教授(国際政治経済学)
スティーブン・M・ウォルト ハーバード大学ケネディ・スクール 教授 (国際関係論)

国際社会の中央における権限が確立されていない世界では、競争のインセンティブがあらゆるところに存在し、強国は互いに相手を警戒する。主要国のいずれかが経済的・地政学的優位の獲得を優先課題に据えれば、穏やかな世界秩序が実現する可能性は遠のいていく。だが、ライバル国や敵対する国であっても、合意や調整を探るように促す枠組みがあれば、問題を管理できるようになる。「対立する二国が合意できる部分や禁止すべき行動を特定し、互恵的な妥協点を探り、単独行動は合理的な範囲内に収めるように促す」。たとえ、合意を形成できないとしても、この枠組みは国家間のコミュニケーションを促し、合意できない理由を明らかにし、自国の利益を守ろうとするときも他国を傷つけないように配慮するインセンティブを高めることができるだろう。・・・

ヒジャブとイランの反体制運動
―― 保守強硬派に対する社会反乱

2022年11月号

モハマド・アヤトラヒ・タバール テキサスA&M大学 ブッシュ行政・公共サービス大学院 准教授(国際関係学)

22歳の女性が風紀警察で拘束中に死亡したことをきっかけとするイラン女性たちの抗議運動は、今後、大きな変革を引き起こすかもれない。ヒジャブの着用は、イスラム国家・イランのアイデンティティーのシンボルとされてきただけに、女性たちがヒジャブを脱ぐことを国が許せば、聖職者による支配構造が弱体化し、最終的には崩壊する恐れもある。一方で、民衆をなだめるのも難しい。「改革を約束する選挙」を利用することで、これまでイランの体制は民衆の不満を管理してきた。しかし、「選挙で選ばれた」政府が、宗教エスタブリッシュメントに歩調を合わせるのをみてきた民衆は、もはや選挙で有意義な改革を実現できるとは考えてない。新たな社会契約が示されない限り、民衆の怒りは行き場を失い、政府との対決路線、反乱へ向かっていくかもしれない。・・・

危険な10年をいかに乗り切るか
―― 地政学、グローバルな課題、アメリカの弱体化

2022年11月号

リチャード・ハース 米外交問題評議会会長

地政学的競争の激化が、温暖化に象徴されるグローバルな課題をめぐる国際協調をさらに難しくし、一方で国際環境の悪化が地政学的緊張をさらに高めている。しかも、アメリカはさらに弱体化し、世界への関心を失っている。グローバルな課題と世界の(細々とした)対応間の恐ろしいほどのギャップ、ヨーロッパとインド太平洋における大国間戦争リスクの上昇、イランが中東を不安定化させるリスクの拡大、これらが渾然一体となって、第二次世界大戦以降、もっとも危険な瞬間が作り出されつつある。現在と同様に困難で危険な10年、つまり、伝統的な地政学リスクと増大する一方のグローバルな課題が共存する時代を乗り切っていくには、何が必要なのか。

習近平の本質
―― 奢りとパラノイアの政治

2022年11月号

蔡霞 元中国共産党中央党校教授

習近平は中国の政治派閥のすべてから反発を買っている。彼が伝統的な権力分配構造を破壊したことに憤慨し、その「無謀な政策が党の将来を危うくしている」と考えているエリートは少なくない。民間企業を締め上げ、政策の細部にまで介入して民衆を苦しめる統治スタイルへの社会の反発も大きい。いまや、天安門事件以降初めて、中国の最高指導者は政府内部の反対意見だけでなく、激しい民衆の反発と社会騒乱の現実的リスクに直面している。今後、統治スタイルがさらに極端になれば、彼がすでに引き起こしている内紛は激化し、反発は大きくなる。習近平が脅威を感じ、大胆な行動に出れば、ますます反発が大きくなるという悪循環が生じるかもしれない。・・・

プーチンが再現したい過去
―― 歴史の曲解と大いなる幻想

2022年10月号

フィオナ・ヒル ブルッキングス研究所 外交政策プログラム米欧センター シニアフェロー
アンジェラ・ステント ジョージタウン大学名誉教授

プーチンは、ウクライナ、ヨーロッパ、そして全世界を、彼の歴史観に合致するように再構築したいと考えている。ロシアの帝国的過去への彼の思い入れは深い。バルト帝国やオスマン帝国との戦争を経て現在のウクライナ領を手に入れたピョートル大帝やエカテリーナ2世の肖像をモスクワの執務室に飾っているのには理由がある。だが彼は歴史を誤解し、曲解している。ピョートル大帝はヨーロッパ人をロシアに招き、経済発展に貢献させ、西洋への窓を開いた。プーチンは侵略と領土拡大を通じて、その窓を閉ざしてしまった。ヨーロッパ人とその企業を本国に送り返し、ロシア人の才能ある世代を国から流出させている。ピョートルはロシアを未来へと導き、プーチンは、ロシアを過去に押し戻そうとしている。・・・

プーチンの新警察国家
―― スターリン化するプーチン

2022年9月号

アンドレイ・ソルダトフ 調査報道ジャーナリスト
イリーナ・ボロガン 調査報道ジャーナリスト

ウラジーミル・プーチンは、連邦保安局(FSB)を、ロシア内外における政治問題に解決策を提供する即応部隊にしたいと考えていた。だが、繰り返し失望させられて考えを改めた彼は、ソビエト期のKGB(国家保安委員会)に近い任務を与えた。つまり、エリートを含むロシア民衆を脅すことで、政治的安定をもたらすツールとして利用した。しかし、ウクライナ戦争開始以降の動きは、プーチンが再びFSBの任務を見直したことを示している。いまやFSBは、1970―1980年代のKGBではなく、市民の厳格な統制を目指したスターリンの諜報機関、内務人民委員部(NKVD)に似てきている。NKVDが強大で恐れられる存在だったのは、それが国や党ではなく、スターリンだけに従う組織だったからだ。ウクライナ戦争が始まって以降、プーチンの拡大する警察国家の管理組織は、どうみてもNKVDに近づいている。・・・

次に何が起きるのか
―― ペロシ訪台と米中関係

2022年9月号

デービッド・サックス 外交問題評議会リサーチアソシエート

第4次台湾海峡危機を前にしているというには時期尚早だが、そこに向かいつつある。中国がこれまでにとった軍事的牽制策は、手始めにすぎず、今後数週間から数カ月の間に、中国は台湾に対する軍事的圧力をさらに高めてくると予想される。より多くの航空機を使った防空識別圏への侵入や中央線の越境がより頻繁に起きるかもしれない。また、台湾の領空や上空に軍用機を飛ばし、エスカレートさせることも考えられる。さらに台湾製品の輸入を禁止し、台湾企業の大陸での活動をより困難にしようとするかもしれない。ペロシ訪中の代償を台湾が支払う以上、アメリカは台湾の痛みを和らげるための努力をしなければならない。

経済制裁とインフレ
―― 経済制裁が引き起こす人道的ダメージ

2022年8月号

イスファンディヤール・ バトマンゲリジ ヨーロッパ外交評議会客員研究員 エリカ・モネット 国際・開発研究大学・グローバル・ ガバナンス・センター シニアリサーチャー

経済制裁対象国で何百万もの人々を悲惨な生活に追い込んでいる高インフレの多くは、まさしく欧米の制裁によって引き起こされている。実際、アメリカや欧州連合(EU)の主要な制裁下にあるすべての国で高インフレが認められる。(インフレによって)無差別に多くの人が経済的苦境に直面すれば、苛立ち、疲れた相手国の民衆は(政府に対応を求めて)街頭に繰り出すかもしれない。だが、問題国の政府がこれで行動を見直すことはない。ワシントンは制裁がどのように相手国のインフレに拍車をかけ、食糧や医薬品などの必需品の価格を上昇させるかを理解する必要がある。アメリカが外交利益のために制裁を実施していると考えても、世界の多くの人は、それを実質的な経済戦争として体験している。

問題を解決できる新国際システムを
―― 新システムの目的をどこに定めるか

2022年8月号

フィリップ・ゼリコー バージニア大学教授(歴史学)

新しい国際システムが必要なのは明らかだが、重要なのは「現実に問題を解決すること」だ。求められているのは、地球上の多くの人が共有する少数の問題に対処できるプラクティカルな国際システムだろう。戦争、気候変動、経済および感染症のリスクから世界を守ることに焦点をあてた現実的国際秩序を考案していかなければならない。実際、指導者の多くは、第三次世界大戦の火種となりかねないウクライナでの戦争を止めさせ、新サプライチェーンが形作る「新経済秩序ビジョン」の構築を求めている。エネルギーショックをより低炭素の未来に向けた未来につないでいく機会にし、次の感染症パンデミックに適切に備えることを望んでいる。ここで問われているのは民主主義や独裁主義の価値観ではない。問題を解決するための連帯とプラグマティズムだ。・・・

ウクライナ戦争とインドの選択
―― ロシアと欧米、どちらを選ぶのか

2022年7月号

リサ・カーティス 新アメリカ安全保障センター インド太平洋安全保障プログラム部長

ウクライナ戦争をめぐってインドは中立の立場をとり、ロシアを非難するのを控えているが、米政府高官たちはインドの行動を看過できぬとまではみていない。インドがロシアの軍事ハードウエアに依存していること、それを一夜にして解消できないことを理解しているからだ。しかし、ロシアが残虐行為を繰り返すなか、インドがロシアの原油や天然ガスを大量に購入し続ければ、ワシントンはニューデリーがロシアの戦争継続を可能にしているとみなし始めるだろう。インドの中立路線が長期化すれば、ワシントンが「インドを信頼できないパートナーとみなす」ようになる可能性は高まっていく。本意ではなくとも、ニューデリーは、結局、ロシアと欧米のどちらかを選ばなければならなくなる。・・・

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