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権威主義体制の台頭に関する論文

中国対外行動の源泉
―― 米中冷戦と米ソ対立の教訓

2019年9月号

オッド・アルネ・ウェスタッド イェール大学教授(歴史・国際関係)

中国はかつてのソビエト同様に、共産党が支配する独裁国家だが、違いは国際主義(共産主義インターナショナル)ではなく、ナショナリズムを標榜していることだ。ソビエト以上の軍事・経済的なポテンシャルをもち、同様に反米主義のルーツを国内にもっている。しかも、アジアにおけるアメリカの立場と地位を粉砕しようとする中国の路線は、スターリンのヨーロッパに対する試み以上に固い決意によって導かれているし、中ロ同盟出現の危険もある。何らかの(国家的、社会的)統合要因が作用しなければ、目的を見据えて行動するアメリカの能力の低下によって、多くの人が考える以上に早い段階で、恐れ、憎しみ、野望によって人間の本能が最大限に高まるような制御できない世界が出現する危険がある。

米中経済のディカップリングの意味合い
―― 解体するグローバル貿易システム

2019年9月号

チャッド・P・ボウン ピーターソン国際経済研究所
ダグラス・A・アーウィン ダートマスカレッジ教授(経済学)

トランプ政権が永続的な中国との取引はもとより、北京が受け入れるかもしれない合意など望んでいないことはすでに明らかだ。表面的な合意が結ばれても、それは永続的な貿易戦争の一時的な休戦にすぎない。トランプ政権は、中国政府が「国が支配する経済」から「市場経済」へと一夜にしてシステムを作り替えることを望んでいる。中国経済のあらゆる側面への管理を維持することで、権力を堅持してきた共産党政府がこれを受け入れるはずはない。世界の2大経済大国のつながりが断ち切られ、分裂していけば、世界の貿易地図も書き換えられていく。各国はライバルの貿易ブロックのどちらかを選ばざるを得なくなり、これまでの「グローバル貿易システム」は解体へ向かう。

CFR Briefing
香港はどこへ向かうのか
―― 軍事介入リスクは高まっている

2019年9月号

ジェローム・コーエン ニューヨーク大学ロースクール教授

香港のデモ隊は、1984年の中英共同宣言、香港基本法が定める「一国二制度」が保証していると彼らが考える政治的自由を行使したいと考えている。これまでのところ北京は、高まる危機への対応を香港政府に任せている。しかし、北京の忍耐が限界に近づきつつあることを示す重要なシグナルもあり、人民解放軍が香港に投入されるリスクは高まっている。北京の政府機関とプロパガンダ部門は、香港のデモを「テロ活動」と呼び、混乱は香港でカラー(民主化)革命を起こそうとするアメリカの「ブラックハンド」が引き起こしていると主張している。香港を軍事的に弾圧すれば、1989年の天安門事件以上に、中国の国際関係にダメージを与えることを北京は理解している。しかし、必要であれば軍事力の行使も辞さないだろう・・・2019年10月1日に中華人民共和国建国70周年を祝った後に、北京は人民解放軍を投入するかもしれない。そうなれば、香港と香港住民だけでなく、中国の世界における立場、国際安全保障にとっても悲劇的な展開となる。

北京の香港ジレンマ
―― 中国が軍を送り込まぬ理由

2019年9月号

ビクトリア・ティンボー・ホイ ノートルダム大学准教授(政治学)

最近の世論調査では、住民の73%が香港政府は逃亡犯条例を正式に撤回すべきだと答え、79%が警察の職権乱用に対する独立調査の実施を支持すると答えている。一方、北京は抑圧を強化していくことを示唆している。これまでのところ、(警察や犯罪組織による暴力と(北京による)威嚇策は、慣れ親しんできた自由を守ろうとする香港住民の決意を逆に高めている。第2の天安門を懸念する専門家もいる。実際、北京は香港の行政長官に軍事的支援を求めさせることもできる。しかし、中国軍が香港のデモ鎮圧に介入する可能性は低い。香港はアジアの主要な金融センターであり、中国とグローバル経済との重要なつながりを提供しているからだ。北京は香港の自治という「体裁」を維持していく強いインセンティブをもっている。

CCPと天安門事件の教訓
―― 中国を変えた政治局秘密会議

2019年9月号

アンドリュー・J・ネイサン コロンビア大学教授

天安門危機で学生たちへの和解的アプローチを提唱した趙紫陽はポストを解任された上、自宅監禁処分とされ、この処分は2005年に彼が死亡するまで続けられた。天安門の弾圧から約2週間後、共産党政治局は「拡大」会議を招集する。保守派が勝利したこの会議で、「中国共産党は内外の敵の共謀によって脅かされている」という認識が確認された。(国内・党内の敵とみなされた)趙紫陽は、報道の自由を認め、学生と対話の場をもち、市民団体の活動規制を緩和すべきだと考えていた。だが、中国政府は別の選択をし、結果的に「改革と統制」の間の永続的な矛盾を抱え込んでしまった。こうして引き起こされる社会的緊張は、習近平が人々の所得レベルを向上させ、高等教育を拡充し、民衆を都市に移住させ、消費を奨励するにつれて、ますます高まっていく。政府にとって、天安門事件はいまも忌まわしい前兆を示す教訓であり続けている。

対中封じ込めは解決策にならない
―― 民主主義の後退と「中国モデル」の拡大?

2019年8月号

ジェシカ・チェン・ワイス コーネル大学准教授(政治学)

中国の対外的な行動と構想がリベラルな価値と秩序を脅かし、しかも、習近平は世界に中国的ソリューションをオファーできると明言している。しかし、民主主義が世界的に後退しているのは事実としても、そのトレンドのなかで北京が果たしている役割は過大評価されている。中国の行動は、内外で自分たちの地位を確固たるものにしたい北京の指導者たちの意向を映し出しているが、「チャイナ・モデル」の輸出はその目的ではない。当然、中国封じ込めは解決策にはならない。アメリカと同盟国が北京の行動に効果的に対処するには、もっと厳密に北京の行動を把握する必要がある。結局のところ、中国に対処していく最善の方法は、民主主義をよりよく機能させることだ。

中ロパートナーシップの高まる脅威
―― 手遅れになる前に行動を起こせ

2019年6月号

アンドレア・ケンドール=テイラー  新アメリカ安全保障センター  シニアフェロー
デビッド・シュルマン  国際共和研究所 シニアフェロー

中ロのパートナーシップは不自然だし、その見込みはあまりないと考えるアメリカの専門家は多い。しかし、この立場はすでに現実によって淘汰されている。両国は政府のあらゆるレベルでの交流を深め、投資、交通機関、スペースナビゲーション、軍事転用可能なテクノロジー開発などの領域で緊密に連携している。ワシントンに対抗し、グローバル統治を変化させ、リベラルな秩序を支える価値を問題にしていくことでも両国は立場を共有している。問題は、中ロパートナーシップをどうみるかをめぐって、欧米の専門家のコンセンサスがないために、ワシントンの政策決定者が、中ロ関係の有害な作用を阻止できなくなるまで、中ロ関係の本質について議論し続けるリスクを冒していることだ。

現実主義志向の国際システムを
―― 民主国家の拡大志向を抑えよ

2019年4月号

ジェニファー・リンド ダートマスカレッジ 准教授(政治学)
ウィリアム・C・ウォールフォース ダートマスカレッジ 教授(政治学)

世界が直面する課題を「現状の維持を試みる自由主義国家」と「不満を募らせ、秩序を覆そうとする(リビジョニストの)権威主義国家」間の抗争として捉えるのは間違っている。権威主義国家のリビジョニズムとは異なるが、自由主義国家も、民主主義を輸出し、民主的空間の幅と奥行きを拡大するリビジョニスト路線をとってきた。むしろ、アメリカとパートナー諸国は民主主義の拡大路線を止め、これまでの成果を固めるために現実を見据えた保守路線をとるべきだろう。非自由主義的大国との長期的な競争的共存の時代に備えるには、民主空間の拡大策からは手を引き、既存の同盟関係を強化する必要がある。リベラリズムを基盤とする秩序を守るには、保守主義を取り入れなければならない。

民主主義が劣化していくにつれて、権威主義化していく。特に、選挙で勝利を手にするためなら何でもする「選挙権威主義」体制、そして選挙後に支配者が法を無視して思うままの行動をとるようになる「非自由主義的民主主義」が主流になっていくだろう。例えば、超法規的殺人を特徴とする麻薬戦争を展開しているフィリピンのドゥテルテは、選挙で選ばれたが、権力を乱用している。(権力を思うままに行使して)非自由主義的民主主義を実践しているトランプも同様だ。より厄介なのは、選挙で有利になるように、ゲリマンダー、議員定数の不均衡などのあらゆる政治制度上のトリックを利用しているマレーシアの統一マレー国民組織(UMNO)と米共和党が似てきていることだ。選挙に破れても首相を送り込んだUNMO同様に、米共和党も、一般投票では敗れつつも、最近の2人の共和党大統領候補をホワイトハウスに送り込むことに成功している。・・・

皇太子率いる全体主義国家の誕生
―― もはやかつてのサウジにあらず

2018年12月号

マダウィ・アル=ラシード ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス 客員教授

サルマン国王は王族間のコンセンサスを重視する伝統的な統治モデルを一掃し、息子であるムハンマド・ビン・サルマン(MBS)を皇太子として王国のトップポジションに据える道筋を作った。MBSは副首相、国防相、経済開発評議会議長、政治安全保障委員会議長を兼務し、サウジのソフトパワーツールも管理している。忠誠委員会は、そのメンバーたちが2017年のいわゆる反政治腐敗弾圧によって拘束された後、解体された。皇太子は王族会議も解散し、宗教エスタブリッシュメントを周辺化しただけでなく、批判派と金融エリートも拘束した。サウジの君主制はいまや1人が絶対的権力をもつ全体主義体制へ変化している。完全な服従と皇太子への忠誠を求めるサウジの新全体主義の環境のなかで、カショギ殺害事件は起きた。・・・

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