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権威主義体制の台頭に関する論文

太平洋の断層線
―― 高まる中国の影響力

2022年7月号

チャールズ・エデル 米戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問

2022年4月、ソロモン諸島は「中国との安全保障協定を締結した」と発表し、5月後半には中国の王毅外相が同様の協定を取りつけようと太平洋の他の島嶼国を訪問した。しかも、ソロモン諸島との協定は「社会秩序を維持する」要請を受けた場合、中国は警察や軍を派遣できるとされている。こうした協定は中国軍の影響圏を拡大して、海上交通の要衝へのアクセスを与えることになる。こうして、太平洋諸島はグローバルな地政学的競争に引きずりこまれ、この地域の安全保障が損なわれる恐れがある。アメリカと同盟国は目を覚ますべきだ。北京がこれ以上、太平洋全域に軍事的プレゼンスを拡大するのを阻止するには、従来のアプローチを早急に見直す必要がある。・・・

戦争をいかに終結させるか
―― 成功の定義、キーウが求める条件とは

2022年6月号

リチャード・ハース 米外交問題評議会会長

ウクライナでの戦争を可能な限り早く、キーウの民主的政府が受け入れる条件で終わらせること、これが欧米にとっての成功の定義だろう。しかし、その条件とは何だろうか。この2カ月で失った領土のすべてを回復することだろうか。ドンバスとクリミアからのロシア軍の完全撤退を求めるのか。それとも、ヨーロッパ連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)に加盟することなのか。これらのすべてをロシアが署名する文書に記載するよう主張するのか。プーチンが選択し、始めた戦争だとしても、もはやプーチンだけでは戦争を終結させることはできない。プーチンとゼレンスキーはともに、敵対行動を停止させるために必要な領土と条件が何であるかを検討し、戦闘の終結を命令するだけでなく、和平協定を締結し、それを尊重できるかどうかも考える必要がある。

ロシアとの連帯という幻想
―― 中国の間違った選択

2022年6月号

オッド・アルネ・ウェスタッド イェール大学教授(歴史・国際関係)

ウクライナでの戦争を欧米と中ロという二つのブロックを対立させる新冷戦の最初の一幕とみなす専門家もいる。かつての冷戦のように、今回も経済体制の違いだけでなく、イデオロギー的な違いもあるとみなし、新冷戦は「民主主義と権威主義、市場経済と国家主導型経済」の闘いと規定している。だが(かつての共産主義ブロックとは違って)現在の中ロは政治体制も経済制度も大きく違っており、一枚岩とはみなせない。豊かなエネルギーや鉱物資源がどれほど魅力的でも、近隣諸国との永遠の争いに明け暮れるモスクワの弱体政権との連帯が、中国の利益になるとは思えない。

中ロの行動をいかに抑えるか
―― 国際システムとアウトサイダー

2022年6月号

ステーシー・E・ゴダード  ウェルズリー大学教授(政治学) オルブライト研究所所長

中ロは連携しているが、まったく異なるタイプのリビジョニストであることを認識する必要がある。中国の攻勢はそれほど暴力的ではないが、大きな影響力をもっている。モスクワが破壊と暴力の戦略に依存してきたのに対し、北京はネットワークの拡大と国際秩序における地位を通じて影響力を行使してきた。冷戦後のアメリカは、現状に挑戦する手段と動機を兼ね備えたリビジョニスト国家を秩序に取り込む戦略をとってきたが、いまや新たなアプローチが必要だろう。アメリカは、国際秩序をライバルの基本的キャラクターを変革する枠組みではなく、こちらの意向を伝え、紛争を解決し、明確なレッドラインを設定するフォーラムとみなすべきだ。中国やロシアを変えるという高邁な計画でなくても、制度への取り込みを放棄しなくても、このやり方でリビジョニストを抑制できる。

そして「欧米と中露」の対立へ
―― 現状を規定する歴史の源流とは

2022年6月号

スティーブン・コトキン プリンストン大学教授(歴史学)

変化の源流は第二次世界大戦期にあり、冷戦期に流れは大きくなった。西側を基盤に戦後に形成された欧米の勢力圏が各国に繁栄と平和を提供しているのに対して、ロシアがウクライナで、中国がアジア地域およびアジアを越えて形成しつつある勢力圏は閉鎖性と強制を特徴とする。現在の中国は、外からの封鎖や制裁に耐えられるように、戦争を別とすれば、ナチス・ドイツや帝国日本が模索した戦略をとっている。プーチンが世界にロシア包囲網を築かれるなか、習近平はそうした努力をさらに強化していくはずだ。帝国は消えては現れるが、(経済・政治)ブロックは存続していく。だが、欧米は明確な優位をもっている。それは失敗から学べることだ。

領土征服時代への回帰?
―― 世界秩序の未来を左右するウクライナ

2022年6月号

タニシャ・M・ファザル ミネソタ大学教授(政治学)

いまやロシアの侵攻によって、領土の侵略と征服を禁止する規範が、第二次世界大戦以降、もっとも深刻に脅かされている。国際社会がロシアによるウクライナ領土の編入を許せば、各国はより頻繁に国境線を武力で変更しようと試みるようになり、戦争が起き、帝国が復活し、消滅の危機に瀕する国が増えるかもしれない。侵略と征服を禁止する規範が薄れてゆけば、世界は領土紛争のパンドラの箱を開け、数百万の市民が無差別攻撃の標的にされる恐れもある。だが、国際社会は経済制裁と国際法廷を利用して、ロシアの粗野で違法な侵略行為にペナルティを科すことができる。国際社会が領土の征服を禁止する規範を擁護できなければ、大国と国境を接する諸国はかなりの消滅リスクに直面することになる。

秩序の崩壊と再生
―― 生き残るのは米中どちらの秩序か

2022年5月号

マイケル・ベックリー タフツ大学准教授(政治学)

ストレスの多い仕事をし、太った喫煙者の習近平は2030年代初頭には、生きていたとしても80代だ。中国の人口危機が本格化し、現在から2030年にかけて生産年齢人口は7000万程度減少し、高齢者人口が1億3000万増えると予測されている。これほど多くの課題に直面している国が、世界の富裕国からの断固とした反対を前にしても、独自の国際秩序を長く維持できるとは考えにくい。だがアメリカが主導する民主的秩序が維持されるという保証もない。2024年の米大統領選挙で憲政危機が起き、アメリカが国内闘争に陥る危険さえある。そうならないとしても、アメリカとその同盟国は立場の違いによって分断されていくかもしれない。よくも悪くも、明らかなことが一つある。それは、中国との競争が新しい国際秩序を形成しつつあることだ。

経済制裁対ロシアの資源ツール
―― 変貌する欧州とロシアの経済関係

2022年4月号

ニクラス・ポワチエ シモン・タリアピエトラ グントラム・B・ウルフ ゲオルグ・ザックマン

EU加盟国間でロシア天然ガスに対するニーズに開きがあることが、モスクワがヨーロッパにつけ込む余地を高める恐れがある。ベルギー、フランス、オランダの天然ガス輸入に占めるロシアの割合は10%未満で、スペインとポルトガルは全く輸入していない。これに対してドイツは天然ガス輸入の約半分を、イタリアは約40%をロシアに依存している。しかも、ロシア軍のウクライナ侵攻後に、ヨーロッパの天然ガス価格は60%も跳ね上がっている。今後検討される制裁の範囲がさらに拡大し、長期化するにつれて、ヨーロッパが受けるダメージも大きくなり、モスクワの分割統治戦略が成功する見込みは高まっていくかもしれない。プーチンに対して有効な対抗策を打ち出すには、ロシアの恫喝にもっとも弱いEU加盟国を支援し、ヨーロッパのエネルギー市場構造を見直す必要がある。

迷走する習近平外交
―― プーチン支持と強権支配の危うさ

2022年4月号

ジュード・ブランシェット  戦略国際問題研究所 フリーマンチェア(中国研究)

ウクライナに対するプーチンの無謀な行動が立証したように、お世辞を並べるイエスマンに囲まれ、歴史的不満と領土的野心に煽られた独裁的指導者は他を脅かす存在になる。もちろん、習近平はプーチンではないし、中国はロシアではない。それでも、類似点が増えていることを無視するのは賢明ではない。粛清と昇進が何度も繰り返されることで官僚制の体質が形作られ、指導者の壮大なビジョンと同じ方向へ流されていく。官僚たちが反対意見を述べることの無意味さを理解するようになり、暗黙のうちに指導者が期待する路線に追随して調子を合わせるようになるからだ。リーダーは孤立し、意思決定を信頼できるますます少数の顧問に依存するようになる。台湾からウクライナ問題に至るまで、中国の政治体制全体が習近平の指示を仰ぐようになったのは、こうした理由からだ。

プーチンは「ロシアを失う」のか
―― 幻想と恐怖の政治の終焉?

2022年4月号

アンドレイ・コレスニコフ カーネギー国際平和財団 シニアフェロー

2021年秋に反ウクライナキャンペーンを開始し、2月にウクライナに侵攻するまで、ロシア市民のプーチン支持率はゆっくりとだが着実に上昇し、11月に63%だった支持率は2月には71%へと、ここ数年のピークに達した。だが、ルーブルが暴落し、ロシアの国際的な孤立が深まるなかで、政府がこのまま幻想を主張し続けるのは難しくなる。プーチンはすでにウクライナを失っている。しかも、ロシアとロシア市民を彼と同じように孤立させてしまったこの戦争の結果、プーチンはロシアも失うのか、それともロシアを自分とともに自滅させるのだろうか。賃金や雇用、必需品や医薬品へのアクセスが失われるとともに、ロシア社会のムードは変化し、状況は一変していくかもしれない。

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