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に関する論文

CFR Meeting
イラクと中東の宗派間紛争
―― イラク分裂の意味合い

2014年7月号

◎スピーカー
  スティーブン・ビドル ジョージワシントン大学教授
マックス・ブート 米外交問題シニアフェロー(国家安全保障担当)
ミーガン・オサリバン ハーバード大学教授
◎プレサイダー
リチャード・ハース 米外交問題評議会会長

イラクの混乱は中東におけるより大きな危機の一部であり、最終的にはこれによって中東の地図が書き換えられることになるかもしれない。(R・ハース)

(イラクにおける)過酷な民族・宗派間紛争は数週間、数カ月という単位ではなく、数年という長期的なスパンで続くだろう。その途上で人道危機も起きるだろうし、この環境のなかでテロが起きる危険もある。だがもっとも厄介なのは、イラクの長期的な内戦が地域的に拡散していく危険が非常に高いことだ。(S・ビドル)

イラクの統一を保つことがわれわれの目的だと言い続けるだけで、その一方でイラクの分裂をいかに管理するかを考えないとすれば、政策決定者としての責任を放棄することになる。(M・オサリバン)

すでに事実上の分裂は始まっている。イランの革命防衛隊(IRGC)がその傘下組織を使って南部のシーア派地域を支配し、ISISと旧バース党メンバーがスンニ派地域を支配している。・・・クルド地域はうまく統治されるとしても、他のイラク地域は紛争に覆われつくすことになりかねない。(M・ブート)

デジタル経済が経済・社会構造を変える
―― オートメーション化が導くべき乗則の世界

2014年7月号

エリック・ブラインジョルフソン MIT教授(マネジメントサイエンス)
アンドリュー・マカフィー MITリサーチ・サイエンティスト(デジタルビジネス)
マイケル・スペンス ニューヨーク大学教授(経済学)

グローバル化は大きな低賃金労働力を擁し、安価な資本へのアクセスをもつ国にこれまで大きな恩恵をもたらしてきたが、すでに流れは変化している。人工知能、ロボット、3Dプリンターその他を駆使したオートメーション化というグローバル化以上に大きな潮流が生じているからだ。工場のようなシステム化された労働環境、そして単純な作業を繰り返すような仕事はロボットに代替されていく。労働者も資本家も追い込まれ、大きな追い風を背にするのは、技術革新を実現し、新しい製品、サービス、ビジネスモデルを創造する一握りの人々だろう。ネットワーク外部性も、勝者がすべてを手に入れる経済を作り出す。こうして格差はますます広がっていく。所得に格差があれば機会にも格差が生まれ、社会契約も損なわれ、・・・民主主義も損なわれていく。これまでのやり方では状況に対処できない。現実がいかに急速に奥深く進化しているかを、まず理解する必要がある。

移民と社会同化
―― 追い込まれたスウェーデンの壮大な実験

2014年7月号

イーヴァル・エクマン スウェーデン公共ラジオ
国際問題プログラムホスト

この数十年にわたって、ボスニア、イラク、ソマリアなどから逃れてきた人々は、ヨーロッパでもっとも寛大なスウェーデンの難民保護政策の恩恵に浴してきた。だがその結果、かつては同質的だったこの国の社会はいまや大きく姿を変えた。経済が停滞するなか、単純労働を中心とする雇用状況が改善せず、失業率は高止まりしている。しかも、社会保障政策が大きな圧力にさらされている。こうして反移民の立場をとるスウェーデン民主党が政治的支持を伸ばしている。「巨大な社会実験がスウェーデン社会に強制されてきたが、その実験が失敗しているのはすでに明らかだ。多文化社会のビジョン、理想郷そして夢は崩れ去った」 と民主党は主張している。一方で、移民の若者たちによる暴動も頻発している。移民国家スウェーデンは大きな岐路に立たされている。

アベノミクスの黄昏
―― スローガンに終わった構造改革

2014年7月号

リチャード・カッツ オリエンタル・エコノミスト・レポート誌編集長

3本の矢すべてが標的を射抜けば、安倍政権が強気になってもおかしくはない。だがすでに2本の矢は大きく的を外している。財政出動による景気刺激効果は、赤字・債務削減を狙った時期尚早な消費税率の引き上げによって押しつぶされ、構造改革は曖昧なスローガンが飛び交うだけで、具体策に欠ける。量的緩和も、他の2本の支えなしでは機能しないし、物価上昇の多くは円安による輸入品の価格上昇で説明できる。結局、自信を取り戻すには、有意義な構造改革を通じて停滞する日本企業の競争力を回復するしかない。そうしない限り、一時的な景気浮揚策も結局は幻想に終わる。問題は、安倍首相がもっとも重視しているのが経済の改革や再生ではなく、安全保障や歴史問題であることだ。

CFRインタビュー
ロシアの戦略とウクライナ東部
―― 流れは国家内国家へ

2014年7月号

チャールズ・キング  ジョージタウン大学教授(国際関係論)

ウクライナ東部に対するロシアの戦略は公的には関与を否定しつつ、水面下で不安定化を画策することだと言われることも多い。これは、ロシアが1990年代に「近い外国」に対してとった戦略アプローチの系譜とみなせる。ロシアは最終的な結果がどうなるかは気に懸けずに、現地情勢への影響力を確保することを重視する。この戦略をとれば、ウクライナ東部における分離独立勢力の将来の地位をめぐって影響力を確保できる。一方、ウクライナ政府が軍事的対応を試みればみるほど、より多くの敵を作り出し、親ロ派を勢いづけてしまう。これは、対ゲリラ戦争に付きまとう古典的な問題だ。国際交渉も、(国連その他の)外部プレイヤーが(分離独立勢力にとっては受け入れられない)領土保全を目的に掲げるために、結局、うまくいかないことが多い。・・・ウクライナ政府が明確な勝利を得られないまま、混乱が長期化すれば、親ロシア派が独自の統治構造を作り上げていく危険がある。 聞き手はロバート・マクマホン Editor@cfr.org)

新疆ウイグルで何が起きているのか
―― 中国のワイルドウエスト

2014年7月号

ケンドリック・クオ ジョンズホプキンス大学大学院生

新疆ウイグル自治区には中国で最大規模の石油、天然ガス、石炭資源が存在し、例えば、中国の石炭資源の40%がこの地域に集中している。北京は、この地域での資源開発をスムーズに進めることに最大限の配慮をしてきた。ウイグル族の不満を抑え込む一方で、漢民族の移住者たちのことを、教育を受けた労働力、新疆ウイグルにおける中央政府に忠実な市民として優遇してきた。こうして、1949年には22万程度だった新疆ウイグルにおける漢民族の人口はいまや840万へとふくれあがった。ウイグル族は漢民族の文化帝国主義に反発し、これが二つの民族の衝突を引き起こしている。だが多くの場合、見落とされているのは、いまや自治政府と漢民族コミュニティの間の緊張も高まっていることだ。漢民族の要望を政治的に追認し、政府が便宜を図るという漢民族コミュニティとの暗黙の了解は、すでに持続不可能になっている。

イラク内戦とイランの立場
――イランが宗派間紛争という言葉を使わない理由

2014年7月号

モフセン・ミラニ 南フロリダ大学戦略外交センター所長

テヘランの目的はバグダッドのシーア派政権を存続させることで、一方、イラク・シリア・イスラム国(ISIS)は純然たるスンニ派国家を樹立したいと考えている。とはいえ、イランは今回の戦闘を「宗派間紛争である」と明確に認めるつもりはなく、ISISのことを外国の支援に依存するタクフィリ(他の宗派を不信心とみなすスンニ派)、あるいはインフィダル(背教徒)と位置づけている。一方で、イランはすでにイラク内戦に深く関与している。イランの革命防衛隊(IRGC)はイラク治安部隊と協力して軍事作戦を主導し、テヘランはシーア派武装集団にも戦闘への参加を促している。長くシリア内戦にも関与してきたイラン軍と武装勢力は、ISISを含むスンニ派武装勢力との十分な戦闘経験をもっている。それでも、テヘランはイラクでの戦闘を「テロとの戦い」として位置づけ、ISISの資金源がサウジであるとも公言していない。その理由は・・・

命運尽きた、タイの政治

2014年6月号

ダンカン・マッカーゴ 英リーズ大学政治学教授

インラック・チナワット首相の解任は予想外の出来事ではない。特定の見方をすれば、近年在任中にポストを追われたこの国の4人目の首相となったに過ぎない。退陣を余儀なくされた首相たちは、すべて同じ政治派閥の出身者たちだ。インラックの兄、タクシン・チナワット元首相は、2006年9月、軍のクーデターで政権の座から追放された。他の2人、サマック・スントラウェートと、ソムチャーイ・ウォンサワットは、2008年に憲法裁判所の判決によって失職している。こうした追放劇がこの国の政治課題の解決に役立つはずはない。その結果、国内の対立を悪化させる正当性を欠いた政権を誕生させ、抗議運動の下地を作ることになる。インラックの失脚も、これと同じ展開をたどるだろう。

プーチンの戦略とヨーロッパの分裂

2014年6月号

マイケル・ブラウン ジョージワシントン大学エリオットスクール学院長

NATOの東方拡大路線がロシアを刺激することはない。この欧米の認識は希望的観測にすぎなかった。欧米との明確な対立路線を選択したプーチンのロシア国内での支持率は高まっており、当面、状況は変化しないだろう。一方、ヨーロッパの安全保障は機能不全に陥っている。しかも、ヨーロッパはロシアからのエネルギー供給に依存している。このため、ロシアにどう対処するかをめぐってヨーロッパ諸国の足並みは乱れている。プーチンは「近い外国」におけるロシア系住民地域をロシアに編入してロシアの勢力圏を確立し、国内の政治的立場を支えるためにも欧米との対決状況を維持していくつもりだ。プーチンの野望、そして脅威の本質を過小評価するのは間違っている。欧米の指導者たちは、プーチンの最終的な戦略目的を見極めて、それに応じた行動をとる必要がある。

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