日本外交も大不況
1998年12月号
日本の金融不安や政治・経済面での停滞は、社会に悲観主義を蔓延させ、非核国で経済力に富み、民主的なシビリアン・パワーであるというアイデンティティーさえも危機にさらしている。経済力が外交的影響力につながるとする日本の前提は、日本経済の衰退によって力を失いつつあり、いずれ国益をより現実的に定義しなければならなくなるだろう。アジア経済のメルトダウン、インド・パキスタンの核実験、中国の台頭、日米同盟の不確実性と、難題は山積しているが、日米中のバランスをいかにとるか、これが現実主義外交の最大の課題となろう。日本は米中接近に対して被害者意識を抱くのではなく、経済、安全保障の両面で、とりわけマクロ経済政策、貿易、環境問題、核軍縮措置、地域政策を含む多様な問題に関して、より闊達な日米中の三国間対話を確立させていくべきである。将来は中国の参加も視野に入れた日米同盟のビジョンを描くことも必要だろう。日本の将来を過度に悲観視すべきでないが、日本のカムバックには、新しいアイデアと人的資源が必要である。そして、それを提供するのは官僚ではなく、姿を現しつつある市民社会であろう。
