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なぜ旧ユーゴ紛争の火種は消えないか

ウォーレン・バス 「フォーリン・アフェアーズ」副編集長

The Triage of Dayton

Warren Bass 「フォーリン・アフェアーズ」副編集長で、コロンビア大学のフェロー。専門は歴史学。

1998年12月号掲載論文

事実上のボスニア分割を、名ばかりの単一国家という体裁で取り繕っただけのデイトン合意は、それまでになされた侵略行為、人権弾圧、民族浄化など反民主的、非人間的行為を不問に付すことで成立した「嫌々ながらの妥協」である。合意をとりまとめるためには、リベラルな価値とは正反対のイデオロギーの持ち主であるミロシェビッチやツジマンとの交渉が必要だったため、結果的に彼らの立場を強化してしまった。現在のコソボの流血の惨事も、ミロシェビッチやツジマンの立場を強めてしまったデイトン合意の帰結の一つにすぎない。過去の蛮行に免罪符を与えたかのようなデイトン合意が、ますますセルビア人を民族的排外主義に駆り立ててしまったからだ。ボスニアを含む旧ユーゴの地に、多民族民主主義とコスモポリタンな社会を復活させ、アメリカのリベラル外交の面目を保つには、「戦争裁判の実施、難民の故郷への復帰、(民族的でない)市民的ナショナリズムの価値の再確認」など、デイトン合意に盛り込まれたリベラルな要素を実現していくしかない。

  • ボスニアとコソボ
  • ブッシュ政権の遺産
  • 決断なき介入へ
  • デイトン合意と「ミロシェビッチ戦略」
  • 火種としてのムスリム・クロアチア連邦
  • 民主外交と現実主義外交の間
  • 民主的原則に立ち返れ

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