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論文データベース(最新論文順)

21世紀をリードするのは西洋か東洋か

2011年2月号

ティムール・クーラン
デューク大学政治学教授

「西洋」の起源は、紀元前9500年頃に人類が植物の栽培と動物の家畜化を試みるようになった、現在のイスラエル、シリア、トルコ、イラク、イランを内包する弓形の地域(「ヒリー・フランクス」)に存在する。一方「東洋」の歴史は紀元前7500年頃にまでさかのぼることができる。この時期に、現在の中国の黄河と揚子江の間の地域で、人々は植物の栽培と動物の家畜化を手がけるようになった。西洋は現在知られている最古の陶器が作られた紀元前1万4000年から541年頃まで、東洋に対する優位を持っていたが、急速な進歩を遂げた東洋が1100年までには西洋を抜き去り、優位を手にする。やがてそのギャップは縮まり、1773年頃に西洋が再び東洋を追い抜き、現在に至るまでその優位を維持している。・・・現在のトレンドを基に、おそらく2103年までに東洋が再び西洋を逆転するとみなす予測もある。しかし・・・・

「天然ガス革命」の到来
――天然ガス・グローバル市場の誕生は近い

2011年2月号

ジョン・ダッチ 元米エネルギー省次官

水平抗井や水圧破砕という二つの技術進化によって、これまで開発が難しかった世界のシェールガス資源の開発・生産効率が劇的に改善し、その生産コストも大きく低下している。シェールガスという安価な非在来型天然ガス資源の開発が急ピッチで進められているのは、こうした理由からだ。しかも、シェールガス資源のような非在来型天然ガスの生産が強化される一方で、地域間を結ぶパイプラインが整備され、天然ガスの液化施設の建設も進められている。必然的に、天然ガス価格を石油価格に連動させた、供給側に有利なこれまでの契約は次第に姿を消していくだろう。いずれ、より透明性の高い天然ガスの世界市場が誕生し、最初に電力生産部門で、次に、産業・交通部門で天然ガスが石油に取って代わっていくことになるだろう。この流れを「天然ガス革命」と呼んでも、過度に事実を誇張することにはならないはずだ。

「西洋は民主主義のソースコードを持っており、このコードへのアクセスを認めるだけで、権威主義国家は崩壊する」。このような見方は間違っている。ソーシャルメディアは民主化に向けた環境整備のためのツールにすぎない。ウェブ上の公共空間で思想や意見が拡散され、市民社会形成への流れが生じない限り、政治的変化はほとんど起きない。つまり、外部情報へのアクセスを持つことは、相互に会話できる環境を持つことに比べれば、それほど重要ではない。特定の意見が最初はメディアによって伝えられ、その後、それを読んだ人々の友人、家族、同僚たちへと広がっていき、ここで、政治的意見が形作られる。インターネット、特にソーシャルメディアが大きな違いをもたらすのも、この第2段階においてだ。ソーシャルメディアが社会や公共空間での人々の運動を加速する効果があるのは事実としても、その結果が出るまでには、数週間、数カ月ではなく、数年から数十年の時間がかかる。

チュニジア革命とエジプト、リビア、サウジアラビア

2011年2月号

エリオット・アブラムス 米外交問題評議会中東担当シニア・フェロー

2010年12月にチュニジアで起きた民衆デモは数週間に及び、2011年1月についに政権は崩壊し、ベンアリ大統領はサウジに亡命した。このチュニジアでの展開が北アフリカ他の独裁国家でも民衆蜂起を誘発するのではないかといまや広く考えられている。中東問題の専門家であるエリオット・アブラムスは、「民衆蜂起の高まりを前に、チュニジアの軍隊は組織としての生き残りを重視し、ベンアリと彼の家族のために、数百人の市民を殺害すれば、軍に未来はないと判断し、これが、民衆が作り出した革命の流れを加速した」と指摘する。つまり、「他の中東の独裁国家でも、かりに民衆運動が起き、軍隊が独裁者の鎮圧命令を拒絶すれば、同じような展開になる」と語った同氏は、似たような展開になる可能性を秘めているのが、いずれも権力継承のタイミングにある「リビアとエジプトだ」と指摘した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティングエディター)

CFRミーティング
カダフィ後のリビア
―― 石油の富でいかに部族間のバランスをはかり、
国家建設へと結びつけるか

スピーカー
エリオット・アブラムス 米外交問題評議会中東担当シニア・フェロー
プレサイダー
バーナード・ガーツマン コンサルティング・エディター、CFR.org

リビアの社会状況は、エジプトよりも、さらに怒りを禁じ得ないものだった。一日あたり150~200万バレルの石油が輸出されてきたが、リビアの貧しい人々は、「いったい石油からの収益はどこにいってしまったのか」と考えてきた。おそらくは、カダフィ政権が倒れるのはさけられない。最大の問題はリビアに制度らしき制度が存在しないことだ。カダフィは40年をかけて、制度構築を阻止してきた。しかも、国家的な統合は実現していない。帰国して何かができるような君主もいない。来週、カダフィ政権が倒れれば、何らかの暫定政権が必要になる。問題は、一つではなく、二つか三つ暫定政権が誕生する可能性があることだ。

CFRインタビュー
アラブ世界で何が起きているのか

ロバート・ダニン 米国家安全保障会議中東担当ディレクター(代理)

わずか数週間で、チュニジアのベンアリ大統領が民衆デモを前に亡命を余儀なくされ、エジプト、イエメンその他でも民衆デモが続いている。多くの場合、デモを主導しているのは若者たちで、その行動はソーシャルメディアやアルジャジーラなどで知った近隣諸国の出来事に刺激されている。特にアルジャジーラが現在の中東の流れを左右するアクターになっている。このタイプのデモは中東ではかつてみられなかったと、CFRのロバート・ダニンは言う。これまでのように反米運動という形をとるのではなく、「現地の問題に対する不満や反発からデモが起きている。しかも、それが、近隣諸国の出来事に刺激されている」。ムバラク大統領が息子のガマル・ムバラクを後継大統領にする道はもはや閉ざされたといってよく、ムバラクが次期大統領選挙後、政治的に存続できるかどうかさえ危ぶまれる、と同氏は語り、アメリカの政策にとって大きな意味合いは、「イスラエル・パレスチナ問題を解決することこそ、中東問題を解決する鍵」とみなしてきた、アメリカの中東政策の前提の多くが間違っていたことが、国内問題を前に立ち上がった今回の民衆デモで立証されたことだ、とコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)

エジプトでの民衆の抗議行動はいまも拡大し続けている。大統領が内閣改造を行い、副大統領を新たに任命したにもかかわらず、人々はムバラクの退陣を求めている。そして、すでにエジプト軍は市民に武力は行使しないと宣言している。「ムバラクの時代は終わった」とみるリチャード・ハースは、民衆の支持(正統性)を失い、リーダーシップも発揮できずにいるムバラクは辞任し、その後を担う、暫定内閣を立ち上げて、暫定的な政治プロセスに移行していく時期にきているとみる。そのプロセスにおいて、政治改革と憲法改革を具体化していく必要がある。こう考えるハースは、「軍が軍らしくあるためには、新たな政治的権限、つまり、新しい政治指導者が必要だし、軍はムバラクのためではなく、次期政権のために、エジプトの秩序と安定を回復すべきだ」と強調した。暫定政権の指導者の候補にスレイマン副大統領、モハメド・エルバラダイの名前を挙げた同氏は、移行プロセスが安定した秩序だったものになるかどうか、そして、イスラム同胞団が移行プロセスにおいてどう動くかが今後の鍵を握るとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)

CFRミーティング グローバルな資金の流れを考える
―― ラリー・サマーズとの対話

2011年1月号

ローレンス・サマーズ 国家経済会議議長
ティム・ファーガソン フォーブス・アジア、エディター

資本管理策に眉をひそめるムードがあるが、私は、流入する資本に課税したほうがいいと特定国が判断するとしても仕方がないと思うし、資本管理策をそれほど大きな問題だとは思っていない。完全なアナロジーにはなり得ないが、資金の流れを人の流れに例えることもできる。人々が外国に移住するのを認めない国は全体主義的で問題があると考えられる。一方で、国家が慎重に移民の流入を規制するのは所与のこととして受け入れられているではないか。・・・妥当な範囲での資本の流入を制限することにそれほど問題があるとは思わない。・・・一方で、通貨の切り上げを拒み資金があふれかえる状況が続けば、バブルが形成されるかもしれない。・・・中国経済が今後どうなるかわからないという見込みが高まっているために、不透明感が増している。(L・サマーズ)

非国家アクターとしての宗教の台頭
―― グローバル化時代の宗教

2011年1月号

スコット・M・トーマス バース大学上席講師(国際関係)

新しい世界が形成されつつあり、そのおもな担い手は途上世界を構成する国と人々、そして宗教コミュニティだ。そして、昨今の宗教の興隆の大きな特徴は、イスラムの台頭だけではなく、ペンテコステ派と福音主義プロテスタント(福音派)が中国やインド、途上国で大きな広がりをみせていることだ。また宗教系非国家アクターの台頭にも注目する必要がある。世界最大のイスラム組織「タブリギ・ジャマート」、中国の法輪功なども、カトリック教会や東方正教会のように、国際関係に影響を与えるグローバルな宗教プレイヤーの仲間入りを果たしている。しかも、途上世界では社会奉仕ネットワークとテロネットワークの多くが重なり合っている。また、途上国の人々がわれわれと同じ宗教を受け入れても、欧米における(保守やリベラルといった)政治志向をそのまま映し出すことにはならない。グローバル化がいかに宗教を変貌させるかは、テロや宗教紛争といった安全保障上の脅威が今後どう推移するかさえも左右することになるだろう。

(私の両親は)普通の人々だった。だが、(アラバマ州)バーミンガムの生活環境はおよそ普通とは言えなかった。私たちは、(人種差別ゆえに)レストランにも行けず、ホテルにも泊まれなかった。それでも、両親は「その気になれば、あなたはこの国の大統領にもなれるのよ」と諭した。二人は、コミュティの子供たちに、「自分たちの環境は変えられないかもしれないが、その環境にどう反応するかはあなたが決められるし、そこが大切だ」と私たちに教えた。この教えが、私に外交アプローチを理解させ、原則を持つことの重要性を教えてくれたと思う。(C・ライス)

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