1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

論文データベース(最新論文順)

アメリカのアジア重視戦略は安全保障領域を重視しすぎており、外交・経済領域を軽視している。TPP(環太平洋パートナーシップ)がこのギャップの一部を埋めてくれるかもしれないが、中国に対してもっと積極策をとるべきで、二国間投資協定(BIT)を交渉していくべきだろう。今後の中国における改革の試金石とみなされる上海自由貿易区を開設したことからも明らかなように、中国はこれまでの投資主導型の輸出経済モデルを見直す必要があることを理解している。BITは米中の通商関係を加速する大きな触媒の役割を果たし、両国の経済バランスに二つの大きな変化をもたらす助けになる。一つは、人民元が市場価値に即したレベルへと引き上げられていけば、アメリカの対中輸出が増大する。そして、もう一つは中国から相当規模の対米投資が行われるようになることだ。すでに2013年9月、上海インターナショナルは米豚肉加工大手のスミスフィールドフーズを71億ドルで買収し、これは、至上最大の中国企業による米企業の買収となった。・・・

メルケルもオランドも「友人が友人を対象にスパイをしていること」は知っていた。一方、市民たちが色をなして怒ったのは無理もない。欧米という家族内で盗聴が行われていたことは一般には知られていなかったからだ。この事態を前に、ヨーロッパの指導者たちは、強硬な姿勢をとらざるをえなくなった。もちろん、指導者たちの個人的な怒りもある。自分の携帯電話の通話が緊密な同盟国によって盗聴されていたメルケルが「自分は冒涜された」と感じているとしても無理はない。政治的反応と感情的怒りが重なり合って、アメリカ政府にもっと明確な対応を示すように求める圧力が生じている。・・・必要なのは行動ルールを協議すること、大西洋同盟内部での情報収集の枠組みを定める新しいルールを導入することだ。非常に微妙なバランスが必要になる。ヨーロッパが政治的にかなり苛立っている以上、アメリカは、「これまでもやってきたことだ」と言う以外に、何か別の対策を示す必要がある。

Foreign Affairs Update
米LNG輸出がエネルギー市場を変える

2013年10月号

エイミー・マイヤース・ジャッフェ カリフォルニア大学デービス校
エネルギー&持続可能性研究所 所長
エドワード・モース
シティ・グループ コモディティリサーチ部門
グローバル・マネージングディレクター

2020年までに、アメリカは年間6170万トンの液化天然ガス(LNG)を輸出し、カタールに次ぐ、世界第2のLNG輸出国に浮上していると予測される。アメリカがLNG輸出を増やし、世界市場からの石油輸入を減少させれば、この半世紀に及ぶOPEC(石油輸出国機構)による原油価格の管理能力は否応なく低下する。つまり、アメリカのエネルギー輸出が、石油や天然ガスに関する世界のゲームルールにどのような衝撃を与えるかが重要なポイントになる。1973年のOPECによる価格引き上げと禁輸以降の40年にわたって、石油と天然ガス市場は高度に政治化されてきた。だが、アメリカが主要なエネルギー輸出国になれば、グローバル経済における最大の産業であるエネルギー部門で突然、自由貿易が実現する。アメリカのLNG輸出は、世界の炭化水素資源貿易から政治を排除する最初のステップにすぎない。グローバルな天然ガス市場で起きていることは、いずれグローバルな石油市場でも必ず起きる。

CFR Update
世界経済を左右する中国における成長と改革の行方

2013年10月号

ロバート・カーン
米外交問題評議会シニアフェロー(国際経済担当)

市場プレイヤーの多くは、中国経済の成長率は今後急激に減速していくと考えている。2013年と2014年の成長率は6%台へと落ち込み、悪くすると5%を割り込む可能性もあると予測している。だが、こうした経済成長の減速は、中国が経済構造のリバランスを試み、現在の輸出・投資主導型経済から、消費主導型経済に移行するための改革を実施することを織り込んでいる。これを別にしても、IMF(国際通貨基金)が指摘する通り、労働力人口の減少が労働市場ダイナミクスを根本的に変化させる。つまり、中国は、労働力の過剰供給の時代が終わり、相対的な賃金が上昇する「ルイスの転換点」にさしかかりつつある。だが一方でIMFは、経済成長の停滞を理由に中国は改革(経済構造のリバランシング)を先送りするのではないかと懸念している。中国が野心的な改革を実行し、経済のリバランシングを実現して短期的な低成長のリスクを受け入れるか、あるいは、経済成長を維持しようと改革プロセスを先送りするかで、グローバルな経済成長の見通しは大きく変わってくる。

アサド勝利後のシリア
――戦後シリアの荒涼たる現実とは

2013年10月号

アンドリュー・タブラー
ワシントン近東政策研究所シニアフェロー

戦闘で敗れ去るのをアサドが回避できる可能性は高まっており、はっきりとした勝利をいずれ手にするかもしれない。もちろん、アサドが権力を維持できるとしても、彼が内戦前のような国家レベルでの統治を再確立することはなく、テロ集団を含む反政府勢力は、シリアの一部を今後も掌握し続けるだろう。アサドは(シーア派の)イラン、ヒズボラとの関係をさらに強め、一方、中東のスンニ派諸国は、反政府武装勢力による抵抗を今後も支え続けるはずだ。だが、アサドが全面的な内戦を展開し、化学兵器を民間人に対して使用したことが、民衆の支持をとりつける上で今後も大きな障害となる。内戦を経たシリア政府は、戦争前に存在した残忍ながらも安定した政府以上に、抑圧的で法を顧みなくなるだろう。シリアは今後長期的に不安定化し、人道に対する残酷な犯罪が繰り返される場所になるだろう。

イランは対話・交渉路線を模索する
―― 最高指導者ハメネイの思想

2013年10月号

アクバル・ガンジ
ジャーナリスト

イランの最高指導者、アヤトラ・ハメネイは聖職者としては、一風変わった過去を持っている。青年期に世俗派の反体制指導者たちと交流し、イスラム革命前に彼らの思想を吸収しているだけでなく、西洋の文学を耽読する文学青年でもあった。レフ・トルストイやミハイル・ショーロホフの作品を絶賛し、バルザックやゼバコの小説を愛読した。なかでもビクトル・ユーゴの『レ・ミゼラブル』が大のお気に入りだった。ムスリム同胞団の思想的指導者サイイド・クトゥブの著作からもっとも大きな影響を受けているとはいえ、ハメネイは、科学と進歩は「西洋文明の真理」であり、イランの民衆にもこの真理を学んで欲しいと考えている。彼はクレージーでも、支離滅裂でも、攻撃のチャンスを模索する狂信者でもない。核兵器の開発も望んでいない。ハメネイは「核兵器は人類に対する罪であり、生産すべきではないし、すでに存在する兵器は解体すべきだ」と考えている。ハメネイは欧米はイランの体制変革を狙っていると確信し、欧米への根深い猜疑心を持っているが、その思想にも変化がみられる。・・・・

Foreign Affairs Update
ロシアのアジアシフト戦略という幻想

2013年10月号

フィオナ・ヒル
ブルッキングス研究所 シニアフェローボボ・ロー
英チャタムハウス アソシエートフェロー

アメリカに続いてロシアもアジアへと軸足を移そうと試みている。伝統的なヨーロッパ市場ではなく、アジア太平洋市場との関係を強化することで、ロシアの経済成長を刺激したいとプーチンは、考えている。モスクワのアジアシフト戦略は、アジアに影響力を行使したいという願いだけでなく、極東ロシアの人口がまばらであることへの恐れにも突き動かされている。この意味で、その鍵を握るのが中国との関係だ。だが、モスクワにとって中国との貿易関係は、次第に(中国による)新植民地主義的な様相を帯びてきている。ロシアからの主な輸出は原材料で、中国からは製品や消費財を輸入しているからだ。北京は、兵器を別とすれば、ロシアから工業製品を輸入することに関心はなく、武器輸入でさえも、近年は低調で、2006年以降、大がかりな武器貿易契約は交わされていない。アジアシフト戦略をとれば、いずれロシアは「自国の帰属しない東」と「うまく適合できない西」の間で漂流していることを見いだし、失望することになるだけだろう。

EU脱退という愚かで危険な火遊び
―― キャメロン英首相の危険なゲーム

2013年10月号

マティアス・マタイス
ジョンズ・ホプキンス・ポール・ニッツスクール准教授(国際政治経済学)

キャメロン首相は2013年1月、イギリスの欧州連合(EU)との関係を規定する条約内容を再交渉し、2017年末に国民投票を実施してEUへの残留か離脱かを決定すると発表した。イギリスのEU懐疑論は、国家主権という時代遅れの概念にしがみつく英保守党内グループの、ブリュッセルに対する理屈抜きの嫌悪感に根ざしている。合理的な政治的・経済的計算をすればロンドンがEUとの関係を絶つというシナリオが出てくるはずはない。キャメロンは、時代遅れの孤立した国への軌道にイギリスを載せようとしている。イギリスがヨーロッパと関係を絶つ可能性、つまり真のパワーを捨てて国家主権という幻想を選ぶ悲劇的な過ちを犯す可能性は、いまやかなり現実味を帯びてきている。

CFR Meeting
放置されたシリア内戦
―― 問題は化学兵器だけではない

2013年10月号

◎スピーカー
ジョン・マケイン
米上院議員
◎モデレーター
マーガレット・ワーナー
PBSニュースアワー

化学兵器によって1400人が殺害された。・・・だが、この他に11万人が銃弾、ナイフ、棍棒で惨殺されていることを忘れてはいけない。この殺戮行為に目を向けないのは間違っているし、いまやアサドは空からの攻撃に力を入れている。・・・シリアの化学兵器廃棄に関するロシアとの合意は、シリア内戦についての言及がなく、何の解決策も示されていない。実際、アサドがシリアの民間人にさらに過酷な作戦をとるようになれば、シリアはさらに混沌とした状況に陥り、化学兵器を廃棄するのも不可能になる。要するに、アサドは、合意受諾を反故にすることなく、合意を無力化できる立場にある。シリア内戦を終結に向かわせるには、シリア政府軍の軍事能力を低下させ、穏健派反政府武装勢力の軍事能力を強化しなければならない。ロシアは、反政府勢力や民間人を殺害するのに用いられる兵器を、いまもシリアへと飛行機で送り込んでいる。・・・

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