1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

論文データベース(最新論文順)

CFR Meeting
放置されたシリア内戦
―― 問題は化学兵器だけではない

2013年10月号

◎スピーカー
ジョン・マケイン
米上院議員
◎モデレーター
マーガレット・ワーナー
PBSニュースアワー

化学兵器によって1400人が殺害された。・・・だが、この他に11万人が銃弾、ナイフ、棍棒で惨殺されていることを忘れてはいけない。この殺戮行為に目を向けないのは間違っているし、いまやアサドは空からの攻撃に力を入れている。・・・シリアの化学兵器廃棄に関するロシアとの合意は、シリア内戦についての言及がなく、何の解決策も示されていない。実際、アサドがシリアの民間人にさらに過酷な作戦をとるようになれば、シリアはさらに混沌とした状況に陥り、化学兵器を廃棄するのも不可能になる。要するに、アサドは、合意受諾を反故にすることなく、合意を無力化できる立場にある。シリア内戦を終結に向かわせるには、シリア政府軍の軍事能力を低下させ、穏健派反政府武装勢力の軍事能力を強化しなければならない。ロシアは、反政府勢力や民間人を殺害するのに用いられる兵器を、いまもシリアへと飛行機で送り込んでいる。・・・

CFR Interview
イランとの関係改善は実現するか
―― 核協議とシリア危機の新ファクターとは

2013年10月号

モフセン・M・ミラニ
南フロリダ大学戦略外交センター所長

オバマ大統領は「アメリカはイランの体制変革を模索していないし、イランは(核不拡散条約で認められた)原子力の平和利用を試みる権利を持っている」と国連演説で語り、ロウハニ大統領も「イランの国防ドクトリンのなかに核兵器という言葉は存在しない」と明言した。ただし、オバマは、イランが国内でウラン濃縮を進めることを認めるつもりはない。ここが重要なポイントだ。今後、両国の立場をいかに交渉で埋めていくか。イランにはアメリカとの和解を望んでいない力強い強硬派集団が存在するし、ロウハニの動きを監視している。微妙な問題をめぐって拙速な動きをみせれば、彼は国内的に障害を抱え込むことになる。アメリカは、シリア問題をめぐるジュネーブ2にイランを招待するとともに、5プラス1(国連安保理5常任理事国とドイツ)とともにイランとの二国間交渉を試み、外交チャンネルを増やすことで、イランの意図を見極めるべきだろう。・・・・・・

アメリカか中国か
―― 韓国のジレンマ

2013年10月号

スコット・スナイダー
米外交問題評議会シニア・フェロー(朝鮮半島担当)

中国の台頭を前に、韓国は戦略ジレンマに直面している。経済成長の多くを中国との経済関係に依存しつつも、安全保障領域では依然としてアメリカとの同盟関係を必要としているからだ。ソウルは、ワシントンと北京のいずれかを選択するような事態を回避するのが戦略的に好ましいと考えているようだ。当然、韓国は、良好な米中関係が維持されることに大きな利益を有している。だが、仮に韓国がアメリカではなく、中国との関係強化を戦略的に優先させるとすれば、それはどのような環境においてだろうか。

インドを支える州経済の台頭
―― 経済再生を主導する州経済の躍進

2013年9月号

ルチル・シャルマ/モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント 新興市場・グローバルマクロ担当ディレクター

グローバル経済が低迷するなか、ニューデリーは政治的な機能不全に陥っているかにみえる。二桁台に達していたGDP成長率も、いまや5%に落ち込み、インドの首都は政治腐敗、停電、無能な警察といったスキャンダラスなニュースで埋め尽くされている。だが、ダイナミックな州が急速かつ持続可能な経済成長を遂げ、いまやインドは力強い地方によって成り立つ国であることが再認識されつつある。主要な州経済がいまでも二桁近い経済成長を実現していることは、中国、ブラジル、インドネシア、メキシコなどの他の新興諸国とインドが競争していく上での大きな力になる。州指導者が中央に対して連邦構造を受け入れさせ、経済政策上の権限をさらに州政府に委譲させることに成功すれば、インド経済は再度復活の道のりを歩み始めるだろう。

CFR Briefing
後発医薬品をめぐる
途上国と製薬メーカーの攻防

2013年9月号

トニ・ジョンソン  スタッフライター、cfr.org

公衆衛生上の「国家的緊急事態」に直面した国には、製薬メーカーのパテントを無視して、国内で後発医薬品を生産することがWTO合意によって認められている。この「強制ライセンシング」を用いて途上国が後発医薬品を生産できるようになれば、医薬品を安価に提供できるようになり、感染症対策その他への大きな助けになる。一方、製薬メーカーは、多くのコストを要する新医薬品の研究開発にはパテントが守られることが依然として不可欠だと考えている。だが、感染症だけでなく、ガンなどの慢性疾患、非感染性疾患用の医薬品に途上国が強制ライセンシングを適用すれば、先進国における製薬産業の収益構造の中枢がダメージを受け、最終的に、慢性疾患対策上の医薬品開発のインセンティブとイノベーションが損なわれると指摘する専門家もいる。問題は、途上国が強制ライセンシングを導入したがる理由が何であるかが、はっきりしないことだ。感染症の流行とは別に、国内医療産業の育成がその意図ではないかとも考えられている。・・・

CFR Interview
迷走するフランスとヨーロッパの未来

2013年9月号

ドミニク・モイジ/フランス国際関係研究所特別顧問

いまや重要なポイントは、フランスが、すでに危機を脱したかに見える北ヨーロッパの軌道を離れて、南ヨーロッパの近隣諸国の軌道に入りつつあるかどうかにある。フランスが明らかに、そして不幸にも、ギリシャやスペインの軌道に入りつつあるとすれば、EU(欧州連合)にネガティブな衝撃が走る。・・・これまでヨーロッパにとって独仏が一定のバランスを保つことが重要だった。だが不幸にも、フランスはもはやドイツと同じレベルの国ではない。・・・アメリカが関心をもつのは強いヨーロッパで、いまやアメリカは弱いヨーロッパへの関心を失いつつある。そして、弱いヨーロッパを前にアメリカが恐れているのは、欧米世界を構成するのがアメリカだけになってしまうことだ。必要なのは、ヨーロッパがよりヨーロッパ的になること、ヨーロッパの統合をさらに進め、よりダイナミックなヨーロッパになることだろう。

CFR Update
TPPと米韓FTAの教訓
―― 経済もパートナーシップも強化する

2013年9月号

シーン・コネル/在ワシントン東西センターフェロー(日本担当)

日本にとってのTPPと、韓国にとっての米韓自由貿易協定(KORUS)には多分に重なり合う部分がある。実際、TPPが時に「KORUSプラス」と呼ばれることからも明らかなように、TPPの交渉アジェンダの多くがKORUSを下敷きにしている。TPPは新たに経済成長を刺激するだけではない。KORUSが米韓関係を刷新したように、TPPは日米パートナーシップを刷新するポテンシャルも秘めている。TPP交渉を通じて、日米は相互認識を刷新し、その経済的つながりからいかに大きな恩恵を引き出しているかをより的確に理解することになるはずだ。強いリーダーシップ、困難な決断を下す気概、貿易交渉者によるクリエーティブなソリューション、両国で合意を支える利益認識を形成する努力、これらのすべてがKORUSを成功へと導いた。日米の政策決定者が、TPPのポテンシャルを十分に生かして、両国のパートナーシップを強化し、新たな成長領域を形作るには、こうしたKORUSの教訓を認識する必要がある。

CFR Update
中国の水資源不足と環境汚染問題
――米議会における証言から

2013年9月号

エリザベス・C・エコノミー
米外交問題評議会アジア研究担当シニア・フェロー

中国の一人当たりの水資源量は世界平均の4分の1程度でしかない。しかも、経済が好調で個人が豊かになってきたこの10年をみると、生活用水と工業用水の需要が急増しており、今後も都市化が進むにつれて、この傾向は一層顕著になっていくと考えられる。2012年には水資源が不足した都市が400を超えている。しかも環境汚染が水資源問題をさらに深刻にしている。地下水の90%は汚染され、河川水の40%、地下水の55%が飲料に適さないと考えられている。癌の発生率が通常よりも著しく高い「癌の村」が459存在すると報告されているし、そのほとんどは、政府の水質汚染評価5段階のなかで最低とされた河川の周囲に集中している。中国政府と民衆にとってもっとも重要なのは、水問題が健康、経済、そして社会の安定にどのような影響を与えるかだ。2013年には社会不安を引き起こす最大の要因として環境問題が土地接収問題に取って代わっている。さらに、経済成長を維持し、食料生産のための水資源を確保する中国の試みは、いまや地域的・世界的な余波を生じさせている。・・・

米中戦争という今そこにある脅威
―― なぜ冷戦期の米ソ対立以上に危険なのか

2013年9月号

アヴェリー・ゴールドシュタイン
ペンシルバニア大学教授
(グローバル政治、国際関係論)

近年では、米中の東アジアにおける軍事戦略を規定してきた台湾という火薬庫の大きさは小さくなってきているが、中国と近隣諸国は、東シナ海や南シナ海における島や海洋境界線をめぐる領有権論争を抱えている。アメリカは、日本とフィリピンという二つの同盟国を守る条約上のコミットメントを何度も表明し、アジア・リバランシング戦略も、アジアで地域紛争が起きた場合にアメリカがそれを放置することはないというシグナルを中国に送っている。こうした現状における最大の問題は、米中が相手の死活的利益が何であるかについての了解を共有しておらず、しかも、危機管理のための信頼できるメカニズムも整備できていないことだ。紛争のリスクを高める、踏み外してはならないレッドラインが何であるかが曖昧なために、安全だと考える行動をとった場合でも、それが予想外に相手を挑発し、紛争のエスカレーションが起きかねない状況にある。

プーチンとシリア
―― 彼はいかにオバマを孤立させ、それを利用していくか

2013年9月号

フィオナ・ヒル
ブルッキングス研究所シニアフェロー

もはやシリア攻撃は避けられないとプーチンが観念し始めたタイミングで、彼に追い風が吹き始めた。英議会が武力介入に反対し、フランスも介入には条件をつけている。オバマも、議会の承認を求めた。G20で孤立していたのは、プーチンではなく、オバマだった。結局のところ、プーチンの目的はアサドを助けることではない。彼は、ロシアの北カフカス地域の過激派とのつながりを持つテロ集団が、シリアのアサド体制に対する攻撃をやめて、槍の矛先をロシアのターゲットに向けることを警戒している。プーチンが学んだ柔道の極意は、相手を床にたたき付けるのではなく、相手のバランスを崩すところにあり、いまや見事にオバマはバランスを失っている。プーチンは自分が何をしているかを理解している。緊張が高まった時に、他の人が無謀にも介入したり、行動したりするのを、彼は背後から見守っている。彼は、相手をからかい、いらだたせることで、相手がバランスを崩し、自分に有利な動きをするようにし向ける術を知っている。

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