Anton Watman/shutterstock

イラン核合意と北朝鮮の教訓
―― 合意を政治的に進化させるには

ジョン・デルーリー 延世大学准教授

Lessons from North Korea

John Delury  延世大学国際関係大学院准教授(中国研究)ブラウン大学、北京大学などでの教職を経て現職。アジア・ソサエティー米中関係センターのシニアフェロー(非常勤)。専門は近代中国と北朝鮮。

2015年5月号掲載論文

イランとの核合意にとって、北朝鮮への核外交が失敗したことの中核的教訓とは何か。それは、最善の取引を交わしたとしても、合意そのものは外交ドラマのプレリュードにすぎないということだ。テヘランが平壌と同じ道を歩むのを阻むには、今後、テヘランがこれまでとは抜本的に異なる新しいアメリカや地域諸国との関係、国際コミュニティとの関係を築いていけるようにしなければならない。アメリカは北朝鮮との核合意を結びながらも、政治的理由から合意を適切に履行せず、結局、北朝鮮は核開発の道を歩み、核保有を宣言した。米議会からリヤド、エルサレムにいたるまで、イランとの核合意に反対する勢力がすでに動きだしている。相手国との関係の正常化こそが、核開発の凍結を実現する最善の方法であることを忘れてはならない。そうできなかったことが北朝鮮外交失敗の本質であり、この教訓をイランとの外交交渉に生かしていく必要がある。

  • 核合意は外交の始まりにすぎない
  • 北朝鮮危機の現状
  • 合意からの坂道
  • オバマ政権は教訓を学べるか

<核合意は外交の始まりにすぎない>
イランとの不安定な核合意を取り巻く現在の環境は、不気味なほどに1990年代の北朝鮮の核危機に似ている。1994年、ペンタゴンが北朝鮮の核施設を先制攻撃する計画を考案するなか、国務省は、制裁を解除し、アメリカとの関係改善の見返りに、まだ初歩的段階にあった北朝鮮の核開発プログラムを凍結させることへの合意を引き出した。しかし、2002年に核開発の凍結合意は破綻し、いまや(核開発に成功した)北朝鮮は核の兵器庫の規模を拡大しようと試みている。北朝鮮との合意の何がうまくいかなかったのか。これを理解すれば、イランとの今後の交渉で何を避けるべきかの重要な指針になるはずだ。

対北朝鮮外交失敗から学ぶべき中核的教訓とは、イランと最善の取引を交わしたとしても、合意そのものは外交ドラマのプレリュードにすぎないということだ。テヘランが平壌と同じ道を歩むのを阻むには、核合意を締結した以上、今後、テヘランがこれまでとは抜本的に異なる新しいアメリカや地域諸国との関係、そして国際コミュニティの関係を築いていけるようにしなければならない。北朝鮮のケースでも枠組み合意だけで十分だったわけではなく、イランとの取引についても同様だろう。

この論文はSubscribers’ Onlyです。


フォーリン・アフェアーズリポート定期購読会員の方のみご覧いただけます。
会員の方は上記からログインしてください。 まだ会員でない方および購読期間が切れて3ヶ月以上経った方はこちらから購読をお申込みください。会員の方で購読期間が切れている方はこちらからご更新をお願いいたします。

なお、Subscribers' Onlyの論文は、クレジットカード決済後にご覧いただけます。リアルタイムでパスワードが発行されますので、論文データベースを直ちに閲覧いただけます。また、同一のアカウントで同時に複数の端末で閲覧することはできません。別の端末からログインがあった場合は、先にログインしていた端末では自動的にログアウトされます。

(C) Copyright 2015 by the Council on Foreign Relations, Inc., and Foreign Affairs, Japan

Page Top