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ロシアに関する論文

CFRインタビュー
米ロ関係の悪化は必然ではない
――軍備管理交渉で米ロ関係の安定化を

2008年11月号

スティーブン・パイファー ブルッキングズ研究所客員フェロー

 「ロシアのグルジア侵略の真意は、モスクワがロシア周辺地域で影響力を再確立することに本気であることを示すことにあり、これこそ、われわれが今後対応を考えていくべき問題だ」。グルジア侵攻をめぐるロシアの真意をこう分析するスティーブン・パイファーは、アメリカの新大統領は、国際ルールを踏みはずした場合にはペナルティーを科すことを明確にモスクワに伝える一方で、核関連物質の管理など、両国が利益を共有している領域では協力関係を強化し、うまくバランスをとる必要があると指摘し、米ロ間の軍備管理交渉を再開することこそ、軍縮を上回るプラスの作用を両国の関係にもたらせるとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.org のコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
ユーシェンコ・ウクライナ大統領との対話
――ヨーロッパとの統合とロシアとの関係

2008年11月号

スピーカー
ビクトル・ユーシェンコ  ウクライナ大統領
司会
クリスティア・フリーランド  フィナンシャル・タイムズ紙米マネージング・エディター

「ウクライナが政治的混乱に陥っているのは、グルジア紛争の余波がウクライナを不安定化させた結果だとみる人もいる。大統領、議会、地方政府の選挙を実現させるために、2008年の12月までにウクライナ政治を不安定化させようとする計画の一環だとする見方もある。この計画をまとめた人物は、ウクライナの政治を不安定化させることで、これまでウクライナがとってきた戦略、外交、国内政策、EU路線とは異なる方向へとギアを入れ替えさせるための政治状況を作り出そうとしている」

CFRミーティング
ラブロフ・ロシア外相が語る
グルジア紛争と米ロ関係

2008年11月号

スピーカー
セルゲイ・ラブロフ  ロシア外相
司会
デビッド・レムニック  ニューヨーカー誌エディター

「ロシアとの協調を望む案件のリスト、そうでない案件のリストをアメリカが持っているのなら、それを教えてほ しい。そうすれば、われわれはもっとうまくアメリカとの関係を管理していける。……私は、8月8日の早朝に、サーカシビリ大統領が試みたような血なまぐさい侵略を今後誰も起こさないようになること、誰もロシア市民を殺さないことを望む。ここでの人々の選択ははっきりしている。国際合意に基づき展開していたロシアの平和維持部隊のメンバーを含む、数百名のロシア市民を殺した勢力を支持するのか、それとも、そうした勢力を支持しないかだ」

独自路線を選んだロシア
 ――グルジア紛争の本当の意味合い

2008年11月号

チャールズ・キング ジョージタウン大学教授

ロシアはこの2世紀にわたって、西洋との大きな対立局面を経た後には、西洋との協調への期待を高めながらも、幻滅して国内に引きこもるというパターンを繰り返してきた。そして、未来の歴史家は南オセチア危機のことを、ロシアが既存の国際的ルールを無視して、独自のやり方を貫くようになった時代の始まりとして解釈することになるだろう。ロシアは(周辺地域に)積極的に軍事介入する時代へと足を踏み入れ、国連安保理や欧州安保協力機構(OSCE)など、多国間機構をほとんど重視しなくなった。いまやクレムリンも平均的なロシア人も、世界のことなどどうでもいいと思い始めている。「既存の多国間機構はアメリカとヨーロッパ主要国のあからさまな利益追求のための隠れ蓑にすぎない」と考えだしているからだ。
 だが、ロシアと欧米間の溝が深まっていくとしても、それが新たな冷戦の到来を意味するわけではないだろう。むしろ、それは米ロが、自らの矛盾を自国の市民と世界にどれだけきちんと説明できるかをめぐる新しいデリケートな競争になるだろう。

民主国家連盟か、中ロを含む大国間協調か
 ――ブッシュ後の世界秩序の試金石

2008年11月号

チャールズ・A・クプチャン ジョージタウン大学教授

民主国家が、今後の世界が多極化と政治的多様性に特徴づけられていくことを理解しないままに、民主国家連盟構想を実現しようと試みても、期待するような「歴史の終わり」という局面への道を切り開いていくことはできない。結局は行き止まりに遭遇するだけだ。新しいグローバルな秩序を誕生させるには、ワシントンとヨーロッパは、台頭する権威主義国家への認識を変えるとともに、北京とモスクワも欧米に歩み寄る必要がある。ワシントンは多様な政体から成る多極世界において、辛抱強く、しかも穏やかに行動していくことを学んでいかなければならない。そのためには、地域内の危機に対処できるように地域機構の能力を整備して強化し、世界の新たなパワーバランスを反映するように国連安保理を改革するとともに、また、主要経済国のフォーラムであるG8を、アメリカ、EU、日本、ロシア、中国、インドで構成されるG6とし、大国間協調の枠組みへと変化させていく必要がある。民主国家連盟構想では、解決策にならない。

原油価格がいくばくか低下したとはいえ、世界の石油需要は依然として旺盛で、ガソリン価格はいまも高いレベルで推移している。また、グルジア紛争が起きたこともあって、原油価格の高騰だけでなく、石油というきわめて重要な戦略資源の市場への供給が混乱するリスク、特に資源地域の政情不安が大きな供給リスクになるのではないかと懸念されている。たしかに、理屈上は供給ルートのどの地点においても流れが遮断される危険はあるが、供給が遮断されるリスクが高い地域が一部に集中しているのも事実だ。そうした地域がいわゆる供給ルートのチョークポイント(関所)として知られている。おそらく、シーレーンのチョークポイントとしてもっともよく知られているのがペルシャ湾のホルムズ海峡だ。2008年8月に勃発したロシアとグルジアの戦争によって、新たな資源地帯であるカスピ海周辺地域からの供給・搬出ルートも地政学的な余波を受けるのではないかという懸念が高まっている。カスピ海周辺地域に加えて、北西アフリカのニジェール・デルタ地帯、イラク、ベネズエラという三つの地域や国も、依然として地政学的余波を受けやすい資源地帯だ。世界の原油供給はすでに逼迫しており、ここでさらに供給の乱れが起きれば、不安定な原油価格を再度高騰させる危険がある。

グルジア紛争後の米ロ関係

2008年9月号

スピーカー
スティーブン・セスタノビッチ/米外交問題評議会ロシア・ユーラシア担当シニア・フェロー
司会
チャールズ・A・クプチャン/米外交問題評議会ヨーロッパ担当シニア・フェロー

ロシアの行動を認めないという観点から連帯が組織されようとしているが、これは主要な問題ではない。「そこで起きたのが何であるか、侵略戦争なのか、民族紛争なのか」をまずはっきりとさせる必要がある。(S・セスタノビッチ)

ロシア人は当時から、コソボを独立させれば、アブハジアや南オセチアでの問題を煽ることで報復すると語っていた。ワシントンはこれを口先だけの脅しにすぎないと考えていた。だが、ロシアは実際に言葉どおりの報復策をとってしまった。これは、欧米がロシアのコソボ問題への思い入れを無視し、NATO拡大策をとり、中央ヨーロッパへのミサイル防衛の配備を進めてきたことに対するモスクワの不満がいかに大きいかを軽く見ていたことを意味する。(C・クプチャン)

1990年代は中央・東ヨーロッパに民主主義を定着させることが課題とみなされていた。だが現在は、さらに東側のヨーロッパとアジアが出会うユーラシアを安定化させるというさらにむずかしい課題にわれわれは直面している。トルコ、ウクライナ、グルジア、アルメニア、アゼルバイジャンなど、バルカン半島から黒海、南コーカサスにいたる地域の安定化が問われている。南北を不安定な中東と敵対的なロシアに囲まれているこれらの国々が、ヨーロッパ大西洋コミュニティーの南方における新たな「側壁」を形成しつつあることを認識すべきだ。現在の西バルカン地域、グルジア、ウクライナなどの黒海周辺地域は、10年前の中央ヨーロッパや東ヨーロッパよりもさらに不安定で大きな危険にさらされている。

NATOの東方拡大に反発したロシア

2008年9月号

F・スティーブン・ララビー ランド研究所ヨーロッパ安全保障問題担当議長

ロシアはかねて旧ソビエト地域における影響力の低下に頭を悩ませてきた。今回のロシアのグルジア侵略は、近隣地域での民主化潮流の台頭に対するロシアの回答だったとみなすこともできる。今回のロシアの動きは、旧ソビエト地域に欧米の影響力、とりわけNATOの影響力が入り込んでくるのを押し返そうとする試みだった。とはいえ、NATOの一部メンバーは、(NATOへの加盟を望んでいる)グルジアやウクライナがヨーロッパの一部なのかどうかについて確信が持てずにおり、われわれは防衛上の確約を旧ソビエト諸国に与えることには慎重でなければならない。現在われわれにできることは、ロシアに対してグルジアからロシア軍を撤退させるように求め、それに応じるまでは、ロシアのWTO加盟を支持しないという路線をとることだ。また、今回のグルジアに対するロシアの行動は、グルジアよりも、むしろウクライナを意識した行動だったことも見落としてはならない。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

石油の富と呪縛
 ――なぜ資源保有国は貧困から抜け出せないのか

2008年5月号

マイケル・L・ロス カリフォルニア大学政治学部准教授

途上世界の資源保有国のほとんどは貧しく、非民主的だし、まともな統治体制を持っていない。そこに石油資源からの富が流れ込めば、往々にして紛争が誘発されるか、すでに起きている紛争を長期化させ、資源がもたらす富が建設的投資にまわされることはなく、結果的に貧困が続く。
 史上例のない原油価格の高騰は、棚ぼたの経済利益を資源保有国にもたらし、これが逆に紛争を助長してしまう危険がある。必要なのは、こうした資源国に輸出の対価として政治腐敗と紛争を助長するキャッシュを与えるのではなく、インフラ整備や社会サービスなどを提供し、成長の基盤を整えることではないか。

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