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ロシアに関する論文

CFRインタビュー
ロシアは欧米との関係改善を模索する

2008年4月号

アンドレイ・A・ピオントコフスキー (モスクワ)戦略研究センター所長

「メドベージェフとプーチンが対立していくかどうかはともかく、いずれ、メドベージェフとプーチンに仕える官僚たちが対立しだすのは避けられない」
 「二つのパワーセンターを抱え、ロシアはかつて経験したことのない海域へと入りつつある」と指摘するモスクワの戦略研究センター所長、アンドレイ・ピオントコフスキーは、一方で、欧米との関係は改善していくだろうと今後を予測する。そう考えるのは、メドベージェフが権力者になったからではなく、政治的必要性としての欧米との敵対路線、戦略的必要性としての欧米との協調路線が作り出すサイクルのなかで、対立局面が終わりつつあるからだと同氏は語った。
  聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティニグ・エディター)。

独裁体制と経済成長に因果関係はあるのか
――ロシア権威主義経済モデルの虚構

2008年3月号

マイケル・マクフォール   スタンフォード大学民主主義・開発・法治センター所長
キャサリン・ストーナー=ウェイス  スタンフォード大学民主主義・開発・法治センター副所長

1990年代のロシアでは民主化が進められたものの経済が低迷し、逆にこの10年は独裁体制が強化されたのに経済は大きく改善している。 しかし、現在のロシア政府のパフォーマンスはきわめて低く、治安、公衆衛生、腐敗、財産権の保障という面でみれば、現在のロシアの暮らし向きは、10年前よりも相対的に悪くなっている。ロシアの国際的な経済競争力、進出先あるいは取引先としての経済環境も悪化し、情報公開は進まず、政治的腐敗も深刻になっている。原油、天然ガスなど、原材料価格の高騰がロシア経済の大きな追い風となっているのは事実だが、それだけの話だ。ロシアの独裁体制と経済成長の間に何らかの因果関係があるとすれば、独裁制が成長に悪影響を及ぼしているということだ。

CFRインタビュー
ロシアの権力移行で何がどう変わるのか
 ――水面下で進む派閥間権力抗争

2008年2月号

スティーブン・セスタノビッチ 米外交問題評議会ロシア・ユーラシア担当シニア・フェロー

メドベージェフが大統領に、プーチンが首相になったときの権力バランスの再編に備えて、すでにクレムリンでは水面下で派閥抗争が始まっている。「だが、プーチンが自分の路線に合意していると確信するまでは、メドベージェフは大胆な行動はとれないはずだ」。
 ロシアの現状と今後をこう分析するロシア問題の専門家、スティーブン・セスタノビッチは、メドベージェフは「よりリベラルで民主的なロシア」の統治を思い描いていると指摘する。事実、メドベージェフは「国営企業の役員に政府の役人が名を連ねる理由はない」と表明し、プーチンの側近たちが、こうした企業に巣食っていることを痛烈に批判をしている。ただし、メドベージェフが政策路線を変化させていくとすれば、「プーチン同様に、就任から1年か2年過ぎてからだろう」と同氏は語った。
 聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
メドベージェフで今後の
ロシアの権力構造はどう変化するか

2007年12月号

スティーブン・セスタノビッチ 米外交問題評議会 ロシア・ユーラシア担当シニア・フェロー

2007年12月17日、プーチン政権の与党「統一ロシア」は、2008年3月に実施される大統領選挙に向けてプーチン大統領から後継指名を受けていたドミトリー・メドベージェフ副首相を大統領候補として正式に擁立した。かたや、プーチンもメドベージェフによる首相就任要請を受け入れる考えをすでに明らかにしている。プーチンが何をするつもりなのか、今後のロシアの権力構造、対外路線がどうなるのか予見できない状況にある。「多くの人は、プーチンは今後も権力を維持していくつもりだと考えており、おそらく、この見方は正しいと思う。だが、いかなる枠組み、いかなるタイトルのもとでプーチンが権力を維持していくつもりなのかは、依然としてはっきりしない」とみるロシア問題の専門家、スティーブン・セスタノビッチは、メドベージェフがどのような政府を組織するかで概要はいずれわかってくると言う。「プーチン政権のもとで権力を手にしていた各派閥の指導者がどのように処遇されるのか。これらで、どの程度メドベージェフが自由裁定権を持っているのか、誰を主要な顧問とみているか、プーチンだけでなく、ロシアの政治をこれまで牛耳ってきた派閥にどの程度手足を縛られているかがわかる」と。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.org のコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
プーチンの政治的去就と米ロ関係

2007年10月号

スティーブン・セスタノビッチ 米外交問題評議会 ロシア・ユーラシア担当シニア・フェロー

人気の高いプーチン大統領が、統一ロシアの選挙人名簿の一位に名を連ねることで、この政党を議会選挙で勝利に導けるとすれば、プーチンが首相になってもおかしくはない。「だが、本当にそうなのか、はっきりしない」とロシア問題の専門家、スティーブン・セスタノビッチは言う。たんに、統一ロシアの候補者名簿に名を連ねることで、議席を増やし、議会運営をしやすくしたいだけなのかもしれない。プーチンは、われわれ欧米の専門家とのゲームをまるで楽しんでいるかのようだ。これは、「彼がルールを書いた国際的な推測ゲームだ」と同氏は現状を描写する。また、中距離核戦力(INF)廃棄条約からの離脱を示唆し、欧州通常戦力(CFE)条約の履行を凍結するなど、プーチン政権が対外的強硬路線をとるのは、「自国が弱体化していたときに結ばれた合意について、再度交渉したい」という思惑があるからだとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.org のコンサルティング・エディター)。

CFRミーティング
核戦争の危険を低下させるには
――他国と協調して脅威を抑え込むか、
それとも壊滅的事態に直面するか

2007年10月号

スピーカー
サム・ナン/元米上院議員
司会
ジェームス・ホーグ/フォーリン・アフェアーズ誌編集長

60年間、核戦争が起きなかったからといって、われわれが安心する理由はどこにもない。今後も、一度や二度、幸運に恵まれる程度では、核戦争を回避するのは難しいかもしれない。核の惨劇を回避できるとすれば、すべての核保有国が核管理をめぐってきわめて慎重な態度をとり、賢明で合理的な判断をするだけでなく、幸運に恵まれる必要がある。……われわれが現在直面する最大の脅威は、壊滅的なテロ、核保有国の数の増大、そして核の偶発使用であり、これらの脅威に対処していくには、モスクワ、北京、その他と協調していかなければならない。他国と協調して脅威を抑え込むか、それとも壊滅的事態に直面するかという選択肢にわれわれは直面している。(S・ナン)

Classic Selection
21世紀は権威主義的資本主義大国の時代になるのか

2007年8月号

アザル・ガット テルアビブ大学教授

現在の中国とロシアは、日独が第二次世界大戦に敗れた1945年以降、姿を消していた権威主義的資本主義パワーの再来にほかならない。日独の場合、アメリカを相手にするには、人口、資源、潜在力があまりに小さすぎたが、中国とロシアは、日独よりもはるかに国家規模が大きいし、そもそも、権威主義体制下の資本主義のほうが民主体制下の資本主義よりも効率が高い。実際、日独という権威主義的資本主義国家が戦後も存続していれば、アメリカにとって、共産主義中央統制経済のソビエト以上に大きな脅威と課題をつくりだしていたかもしれない。中国とロシアに代表される権威主義的な資本主義国家が、近代性の進化をめぐってリベラルな民主主義の代替策を提示することになるかもしれないし、グローバル経済に自分のルールで関与するようになるかもしれない。リベラルな民主主義が、最終的に勝利を収めるという保証はどこにもなく、権威主義的資本主義がリベラルな民主主義に代わる魅力的な選択肢とみなされるようになる可能性もある。

この数年来、アメリカとロシアは、事あるごとに衝突してきた。最近も、チェコとポーランドにミサイル防衛網を配備しようとするワシントンの計画に、ロシアは激しく反発した。プーチン大統領は4月末の年次教書演説でも、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大を批判した上で、欧州通常戦力(CFE)条約の履行義務を停止すると表明し、イワノフ第一副首相も5月3日に、ロシア軍は今後、「部隊の移動をNATOに通報しない」と発言した。だが、CFE条約の凍結を含むプーチンの攻撃的路線は、全般的な米ロ関係の悪化という問題が引き起こした現象にすぎず、CFE条約そのものが問題ではないとする見方もある。「米ロ関係が緊張しているのは、原油価格の高騰と経済成長をバックに、ロシアが主要な地政学的プレイヤーとしての地位を取り戻しつつあること、プーチン政権が、ロシアが弱体化していた時期に弱者の立場から結んだ条約や契約を改訂するか、反故にしていく戦略をとっていることに関係がある」とみる専門家は多い。

ロシアの帝国的野心を封じ込めよ

2007年5月号

ユリア・ティモシェンコ
ウクライナ元首相

プーチン大統領は、これまで一貫して「偉大なるロシアを復活させる」という目的を掲げ、国内的には権威主義体制を強化し、対外的にもエネルギー資源と軍事力を武器に近隣諸国を自国の勢力圏に取り込むことで超大国の地位を取り戻すことを狙っている。原油価格の高騰を追い風に再生したロシアは、いまやエネルギー資源供給を武器にヨーロッパさえも脅かしつつある。考えるべきは、ロシアに政治・経済改革を求める欧米のこれまでの路線では、ロシアの伝統的な膨張主義、そして近隣諸国を犠牲にして超大国の地位を取り戻そうとする戦略には太刀打ちできないということだ。パワーにはパワーで対抗するという外交の鉄則を思い出し、欧米、とくにヨーロッパは、ロシアの資源外交による揺さぶりにも動じない結束を持つ必要がある。

CFRインタビュー
ロシアは天然ガス版 OPECの形成を試みているのか

2007年4月号

フィリップ・K・バレジャー PKバレジャーLLC社長

石油や天然ガスを含む資源へのクレムリンのアプローチは一貫している。それは、「資源から最大限の利益を引き出すという重商主義路線」にほかならない。ロシアが天然ガス版のカルテルを短期的に組織することはあり得ないとしても、長期的に考えると天然ガス輸出のカルテルが形成される可能性は高い。状況をこう分析するエネルギー問題の専門家、フィリップ・バレジャーは、「中国への輸出インフラ、ヨーロッパへのさらなる輸出インフラを整備すれば、気に入らない国には供給を止めるなどの資源戦術をロシアはとれるようになる」と指摘する。ヨーロッパにとって、ロシアに代わる供給源はイランしかないが、これは政治的に魅力的な選択肢とはなり得ないとみる同氏は、ヨーロッパが政治的リスクを減らすには、(ロシア、イランの天然ガスを)トルコ経由のパイプライン供給に頼るしかないが、このやり方も、トルコの欧州連合(EU)加盟問題に絡んでくるので、不安定化のリスクを抱えることになると示唆した。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

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