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ロシアに関する論文

中国とロシアによる反欧米同盟
―― 中ロを結びつける六つの要因

2014年12月号

ギルバート・ロズマン プリンストン大学教授(社会学)

2012年、「中華民族の偉大なる復興」をスローガンとする「中国の夢」を表明した習近平国家主席は、中国がその中枢に位置するアジアの新しい地政学秩序を思い描いている。プーチン大統領も、旧ソビエト諸国をロシアが主導するユーラシア連合構想を表明している。重要なポイントは、両国が冷戦期の中ソ対立を再現しないように、十分に配慮していることだ。モスクワと北京の指導者たちは、欧米の影響力を抑え込むという両国が共有する利益枠組みが損なわれないようにしたいと考えている。実際、モスクワと北京は欧米秩序の正統性に対抗する外交路線をとることを心がけ、両国の野心的な外交政策については互いにコメントするのを控えている。中ロの結びつきは、一般に考えられているよりもはるかに強い。

ロシア編入後のクリミア
― ウクライナとロシアに揺れる半島

2014年11月号

テレサ・ボンド(ペンネーム) 政治分析者

地理的にはウクライナとつながり、ロシアとは海で隔てられているために、依然としてクリミアは水資源、製品、食肉、電力を含む、ほぼすべてをウクライナからの供給に依存している。だが、ウクライナは次第にクリミアへの締め付けを強化している。しかも通貨がウクライナのフリヴニャからロシアのルーブルに切り替えられたことで、食糧価格は一気に50%も上昇し、いまやチーズや魚の価格はかつての2倍に、ビールとウオッカの価格は3倍に高騰している。一方でクリミアの消費者が直面している問題をロシアが解決できるかどうかも、はっきりしない。地理的・ロジスティックな制約が常につきまとうからだ。ロシアに組み込まれたことで政治的にもっとも追い込まれているのは、半島の人口の13%を占めるタタール人マイノリティだ。タタール人の指導者は追放され、タタール人市民も厳格な監視下に置かれている。・・・

なぜシリアへの投資が進んでいるか
―― 戦火のなかで進められる投資の目的とは

2014年10月号

アダム・へフェズ  スタンフォード大学ビジネスクール MBAキャンディデート、 ノーム・ライダン  ワシントン近東政策研究所 リサーチアソシエーツ

瓦礫と荒廃のなかにあるにもかかわらず、シリアへの投資が進んでいる。制裁を続ける欧米は戦後シリアに向けた投資を躊躇っているが、中国、イラン、北朝鮮、ロシアがその空白を埋めている。勿論、これらの国も投資から短期的な経済利益を引き出せると考えていない。シリアのアサド政権と同盟関係にある諸国の政府や企業は、投資を経済ではなく、政治目的で捉えている。短期的には経済合理性を欠くとしても、現状でシリア投資にしておけば、今後シリアがどのように統治されるかに影響力を行使できるとこれらの国は考えている。

悪いのはロシアではなく欧米だ
―― プーチンを挑発した欧米のリベラルな幻想

2014年9月号

ジョン・ミアシャイマー シカゴ大学教授

ロシアの高官たちはワシントンに対してこれまで何度も、グルジアやウクライナを反ロシアの国に作り替えることも、NATOを東方へと拡大させるのも受け入れられないと伝えてきたし、ロシアが本気であることは2008年にロシア・グルジア戦争で立証されていた。結局のところ、米ロは異なるプレーブックを用いている。プーチンと彼の同胞たちがリアリストの分析に即して考え、行動しているのに対して、欧米の指導者たちは、国際政治に関するリベラルなビジョンを前提に考え、行動している。その結果、アメリカとその同盟諸国は無意識のうちに相手を挑発し、ウクライナにおける大きな危機を招き入れてしまった。状況を打開するには、アメリカと同盟諸国は先ず「グルジアとウクライナをNATO拡大策から除外する」と明言する必要がある。

不満と反発が規定する世界

2014年8月号

マイケル・マザー 米国防大学教授

いまや世界の主要な安全保障リスクは、怒りや反発に支配された国や社会、あるいは、社会に疎外され、取り残されて不満を募らせる集団によって作り出されている。今後、安全保障上の脅威は、傷つけられたと感じ屈辱を抱く人々が、それを克服し、自分の価値を取り戻そうと試みるプロセスのなかで出現するようになるだろう。イラク、シリア、パキスタン、そしてヨーロッパ東部における最近の展開には、このトレンドが共通して認められる。ウラジーミル・プーチン大統領のウクライナにおけるパワープレイも、これまでロシアを軽くあしらってきた欧米に対する積年の恨みを映し出している。中国も例外ではない。不満や反発が中国社会に充満していることは、メディアの報道や大衆文化、さらには教科書の記述やラディカルなネチズンによる過激な書き込みからも明らかだ。さらに日本やインド、そして西ヨーロッパでもナショナリズムが台頭している・・・

漂流するロシアの自画像
―― プーチンとソビエトの遺産

2014年8月号

キース・ゲッセン n+1誌共同編集長

「何が普通の国なのか」について、ロシアにはいまもコンセンサスが存在しない。ゴルバチョフはロシアを普通の国にすることを目標に掲げ、反ゴルバチョフクーデターを試みたゲンナジー・ヤナーエフもロシアを「普通の国に戻すこと」を主張した。ヤナーエフは過去に回帰することを普通の生活を取り戻す道筋と考え、ボリス・エリツィンは「西ヨーロッパの規範」を普通とみなした。しかしエリツィンがその構想の詳細を明らかにすることはなかった。結局のところ、多くのロシア人はスターリン時代に郷愁を感じている。だが、大多数のロシア人がプーチンを支持しているとはいえ、支持者の半分はスターリンを嫌い、残りの約半分はスターリンに心酔している。これはスターリンとは違うからプーチンを支持する人もいれば、スターリンと似ているからプーチンを支持する人もいることを意味する。・・・

ロシアとの新冷戦を管理するには

2014年8月号

ロバート・レグボルド コロンビア大学名誉教授

20世紀の冷戦と現在の危機はその規模と奥行きにおいて大きく違っているが、それでも現在のロシアとの関係破綻を新冷戦と呼んでもおかしくはない。ウクライナ危機がどのような結末に終わるとしても、ロシアと欧米の関係はかつての状態に戻ることはあり得ない。これが目にある現実だ、互いに、厄介な現状の責任は相手にあると考え、非難の応酬をしている。20世紀の冷戦もそうだったが、実際には、一方の行動によってではなく、その相互作用によって緊張と対立の悪循環が作り出されている。この点を認識しない限り、相手の行動を変えることはできない。ウクライナをめぐる現在の危機、そして今後の新しい危機をめぐっても、欧米はモスクワの選択を左右するような流れや環境を形作る必要がある。対決コースが大きなコストを伴うことを双方が理解し、異なる結末へと向かわせることを意識してこれまでとは違う路線をとらない限り、緊張が緩和し、問題が解決へと向かい始めることはない。

なぜ国は分裂するのか
―― 国境線と民族分布の不均衡

2014年8月号

ベンジャミン・ミラー ハイファ大学教授(国際関係論)

「戦争か平和か」が問われる事態となると、民族集団は、国内のライバル集団よりも、他国における宗教・民族的な同胞と共闘しようとする。ウクライナ市民の多くは、自分たちにとって「異質なロシア」の支配から独立することを望んでいるが、一方でクリミアやウクライナ東部に暮らす人々は、(欧米志向の)「異質なウクライナ」による支配からの解放を望み、ロシアの一部となるか、ロシアと深く結びついた国を作る必要があると考えている。中東でも同じストーリーが展開している。すべてのレバント諸国は、シリアの内戦をめぐって内に分裂を抱えている。スンニ派国家はスンニ派率いる武装勢力に戦士、武器、資金を供給し、シーア派国家は、(シーア派の分派とみなせる)アラウィ派のアサド政権に同様の支援を提供している。こうした国と民族の間の不均衡を解決するには、さまざまな方法があるものの、厄介なのはそのすべてが問題を伴うことだ。

ウクライナにおけるロシアの戦争
―― 撃墜事件が明らかにしたロシアの軍事介入

2014年8月号

アレクサンダー・J・モティル ラトガース大学教授(政治学)

マレーシアの民間航空機撃墜事件によって、アメリカとヨーロッパは不快な現実を直視せざるを得なくなった。それはロシアが実質的にウクライナとの戦争に関与していることだ。もはやウクライナ軍が戦っている相手は、国内の武装勢力・分離主義勢力ではない。そこにいるのはロシア軍の指揮統制下にあるロシアの兵器で武装したロシア兵だ。これまでヨーロッパ人が長く想定していなかった本当の戦争が、現にヨーロッパ大陸の東端で起きている。

ロシアと民間航空機撃墜事件

スティーブン・セスタノビッチ 米外交問題評議会シニアフェロー

ロシアの指導者、政策決定者、外交官たちは、おそらくこの数十年、あるいは半世紀というスパンでみても、もっとも困難な事態に直面している。プーチンは身動きのとれない状況に追い込まれている。(民間航空機撃墜)事件との関わりを否定したが、前言を覆さざるを得ない状況に追い込まれつつある。これは、血気盛んな軍事要員が軍事ターゲットと民間航空機を誤認して撃墜してしまったとして片付けられる問題ではない。致命的な間違いは、クリミアのケースを前提に、親ロシア派の軍事能力を強化し続けても、代価を支払わされることはないとプーチンが考えてしまったことだろう。結局、今回の事件で、ロシアがウクライナにおける内戦を煽り立てていたことが白日の下にさらされてしまった。(聞き手はバーナード・ガーズマン、consulting editor, cfer.org)

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