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2020年7月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2020年7月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2020年7月号 目次

憂鬱で不確かな時代へ

  • パンデミックと政治
    ―― 何が対応と結果を分けたのか

    フランシス・フクヤマ

    雑誌掲載論文

    「一部の国は他の国よりもなぜうまくパンデミック危機に対応できたのか」。答えはすでに明らかだ。パンデミック対応の成功を説明する要因は国の能力、政府への社会的信頼そして指導者のリーダーシップだ。有能な国家組織、市民が信頼して耳を傾ける政府、そして優れた指導者という三つの条件を満たす国は、ダメージをうまく抑え込む、見事な対応をみせた。一方、政府が機能不全に陥り、社会が分裂し、指導者にリーダーシップがなければ、市民や経済は、ウイルスに翻弄された。対応をひどく誤ったアメリカの威信と名声はいまや地に落ちている。今後、数年にわたって、パンデミックはアメリカの相対的な衰退とリベラルな国際秩序の形骸化をさらに進め、世界各地でファシズムの復活を促すことになるかもしれない。現在のトレンドが劇的に変化しない限り、全般的な予測は憂鬱なものにならざるを得ない。

  • 「マジックマネー」の時代
    ―― 終わりなき歳出で経済崩壊を阻止できるのか

    セバスチャン・マラビー

    雑誌掲載論文

    今日、アメリカを含む先進国は、双子のショックの第二波としてパンデミックを経験している。2008年のグローバル金融危機、グローバルパンデミックのどちらか一つでも、各国政府は思うままに紙幣を刷り増し、借り入れを増やしたかもしれない。だが、これら二つの危機が波状的に重なることで、国の歳出能力そのものが塗り替えられつつある。これを「マジックマネー」の時代と呼ぶこともできる。「しかし、インフレになったらどうするのか。なぜインフレにならなくなったのか、そのサイクルはいつ戻ってくるのか」。この疑問については誰も確信ある答えを出せずにいる。例えば、不条理なまでに落ち込んでいるエネルギーコストの急騰が、インフレの引き金を引くのかもしれない。しかし・・・

  • パンデミックによる社会破綻
    ―― 経済政策で社会崩壊を阻止するには

    ブランコ・ミラノビッチ 

    Subscribers Only 公開論文

    コロナウイルス危機が終息しても、多くの人が希望も仕事も資産もない状態に放置されれば、彼らは、よりよい生活をしている人に敵意をもつようになるだろう。資金も雇用も、医療へのアクセスもない状態に放置され、絶望し、状況に怒りを感じるようになれば、イタリアの監獄で起きたような暴動、2005年にハリケーン・カテリーナに見舞われた後のニューオリンズで起きた略奪といった光景が、世界各地で再現されるかもしれない。現状における経済政策の主要な(あるいは、実質的に唯一の)目的は、社会的崩壊を阻止することかもしれない。ウイルスが作り出す異常な緊張のなかで、社会の絆を維持していくことを経済政策の目的に据える必要がある。

  • コロナウイルス・リセッション
    ―― 経済は地図のない海域へ

    モハメド・A・エラリアン

    Subscribers Only 公開論文

    2008年のグローバル金融危機に続くグレートリセッションは低成長、(量的緩和などを通じた)金融の人為的安定、格差の拡大を特徴とする「ニューノーマル」を作りだし、その後の10年で中間層が空洞化し、政治的な怒りと反エリート感情が高まりをみせていった。コロナウイルスショックもグローバル経済を大きく変化させ、ポスト「ニューノーマル」をもたらすと考えられる。脱グローバル化、脱リージョナリズムが加速し、世界の生産と消費のネットワークが再編されていく。費用対効果と効率を心がけてきた官民双方は、リスク回避とレジリエンス(復元力)の管理を重視せざるを得なくなる。ウイルスショックから立ち直った世界が目にするグローバル経済は完全に姿を変えているはずだ。

  • パンデミックは歴史の転換点ではない
    ―― 国際協調とナショナリズム

    リチャード・ハース

    Subscribers Only 公開論文

    アメリカのリーダーシップの衰退、形骸化するグローバルレベルでの協調、対決的な大国間関係など、COVID19 が出現する前から存在する国際環境の特質は、パンデミックによって緩和されるどころか、先鋭化し、これらは今後の世界におけるより顕著な特質になっていくだろう。実際、パンデミックに対応する主体は国あるいは地方で、国際社会ではない。そして、危機が終息すれば、焦点は国の復興・再生へと移る。さらに悲観的にならざるを得ない理由の一つは、国際協調でグローバルな課題の多くに対処していくには、大国間の協力が不可欠であるにも関わらず、すでに長期にわたって米中関係が悪化していることだ。現状そして今後にとって、関連性の高い歴史的先例は、戦後に国際協調が進められた第二次世界大戦後ではなく、国際的な混乱が高まりつつも、アメリカが国際的な関与を控えた第一次世界大戦後の時代かもしれない。

  • 財政支出でコロナ恐慌を抑え込めるか
    ―― ハイパーケインズ主義の実験と日本の先例

    ザチャリー・カラベル

    Subscribers Only 公開論文

    各国は、あたかも2020年夏まで経済生産がゼロの状態が続くかのような財政支出を約束している。ニューディールを含めて、このレベルの政府支出には歴史的先例がない。つまり、これは「ハイパーケインズ主義」の実験のようなものだ。有事であると平時であると、先例はない。このような試みがアメリカ経済、ヨーロッパ経済、世界経済を救えるかどうかは誰にもわからない。希望をもてるとすれば、パンデミック前の段階で対GDP比債務がすでに230%近くに達していたにもかかわらず、日本の金利とインフレ率が引き続き安定していたことだ。多額の借入と財政出動がジンバブエよりも日本のような状況を作り出すのなら、楽観的になれる根拠はある。しかし、政府支出で永遠に現実世界の経済活動を代替することはできない。

  • コロナウイルスと米中の覇権
    ―― パンデミックと中国の野心

    カート・M・キャンベル他

    Subscribers Only 公開論文

    ワシントンがパンデミック対策に失敗する一方、迅速な動きをみせた北京は、パンデミックの対応を主導するグローバルリーダーとして自らを位置づけようと試みている。自国の体制のメリットを喧伝し、諸外国に援助を提供し、外国政府を一つの方向へ動員しようとするなど、大胆な行動をみせている。アウトブレイクを隠蔽しようとした北京の初動ミスが、世界の多くの地域を苦しめている危機を助長したのは事実だろう。それでも、「中国がリーダーシップをとっているようにみなされ、ワシントンにはその能力も意思もないと判断されれば」、21世紀の世界のリーダー争いを根本的に変化させられることを北京は理解している。

  • コロナウイルス恐慌を回避せよ
    ―― 求められる戦時経済的精神

    マシュー・スローター 他

    Subscribers Only 公開論文

    積極果敢な手を打たない限り、コロナウイルス危機は、グローバル金融危機(2008―09年)後の「グレートリセッション」以上に深刻な余波、つまり、1929―33年の「大恐慌」に匹敵する混乱を引き起こす恐れがある。集会の制限から都市の閉鎖まで、公衆衛生上は不可欠な「ソーシャル・ディスタンシング」を実施する政府の社会介入によって、財やサービスを求めるいつもの流れは阻害され、消費者需要が激減して総需要が抑え込まれれば、経済はカオスへ向かいかねない。需要が低下すると、工場の稼働率は低下し、労働者は失業し、個人、家族、コミュニティが圧力にさらされる。このショックに対処していくには(1)新型コロナウイルスの拡散阻止に投資し、(2)需要崩壊によってダメージを受けたビジネスや企業を支え、(3)金融危機を回避するために手を尽くさなければならない。周到な計画なしでは、コロナウイルス・リセッションは簡単に恐慌と化す。

  • ウイルスが暴いたシステムの脆弱性
    ―― われわれが知るグローバル化の終わり

    ヘンリー・ファレル他

    Subscribers Only 公開論文

    コロナウイルスの経済的余波への対処を試みるにつれて、各国の指導者たちはグローバル経済がかつてのように機能していないという事実に向き合うことになるはずだ。パンデミックは、グローバル化が非常に高い効率だけでなく、異常なまでに大きな脆弱性を内包していたことを暴き出した。特定のプロバイダーや地域が専門化された製品を生産するモデルでは、サプライチェーンがブレイクダウンすれば、予期せぬ脆弱性が露わになる。今後、数カ月で、こうした脆弱性が次々と明らかになっていくはずだ。その結果、グローバル政治も変化するかもしれない。これまでのところ、アメリカは、コロナウイルスのグローバルな対応におけるリーダーとはみなされていない。そうした役割の一部を中国に譲っている。・・・

パンデミックで変わる世界

  • コロナウイルスと社会暴力の増大
    ―― パンデミックで引き裂かれた社会

    レイチェル・ブラウン 他

    雑誌掲載論文

    国や市民にとって、平和とはたんに国家間戦争が起きていない状態ではない。人命、コミュニティ、制度や体制の安定を脅かす問題がない状態のことだ。実際、経済の不安定化、民主主義の後退、制度や体制への不信、特定の人種のスケープゴート化など、これらの全ては政治的暴力の可能性を高める。不幸にもCOVID19は、これらのトレンドを刺激している。アメリカでは、長年の人種間の不平等や社会的分断が引き起こす問題をパンデミックが増幅させ、警察官が黒人男性を死亡させた映像が大規模な抗議活動に火をつけた。アメリカだけではない。マイノリティ集団をスケープゴートや攻撃の対象にし、特定の宗教を差別する行動、アジア系やユダヤ系の人々に対する暴力行為やスケープゴート化、陰謀論の流布が世界各国で広がっている。

  • 大都市は消滅するのか
    ―― 適度な密度と過密を区別せよ

    ジェニファー・キースマート

    雑誌掲載論文

    密度は必ずしも悪ではなく、そこには適度で好ましい密度もある。手頃な価格の住宅、広い歩道、多くの公園スペース、家から徒歩圏にある豊かな自然環境、学校、その他のコミュニティ施設がある町をイメージしてほしい。これらが適切な密度のイメージだ。比較的ストレスのない環境で、包含的でアクティブなコミュニティ活動を促すようにすれば、優れた公衆衛生も実現される。実際、現職のパリ市長は、住民が短時間の徒歩や自転車であらゆる仕事、買い物、レジャーのニーズを満たせる「15分で動ける都市」に変えるという公約を掲げて再出馬し、選挙を戦うつもりだ。北米の都市は、このビジョンから学ぶ必要がある。より深くつながり、住みやすく、持続可能で、混雑が少ない適切な密度へ向かっていくべきだ。

  • 人種的奴隷制と白人至上主義
    ―― アメリカの原罪を問う

    アネット・ゴードン=リード

    Subscribers Only 公開論文

    依然として、事実上の人種差別がアメリカのかなりの地域に存在する。黒人の大統領を2度にわたって選び、黒人のファーストファミリーを持ったものの、結局、後継大統領選はある意味でその反動だった。歴史的に、肌の白さは経済的・社会的地位に関係なく、価値あるものとされ、肌の黒さは価値が低いとみなされてきた。この環境のなかで白人至上主義が支えられてきた。肌の色という区別をもつ「人種的奴隷制」は、自由を誇りとする国で矛盾とみなされるどころか、白人の自由を実現した。黒人を社会のピラミッドの最底辺に位置づけることで、白人の階級間意識が抑制されたからだ。もっとも貧しく、もっとも社会に不満を抱く白人よりもさらに下に、常に大きな集団がいなければ、白人の結束は続かなかっただろう。奴隷制の遺産に向き合っていくには、白人至上主義にも対処していかなければならない。

  • 誰が本当のアメリカ人なのか
    ―― 移民と人種差別と政治的妄想

    ジェームズ・A・モローン

    Subscribers Only 公開論文

    白人が主流派だったアメリカという国の顔が変わりつつある。オバマほどこの変化を象徴する存在はないし、トランプほど、こうした変化に対する反動を象徴する存在もない。1日平均五つの嘘をつくトランプの登場は、アメリカ政治につきものの妄想だけでなく、この国の自画像が揺れ動いていることを示している。国家アイデンティティをめぐる厄介な対立を、もはや政治制度によって封じ込められなくなっている。実際、長い間、人種・民族問題を抑え込んできた政党政治が、逆に民族問題を煽りたててしまっている。しかも、国家アイデンティティをめぐる対立にこの国の妄想の歴史が重なり合ったために、アメリカはおかしくなってしまった。アメリカのアイデンティティが変わり続けている以上、政治が近い将来に冷静さを取り戻せるとは考えにくい。

  • 急速な都市化の光と影
    ―― スマートシティと脆弱都市

    ロバート・マッガー

    Subscribers Only 公開論文

    今後の世界人口の成長の90%は途上国の都市やスラム街に集中し、先進国の都市人口の増大は鈍化し、人口が減少する都市も出てくる。いまや先進諸国の多くの都市では、スマートシティ構想を通じて都市インフラデータのネットワーク化が進められている。だが、600の大都市だけで、世界のGDPの3分の2を担っていることからも明らかなように、大都市が繁栄する一方で、中小の都市は取り残されている。途上国の都市のなかには、地方政府と市民の社会契約が破綻し、社会的アナーキーに陥っている「脆弱都市」もある。急速な都市化、突出した若年人口、教育レベルの低さ、そして失業が脆弱都市の問題をさらに深刻にしている。・・・

  • 危険な道路を変えるには
    ―― 車ではなく歩行者を重視した道路のデザインを

    ジャネット・サディク=カーン 他

    Subscribers Only 公開論文

    道路はなぜ危険なのか。根本原因は、自動車やドライバーの運転よりも、道路の設計そのものにある。より速度を出せるように設計された大型道路は、必然的により多くの死者をもたらした。車線の幅が広すぎると、ドライバーは危険なほどスピードを出し、道路上にあるものを障害物とみなすようになる。一方、どうみても安全にはみえない渋滞するニューヨーク市の道路における2017年の歩行者の死亡率は、アメリカの他の大都市の3分の1程度だ。重要なのは歩道を大きくし、交差点での横断歩道の距離を短くすること。車線の幅を狭めて、ドライバー、歩行者、自転車に乗る人がアイコンタクトを取りやすくすることだ。さらに道路スペースを自動車だけでなく、自転車レーンとバスレーン、そして新しい歩行者スペースに変える。これだけでも、道路は格段に安全な場所になる。

一触即発の世界

  • アジアにおける戦争を防ぐには
    ―― 米抑止力の形骸化と中国の誤算リスク

    ミシェル・A・フロノイ

    雑誌掲載論文

    中国の積極性の高まりと軍備増強、一方での米抑止力の後退が重なり合うことで、米中戦争がアジアで起きるリスクはこの数十年で最大限に高まっており、しかもそのリスクは拡大し続けている。アメリカを衰退途上の国家だと確信し、すでに抑止力は空洞化しているとみなせば、北京は状況を見誤って台湾を封鎖あるいは攻撃する恐れがある。早い段階で台湾に侵攻して既成事実を作り、ワシントンがそれを受け入れざるを得ない状況を作るべきだと北京は考えているかもしれない。要するに、北京はワシントンの決意と能力を疑っている。こうして誤算が起きるリスク、つまり、抑止状況が崩れ、2つの核保有国間で紛争が起きる危険が高まっている。

  • アメリカ社会の分裂と解体
    ―― 唐突な国家破綻を回避するには

    ダロン・アセモグル

    雑誌掲載論文

    白人警察官がアフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイドを(首を足で押さえつけて)残酷に殺害した事件は、大規模な抗議行動を誘発した。かつて白人至上主義者を「とてもよい人々=very fine people」と呼んだ指導者が、この危機に米大統領として建設的な発言ができるはずはなかった。しかし、多くのアメリカの都市で起きた暴動に対するトランプの反応は、彼の(でたらめな)基準からみても衝撃的だ。デモ参加者を悪者とみなして催涙ガスの使用を促し、デモ対策として国内で軍を配備するための1807年の反乱法を発動することさえ示唆した。トランプが選挙に敗れ、素直にホワイトハウスを去ったとしても、新政権が、トランプをかつてホワイトハウスに送り込んだアメリカ社会の構造的問題に取り組まない限り、うまく修正できないダメージに直面する。(アメリカの制度に対する市民の)信頼を取り戻すには、次の政権は風土的病的な広がりをみせる人種差別と格差に対処していく必要がある。

  • CFR Briefing
    香港と国家安全法
    ―― 我々の知る香港の終わり?

    ジェローム・A・コーエン

    雑誌掲載論文

    北京が国家安全法を導入すれば、これまで香港に約束されてきた(一国二制度に基づく)自治体制は実質的に終わりを迎えることになる。全人代で同法の制定方針を取り付けた北京は、香港の民主化運動を鎮圧する動きをすでにみせている。結局、北京は「香港の一国二制度の枠組みは着実に手に負えない状況を作り出しつつあり、香港民衆による抗議行動を阻止しなければ、情勢は手に負えなくなる」と先読みしているようだ。国際社会での香港弾圧への懸念も高まっている。イギリス当局は、北京が今後も立場を変えなければ、英国海外市民(BNO)旅券保有者は英国に住んで働き、最終的には英国の市民権を得ることを許されるかもしれないと示唆している。・・・

準備通貨ドルとデジタル人民元

  • 準備通貨ドルとデジタル人民元
    ―― 何がドル覇権を支えているのか

    ヘンリー・M・ポールソン・Jr

    雑誌掲載論文

    ワシントンは、中国との競争で実際に何が危機にさらされ、問われているのかを明確に認識する必要がある。アメリカは金融と技術部門のイノベーションのリードを維持すべきだが、中国のデジタル通貨が米ドルに与える衝撃を過大評価する必要はない。むしろ、ドルの優位性を生み出した条件を維持していくことに気を配るべきだ。この意味で、健全なマクロ経済と財政政策が支える躍動的な経済、透明で開放的な政治システムと国際社会での政治・経済・安全保障上のリーダーシップを維持していく必要がある。つまり、ドルの覇権的地位を維持できるかは、中国で何が起こるかよりも、コロナウイルス後の経済にアメリカが適応していく能力、成功モデルであり続ける能力に左右されるだろう。

  • デジタル人民元とドル
    ―― 脅かされる米ドルの覇権

    アディティ・クマール、エリック・ローゼンバッハ

    雑誌掲載論文

    一帯一路を通じて世界のインフラプロジェクトに資金を提供している北京が、途上国の金融インフラに投資すれば、この構想を補完する「デジタル一帯一路」を構築できるし、中国と大規模な輸出入関係にある企業に、アリペイを使って「デジタル人民元」で取引するように促すこともできる。実際、中国のデジタル通貨を利用できるようになれば、(経済制裁の対象にされても)テヘランはドル建ての取引と決済、そして米金融機関を迂回できるようになる。迫りくる「デジタル通貨の時代」における経済的優位を守るには、ワシントンは直ちに行動を起こす必要がある。競争力のあるデジタル通貨をワシントンが開発できなければ、情報化時代におけるアメリカのグローバルな影響力は大きく損なわれることになるかもしれない。

  • フェイスブックとテンプル騎士団
    ―― 暗号通貨リブラのポテンシャルとリスク

    ケビン・ワーバック

    Subscribers Only 公開論文

    今も昔も、国境を越えて資金を移動させるのは容易ではない。十字軍のメンバーたちが聖地への長旅の資金をどうするかという問題を解決したのは、ヨーロッパから中東にかけての遠大なネットワークをもつテンプル騎士団が発行した手形だった。現在も外国送金にはコストも時間もかかる。これを魔法のように解決してくれるのが、ブロックチェーンを基盤とするフェイスブックの暗号通貨・リブラだ。暗号通貨なら、ユーザーは、メッセージやビデオを送るのと同じスピードで送金できるし、銀行へのアクセスをもたない人にも恩恵をもたらせる。但し、この構想が実現すれば、既存の金融機関は追い込まれ、資金洗浄やテロ資金に悪用されるリスクもある。資本規制をしている国の中央銀行のパワーも低下させるかもしれない。驚異的な利便性の一方で、富の移転を規制し、監視する立場にある政府にとっては非常に厄介な事態が作り出される。

  • 国際通貨システムの未来
    ―― 再現されるのは1930年代か1970年代か

    バリー・エイケングリーン

    Subscribers Only 公開論文

    米欧経済がともに深刻な危機に直面しているために、ドルとユーロへの信任が揺らぎ始め、国際通貨システムそのものが動揺し始めている。1930年代の国際通貨システムの崩壊は、経済活動を抑え込み、政治的過激主義を台頭させて、世界を壊滅的な事態へと導いた。対象的に1970年代のブレトンウッズ体制の崩壊はグローバル経済にダメージを強いたが、致命傷を与えることはなかった。金、小国の通貨、人民元、SDRと、現状におけるドルやユーロの代替策はどれも問題があり、結局、現在の国際取引を支えられるのはドルとユーロだけだ。しかし、この二つの通貨の安定に対する懸念がさらに高まり、各国の中央銀行が保有するドルとユーロを手放していけばどうなるだろうか。1930年代に外貨準備を清算したときと同様に、資本規制策をとって資本の流れを制限するしかなくなる。1930年代、1970年代、われわれは今後どちらのシナリオを目にすることになるのか。グローバル経済の運命は生死の縁をさまよっている。

  • ブレグジット後のヨーロッパ
    ―― 経済より政治統合を優先させよ

    マティアス・マティス

    雑誌掲載論文

    市場統合は英仏が、ユーロは仏独が主導した。欧州連合(EU)の東方拡大を支持したのはイギリスとドイツだった。イタリアのエリート層は、これら三つのプロジェクトすべてに進んで同調した。しかしいまや、こうしたコンセンサスはほとんどない。EUが現在の病を克服するには、加盟国首脳が幅広い政治原則や経済原則で妥協する必要があるが、東欧や南欧の反対の高まりを考えると、現状を維持したいドイツの願いを叶えるのは難しいだろう。したがって、イタリアが望む「加盟国により大きな柔軟性を認める路線」とフランスが求める「EUの連帯強化路線」との間で均衡点をみつける妥協が必要になる。これが実現すれば、ドルのパワーに対抗していくユーロのポテンシャルを開花させていくことも、エアバス社などの優れた欧州企業をさらにパワフルな企業に育てていくことも夢ではなくなる。・・・

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