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2016年1月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2016年1月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2016年1月号 目次

中東の空白とプーチンの戦略

  • プーチンの中東地政学戦略
    ―― ロシアを新戦略へ駆り立てた反発と不満

    アンジェラ・ステント

    雑誌掲載論文

    ロシアによるグルジアとウクライナでの戦争、そしてクリミアの編入は、「ポスト冷戦ヨーロッパの安全保障構造から自国が締め出されている現状」に対するモスクワなりの答えだった。一方、シリア紛争への介入は「中東におけるロシアの影響力を再生する」というより大きな目的を見据えた行動だ。介入によって、ロシアはポスト・アサド時代になってもシリアで影響力を行使できるだけでなく、モスクワは地域プレイヤーたちに「アメリカとは違って、ロシアは民衆蜂起から中東の指導者と政府を守り、反政府勢力が権力を奪取しようとしても、政府を見捨てることはない」というメッセージを送った。事実、2015年後半には、エジプト、イスラエル、ヨルダン、クウェート、サウジアラビア、アラブ首長国連邦の指導者たちが相次いでモスクワを訪問している。・・・すでにイラクはイスラム国との戦いにロシアの力を借りるかもしれないと示唆している。・・・

  • ロシアの介入で変化したシリア紛争の構図
    ―― 内戦からグレートゲームへ

    アンドリュー・タブラー

    雑誌掲載論文

    バッシャール・アサド政権を支援することが、ロシアのシリアへの軍事介入の目的だと当初は考えられていたが、それだけではないこともわかってきた。イランの影響下にある地上部隊と連携してアレッポ近郊をロシア軍が空爆した証拠が出てきているからだ。ロシアとイランが支援する地上部隊の連携作戦は、シリア北部におけるトルコや湾岸諸国の実質的勢力圏と正面から衝突している。実際、ロシア軍は度重なるトルコ領空の侵犯を通じて、シリア北部に関与する意図をトルコにみせつけている。ロシアがもっとも重視するターゲットには、アメリカが支援してきた穏健派反体制グループ、トルコが支援してきたイスラム主義勢力も含まれている。こう考えると、今やシリアではグレートゲームが展開されている。ロシアが介入する前は、シリアはボスニアかソマリアへの道を歩みつつあるかにみえたが、今やグレートゲームの舞台となった19世紀のアフガニスタンへと向かいつつある。・・

  • ウクライナがドネツクを失うとき
    ―― アレクサンドル・ザハルチェンコの世界

    アレクサンダー・J・モティル

    雑誌掲載論文

    ウクライナ東部の平和は実現するか。これは、ウラジーミル・プーチンとアレクサンドル・ザハルチェンコという、強情で何をするかわからず、軍事志向の強い二人のデマゴークたちの意向に左右される。プーチンはウクライナ紛争については「自分は見守っているだけだ」と主張し、ザハルチェンコは「自分が責任者だ」と語っている。しかし、現実はもっと複雑だ。2015年9月1日の停戦合意が示すように、決定権をもっているのはプーチンだ。戦争を始めたプーチンなら、和平も模索できる。しかし、ザハルチェンコはたんなる傀儡ではない。思想と野心、そして自分の計画をもっている。彼がおとなしくしているかどうかが、いかなる合意の成功も左右することになるだろう。

  • プーチンがシリアを支援する本当の理由
    ―― チェチェン紛争とシリア内戦をつなぐスンニ派の脅威

    フィオナ・ヒル

    Subscribers Only 公開論文

    ウラジーミル・プーチンはシリア紛争とチェチェン紛争を同列にとらえ、シリア紛争のことを「国家を標的にし(国家解体を狙う)スンニ派の過激主義勢力の、数十年におよぶ抗争の最近の戦場にすぎない」とみている。アフガン、チェチェン、数多くのアラブ国家を引き裂いてきたスンニ派の過激主義勢力と国家の戦いがシリアで起きているにすぎない、とプーチンは考えている。だからこそ、彼は「自分がチェチェンで成し遂げたことをアサドがシリアで再現し、反体制派の背骨を折ること」を期待し、シリアに対する国際介入に反対してきた。仮にプーチンがアサドを見限るとしても、その前に、「体制崩壊に伴う混乱の責任を誰がとるのか」という問いへの答を知りたいと考えるはずだ。誰がスンニ派の強大化を抑え込むのか、誰が北カフカスその他のロシア地域に過激派が入り込まないようにするのか。そして、誰が、シリアの化学兵器の安全を確保するのか。プーチンは、アメリカや国際コミュニティがアサド後のシリアに安定を提供できるとはみていない。だからこそ、シリアという破綻途上国を支援し続けている。

  • シリアを擁護するロシアの立場
    ――宗派間抗争と中東の地政学

    ドミトリ・トレーニン

    Subscribers Only 公開論文

    ロシア政府の高官や政府に近い専門家の多くは、昨今における欧米の行動を非常にシニカルにみている。「ワシントンは、エジプトでの影響力を確保しようと古くからの同盟パートナーであるムバラクを見限り、石油契約を維持するためにリビアとの戦争に関与し、アメリカの第五艦隊の基地が存在するという理由でバーレーンへのサウジ介入に見て見ぬふりをした。そしていまや、イランからアラブ世界における唯一の同盟国をとりあげようと、シリアのアサド政権を倒そうとしている」。ロシアはこれらの戦争に直接的な利害は持っていない。だが少なくとも、危険で根拠を失いつつあるかにみえるアメリカの地域戦略の尻馬に乗りたいとは考えていない。・・・モスクワのシリアへの態度は、最近におけるリビアの運命、シリアの反体制派に対する不信、そして、アメリカの意図に対する懸念によって規定されている。

  • 悪いのはロシアではなく欧米だ
    ―― プーチンを挑発した欧米のリベラルな幻想

    ジョン・ミアシャイマー

    Subscribers Only 公開論文

    ロシアの高官たちはワシントンに対してこれまで何度も、グルジアやウクライナを反ロシアの国に作り替えることも、NATOを東方へと拡大させるのも受け入れられないと伝えてきたし、ロシアが本気であることは2008年にロシア・グルジア戦争で立証されていた。結局のところ、米ロは異なるプレーブックを用いている。プーチンと彼の同胞たちがリアリストの分析に即して考え、行動しているのに対して、欧米の指導者たちは、国際政治に関するリベラルなビジョンを前提に考え、行動している。その結果、アメリカとその同盟諸国は無意識のうちに相手を挑発し、ウクライナにおける大きな危機を招き入れてしまった。状況を打開するには、アメリカと同盟諸国は先ず「グルジアとウクライナをNATO拡大策から除外する」と明言する必要がある。

  • ウクライナ危機とロシアの立場

    ジェフリー・サックス

    Subscribers Only 公開論文

    欧米はウクライナの領土保全回復を目的に掲げるだけでなく、ロシアの利益と懸念にも応分の正当性があることを認める必要がある。ウクライナの安定は、ロシアの協力なしでは達成できないし、そうした協力が実現するとすれば、欧米がロシアに対して和解的な危機管理策をとった場合だけだ。ウクライナはヨーロッパとロシアの双方と分かちがたく結びついている。巨大なコスト負担を覚悟しない限り、どちらか一つとの関係を遮断できない場所に位置している。欧米は、ウクライナをロシアの軌道から引き離そうとするのではなく、むしろ、ロシアとウクライナが、先を見据えて、互恵的関係を模索するように働きかけ、EU、ロシア双方との経済的つながりを拡大することを目的に据えるべきだ。

崩れゆくヨーロッパ社会

  • ヨーロッパの危機と分裂をどうとらえるか
    ―― ドイツの覇権、移民、分離独立の流れ

    ニゲアー・ウッズ

    雑誌掲載論文

    押し寄せる難民が「域内移動の自由」というEUの中核原則を脅かし、ギリシャ危機はユーロの存続に依然として大きな圧力をかけている。しかも、イギリスでは、EU脱退の是非を問う国民投票が近く実施される。どうみてもEUの存続は、かつてなく脅かされている。一方で、統合支持派はギリシャなど、ソブリンリスクを抱え込んだ諸国への寛大な救済策が政治的に許容されたことそのものが、統合が成功していることを裏付けていると言う。しかし、ユーロ圏メンバー国が団結したのは、ギリシャのユーロ脱退コストが、救済コストよりも高くつくことがわかっていたからだ。結局、EUにおけるドイツの事実上の覇権が今後さらに強化されていくだろう。だが多くの国にとって、ユーロ危機は、(緊縮財政を求める)ドイツの影響力を野放しにするとどうなるかを認識する機会でもあった。「欧州連合は少しずつ、『非民主主義的なドイツに支配されるヨーロッパ』へと変化している」という批判も出てきている・・・。

  • ヨーロッパの政治的混乱とイスラム主義
    ―― 代替策なきヨーロッパに苦悶する若者たち

    ケナン・マリク

    雑誌掲載論文

    社会に背を向け、遠ざかろうとするのは、イスラム教徒に限った問題ではない。ヨーロッパでは政治プロセスへの全般的な幻滅が存在する。自分の声を届けられないことへの政治的無力感、メインストリームの政党も、教会や労働組合のような社会的集団も自分たちの懸念や必要性を理解していないことへの絶望がみられる。これまでなら、そうしたメインストリームに対する不満を抱く若者の多くは政治的変化を求める運動へと参加したが、いまやそうした運動も現実との関連性を失っている。こうして、メインストリームの道徳的枠組みへの信頼を失った若者は、代替策を模索するようになる。移民の社会的統合を目指したヨーロッパの社会政策が、より分裂した社会を作り出し、帰属とアイデンティティに関する視野の狭いビジョンを台頭させている。これらの社会政策が、イスラム主義が蔓延し、不満をジハード主義に転化させる空間の形成に手を貸してしまった。

  • ヨーロッパ連邦の形成を
    ―― 次なるヨーロッパプロジェクト

    ニコラス・バーググルーエン、ネイサン・ガーデルス

    Subscribers Only 公開論文

    「世界の人口の7%が暮らし、世界の経済生産の25%を担う現在のヨーロッパは、世界の社会関連支出の50%を拠出している」。メルケル独首相のこの発言が示唆するとおり、(この人口・経済生産・社会保障支出間の不均衡を)改革を通じて是正していかない限り、ヨーロッパの福祉国家を財政面で支えていくのはますます難しくなる。より踏み込んだ制度的改革も必要だ。EU(欧州連合)を構成する欧州委員会、欧州理事会、欧州議会の正統性を強化し、EUを、単一通貨を支える共通の財政・金融政策をもつヨーロッパ連邦へと進化させていかない限り、ヨーロッパはこれまで同様に未来においても不安にさいなまれることになる。さまざまな不確実性のなかでヨーロッパが直面する課題に対応していく唯一の方法は、ヨーロッパの指導者と市民が、前に踏み出すのを嫌がって機能不全状況のなかに身を置き続けるのではなく、ヨーロッパ連邦の形成という壮大な変革ビジョンにコミットし、前に歩き始めることだろう。

  • 統合の危機とヨーロッパの衰退

    ティモシー・ガートン・アッシュ

    Subscribers Only 公開論文

    戦後のドイツにとって、ヨーロッパ諸国の信頼を取り戻すことが、ドイツ統一という長期的目的を実現する唯一の道筋だった。財政同盟という支えを持たない通貨同盟が構造的な問題と崩壊の火種をはらんでいることを理解した上で、西ドイツはドイツ統一のためにあえてユーロを受け入れた。そしていまやヨーロッパはユーロ危機に覆い尽くされ、漂流している。かつてこの大陸を統合へと向かわせた戦争の記憶もソビエトの脅威も希薄化するか、消失している。瓦礫のなかから統合を目指し繁栄を手にした戦後世代とは違って、現代の若者たちは繁栄から失業へ、希望から恐れへと、まったく逆の変化を経験している。統合の維持に向けた新しい源流、エリートと市民たちを統合の維持へと駆り立てる新たな流れが生じない限り、ヨーロッパは、かつての神聖ローマ帝国同様に、ゆっくりとその効率と価値を失い、衰退していくことになるだろう。

  • 問われるヨーロッパの自画像
    ―― ユダヤ人とイスラム教徒

    ヤシャ・モンク

    Subscribers Only 公開論文

    「私は移民に開放的だ」と自負しているヨーロッパ人でさえ、「イスラム系移民はそのアイデンティティを捨てて、ヨーロッパの習慣を身につけるべきだ」と考えている。右派のポピュリストはこうした市民感情を利用して、「(移民に寛容な)リベラルで多様な社会という概念」とそれを支えるリベラル派をこれまで攻撃してきた。だがいまや、極右勢力は「言論の自由を否定し、シャリア(イスラム法)の導入を求め、ユダヤ人、女性、同性愛者に不寛容な国からの移民たちが、ヨーロッパの秩序そのものを脅かしている」と主張し始め、リベラルな秩序の擁護者として自らを位置づけ、これまで攻撃してきたユダヤ人を連帯に組み込むようになった。問題は、ユダヤ人とイスラム教徒を交互に攻撃して秩序を維持しようとするやり方が単なる政治戦術にすぎず、このやり方では未来を切り開けないことだ。むしろ、ヨーロッパ人が自画像を変化させ、自分たちの社会が移民社会であることを認識するかどうかが、ヨーロッパの未来を大きく左右することになる。

  • ヨーロッパの文化的ジレンマ
    ―― 欧州と大中東の関係をどう規定するのか

    クリス・パッテン、ロックウェル・シャナベル、リチャード・バート

    Subscribers Only 公開論文

    「イスラム系移民たちの伝統、宗教、文化を尊重しつつも、われわれがキリスト教文明を軸にヨーロッパを再定義しようと試みていないことが問題だ。われわれは寛容を軸にわれわれの文化を定義しており、他の文明への理解と尊重を示すには、(われわれの価値を守るために)一部で不寛容でなければならないということをヨーロッパ人は受け入れられずにいる」。(C・パッテン)
    「ヨーロッパのイスラム系移民たちは、厳しい経済的現実のなかで雇用に就けないからこそ、経済的に同化できず、社会から阻害されている。ヨーロッパ経済が成長し、雇用がつくり出されるようになれば、ヨーロッパのイスラム教徒の経済的同化、社会的同化が進み、問題は緩和されていく」。(R・シャナベル)

  • フランスのイスラム教徒問題
    ―― 真の問題はフランスそのものにある

    ステファニー・ジリ

    Subscribers Only 公開論文

    ヨーロッパで生まれたイスラムテロにどう対応するかは重要な課題だが、イスラムテロとイスラム教徒が安易に結びつけられているために、現在ヨーロッパに住む1500万~2千万人のイスラム教徒のほとんどがイスラム過激派とは無関係であり、ヨーロッパ社会に反発して背を向けるどころか、現地社会に溶け込もうと努力しているという重要な事実が見えにくくなっている。イスラム地区における犯罪発生率が高いとしても、それは宗教とは関係なく、フランス国内の社会経済環境を背景としている。フランスの移民問題を「文明の衝突」としてとらえるのではなく、フランスのエリートは、経済停滞、小さな違いを認めない非寛容的な態度、世論の場でのイデオロギー論争、政治的策略の横行といった国内の真の問題に取り組んでいくべきだろう。

  • <CFR Events>
    原油安リスクと再生可能エネルギーのポテンシャル
    ―― 世界エネルギーアウトルック

    ファティ・ビロル

    雑誌掲載論文

    原油安が好ましいとは限らない。例えば、原油価格が今後10年にわたって50ドル前後で推移した場合、中東産油国へのわれわれの依存度は高まっていく。北米、ブラジル、アフリカなどの原油は生産コストが高いために、生産量は削減され、生産コストの安い一部の中東産油国の石油への需要と依存が高まっていく。一方、中東は、誰もが知るとおり、大きな混乱のなかにある。つまり、石油安全保障の観点からみれば、長期的に原油が低価格で推移するのは、かなりのリスクがある。・・・さらに原油安によって、やっと勢いづいた再生可能エネルギーへの支援策を政府が見直す危険もある。だがそうならなければ、石炭から再生可能エネルギーへの大きなシフトが起きる。電力生産部門での石炭のシェアは低下し、近い将来、再生可能エネルギーが石炭を抑えて最大のシェアをもつようになる。例えば、3人のうち2人が電力へのアクセスをもっていないアフリカのサハラ砂漠以南の地域が、化石燃料ではなく、再生可能エネルギーで経済成長を遂げる最初の大陸になると考えることもできる。彼らは再生可能エネルギー資源に恵まれているし、再生可能エネルギーによる電力生産コストは大幅に減少している。・・・・

  • 国際貿易に関する危険な妄想
    ―― 貿易と経済と所得格差

    ウリ・ダドゥッシュ

    雑誌掲載論文

    世界貿易の停滞は「ピーク・グローバル化」や「ピーク・トレード」の結果ではないし、保護主義が新たに蔓延しているわけでもない。貿易の停滞は、金融危機後の経済のシクリカルなスローダウンから世界経済が立ち直れずにいることを意味するにすぎない。たしかに、中国の需要に依存してきた原材料輸出国の経済も停滞し、貿易の流れをさらに淀ませている。しかし、これでグローバル化の拡大が終わるわけではない。途上国の台頭もグロ―バル化も終わることはなく、それだけにWTOの役目が終わったわけでもない。貿易改革を支える政治的コンセンサスは形骸化しつつあるが、TPPのような自立的で広範囲をカバーする地域貿易協定を通じてであれ、あるいは多国間交渉の新しいアプローチを通じてであれ、世界の貿易制度の改革は依然として必要だ。この試みを怠れば、より危険な時代にわれわれは足を踏み入れることになる。問題を正面から捉えるために、われわれは貿易に関する危険な妄想を取り払う必要がある。 。

介入すべきか、介入せざるべきか

  • 介入が許される条件とは何か
    ―― J・S・ミルと不介入の薦め

    マイケル・ドイル

    雑誌掲載論文

    いまや(欧米が)いつ地上戦を含むシリアへの軍事介入に踏み切り、政府と市民の間に強引に割って入るのか、というテーマさえ浮上している。軍事介入についてどのような立場をとるかは、人道的介入、主権、国家安全保障を人々がどのように認識しているかに左右される。19世紀のイギリスの哲学者ジョン・スチュワート・ミルは、「自由や民主主義を強制するための軍事介入」を否定し、基本的に不介入主義を説いた。一方ミルは「人道的な懸念」や「国家安全保障上の必要性が相手国の主権以上に重視される場合」、或いは「相手国が分裂し、国家として機能していないために、主権を無視してもかまわない」ケースでは介入が許容されるとしている。現在のシリア紛争はどうだろうか。・・・

  • <CFR Events>
    封じ込めではなく、イスラム国の打倒と粉砕を

    ヒラリー・クリントン

    雑誌掲載論文

    結局のところ、米軍機やドローンによる攻撃を含む、われわれが利用できる全てのツールを用いて、テロの危険がある全ての地域で対策をとらなければならない。外国人戦士のイスラム国への流入と流出、テロ資金の流れを遮断し、サイバースペースでの闘いを試みることが、イスラム国との戦いには欠かせない。今後の脅威に対抗していく上でも、これらの試みが対策の基盤を提供することになるだろう。・・・われわれの目的をイスラム国の抑止や封じ込めではなく、彼らを打倒し、破壊することに据えなければならない。・・・「スンニ派の第2の覚醒」の基盤作りを試みる必要もある。・・・アサドがこれ以上民間人や反体制派を空爆で殺戮するのを阻止するために、飛行禁止空域も設定すべきだ。有志連合メンバー国が地上にいる反体制派を空から支援して安全地帯を形作れば、国内避難民もヨーロッパを目指すのでなく、国内に留まるようになる。・・・

  • イスラム国とカリフ制国家
    ―― 何が異質で、どこに継続性があるのか

    ヒシャム・メルヘム

    雑誌掲載論文

    イスラム国と、過去の原理主義運動の間には多くの連続性があるが、戦術と戦略には歴然とした違いがある。・・・イスラム国は、中東に国家を樹立することを主眼とし、イスラム教徒を虐殺することも厭わない。また、ソーシャルメディアなど最新のテクノロジーを駆使して、高度かつ広範にわたるプロパガンダを展開する点で、過去のいかなる原理主義組織とも大きく違っている。だがイスラム国が自らの目標を達成することはないだろう。中東のイスラム教徒たちは、イスラム国はまったく異質な存在であるという妄想を捨てて、イスラム国がマフディーやカリフを語るのは、イスラムの長い流血の伝統の一つにすぎないことを認めれば、イスラム国との戦いの本質、つまり、どの伝統が今後のイスラム教の中心になるかを決める戦いがみえてくるはずだ。・・・

  • イスラム国の全貌
    ―― なぜ対テロ戦略は通用しないか

    オードリー・クルト・クローニン

    Subscribers Only 公開論文

    イスラム国はテロ集団の定義では説明できない存在だ。3万の兵士を擁し、イラクとシリアの双方で占領地域を手に入れ、かなりの軍事能力をもっている。コミュニケーションラインを管理し、インフラを建設し、資金調達源をもち、洗練された軍事活動を遂行できる。したがって、これまでの対テロ、対武装集団戦略はイスラム国には通用しない。イスラム国は伝統的な軍隊が主導する純然たる準軍事国家で、20世紀に欧米諸国が考案した中東の政治的国境を消し去り、イスラム世界における唯一の政治、宗教、軍事的権限をもつ主体として自らを位置づけようとしている。必要なのは対テロ戦略でも対武装集団戦略でもない。限定的軍事戦略と広範な外交戦略を組み合わせた「攻撃的な封じ込め戦略」をとる必要がある。

  • シリア紛争への直接的軍事介入?
    ―― さらに踏み込むべきか、現状で踏みとどまるべきか

    スティーブン・サイモン

    Subscribers Only 公開論文

    (反政府勢力とアサド政権の双方と戦っている)イスラム国に対する空爆作戦を実施しつつも、ワシントンはシリア内戦の直接的プレイヤーにならないように細心の注意を払ってきた。特に、シリア政府を実質的に助けているとみなされたり、あるいは、シリア政府を倒す戦いに加担しているとみなされたりしないように心がけてきた。だが、ワシントンは、このどちらかを選ばざるを得ない状況に、程なく直面するだろう」。ここにおける基本的問題は次のようなものだ。(イスラム国対策として)アメリカが支援している非ジハード主義反政府勢力の一つが、アサド政権に対抗していくための支援を求めてきたら、どうするか。そうした反政府勢力を支援しなければ、イスラム国をターゲットとする空爆作戦を支持している諸国も、アメリカへの態度を変えることになる。だがワシントンが要求を受け入れれば、アメリカは内戦を戦う本当のプレイヤーになってしまう。

  • シリアの崩壊を食い止めるには
    ―― 交渉実現のための部分的軍事介入を

    アンドリュー・タブラー

    Subscribers Only 公開論文

    経済改革の真価は、改革措置が、経済成長の妨げとなっている供給面での非効率と需要の低迷という問題の解決に寄与するかどうかで判断すべきだ。だが人々が目にしているのは、もっとも再編が必要でない産業での再編、もっとも切実に改革が必要とされている領域での形ばかりの改革にすぎない。

  • 青い惑星の水不足
    ―― 高まる水資源需要にいかに応えるか

    韓昇洙

    雑誌掲載論文

    水の惑星と言われる地球だが、人類が実際に摂取できる水の量は、地球上の水資源のわずか1%。現状でも、世界の8億人近くの人々が、クリーンな飲料水へのアクセスをもたず、国連の世界水資源開発報告書は、水資源需要が現在のペースで増え続ければ、2030年には需要が供給を40%上回ることになると予測している。このシナリオが現実と化せば、10億人以上の人々が水資源不足だけでなく、多くの国が(農業用水の不足による)食料不足や生活レベルの低下に苦しむことになる。十分な飲料水資源を人類に供給するには、既存の資源をいかに管理していくかが重要だ。幸い、三つのイノベーションが未来を切り開きつつある。・・・

  • 中国とロシアの関係
    ―― 中国がロシアとの同盟を模索しない理由

    傅瑩

    雑誌掲載論文

    欧米の分析者や政府関係者のなかには、ロシアが深く関与しているシリアとウクライナでの紛争が、北京とモスクワの関係を緊張させるか、破綻させると期待混じりに考える者もいる。だがそもそも中国はロシアとの公的な同盟関係を結ぶことにも、反米、反欧米ブロックを組織することにも関心はない。むしろ、北京は、中ロが開発目標を達成できるような安全な環境を維持し、互恵的な関係で支え合い、どうすれば国際システムを強化する方向で大国同士が立場の違いを管理できるかのモデルとされるような関係を形作っていくことを望んでいる。アメリカとその同盟諸国は、中国とロシアの緊密な絆を、米主導の世界秩序を脅かす疑似同盟関係の証拠とみなすかもしれない。だが中国は、米中ロの三国間関係は、二つのプレイヤーが連帯して残りの一つと対峙するパワーゲームとみてはいない。・・・

  • ミャンマー 民主化への遠い道のり

    ゾルタン・バラニー

    雑誌掲載論文

    2015年11月8日、ミャンマー(ビルマ)で25年ぶりに総選挙が実施され、ほぼ半世紀に及んだ残忍な軍政を経て、ノーベル平和賞を受賞したアウンサンスーチー率いる野党・国民民主連盟(NLD)が地滑り的な勝利を収めた。いまやミャンマー内外で、平和的に政権交代が実現し、歴史的な民主化が実現することへの期待が高まっている。しかし、そうした期待をもつのは時期尚早だし、過度に楽観的だろう。ミャンマーの軍部は依然として大きな権力と権限をもっているし、NLDは巨大で複雑な国の官僚機構を管理した経験がない。しかも政治腐敗が蔓延し、中国との関係も不安定化している。NLDの勝利が近年のミャンマーにとってもっとも期待のもてる展開であることは間違いないが、政治的安定が実現するまでには、まだ長い道のりが待ち受けている。

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