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政治・文化・社会に関する論文

「対テロ戦争」というレトリックの弊害

2002年10月号

グレンビル・バイフォード 国際問題アナリスト

美しさを人がどうとらえるかと同じことで、テロリズムも立場によってとらえ方が違ってくる。目的を達成するのにどのような手段を用いたかで、それがテロであるかどうかを判断するのは間違っている。同時多発テロへのアメリカの怒りにしても、アメリカが攻撃され、アメリカ人が殺されたことに市民は激怒しているのであって、攻撃の手法自体に怒りを募らせているわけではない。したがって、漠然としたものにしかなり得ず、むしろ問題をつくり出す「対テロ戦争」というレトリックを振り回すのをやめるべきだ。国家安全保障にかかわる特定の具体的課題としてテロ問題に取り組むべきであり、テロ対策について語るときも「利益が一番で、次が目的、そして手段」というアメリカ人の常日頃の優先順位を忘れてはならない。

進化する総合安全保障政策と日米同盟の行方

2002年9月号

外交問題評議会シニアフェロー エリック・ヘジンボサム   マサチューセッツ工科大学 政治学教授 リチャード・J・サミュエルス

平和主義、ノーマルな国家になることへの模索、アメリカへの追随、中国に対する反発といった一般通念では、もはや日本の外交路線は説明できない。ワシントンは、日本の総合安全保障概念が進化し、これを支える二重保険戦略が生まれていることを直視し、この戦略と共存していく道を学んでいく必要がある。

生物学的脅威に備えよ

2002年8月号

クリストファー・F・チャイバ クリントン政権国家安全保障会議スタッフ

公衆衛生体制の改善こそ、バイオテロ対策の基本である。病原体によっては潜伏期間が数週間にも及ぶので、バイオテロに真っ先に対応するのは消防、警察、軍隊ではなく、医療関係者となる可能性が高く、感染症を早期に発見し、対応できる公衆衛生監視体制の強化が急務となる。また、バイオテロであれ、自然発生型の感染症であれ、病原体は国境を超えて自由に移動する。当然、世界的な感染症発生の監視・対応メカニズムの改善、世界中で備蓄されている病原体の管理など、国際的監視枠組みの強化も不可欠である。

グローバル化というわれわれが共有する未来

2002年8月号

◎スピーカー アメリカ合衆国第四十二代大統領 ウィリアム・G・クリントン 米外交問題評議会会長  ◎司会 ピーター・ピーターソン

「市場経済のメカニズムが問題を引き起こしている」という反グローバル派の言い分は間違っている。真実は「市場経済のメカニズムだけでは世界の問題を解決できない」ということだ。グローバルな社会・教育・環境・経済政策なくして、グローバル経済は成立しない。われわれが真の相互依存世界を実現したいのなら、より統合されたグローバル・コミュニティーを形成しなければならない。

グローバル化の衝突

2002年8月号

スタンレー・ホフマン ハーバード大学教授

われわれが暮らしているのは、脆弱な統治制度と未発達の市民社会という欠陥を持つグローバル社会と、国家間の格差が大きく、破綻国家を内包する国際社会が重なりあう世界だ。統治制度も成熟した市民社会も持たないグローバル化は、平和ではなく、紛争と反発の種をまき散らし、生活の基盤を奪われた人々は、報復とテロ攻撃のなかに自尊心を見いだしている。テロリズムが、国家間関係とグローバル社会を結びつける血なまぐさい絆の役目を果たしているこの世界を、どうすればより住みやすくできるのだろうか。

アメリカの覇権という現実を直視せよ
――単極構造時代の機会と危機

2002年8月号

ステファン・G・ブルックス ダートマス・カレッジ助教授 ウイリアム・C・ウォールフォース ダートマス・カレッジ准教授

アメリカは、国力を構成するすべての領域で支配的な優位を確立しており、われわれは、アメリカの覇権による単極構造の世界にある。今後数十年にわたって覇権抗争を展開できる国が出現する可能性はほとんどないし、アメリカへの対抗バランスを形成するというレトリックも全く実体に欠ける。単極構造下の覇権国は、世界、そして自国にとっての長期的な視野に立った利益を模索するゆとりを手にしている。このゆとりを利用し、世界の問題が深刻化してから状況に対応するのではなく、そうした問題が出現しないように先手を打つことこそ、世界、アメリカ双方にとっての利益となろう。

グローバル化は世界を不幸にしたか
――スティグリッツ氏、ワシントンに行く

2002年8月号

カリフォルニア大学バークレー校政治経済学教授 バリー・エイケングリーン

スティグリッツの本は、途上国の現実を無視した単純な経済教義は状況を改善するどころか悪化させる危険があり、経済理論と現実に即して慎重に運用することが、健全な政策助言を行う上で非常に重要であることを示している。しかし、途上国に発言権やグローバルな統治への参加権を与えよといった、過度に単純な彼の政治的助言は問題がある。政治改革は、経済改革と同じように微妙で複雑なものである。

東南アジア
――対テロ軍事支援の限界と弊害

2002年7月号

ジョン・ガーシュマン 両半球間資源センター上級アナリスト

アメリカが対テロ戦争の一環として東南アジアを「軍事的に支援」するのは間違っている。人権侵害を起こすことで悪名高い東南アジア諸国の軍隊は、多くの場合、政治エリートの一部やテロ組織を含む犯罪組織と手を結んで、むしろテロを助長する社会環境を育んでいるからだ。軍隊を支援しても、民主体制をさらに弱め、イスラム過激派の魅力を高めてしまうだけだ。ワシントンは軍事援助や各国の法執行当局との連帯だけでなく、東南アジアが直面する社会問題への「文民統制型」の対応策を支援する必要がある。

同時多発テロ後のインドの内政と外交

2002年7月号

デニス・クックス ウッドロー・ウィルソンセンター上級政策研究員

同時多発テロ以降、米印は、政治・安全保障・経済に関する共通の利益をますます重視するようになり、いまや両国の関係は大きく前進し、緊密化している。だが、バジパイ政権は、対米外交では成果を上げつつも、カシミール紛争をめぐってパキスタンと深刻な軍事的対立局面にあるし、国内でも、政治危機、宗教対立、低迷する経済などの難題に直面している。対米関係の改善という成果を、パキスタンとの軍事的危機の解決、国内経済問題の解決に、どうすれば結びつけられるのか。

米外交問題評議会リポート
「軍事的対テロ戦争」では問題は解決しない

2002年7月号

◎スピーカー ブレント・スコークロフト ブッシュ・フォード政権大統領補佐官 カーター政権大統領補佐官 ズビグニュー・ブレジンスキー  クリントン政権大統領補佐官  サミュエル・バーガー クリントン政権大統領補佐官  ◎司会 CNN上席副会長 フランク・セスノ

アメリカ市民を対テロ作戦に動員する努力、テロの危険を世界に認識させる努力はうまくいっている。だが、政府はテロ問題にばかり焦点を絞るという間違いを犯している。これでは、非常に複雑で、混乱している世界の現実に目を向けず、そうした現実がつくり出す一つの現象であるテロ問題だけに、取り憑かれたように関心を持ってしまうことになる。(Z・ブレジンスキー)

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