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政治・文化・社会に関する論文

危機とグローバル化の歴史
―― グローバル化が復活する理由

2021年5月号

ハロルド・ジェームズ プリンストン大学教授(歴史学)

「大恐慌後、世界はブロック経済化し、ナショナリズム、権威主義、ゼロサム思考が台頭し、最終的には世界大戦が引き起こされた」。この流れはグローバル化からの逆コースの結末、憂鬱なエピソードとして示されることが多い。だが歴史は、多くの危機が、グローバル化を損なうのではなく、最終的には強化してきたことを教えている。近代における最初のグローバル化は、1840年代の社会的、金融的な大惨事への対応として始まっている。20世紀のグローバル化潮流も、1970年代のオイルショックに派生する経済的混乱を経て起きている。歴史的な断裂が生じても、それは、新たにグローバルなリンクを作り出し、それを増幅していく。COVID19も例外ではない。パンデミック後にグローバル化は勢いよく復活するだろう。

感染症を含むグローバルヘルス対策をめぐって、これまでワシントンは国際機関や途上国を中心とする各国政府に援助を提供することで、対策を主導してきたが、このアメリカ主導型のモデルに大きな変化が生じている。いまや、慈善団体、地域機構、民間企業などの、新しいネットワークと組織がグローバルヘルス領域で大きな役割を果たしているだけでなく、途上国の科学者や組織も研究やベストプラクティスをめぐって大きな影響力をもつようになった。しかも、技術革新によって民間企業に新タイプのデータがもたらされており、今後、政府と保健機関の仕事は大きく変化していくだろう。グローバルヘルスを守る努力の中枢に、各国政府、地域機関、民間部門とのパートナーシップを据える必要がある。


新疆における文化弾圧のルーツ
―― 帝国の過去とウイグル人

2021年5月号

シーン・R・ロバーツ ジョージ・ワシントン大学 エリオットスクール 准教授(国際関係論)

新疆における北京の残忍な行動は、習近平体制の権威主義化や中国共産党(CCP)のイデオロギーを映し出しているだけではない。むしろ、ウイグル人に対する抑圧は、「征服したものの、現代の中国に完全に組み込めず、一方で、実態のある自治も与えていない領土」と北京との「植民地的な関係」に起因している。北京はウイグル人の文化とアイデンティティを抹殺することを決意している。「彼らの血統・ルーツを壊し、つながりと起源を破壊すること」を目的にしている。欧米はこれを人権侵害として攻撃しているが、変化は起きそうにない。現実には、2020年に国連人権理事会で45カ国が新疆での中国の行動を擁護する書簡に署名している。「ウイグル人に対する扱いが中国の経済と名声にダメージを与える」と北京が納得しない限り、大きな変化は期待できない。

グローバルな大国間協調の組織化を
―― 多極世界を安定させるために

2021年5月号

リチャード・N・ハース 外交問題評議会会長 チャールズ・A・クプチャン ジョージタウン大学 教授(国際関係学)

アメリカやヨーロッパにおけるポピュリズムや非自由主義への誘惑がそう簡単に下火になることはない。かりに欧米の民主主義が政治対立を克服し、非自由主義を打倒して、経済をリバウンドに向かわせても「多様なイデオロギーをもつ多極化した世界」の到来を阻止することはできない。歴史は、このような激動の変化を伴う時代が大きな危険に満ちていることをわれわれに教えている。だが、第二次世界大戦後に形作られた欧米主導のリベラルな秩序では、もはや世界の安定を支える役目は果たせないことを冷静に認めなければならない。21世紀の安定を実現するための最良の手段は「19世紀ヨーロッパにおける大国間協調」を世界に広げた、中国、欧州連合(EU)、インド、日本、ロシア、アメリカをメンバーとし、国連の上に位置する「グローバルな大国間協調体制」を立ち上げ、大国の運営委員会を組織することだ。

新保守主義がなぜ必要か
―― アメリカ政治再生の鍵を握る保守主義の再編

2021年5月号

オレン・キャス アメリカン・コンパス  エグゼクティブディレクター

経済リバタリアン、社会的保守派、外交タカ派の連合は、それぞれが自分たちのポートフォリオを重視するあまり、公共政策の多くが(最大公約数的に)市場原理主義者という小さな集団の手に委ねられてしまった。保守派の経済思想が衰退するにつれて、リバタリアンの思想が市場原理主義へ固定され、今日ではほとんどのコメンテーターはそうした原理主義思想の持ち主を「保守派」と呼んでいる。こうして、政治危機が引き起こされている。進歩主義はアイデンティティ政治や高学歴エリート特有のつかみ所のない悩みにますます執着している。だが「家族やコミュニティが依って立つ基盤に関する懸念に焦点を当てた(保守派の)イデオロギー的メッセージ」を前にすると進歩主義に力はない。今こそ保守派が中道右派としての立場を示すときだ。

中国における大家族時代の終焉
―― 中国の野望と人口動態トレンド

2021年5月号

ニコラス・エバースタット アメリカンエンタープライズ研究所 政治経済担当チェアー
アシュトン・バーデリ ペンシルベニア州立大学 教授(社会学・人口動態)

大家族の衰退という中国で進行するトレンドがいまや大きな流れを作り出している。この現象が引き起こす衝撃を北京が十分に認識していないだけに、家族構造の変化は、今後長期にわたって、中国の大国化願望を脅かし続けるだろう。1世代後の中国は、この人口動態上の逆風ゆえに、当局が想定するほど豊かでも生産的でもないはずだ。伝統的にライフボートの役目を果たしてきた大家族主義や血縁的つながりが衰退し、大規模な社会保障国家をあと1世代で構築しなければならないとすれば、経済外交と国防政策を通じて外国に影響力を与える北京の手段は大きく制約される。いずれ中国は経済パワーが低下し、国防政策を下方修正せざるを得ない状況に直面する。

イノベーション戦争
―― 衰退するアメリカの技術的優位

2021年4月号

クリストファー・ダービー 米IQT CEO
サラ・セウォール IQT 上席副社長(「政策担当」)

北京は「戦争という最終手段をとらずに目標を達成するツールとしてテクノロジーのイノベーションに挑んでいる」。5Gの無線インフラを世界各地で販売し、合成生物学に取り組み、小型で高速なマイクロチップの開発を急いでいる。これらはすべて中国のパワーを強化するための試みだ。当然、ワシントンは視野を広げ、超音速飛行、量子コンピューティング、人工知能などの明らかな軍事用途をもつテクノロジーだけでなく、マイクロエレクトロニクスやバイオテクノロジーなど、これまでは本質的に民生用とみなされてきたテクノロジーも支援し、民間部門が投資しない分野に資金を提供する必要もある。

日中戦争をいかに記憶するか
―― なぜ共産党は国民党の役割を認めたか

2021年4月号

ジェシカ・チェン・ワイス コーネル大学 准教授

「国連の創設メンバー、国連憲章に署名した最初の国として中国は国際システムをしっかりと支えていく」と習近平は発言している。もちろん、そうした役割を担ったのは共産党ではなく、国民党だった。昨今の「強硬でとかく軋轢を引き起こす路線」が国際的リーダーシップを確立したい北京の目的からみれば逆効果であるために、戦後国際システムとのかかわりを強調することで、北京は緊張を緩和したいのかもしれない。台湾との関係を育んでいくことへの関心、未解決の戦争の過去を日本に思い出させるという思惑もあるのだろう。だがリスクもある。中国が戦後秩序の擁護者として自らを描けば描くほど、中国民衆は国際社会でより中心的な役割を果たす権利があるという感覚を強く持つようになるかもしれないからだ。・・・

インド太平洋戦略の幻想
―― 東アジアを重視すべき理由

2021年4月号

ヴァン・ジャクソン ビクトリア大学ウェリントン 国際関係論教授

「インド太平洋」という概念が、アジアの代替表現、中国への対抗バランス形成という視点で捉えられている。「自由で開かれたインド太平洋」の目標は高貴なものに思えるかもしれないが、それを模索すれば、アメリカはおそらく道に迷う。実際には、アジアにおけるアメリカのパワーと影響力にとっての中核地域は東アジアと太平洋だからだ。世界でもっとも豊かで、軍事化され、人口の多い東アジアでの戦争を防ぐこと以上に大切なアジェンダがあるだろうか。最新の地政学的流行語のためにこの地域を見放せば、壮大な失敗を招き入れることになる。

プーチン主義というイデオロギー
―― 侮れない思想の力と米ロ関係の未来

2021年3月号

マイケル・マクフォール 元駐ロシア米大使

ロシアに関するアメリカの考えはミスパーセプションによって歪んでいる。専門家の多くは、例えば、ロシアは衰退途上国家だと誤解している。現実には、ほとんどの米市民が考えるよりもはるかに強大な軍事、サイバー、経済、イデオロギー領域のパワーをもつ、世界有数の強国の一つとしてロシアは再浮上している。事実、プーチン主義はヨーロッパだけでなく、アメリカでも新たな支持者を獲得しつつある。ワシントンは、あまりにも長い間、米ロ間競争のこのようなイデオロギー的側面を軽視してきた。ワシントンは、ロシア社会全体との結びつきを深めながらも、プーチンのイデオロギー・プロジェクトに対抗していく必要がある。

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