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環境とエネルギーに関する論文

「エネルギー貧困」を克服するには
―― 農業の近代化、工業化、都市化が鍵を握る

2016年11月号

テッド・ノードハウス ブレイクスルー研究所 共同設立者
シャイヤラ・デビ 同研究所アナリスト
アレックス・トレンバス 同研究所コミュニケーション・ディレクター

世界の20億人が依然として電力や天然ガスなどのエネルギー資源へのアクセスをもたない「エネルギー貧困」の状態に置かれている、しかも、近代的エネルギーへのアクセス拡大に向けた努力の多くは、(ソーラーなど)送電網から離れた小型の分散型エネルギーの供給に集中している。(孤立したソーラー発電でも)エネルギーアクセスを強化することにはなる。しかし、「エネルギー貧困」をなくすには、この問題が構造的な側面をもっていることに目を向ける必要がある。工業化、農業の近代化、都市化そして所得の上昇とエネルギー消費の拡大には明確な相関関係がある。だが、マイクロファイナンス、マイクロ企業のためのマイクロエネルギーでは、工業やインフラ、中央管理型電力網の代わりはできない。「エネルギー貧困」を克服するには、途上国と多国間組織は、「生産的で大規模な経済活動を支えるエネルギーインフラの開発」を優先する必要がある。問題は、ここで環境問題とのトレードオフが生じることだ。・・・

水資源危機で深刻化するインドの州間対立
―― その政治的背景と打開策を検証する

2016年8月号

スコット・ムーア 世界銀行グループ 水資源スペシャリスト

干ばつに苦しむインドでは、各州間の水資源利用をめぐる対立が激化している。ほぼすべての主要な水路が州の境界に沿って流れ、上流の州と下流の州がそれぞれどれくらいの水資源を利用するかに合意する必要がある。だが、誰がどのような目的でどの程度の水資源を利用するのかを決めるのは容易でない。しかも、州レベルの政治家たちは、特定の言語や民族集団の立場を代弁する政党に帰属していることが多く、水資源を交渉材料として利用し、近隣州への水資源供給を止めると脅迫することもある。近隣州が水資源を「収奪」しているために州民が犠牲となっていると主張することで支持を集めようとする政党もある。一方で、ヒマラヤの氷河と雪、モンスーンによる雨という2つの主要な水資源は気候変動によって今後さらに不安定化していくと予想されている。

欧州への米LNG輸出で何が変わるか
―― 米ロ天然ガス戦争という虚構

2016年7月号

ニコス・ツァフォス /エナレティカ チーフアナリスト

アメリカから大量のLNG(液化天然ガス)がヨーロッパに向かうようになれば、ロシアの天然ガスは(価格競争に敗れて)市場から締め出され、モスクワは天然ガスの輸出収益の多くを失うと考えられている。しかし、この議論は天然ガス市場に関する間違った前提に依存している。いまやLNGによって天然ガスのグローバル市場が誕生しており、市場はこの見方を支えるほど単純ではない。ヨーロッパ市場でのアメリカのライバルはロシアではなく、むしろノルウェーやアルジェリアの天然ガスになるだろう。また、オーストラリアのLNGがアジア市場に向かい始めれば、これまでのアジアを顧客としてきた中東の天然ガス資源がヨーロッパを含むグローバル市場へと流れ出す。アメリカのLNGとロシアの天然ガス供給だけで、ヨーロッパ市場を語るのは、あまりに短絡的すぎる。・・・

中東におけるロシアの原発戦略
―― 魅力的なモデルと地政学のバランス

2016年7月号

マシュー・コッテ/国際戦略研究所リサーチアソシエート(不拡散・核政策)
ハッサン・エルバーティミー/キングスカレッジロンドンポストドクトラル・リサーチャー

中東で原子力エネルギーが再び脚光を浴びている。2016年4月、ロシアの国営原子力企業・ロスアトムは、アラブ首長国連邦のドバイに事務所を開設した。エジプト、イラン、ヨルダン、トルコでのロシアの原子力プロジェクトを統括することがこの事務所の役割だと考えられている。「原子炉を現地で建設、所有、稼働し、電力を相手国に約束した価格で供給する」。これがロシアのビジネスモデルだ。モスクワ原子力関連の訓練と教育を相手国に提供することも約束しており、現地での雇用創出も期待できる。一方、モスクワは電力の売り上げだけでなく、電力供給プロセスを通じて中東諸国との経済的つながりも強化できる。しかし、シリアのバッシャール・アサドを支援することで、中東の地政学に関与しているだけに、ロシアが中東での原子力市場シェアを拡大できるかどうかは、テクノロジーとサービスを安価に提供することだけに左右されるわけではないだろう。・・・

クリーンエネルギー投資の強化を
―― 温室効果ガスの削減では惨劇を回避できない

2016年6月号

バルン・シバラム / 米外交問題評議会フェロー(エネルギー担当)
テリン・ノリス / 前米エネルギー省特別顧問

クリーンエネルギー技術が大きく進化しない限り、各国が現在の温室効果ガス排出量削減の約束を実行しても、おそらく地球の温度は2・7―3・5度、上昇する。この場合、(異常気象の激化や海面水位の上昇による水没など)グローバルレベルでの惨劇に直面するリスクがある。一方、新しい原子炉の設計によって、核燃料のメルトダウンリスクを物理的になくせる可能性もあるし、ナノテクノロジーによる膜を利用すれば、化石燃料発電所からの二酸化炭素排出を防げるかもしれない。壁紙と同価格で太陽光発電できるコーティング素材ができれば、消費する以上に電力を生産できるビルが立ち並ぶだろう。問題はこうした夢のようなクリーンエネルギーテクノロジーへの投資が十分でないことだ。投資を促すには、政府が投資を主導するとともに、その枠組みを国際的に広げていく必要がある。

地球を覆うエアロゾルを削減せよ
―― エアロゾルの拡散と水資源の減少

2016年5月号

ベラガダン・ロマナサン カリフォルニア大学サンジェゴ校 海洋学研究所教授(大気・気候科学)
ジェシカ・セダン インド工科大学マドラス校・科学技術・政策研究所ディレクター
デビッド・G・ビクター カリフォルニア大学サンジェゴ校・グローバル政策・戦略大学院教授

発電所で利用される石炭、自動車のディーゼル燃料、料理用の薪の燃焼など、温室効果ガスを排出する人間の活動は、一方でエアロゾルと呼ばれる微粒子も排出する。エアロゾルは、広い範囲に靄(もや)がかかる現象をもたらし、太陽光を遮ったり散乱させたりする。その結果、地表に届く太陽光エネルギーが減少し、いつ、どこに、どれくらいの雨が降るかを左右する水分の蒸発が減少して水循環を混乱させる。2050年までに世界人口の40%が苛酷な水不足に直面するとの予測もすでに出ている。各国政府が理解し始めているように、水不足は経済的、人道的な課題であるだけではなく、地政学的な問題も絡んでくる。エアロゾル汚染への対策は温室効果ガス削減のキャンペーンに比べて市民の大きな関心を集めないが、その対策を、気候変動を抑える地球規模の行動における重要な柱とすべき理由は十分にある。

CFR Events
流動化するサウジ
―― 原油、イラン、国内の不安定化

2016年4月号

バーナード・ハイカル プリンストン大学教授(近東研究)、カレン・エリオット・ハウス 前ウォールストリートジャーナル紙発行人

サウジの社会契約は石油の富による繁栄を前提にしており、(原油安が続き)民衆が望むレベルの繁栄を提供できなくなれば、政府は政治的に非常に困難な事態に直面する。原油以外の歳入源(経済の多角化)について、さまざまな議論が行われているが、これまでうまくいったことはない。・・・リヤドは、歳出を削減して民衆の反発を買うよりも、非石油部門の歳入を増やそうとしている。これまで膨大な浪費を続けた国だけに、節約で一定の資金を手許に残せるが、最終的には、痛みを伴う是正策が必要になるだろう。(K・E・ハウス)

サウジは、イランのことをイスラム国以上に深刻な脅威とみなしている。イランは非国家アクターを操り、イラクからシリア、レバノン、パレスチナ、イエメン、おそらくはバーレーン、さらには、サウジ東部のシーア派を含む、サウジ周辺の全地域(と国内の一部)で影響力を拡大しているからだ。リヤドは、地域的、あるいは中東全域の地政学的優位をめぐって、イランとのゼロサムの関係にあるとみている。(B・ハイカル)

青い惑星の水不足
―― 高まる水資源需要にいかに応えるか

2016年1月号

韓昇洙 国連「水と衛生に関する諮問委員会」委員

水の惑星と言われる地球だが、人類が実際に摂取できる水の量は、地球上の水資源のわずか1%。現状でも、世界の8億人近くの人々が、クリーンな飲料水へのアクセスをもたず、国連の世界水資源開発報告書は、水資源需要が現在のペースで増え続ければ、2030年には需要が供給を40%上回ることになると予測している。このシナリオが現実と化せば、10億人以上の人々が水資源不足だけでなく、多くの国が(農業用水の不足による)食料不足や生活レベルの低下に苦しむことになる。十分な飲料水資源を人類に供給するには、既存の資源をいかに管理していくかが重要だ。幸い、三つのイノベーションが未来を切り開きつつある。・・・

原油安が好ましいとは限らない。例えば、原油価格が今後10年にわたって50ドル前後で推移した場合、中東産油国へのわれわれの依存度は高まっていく。北米、ブラジル、アフリカなどの原油は生産コストが高いために、生産量は削減され、生産コストの安い一部の中東産油国の石油への需要と依存が高まっていく。一方、中東は、誰もが知るとおり、大きな混乱のなかにある。つまり、石油安全保障の観点からみれば、長期的に原油が低価格で推移するのは、かなりのリスクがある。・・・さらに原油安によって、やっと勢いづいた再生可能エネルギーへの支援策を政府が見直す危険もある。だがそうならなければ、石炭から再生可能エネルギーへの大きなシフトが起きる。電力生産部門での石炭のシェアは低下し、近い将来、再生可能エネルギーが石炭を抑えて最大のシェアをもつようになる。例えば、3人のうち2人が電力へのアクセスをもっていないアフリカのサハラ砂漠以南の地域が、化石燃料ではなく、再生可能エネルギーで経済成長を遂げる最初の大陸になると考えることもできる。彼らは再生可能エネルギー資源に恵まれているし、再生可能エネルギーによる電力生産コストは大幅に減少している。・・・・

解禁へ向かうアメリカの原油輸出
―― クリーンエネルギーと石油企業の利益

2015年12月号

ジェフ・コルガン ブラウン大学助教授

原油輸出の解禁を求める米石油企業と輸出禁止の継続を求める石油精製企業の利益が対立するなか、米議会は原油輸出禁止の解除へと明確に舵を取っている。共和党の大統領候補たちが解禁を支持する一方で、クリーンエネルギーへシフトしていくことを重視するオバマ政権とヒラリー・クリントンは輸出禁止の継続を求めている。石油企業は水圧破砕産業、石油精製企業は環境保護団体とそれぞれ政治的連帯を組織している。ここで必要なのは政治的妥協だろう。輸出解禁に歩み寄りつつも、石油企業から「環境汚染の低いグリーン経済に向けたシフト」へのコミットメントを引き出す必要がある。

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